創出された雇用の多くは低賃金職
―政府は最賃改定に慎重
国立統計経済研究所(INSEE)が先ごろ発表した「家計の所得と資産に関する年次調査」によると、経済が成長し、150万人の雇用創出があったにも関わらず、貧困率は1996年1月から2000年5月にかけて横這いだった。2000年も1996年と同様、7.3%の家計が貧困線(注1)以下の生活を送っており、合計420万人が貧しさに苦しんでいるという。25歳未満の若者たちを対象にした場合は、この比率がさらに高くなる。
それでは、首相がいつも主張しているように、雇用は所得再分配の中心的な手段ではないのだろうか。雇用は欠かすことのできないその条件であるとしても、必ずしも十分な条件でないことは明らかだ。すべては創出された雇用の内容とその賃金に依存する。
ジョスパン政権が誕生して以降の展開はまさに驚きであった。フランスは2000年に雇用創出の記録をつくったが、かつてこれほどの雇用が創出された時期はなかった。失業者は3年半で100万人以上も減少した。しかし、創出された仕事の多くが低賃金職だった。営利部門で創出された雇用のほとんどすべては最低賃金(SMIC)の1.3倍(7400フラン)(1フラン=15.8円)を下回る賃金しか受け取ることができなかった。そして、SMICの1.3倍弱のを賃金がフランス全体では40%を占めている。
このために、政府は雇用手当(注2)を通して労働所得を増加させるために400億フランの支出を決定した。そして、7月の年次改定でSMICをどれだけ引き上げるのかについても検討されている。週35時間制が導入されて39時間分の賃金が支払われているため、SMIC改定の基準となる労働者の時間賃金率は大幅に上昇しており、機械的に算定された場合、7月1日の引き上げ率は最低でも3%になる。1997年以降、SMICはすでに10.8%、購買力は7%上昇しており、他の労働者のそれを上回っている。
その上、財務省によると、非熟練労働者の雇用は労働コストと強い関係があり、その上昇は雇用に悪影響があるという。また、週35時間制によって導入された二重SMICシステムが廃止される2005年まで、月額SMICも自動的に引き上げられる。こうした事情を踏まえ、ジョスパン首相は今年の年次SMIC改定にまだ慎重な姿勢を崩していない。
注
- フランス人の生活水準の中位数の2分の1。1996年において、単身者の場合は月額3500フランスカップルの場合は5250フラン。14歳未満の子供がいる場合は子供1人あたり+1050フラン。2000年においては、単身者が月額3800フラン。(本文へ)
- 雇用手当は、低所得者家計を援助するとともに、雇用を促進するという趣旨から、家族の少なくとも1人が働いていて、所得が一定の限度内にある家計に支給される。これまでは住宅手当名目などで低所得者家計を援助してたものを改め、雇用と関連づけて支給することになったもの。(本文へ)
2001年6月 フランスの記事一覧
- 楽観論目立つ今後の雇用見通し
- 創出された雇用の多くは低賃金職 ―政府は最賃改定に慎重
- 「不可避的な人口の老齢化」を予測 ―INSEEの予測
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