都市部年収の伸びが鈍化
 ―2022年、国家統計局調べ

カテゴリー:労働条件・就業環境統計

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  • 国別労働トピック:2023年8月

中国国家統計局はこのほど、2022年における都市部非私営企業と私営企業の従業員の平均年収を発表した。非私営企業の平均年収は11万4,029元で前年比7,192元、名目6.7%増加したが、前年比で3ポイントの減少となった。一方、私営企業の平均年収は6万5,237元で前年比2,353元、名目3.7%増加したが、こちらも前年比で5.2ポイント減少。非私営、私営企業とも年収の伸びが鈍化している。業種別に見ると、「金融業」「情報通信・ソフトウェア・情報技術サービス業」「鉱業」などが高い伸びを示す中で、不動産市場の低迷を背景に「不動産業」だけがマイナスとなっている。

平均年収の伸びが鈍化

国家統計局による公表データによれば、全国の都市部非私営企業(国有企業、集団企業、共同経営、株式制、外商投資企業、香港マカオ台湾投資企業等を含む)の平均年収は11万4,029元と、前年比で7,192元、名目6.7%増加したが、前年比で3ポイント減少している。価格要因を除いた実質成長率は4.6%増だった。平均年収の推移を見ると、年々増加傾向にあった伸び率が、次第に減少している傾向が見受けられる。(図1)

一方、都市部私営企業の平均年収は6万5,237元と、前年比で2,353元、名目3.7%増加したが、前年比で5.2ポイント減少している。実質成長率は1.7%増だった。平均年収の伸びは2011年をピークに、その後は減少傾向が続き、2022年には「ゼロコロナ政策」の影響などもあり、名目成長率が3.7%にまで落ち込んだ。(図2)

図1:全国都市部における非私営企業の平均年収の推移(2009~2022年)
画像:図1

出所:中国国家統計局

図2:全国都市部における私営企業の平均年収の推移(2009~2022年)
画像:図2

出所:中国国家統計局

不動産業で収入減

業種別の数値に注目すると、非私営企業も私営企業も平均年収の上位3業種は依然として「情報通信・ソフトウェア・情報技術サービス業」「科学研究・技術サービス業」「金融業」だった。非私営企業では「金融業」が前年比で最も高い伸び率だったが、「情報通信・ソフトウェア・情報技術サービス業」は以前より鈍化しているようだ。一方、中国の不動産市場の低迷が続き、「不動産業」の平均年収は前年比0.9%減の9万346元と、伸び率がマイナスとなっている。私営企業でもほぼ同様の傾向が見られ、金融業が最も高い伸び率を記録した(15.6%増)。不動産業は5万6,435元で前年比3.2%減となり、19産業の中で不動産業だけが減少している。

また、国際的な視点で見ると、エネルギー価格の上昇などで、需要が高まり供給が減少したことが、「電気・熱供給・ガス・水道生産・供給業」と「鉱業」の平均年収の伸びの増加に影響しているようだ。(表1)(表2)

表1:非私営企業の業種別平均年収(2020年~2022年)
業種 2022年 2021年 2020年
  年収(元) 前年比 年収(元) 前年比 年収(元)
情報通信・ソフトウェア・情報技術サービス業 220,418 9.4% 201,506 13.5% 177,544
科学研究・技術サービス業 163,486 7.7% 151,776 8.5% 139,851
金融業 174,341 15.6% 150,843 13.1% 133,390
衛生・社会事業 135,222 6.6% 126,828 9.9% 115,449
電気・熱供給・ガス・水道生産・供給業 132,964 6.1% 125,332 7.4% 116,728
鉱業 121,522 12% 108,467 12.2% 96,674
文化・体育・娯楽業 121,151 3.3% 117,329 4.7% 112,081
教育 120,422 8.1% 111,392 4.6% 106,474
公共管理・社会保障・社会組織 117,440 5.5% 111,361 6.6% 104,487
交通運輸・倉庫・郵政業 115,345 5.0% 109,851 9.2% 100,642
卸売・小売業 115,408 7.1% 107,735 11.6% 96,521
賃貸・商業サービス業 106,500 3.9% 102,537 10.3% 92,924
製造業 97,528 5.5% 92,459 11,7% 82,783
不動産業 90,346 -0.9% 91,143 8.8% 83,807
建築業 78,295 3.3% 75,762 8.3% 69,986
水利・環境・公共施設管理業 68,256 3.7% 65,802 3.0% 63,914
住民サービス、修理その他サービス業 65,478 0.4% 65,193 7.4% 60,722
農業、林業、牧畜、漁業 58,976 9.6% 53,819 10.9% 48,540
宿泊・飲食業 53,995 0.7% 53,631 9.8% 48,833

