第2四半期の雇用情勢
―失業率は危機前の水準に回復

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年11月

国家統計局の8月の発表によると、2002年6月の失業率は前年同期比で0.5%ダウンの1.9%となった。失業者数は17万人の減少で、64万人となっている。この水準が維持されれば、2002年の失業率は経済危機以前の失業率とほぼ同レベルとなることが予想される。しかし、失業者の高学歴化など、従来とは異なる特徴も見られる。

大卒者にとって厳しい雇用情勢

2002年6月の労働力調査の時点で失業者数は64万人(表1)。そのうち約18万人が大学新卒者であり、失業者の高学歴化が進んでいることが明らかになった。大学新卒者の失業者は、2001年の同時期と比べて5万人も増加している。失業者全体の大卒者の割合も、2001年の5月に11%、7月に16%であったのが、2002年になってそれぞれ22%、28%とその割合を高めている(表2)。

チュラロンコン大学のラエ教授はこの現象について、「教育投資の無駄であり、政府が公言するほどタイの労働市場が回復しているかどうかは疑問だ」とコメントしている。

8月の皇后陛下70歳の誕生祝賀会でも、皇后は政府の雇用政策に触れ、「大卒者と貧しい人に雇用を」と述べている(注1)

地方別、産業別の失業率

失業率が最も高いのはバンコク首都圏で2.6%、次いで南部が2.1%、中部の1.9%、北部の1.8%、東北部の1.5%となっている。

産業別では、景気回復基調にあるためか、建設部門での雇用者数が前回の調査と比べて16%増加している。また商業部門でも雇用者数が増加している。農業、製造業、運輸・通信なども微増ながら雇用数を伸ばしている。

また、経済危機後は労働時間の短縮傾向が見られたが、就業者の週当りの労働時間は長くなっている傾向が明らかになっている。

来年の昇給や賃上げを検討すると答えた企業が9割

労働関係の調査・コンサルタントを行っている米企業ワトソン・ワイアット社が、2002年7月に7業種140社を対象にして行った賃金動向調査によると、2002年下半期に昇給を検討している企業は89%にものぼり、2003年の昇給率(見込み)は管理職で0.6%増の6.4%、一般社員で6.6%となっている。

賞与の予定支給額も、2002年が管理職で平均2.3カ月分、一般社員で平均1.6カ月分となっているが、2003年はそれぞれ2.5カ月、1.7カ月に増加すると見込まれている。

これらの賃金・賞与の上昇の背景には、景気回復を企業が実感しているという現実があり、それを裏付けるように前年度で黒字を計上した企業が61%、今年度の予想を黒字と回答した企業が78%にものぼっている。

表1:労働力人口と失業者・失業率の推移 (単位:千人、%)
  1995 1996 1997 1998 1999 2001 2002
5月 7月 5月 7月
労働力人口
失業者数
失業率
30,814
549
1.7
31,165
498
1.5
32,890
729
2.2
30,270
1,311
4.4
30,758
1,383
4.2
30,660
1,420
4.2
32,650
810
2.4
31,980
100
3.0
33,260
64
1.9

出所:国家統計局「労働力調査」各年次

表2:失業者の教育水準と割合 (単位:千人、%)
  2001年 2002年
5月 7月 5月 7月
人数 人数 人数 人数
初等教育以下
初等教育
中等教育
高等教育
大学卒
合計
0.35
0.51
0.24
0.16
0.16
1.42
24.6
35.9
16.9
11.3
11.3
100
0.21
0.2
0.14
0.13
0.13
0.81
25.9
24.7
17.3
16.0
16.0
100
0.15
0.29
0.16
0.17
0.22
100 
15.0
29.0
16.0
17.0
22.0
100 
0.1
0.13
0.12
0.11
0.18
0.64
15.6
20.3
18.8
17.2
28.1
100

出所:国家統計局「労働力調査」各年次。Bangkok Post、2002年8月9日

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