近年のIT政策

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年5月

Eコマースの普及:会社登記がオンライン化

商業登記局の発表によると、2001年末までに会社登記の諸手続きがオンラインで可能になる。オンライン化に必要なハードウエア、及びタイ人スタッフの訓練等は、ニュージーランド政府からの協力を受けた。

このオンライン化によって、毎日何百社にも上る登録に対応するための人員不足が解消されそうである。ちなみに2000年の新規会社登記数は、1999年の2万4677社から増加し2万9148社となっている。

現在登記の際には、会計事務所及び法律事務所の手数料1000~2000バーツ、及び資本金に応じた登記料を支払う必要がある。また、登録の手続きにも7~10日、場合によってはそれ以上かかることもある。

しかし会計士など有識者から、オンラインの登記に懐疑的な声も聞かれる。何故なら新規の小規模な企業にとってはコスト削減に役立つかもしれないが、大企業になると手続きが膨大で煩雑なため、仲介業者に依頼した方が簡便であろうと考えられるからである。また、署名やいくつかの書類の複写など、完全なオンライン登記は不可能ではという疑問点も挙げられている。また、オンライン化にはコンピューター・リンクの構築が不可欠であるが、現在までのところ20県しかリンクされておらず(タイは全国76県)、全国で利用可能になるためにはまだ時間がかかるであろう。地方間のデジタル・ディバイド(情報格差)がここでも見られるようである。

地方におけるITインフラ整備

一方、地方農村のITインフラの状況に関しては、チュアン前首相のもとで決定していた15億バーツ規模の「農村インターネット・プロジェクト」は、新組織のもとで修正、規模縮小して進められることとが2001年2月20日の政府発表により明らかになった。

タクシン新内閣は、このプロジェクトの管理を内務省から首相官邸に移行、新しく「国家情報局」を設立。タイ国内の技術機関とベンチャー企業を監視し、得られた情報を直接タクシン首相に報告するという役割を担う。

もともとこのプロジェクトは輸送・通信省の管轄で、当時のサティップ大臣は、コンピューターの購入とそれを操作する7200人の従業員雇用のために、世界銀行から15億バーツの借り入れを計画していた。その後、監督権は内務省の管轄下の各地方行政局に委譲され、今回に至っている。国家情報局の管轄下には、Nectec(国家電子・コンピューター技術センター)やソフトウエアパーク・タイランド、国家統計局、そして今回の農村インターネット・プロジェクトがある。

このプロジェクトが規模縮小する背景には、厳しい予算制約と段階的なITインフラの開発という2つの要因があるため、当初予定していた15億バーツよりもかなり少ない予算規模のプロジェクトになりそうである。サティプ前大臣は、「心配されているのは資金面だけではない。IT化とは、多くの人々にインターネットや情報に慣れてもらうことを意味し、我々はそこから始めなければならない。なぜならIT化のためのインフラには膨大な投資が必要であるが、そのような技術は年を経るごとに廉価になっていくものであるからである。(人々への教育や意識化を先に行い)、インフラ投資は後で行うべきだ」とコメントしている。

タクシン新内閣は、4年以内に7000の村に無料のインターネットサービスを普及させるとしているが、農民の負債返済繰り延べ問題や、一村一品運動など、農村開発には困難な課題が山積みされている。

学校教育におけるコンピューター教育

教育面におけるIT化はどの程度進んでいるのか。2001年3月現在、政府はIT化政策の一環として、2年間で全国約300の国立の中・高等学校にコンピューターを導入することを決定している。教育省によると、今後はコンピューターとインターネットの使い方を指導し、現在の指導時間をさらに伸ばし、生徒だけでなく教師にも同等のアクセスの権利を提供していく予定である。同省の調査では、タイ全国に2600ある国立中・高等学校のうち約300校は、資金の不足や両親や民間からの寄付収集能力の不足により、コンピューターを設置できていない。その結果、現在のコンピューター1台当たりの生徒数は、40人という低い数字になっており、政府はこれを20人に1台にまで引き上げることを目標にしている。

今まで生徒がコンピューターを利用することができなかった学校は、4月よりマタヨム6年生(高校3年生)の生徒に対して無料で訓練を行う。そして2002年にもマタヨム3年生(中学3年生)に拡大する予定。同時に教師に対しても、特別な英語とコンピューターの指導が行われる。

現在、すべての中・等学校の教師の25%が「優れた」、50%が「平均的」、残りの25%が「改善が必要」な英語の語学水準であるとみられている。そのため、2001年は教師に対して、平均水準の英語力をつけるための英会話と英作文のための特別な指導が提供される予定となっている。一方、コンピューター・スキルに関しては、全教師の約6~7割は生徒に教えるためのスキルは持ち合わせていると推測されている。 タイでは、6年の義務教育である初等学校(プラトーム)、6年の中・高等学校(マタヨム1~3が中等学校、マタヨム4~6が高等学校)を経て、大学(マーハウィタヤーイ)に進学できる。

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