高等教育機関卒業生の雇用を重視

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2009年8月

温家宝首相(国務院総理)は6月3日、国務院常務会議を主宰し、雇用対策を更に強化する措置の検討を指示した。

09年4月末の時点で都市部の新規就業者数は365万人に達し、出稼ぎ農民数も回復傾向にあり、昨年第4四半期以来の下降傾向にようやく歯止めがかかったようだ。しかしながら新規就業者数は昨年同期比でみると依然として低水準であり、登録失業率も引き続き上昇、特に高等教育機関の卒業者や農村部労働者の就職難は深刻である。雇用情勢は依然厳しい状況にあるという認識で一致した同会議では、具体的な雇用対策として次の5項目の措置が打ち出された。

  1. 各措置の監督、検査を強化し、効果的な財政支出を行う。就業特別資金の一部を繰り上げ支出することを前提に、第二期の就業特別資金を金融危機の影響が比較的大きい地域のサポート向けに提供する。

  2. 就業拡大と就業安定の両方に力を入れる。重点産業の調整・振興計画を早急に実施し、生産の安定、市場の安定を通して雇用を安定させる。雇用拡大のための新規就業分野の開拓。経済の構造調整の中で、第三次産業における労働力集約型の中小企業がとくに苦境に陥っていることから、こうした企業のサポートに注力する。中小企業の融資難などの問題を確実に解決し企業負担の軽減を図る。

  3. 高等教育機関の卒業者の就業を促進する。各企業や科学研究機関が高等教育機関の卒業者を雇用するよう奨励し、同時に卒業生に対しては積極的な就業意欲を持つよう指導するとともに、自ら起業することも奨励する。また、農村部の労働者については、農民労働者が居住地域で就業したり、農村に戻って起業したりすることを扶助する。加えて就職が困難な人々に対する就業支援を強化する。

  4. 特別就業研修計画を早急に実施する。企業による就業研修や技能向上研修に対し研修補助金を提供し、技術者養成機関の生徒募集の規模を拡大する。農村で進学しなかった中卒者、高卒者をできるだけ研修に参加させ、起業を考えている農村に戻った農民労働者や高等教育機関卒業者については起業研修に参加させる。

  5. 公共職業紹介サービス体系の整備に力を入れる。各コミュニティにおける公共職業紹介サービス業務における情報ネットワークを構築し、サービス能力の水準を向上させる。また、中西部地域の高等教育機関卒業者の就業実習に対する基本的生活補助については就業特別資金から適当な補助を行い、東部7省(直轄市)における失業保険給付範囲拡大モデルの実施を延長する。

今年に入って以来、中央政府ならびに地方政府は高等教育機関卒業者のための施策を一斉に打ち出してきており、雇用問題において高等教育機関卒業生の就職をとりわけ重視していることが窺える。人的資源・社会保障部によると、国務院からは『現在の経済情勢における就業に係る業務の確実な実施に関する通達』が、国務院弁公庁からは『一般高等教育機関卒業生の就業活動の強化に関する通達』が出されており、高等教育機関卒業生の就職を現在の雇用問題の最重要課題として位置づけることが明確に求められているという。また、国務院が開催した今年4月の『高等教育機関卒業生の就業に関する会議』において発表された15の政策文書には、(1)中西部高等教育機関卒業生が同地域で就職した場合の学費・貸与奨学金の代理返済、(2)大学生のための統一雇用プログラム『農村教師特設計画』、『西部のために働く大卒者計画』、『高等教育機関卒業者に農村で就職してもらうための計画』といった各種計画、(3)科学研究プロジェクトへの高等教育機関卒業生の吸収、(4)『3カ年100万人』職業実習計画といった計画案が盛り込まれている。国務院のこうした一連の動きに呼応し、現在すでに27の省レベルの政府から具体的な実施方法が打ち出されている。

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