失業給付支出削減を計画

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

去る2月から続いていた公共職業安定所に登録された失業者数の減少傾向に歯止めがかかった。

労働省が9月3日公表したデータによると、8月に失業者は7538人(0.52%)増加し、同月末の失業者総数は145万9007人(男58万359人、女87万8648人)に達し、失業率も8.63%(男5.74%、女12.95%)に上昇した。この時期は労働市場が不規則な動きをする期間ではあるものの、これまでの長年の傾向は、同日発表された数値よりは良く、この失業者の増加は経済減速の影響を裏づけるものとなった。ここ15年間の8月期の失業者数については、平均で1万2602人の減少をみており、2000年の同月においても失業者数は1179人減少していた。

このように、経済活動の減速に伴って雇用創出の勢いが落ちている。政府の2001年のGDP成長率予測は3.6%から3.0%に下方修正された。雇用の伸び率は1.8%だったが、2000年第1四半期に比べると1ポイント低い。雇用者数の増加はより低調になった(昨年の第1四半期は3.3%であったが、2001年の同期は1.1%であった)が、一時雇用の割合には大きな変化がなかった。特に、8月はサービス(観光)部門における一時雇用が増加するため、一般に雇用が伸びる月であることを考慮すると低水準である。この数値も経済活動の減退が雇用の伸びに影響を及ぼし始めていることを示している。

チョサス雇用局長は、雇用のローテーションにより生み出されている失業給付金支出の増大について強調した。すなわち、長期夏期休暇の前に一時雇用契約労働者を解雇し、休暇後に再び同じ労働者と契約を結ぶ企業が存在するのである。同氏は、失業保障システムの改定作業に着手するため、近く社会部門の関係者が招集される予定であると述べたが、本年末までに変更が行われるかどうかについては言明をさけた。

労働省にとって気がかりな点の一つは、8月に一時契約労働者を解雇し9月に再びその後の契約を行うという不正行為をなくすことができるかどうかということである。当局はこうした行為が拡大してきていることを認め、また再雇用する企業のデータを政府が保有していることを明らかにした。

政府は、労働者を金曜日に解雇して月曜日にあらためて雇用しなおすような企業に対しては、社会保険に関する罰則規定をすでに導入している。このような行為はサービス分野におけるいくつかの企業で習慣的に行われていた。

このような慣行のため、企業の生産は夏期休暇の間でも低下することはない。なぜなら、6月末に解雇された労働者が8月に契約雇用されるからであり、こうして交代要員を創出しているのである。

これに対し、労働者連合(CC OO)のリセラス雇用部長は、失業補償額を削減するのではなく、一時雇用契約の仕組み自体の変更を強く訴えた。労働者総同盟(UGT)もまた、過剰な一時雇用が支出額の増大をもたらすのであり、一時雇用そのものを削減するため解決策に取り組むよう要請した。

労働省が準備している失業給付の改正には、企業が夏に臨時雇用者を解雇し9月に彼らを再雇用して、夏期休暇中の支払いをInstitute of National Employment(国立雇用機関)に肩代わりさせるという、多くの企業が用いている不正な慣行を阻止する意図がある。この慣行がここ数年に渡って、失業給付コストを相当増大させたのである。

なお、同機関は、不正な慣行に寄与するだけでなく、労働力の地理的流動性を妨げ、積極的な就職活動を妨げる現行の失業給付制度の変更を支持している。

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