求人の減少など、労働市場の指標の悪化が鮮明に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

大手新聞の求人広告件数は大幅に減少し、回復する兆しはほとんど見られない。全米最大の新聞発行会社、ガネット社は2001年上半期に20%以上(ただしUSAトゥデイを除く)求人広告件数が減少したと推定する。これは1990年代初期の景気後退で見られた減少よりも急激である。また、マイアミヘラルド紙など32紙を発行しているナイトリッダー社によると、5月の求人広告は1年前よりも26%減少している。特に、技術系求人が多いサンホゼ・マーキュリーニュース紙では4月、5月の各月に前年比50%以上、求人広告が減少している。

求人広告を出す媒体が新聞からインターネットへ移っていると考え、新聞広告にかつてほど注目していないエコノミストもあるが、インターネット上の求人件数も減少している。コンサルティング会社エコノミー・コム社によると、1年前に比べ、5月のインターネット上の求人件数は25%減少している。

全国51紙の求人件数を調査しているコンファランス・ボードによれば、2001年4月の求人件数は1年前に比べ27%求人が減少した。これらは、求人がなお活発に行われていた2000年からの減少であるが、明らかに全国で求人意欲が減退しつつある。コンファランス・ボードのエコノミスト、ケン・ゴールドスタイン氏によると、1990年代初期の景気後退期ほど一時解雇件数が増えていないが、全国で多くの企業が採用を手控え、求職者にとって厳しい労働市場になっている。

悪化する雇用統計

労働力人口は2月から5月までの間に68万3000人(0.5%)減少した。これは1981年以来、数の上でも比率の上でも4カ月で最大の減少で、求職を断念した労働者が大変多いことを示している。失業保険受給申請者数は、2001年6月までの一年間に40%以上増加した。これは、1991年の景気後退期にほぼ匹敵する数字である。

労働省が7月6日に発表した6月の雇用統計によれば、6月の失業率は4.5%で前月比0.1ポイント上昇した。非農業部門の雇用者数は前月比11万4000人減少した。中でも、製造業の雇用者数は、11カ月連続で減少しており、前月比11万3000人減と、製造業だけで非農業部門雇用者数減にほぼ匹敵する減少が生じた。製造業における雇用減は広範にわたり、電子機器(3万1000人)、工業機械(2万2000人)などで最も大きな雇用減があった。多くの製造業種では、過去3カ月に雇用減の勢いが増しつつある。5月に雇用増を記録した建設業雇用者が7000人減少、サービス業でも6000人雇用者が減少した。雇用が増加したのは、小売業(1万8000人増)、政府部門(2万4000人増)などである。連邦政府では雇用減が生じたが、州・地方政府でそれ以上の雇用増があった。フルタイムで働くことを希望しているものの、労働時間が削減されたり、フルタイムの仕事が見つからないため、パートタイムで働いている労働者の数は6月に26万6000人増えて360万人(1年前よりも約50万人増加)になった。

人員削減、半期で約78万人

再就職斡旋を行うチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社によると、2001年上半期に米国企業が発表した人員削減数は77万7362人(6月の人員削減数は、前月比56%増の12万4852人)で、同社が89年に統計を取り始めて以来最多の人員削減を記録した98年の67万人を半年だけで更新した。前年同期比19倍の人員削減(13万人)を記録した通信産業を始め、自動車産業(8万7000人)、コンピュータ産業(7万4000人)でも前年比で数倍以上の人員削減が計画されている。通信産業やコンピュータ産業などでは、経済回復の兆しが見られないため、第二次の人員削減を発表する会社が相次いでいる。

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