出所:中国国家統計局

表2:私営企業の業種別平均年収(2020年~2022年)
業種 2022年 2021年 2020年
  年収(元) 前年比 年収(元) 前年比 年収(元)
情報通信・ソフトウェア・情報技術サービス業 123,894 8.1% 114,618 13.2% 101281
金融業 110,304 15.6% 95,416 15.1% 82930
科学研究・技術サービス業 81,569 5% 77,708 7.6% 72233
鉱業 68,509 9.3% 62,665 14.8% 54563
製造業 67,352 5.3% 63,946 10.4% 57910
交通運輸・倉庫・郵政業 66,059 5.8% 62,411 8.9% 57313
賃貸・商業サービス業 65,731 1.9% 64,490 10.9% 58155
電気・熱供給・ガス・水道生産・供給業 61,870 4.4% 59,271 9.2% 54268
建築業 60,918 0.8% 60,430 5.4% 57309
卸売・小売業 60,630 4.4% 58,071 9.5% 53018
文化・体育・娯楽業 56,769 1.1% 56,171 9.5% 51300
衛生・社会事業 56,769 1.1% 56,171 9.5% 51300
不動産業 56,435 -3.2% 58,288 4.5% 55759
教育 52,771 0.4% 52,579 8.5% 48443
住民サービス、修理その他サービス業 47,760 1.2% 47,193 6% 44536
宿泊・飲食業 47,547 1.6% 46,817 10.8% 42258
水利・環境・公共施設管理業 44,714 3.1% 43,366 0.2% 43287
農業、林業、牧畜、漁業 42,605 2.8% 41,442 6.4% 38956

出所:中国国家統計局

13地域が10万元台に

地域別にみると、現時点で26地域が、2022年都市部非私営企業平均年収を公表している。平均年収が10万元を超えているのは13地域で、うち天津市、浙江省、江蘇省、広東省が12万元を超えた(表3)。内モンゴル自治区の平均年収の伸び率が最も高く、前年比11.7%増を記録している。

表3:2022年度地域別における非私営企業と私営企業の平均年収 (単位:元)
地域 非私営企業 私営企業
  2022年度 2021年度 伸び率(%)  
北京市 ※135,567 ※127,535 6.3%  
天津市 129,522 123,528 4.9% 67,258
河北省 90,745 82,526 10.0% 48,494
山西省 90,945 82,413 10.4% 47,275
内モンゴル自治区 100,990 90,426 11.7% 52,318
遼寧省 92,573 86,062 7.6% 52,183
吉林省 87,222 83,028 5.1% 47,921
黒龍江省 88,235 80,369 9.8%  
上海市   ※136,757 _  
江蘇省 121,724 115,133 5.7% 71,835
浙江省 128,825 122,309 5.3% 71,934
安徽省 98,649 93,861 5.1% 57,095
福建省 103,803 98,071 5.8% 65,392
江西省 87,972 83,766 5.0% 53,650
山東省 102,247 94,768 7.9%  
河南省 77,627 74,872 3.7% 47,918
湖北省   96,994 _  
湖南省 91,413 85,438 7.0% 55,780
広東省 124,916 118,133 5.7% 77,657
広西チワン族自治区 92,066 88,170 4.4% 49,951
海南省 104,802 97,471 7.5% 65,519
重慶市 107,008 101,670 5.3% 60,380
四川省 101,800 96,741 5.2% 59,121
貴州省 95,410 94,487 1.0% 52,922
雲南省 103,128 98,730 4.5% 50,338
チベット自治区   140,355 _  
陝西省 98,843 90,996 8.6% 54,557
甘粛省 90,870 84,500 7.5% 48,108
青海省   109,346 _  
寧夏回族自治区 114,631 105,266 8.9% 57,537
新疆ウイグル自治区 101,764 94,281 7.9% 58,128

出所:人社通、各地域統計局、人的資源・社会保障局

※北京市と上海市の平均年収は非私営及び私営企業の就業者の加重平均。

各地域の非私営企業の平均年収を業種別に見ると、多くの地域で「情報通信・ソフトウェア・情報技術サービス業」が一位となっている。とくに、デジタル産業が急速に発展する浙江省における同業種の平均年収は28万7,088元で、他産業に比べ圧倒的に高い。江蘇省(19万4,303元)、重慶市(16万6,375元)、陝西省(19万6,038元)、山東省(13万4,080元)などでも高水準となっている。

また、先述したエネルギー価格高騰などの影響で、鉱業の平均年収も高まっている。新疆ウイグル自治区(17万0,137元)、内モンゴル自治区(16万200元)、甘粛省(126,398元)、安徽省(13万9,477元)、山西省(11万4,368元)、黒竜江省(10万9,888元)などの地域で、平均年収が最も高い産業(非私営企業)となっている。とくに、新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区では、鉱業が牽引する形で、非私営企業全体の平均年収が10万元を超えている。

参考文献

  • 中国国家統計局、人的資源・社会保障部、各地域統計局、各地域人的資源・社会保障局、人社通

参考レート

2023年8月 中国の記事一覧

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