調査シリーズNo.148
「労働時間管理と効率的な働き方に関する調査」結果 および「労働時間や働き方のニーズに関する調査」結果
―より効率的な働き方の実現に向けて、企業の雇用管理はどう変わろうとしているのか―

平成28年 3月31日

概要

研究の目的

長時間労働問題を構成している 「所定外労働時間の長さ」 と 「年次有給休暇の未消化」 に焦点を当て、その発生状況・原因を把握するとともに、より効率的な働き方の実現に向けて企業の雇用管理はどう変わろうとしているのか、等を展望する。

研究の方法

アンケート調査(1.企業調査 および 2.労働者調査)

  1. 15産業分類における、全国の従業員100人以上規模の企業12,000社(信用調査機関が所有する企業DBを母集団として、産業・規模別に層化無作為抽出)を対象に配布。
  2. 同企業を通じ、そこで雇用されている、働き盛り世代を中心(20~40代優先)とする正社員を対象に、60,000人分の調査票配布を依頼。

主な事実発見

  • 年間総実労働時間の今後の方向性について尋ねると、「現状通りで良い」が約半数(49.2%)を占めたものの、「短縮していく」とする企業も半数弱(45.7%)みられた(図表1)。具体的な方法としては(複数回答)、「所定外労働時間の短縮」が79.7%にのぼり、これに「年次有給休暇の取得率の引上げ」(47.2%)等が続く。年間総実労働時間を「短縮してきた(していく)」理由としては(複数回答)、「働き過ぎを防止するため(メンタルヘルス不全者の削減や健康の確保等)」や「労働生産性を向上させるため(より効率の良い働き方を追求するため)」「仕事と家庭の両立など時短は社会的な要請となっているため」等が多くなっている。

    図表1 年間総実労働時間の過去3年間における削減状況と今後の取組み方針

    図表1画像

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  • 正社員の働き方を多様化・柔軟化することへの賛否を尋ねると、41.6%の企業及び59.2%の労働者が「賛成(どちらかというと含む)」と回答した(図表2)。また、始業時刻を8時等へシフトさせ、17~18時頃には必ず退社できるようにする「朝型勤務」については、20.4%の企業が「今後、検討余地がある」、30.9%の労働者が「希望する」と回答した。同様に、「短時間正社員制度」について「今後、検討余地がある」企業は29.2%で、「希望する」労働者は27.4%、「(より柔軟な)フレックスタイム制」については「今後、検討余地がある」企業が32.6%で、「希望する」労働者が39.3%などとなった。

    図表2 正社員の働き方を多様化・柔軟化することに対する賛否

    図表2画像

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  • 労働者調査で、基本的に18時頃には退社できるようになったら何をしたいか尋ねたところ、多かった順に、①心身の休養・リフレッシュ(64.0%)、②自身の趣味(57.8%)、③家族との団欒(51.0%)、④同僚や友人との懇親会(34.3%)、⑤家事、育児(30.6%)等があがった(図表3)。

    図表3 18時頃には退社できるようになったらしたいこと

    図表3画像

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  • 企業調査で、労働生産性(従業員一人当たりの付加価値)を(さらに)高めるために必要なものを尋ねると(複数回答)、「仕事内容の見直し(ムダな業務の削減)」がトップ(63.1%)で、これに「仕事の進め方の見直し(決裁プロセスの簡素化、会議の短縮化等)」(48.7%)が続いた(図表4)。一方、労働者調査で、仕事の効率性を高めるために必要なもの(複数回答)のトップは「組織間・従業員間の業務配分のムラをなくす」(54.6%)で、次いで「人員数を増やす」(30.0%)、「仕事中心の職場風土や社会慣行を見直す」(26.2%)などとなった。

    図表4 労働生産性や仕事の効率性を(さらに)高めるために必要なもの

    図表4画像

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政策的インプリケーション

  • 今回の調査によると、週実労働時間が長い人ほど健康不安は高く、健康不安が高い人ほど能力の発揮度合いに対する自己評価も、低下する傾向がみられる。また、年次有給休暇が取得しやすい職場ほど、入社3年後の人材定着率は高く、売上高経常利益率も高い傾向にある。こうしたなか、企業にとっては長時間労働問題を、「所定外労働時間の削減」と「年次有給休暇の取得促進」の両面から、一体的に改善していくことが喫緊の課題となっている。
  • 一方、改善に向けた取り組みを行っているにも係わらず、その効果を実感できない企業も少なくない背景には、原因と対策の不一致や、人手不足状態を解消(緩和)しないままでの取り組み、といった矛盾もみられる。そのうえで、所定外労働時間が実際に「短縮された」企業や、年次有給休暇の取得日数が実際に「増えた」企業に共通する特徴としては、経営トップからの呼び掛け等により取り組みを全社的に位置づけるとともに、事前の届け出や計画的な付与、目標の設定等といった、管理的な手法を用いて取り組みを進めている様子が浮き彫りとなった。

政策への貢献

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

平成26年第3四半期要請の緊急調査

研究期間

平成26年11月~平成27年12月

調査担当者

荻野 登
労働政策研究・研修機構 調査・解析部長
渡辺 木綿子
労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.121)。

入手方法等

入手方法

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研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

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