インド輸出関連企業が労働法の緩和を要求

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

インドの輸出関連企業が、使用者側の一時的な求人を可能とするため、1970年より施行された労働契約法の改正を要求している。

輸出関連企業は、労働力を余剰な時に解雇する権利を要求し、その理由として、季節的な変動や海外市場の影響により業務量の変動があるため、それに呼応して雇用契約も季節的である必要があると主張している。

最近インド輸出業組合が開催した研究会では、経営に不利と思われる現行労働契約法の改正についての次のような提案が出された。

  1. 現在必要な労働者は主に農民層である。臨時の雇用に適しており、一般労働者と同様の福利厚生を要求していない。
  2. いったん労働者を採用すると現行法では解雇するのが非常に難しく、臨時の求人に対する雇用契約は制約が多く結びにくい。このため柔軟な雇用が可能なシステムに法改正すべきである。
  3. 労働者が自主的に時間外労働を希望すれば、本人の希望に添えるよう改正すべきである。現行法は、時間外労働は賃金を2倍にするよう定めているが、この現行法は、経営者が労働者に強制的に時間外労働をさせている場合にのみ適用すべ きである。
  4. 現行の労働契約は、荷役、梱包、食堂、酒保等のような労働に対しても適用される。しかし、これらの職場での労働需要は一時的なものが多く、使用者側は、労働者と長期の雇用契約を結ぶことを躊躇している。現行の労働契約法は、民間企業の雇用関係に適する形態にしなければならない。
  5. 輸出指向型の企業(EOUs)は、使用者側が必要な労働者数をコントロールできるよう柔軟な雇用契約を許可されるべきである。EOUsは、世界経済がもたらす影響を直接受けやすく、このため不況時には、経営を維持するために労働者を解雇する権利を保持すべきである。
  6. 経済特別区(SEZs)では、輸出品の需要の変動が激しいため、需要の停滞しているときには余剰労働者を削減できる労働契約が許可されるべきである。
  7. 女性も、SEZsのエレクトロニクス、ソフトウェア、縫製業で働く場合は夜間労働が許可されるべきである。現行法では、病院で働く女性等にのみ時間外労働が許可されており不合理である。

一方、各労組は、輸出関連企業の経営者の国際的な競争力向上を目的とした労働法の改正要求に強く反発している。

労組の説明によると、現行の労働法と企業の国際的な競争力に明確な因果関係はなく、現行の労働法を改正しても企業経営に効果はないと主張している。使用者側の要求により労働時間を延長するのなら労働者の保護政策も充実させるべきであり、労働法の改正においては、労組のない企業での最低賃金の保証から始めるべきであると主張している。

マル・ラル労働大臣は、これらの労使の意見の対立に関し「中間的な労働法の改正」を希望すると述べるに留め、企業のリスク管理の欠如や労働者の技術不足は輸出企業の経営に大きな影響を与え、現在輸出は増加しているが十分ではなく、政府は、企業が変化する経済環境に適応できるよう、労働法を如何に改正すべきか検討中であると語った。

マル・ラル労働大臣は、2007年までに完全雇用を達成するには雇用を年率2.8%増加させる必要があると述べ、雇用の増加には経済の発展が必要で、労働法の改正と経済計画作成との関連を十分研究する必要があると述べた。

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