10年間でストライキ4分の1に減、個別苦情申立ては4倍に急増

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

1998年に発生したストライキ件数は166件で、1891年に記録を取り始めて以来最低となった。労働損失日数も25万8000日と少なく、従業員1人当りでは5分17秒。これは1人の従業員が1年間にストライキを理由に欠勤した時間を表しており、病気その他の理由による欠勤日数を大きく下回る。こうした背景には、雇用関連法の影響、組合員数の低下、労使関係の改善どがある。

ストライキなど、職場の不満を表明する「伝統的」手段の役割が低下してきたことから、職場関係が改善しているかに見えるが、実は伝統的手段に代わる新たな手段が行使されているのである。離職率が上昇すると同時に在職期間も短くなっており、またアブセンティーイズム(長期欠勤) もわずかながら増加傾向にある。さらに、1980年代以降、労働者個人が助言斡旋仲裁局(ACAS)や雇用審判所に申立てをおこなうケースが劇的に増加しており(表参照)、職場の不満を表明する手段として個別抗議が集団争議にとって代わったと見ることができる。

この20年間に英国で集団争議が減少している主な原因としては、以下の3つが指摘できる。

第一に、ストライキを行うことで得られる利益よりも、それによって負うコストやリスクが相対的に増大していること。1980年以降の実質賃金の伸びは、それまでの上昇トレンドを上回っている。実質収入が年2%で伸びているときに、ストライキを行ってあえて賃金カットの危険を冒すことがあるだろうか。

第二に、組合員の減少と雇用関係法の新規制によって、ストライキを組織する経費が増大したこと。

第三に、ストライキの見返りが小さいこと。英国産業連盟(CBI)の資料によれば、1989年以降、賃上げ要求の一手段としてストライキを行った場合の実質賃金上昇率は、無視しうる程度になっている。

こうした理由から集団争議は減少しているものの、離職、欠勤、個別申立てなどの個別抗議が増大している以上、職場関係の改善は限定的なものと見なければならない。個別抗議の増大に関しては、上記3つの理由で集団争議に訴えづらくなったことに加え、組合員数の減少とそれによる未組織職場の増大がその傾向を強めているものと思われる。

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