ディスカッションペーパー 18-05
統計指標に基づく市町村分類の試み

平成30年3月30日

概要

研究の目的

教育機会や就業機会の地域間格差、地方からの人口流出とコミュニティ危機、地域活性化など、「地域」を扱う議論が活発になされている。産業・雇用・人口等の状況や課題は、国全体で一律のものとは言えず、地域ごとの違いが大きい。

地域の研究において、地域特性の把握(何らかの比較の軸の中に個々の地域を位置づけること)はきわめて重要な位置を占める。先行研究でも、地域を類型的に把握しようという試みがなされてきた。そこでは、地域の階層的性格や産業特性といった軸で地域特性が描かれることが示唆されていたが、扱う指標の偏りや方法論上の問題もあり、近年の状況に即した検証の余地を残していた。

本研究は、クラスター分析の手法を用い、総務省『国勢調査』『経済センサス』等の統計指標に基づいて全国1,713市町村を分類し、今日的な地域類型として提示することを試みたものである。

研究の方法

統計解析、研究会開催

主な事実発見

(1)地域分類の軸―主成分分析の結果

分析では、地理的特徴、人口構成・変化、産業構造、就業構造、世帯・家計、生活環境、自治体財政など、多角的に地域の特性を把握できるよう、多様な項目から59指標を投入した。

主成分分析を行った結果、8主成分が抽出された。中でも、人口構成や集中度、増加率を中心とした要素から構成される「人材の集積」が最大の軸として見出された。他には、転入・転出率の高さや世帯構造に特徴のある「人口の流動性」、男女就業率の高さや女性比率の低さ、産業構造に特徴付けられる「特定の仕事の場」、人口のほか、卸売・小売業の集積した中心性に特徴付けられる「商業集積」など計8つの軸からなる。

(2)地域はどのように分類されるか―クラスター分析結果

上で抽出された8主成分を投入し、全国1,713市町村を分類するクラスター分析を行い、20の地域類型を析出した。分析の結果得られたデンドログラム(樹形図)を読むと(図表1)、第1~6類型と第7~20類型の間に大きな分断線が見て取れる。地域類型ごとの主成分得点を合わせて読むと、両者の違いは「人材の集積」得点の違いであり、全国市町村は、人材集積度の高い地域(第1~6類型)、低い地域(第7~20類型)に大別できることがうかがえた。その中でも、中核都市(東京は別格)、地方の大都市、大都市近郊のベッドタウン、地域特化の経済が成立している地域、第2次産業や観光関連など就業機会に特徴のある地域、農村部にありながら人口の流動性が高い地域といった地域類型が見いだされた。

図表1 クラスター分析結果:デンドログラム

図表1画像

(3)都市性に関わる分類軸の有効性

分析結果の大きなポイントは、都市性を形作る多様な要素が、地域の分類軸として明示的に位置づけられたことである。具体的には、人材の集積、人口の流動性、多様な就業機会、商業集積、生産活動の場、拠点立地、第1次産業以外の産業基盤といった、これまで都市研究の中で個別に議論されてきた「都市性」の特徴が、地域分類においても有効な切り口であることが確認された。そして、こうした多様な軸の交点から、東京を頂点とした都市の階層構造が、地域類型として明瞭にあらわれた。

(4)産業特性のあらわれ方―「工業都市」の所在

地域の産業特性に関しては、製造業を基盤産業とした「工業都市」の所在で、先行研究とやや異なる結果が得られた。具体的には、主成分分析からは、製造業立地が明瞭な主成分として見出せなかったが、クラスター分析の結果からは、製造業立地が地域類型に関係しないわけではない。例えば、製造業を基盤とした中規模都市は、製造業の集積という性格というより、基盤産業があることによって就業者を引きつけ、それが中心性の獲得(商業集積)、多様な就業機会をもった都市として成立し、それが地域性の前面に出てくるものと考えられる。また、地域特化の経済は、より小規模の都市において成立している。それは、産業の地場性の強さ、就業機会の特徴の強さとしてあらわされている。

政策的インプリケーション

俯瞰的に地域を議論しようという場合、全体(国)の中で部分(個々の地域)をどう位置づけるかの見方が必然的に問われる。この点、ある限られた切り口(指標)から地域を比較する議論は、明快でインパクトが大きいが、そうした比較では、序列化する含意をともなってしまいがちだ。地域特性(地域の性格)は、序列化になじまない部分も多分にあるため、序列的な評価軸とは別の軸(いわば水平的な「性格の違い」の軸)から地域特性を描くことも大きな意義をもとう。

地域分類(類型化)の大きな目的は、多様な地域を適切に位置づけ、比較・検討する視座を提供することにある。本稿は、人口や産業構造に限らず、就業状況や世帯・生活関連などの多様な指標を活かし、統計的な手法をもって地域分類を行うことで、近年の状況に即した地域類型を提示し、今後の議論の土台を提供するものである。

政策への貢献

地域の状況・課題を把握する際の基礎的視点を提供するとともに、地域を対象にした政策を企画・立案する際の基礎資料として活用が期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「技術革新等に伴う雇用・労働の今後のあり方に関する研究」
サブテーマ「地域における雇用機会と働き方に関する研究」

研究期間

平成29年4月~平成30年3月

研究担当者

高見 具広
労働政策研究・研修機構 研究員
高橋 陽子
労働政策研究・研修機構 研究員

関連の研究成果

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。

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