第1四半期の労働生産性、過去8年の最低水準

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

2001年第1四半期の非農業部門の労働生産性が前期比、年率1.2%低下し、過去8年間で最悪の数字となった。労働省は5月に、速報値として同期の労働生産性が0.1%低下したと発表した。しかし、第1四半期の国内総生産(GDP)が、年率2%から1.3%へと下方修正された影響を受け、労働生産性も下方修正された。同期の製造部門の労働生産性も、0.3%低下から2.1%低下へと下方修正された。非農業部門の労働生産性の大幅低下が起きた理由として、自営業者の労働時間が年率15%と大きな伸びを示したことが指摘されている。自営業者の労働時間は、2000年第2四半期以降、第4四半期まで短くなっていた。

単位労働コストは、年率6.3%上昇した。これは1990年第4四半期(6.3%)以来の高水準である。財・サービスを1単位生産するためにかかる賃金や年金・保険の企業負担等のコストである単位労働コストが上昇したため、長期的にはインフレ圧力を生む可能性があるものの、景気減速のために、企業は価格を上げることができず、労働費用の上昇は、利潤の低下につながっている。

政策当局者は、長期的な労働生産性の動向に自信を持っている。例えば、ブッシュ政権の経済諮問委員会のグレン・ハバード委員長は、「景気減速時には、労働生産性が落ち込むことがよく見られる。労働生産性低下によって、アメリカ経済の長期的な趨勢について私たちが持っている明るい見通しを修正する理由は何もない」と語っている。

労働生産性は、1996年から2000年まで年率約3%で、その前の20年間の1.4%の約2倍となっていた。生産性向上のうち、予想以上の需要の伸びに応えるために労働者が単に仕事をより多くこなしたことによる生産性向上ではなく、情報関連技術(IT)を活用したことによる構造的な生産性向上がどの程度あったのか、経済学者の間で意見が別れている。ITが生産性向上をもたらしたとする、いわゆるニュー・エコノミー論に懐疑的なノースウエスタン大学のロバート・ゴードン教授は、技術関連の生産部門が景気減速の影響を直接受けているため、生産性の低下が一層、急激なものになっているとする。同教授によると、1990年代の生産性向上の多くは、技術関連製品の購入直後に実現した生産性向上によるものであり、さらに、技術関連製品製造自体の生産性が向上していたことによるものであったが、その生産性向上のエンジンであった技術関連製品への需要に勢いがなくなっているからである。

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