介護、育児分野に外国人労働者の導入を提言
 ―韓国銀行レポート

カテゴリー:労働条件・就業環境外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2024年4月

韓国銀行は3月5日、報告書「ケアサービスの人手不足と費用負担緩和策」を発表した。この報告書で韓国銀行は、高齢者介護及び家事・育児手伝い分野の人手不足と費用高騰が深刻化していることを指摘し、これらの分野での外国人労働者の導入は避けられないと結論づけている。以下で主な内容を説明する。

人手不足は155万人になるおそれ

高齢者介護、家事・育児手伝い分野の従事者数は2022年には79万人であった()。このうち67万人が高齢者介護のための保健サービス従事者であり、11万人が家事・育児手伝いである。家事・育児手伝い従事者数は少子化や公立保育園の増加によって減少傾向にある一方、高齢化の影響で保健サービス従事者数は近年増加傾向にある。

図:ケアサービス従事者数 (単位:万人)
画像:図

出所:韓国銀行レポート

2022年にはケアサービス職への需要は供給を上回っており、これらのケア分野での労働供給不足分は19万人に相当する。韓国銀行は、高齢化の影響や、現在経済的な利用によってケアサービスを利用できない層も含めると今後も人手不足の状況は続くと予測している。2042年には最大で155万人分の労働供給が不足する見通しである。

介護サービスの高騰

近年、人手不足などの影響を受け、高齢者の介護費用は支払うことが難しい価格にまで高騰しており、高齢化及び保健サービス職の供給不足の深刻化により、高齢者を介護するその家族の規模は2042年には212~355万人にまで増加すると推計されている。

高齢者の介護費用は、2023年には平均で月370万ウォンであった。この金額は65歳以上世帯の中位所得224万ウォンの1.7倍、40代世帯(588万ウォン)、50代世帯(588万ウォン)の中位所得の6割にあたる。

家事・育児サービスの費用も大きく上昇した。共働きの夫婦が1日10時間利用する場合の費用は2023年には月264万ウォンであった。

外国人の導入は不可避

韓国銀行は、人手不足と費用の高騰が進む状況では外国人労働者の導入は避けられず、さらに費用負担を緩和するためには、外国人労働者を韓国人のケア労働者よりも低い賃金で外国人労働者を雇用する必要があると述べる。

しかし現在、韓国はILO加盟国であり国籍によって賃金を差別することはできない。また、現在導入している非熟練労働者受入れ制度「雇用許可制」においても、外国人労働者に対して韓国人と同一の賃金を支給することを義務づけている。

韓国銀行はこれらの問題を解決する方法として、以下の二つの手段を提案する。

まず、各家庭が直接外国人労働者と私的な契約を締結し、「家事使用人」として雇用する方法である。家事サービス提供者は、政府の認可を受けた企業と雇用契約を締結し派遣された家庭で場合には「家事労働者」として労働基準法と最低賃金法が適用されるが、「家事使用人」として一般家庭と契約を締結して働く場合にはこれらは適用されない。

次に、従来の非熟練労働者受入れ制度である「雇用許可制」の雇用許容業種にケア分野を追加する方法である(注1)。この方法であれば、家庭内の介護・育児以外に施設介護にも対応できる。この場合、韓国銀行はケア産業のみ最低賃金を引き下げることを提案する。韓国の最低賃金は現在全国全産業一律で適用されているが、現行の最低賃金法によれば、最低賃金委員会が議決すれば業種別の最低賃金を定めることは可能である。

労働組合は韓国銀行の提案を批判している。韓国二大労組の一つである韓国労組は、韓国ケアサービス職の労働者の劣悪な待遇に苦しめられており、根本的な支援策を準備することが国家の責務であると述べた。また、民主労組は、ケア労働者たちはすでに劣悪な労働環境と低賃金に晒されており、さらに低い賃金と劣悪な労働条件で外国人労働者を導入することは問題解決にならないと述べた。

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