最低賃金、4ポンドへ大幅引き上げ
政府は2001年2月に入り、職業訓練に関する新施策を矢継ぎ早に打ち出している。とくに職業訓練活動が不活発な中小企業をてこ入れしたい意向である。
新しい諸施策のなかで最も注目されているのが、「資金代替(replacement funding)」制度と いわれているもので、従業員に週1回仕事を休ませて基礎的な技能訓練を受けさせた場合、その使用者は政府から支払いを受けられる。英国商工会議所は、これまで使用者にとって従業員に職場外 訓練を受講させるのを妨げてきた主要な障害を取り除くのに資するとしてこれを評価している。
第2の施策は、職場における組合の訓練担当に、職業訓練で中心的な役割を担わせるため、これを法的に支援する、というものである。具体的には、組合の訓練担当が職務遂行するためにタイム・オフ(注1)をとることを認め、また使用者から不当に処罰されることから保護する。
組合の訓練担当の役割は、 (1)労働者に対して必要な訓練内容について助言する、(2)労働者の訓練機会についての意識を高める、(3)会社資源を職業訓練のために活用するよう使用者と交渉する――などで、その活動は職業訓練を活性化するうえで有効であることが認められている。今回、こ れに法的支援を与えることで、使用者が組合訓練担当を重視し、職業訓練に関して進んで交渉するようになることが期待されている。
第3の施策は、「大学イノベーションセンター」を設置して、これを諸地域の起業ハブ(enterprise hubs)にする、というものである。すでに5カ所が決定しており、政府はこれに総額3000万ポンドをあてる。
そのうち2つは、シェフィールド、ウォリックの両大学周辺に拠点をおく。またダラムとニューキャッスルに拠点をおくもう一つのセンターは、BAEシステム社とプロクター・アンド・ギャンブル社と提携し、マイクロシステムやナノテクノロジーの分野での事業展開を促進する。
マンチェスター大学を拠点とするセンターは、有機化学を戦略分野とし、アストラ・ゼネカ社、アベキア社、UCBフィルム社などと提携する。通信、コンピューターの分野については、ブリストル大学に拠点をおくセンターがヒューレット・パッカードやSTマイクロエレクトロニクスなどと 提携して事業展開を促進する。
もっとも、以上のような新施策を政府が次々に打ち出したことに関して、アナリストの多くは決して素早い対応だとは見ていない。最近発表されている各種の調査報告書がそろって技能労働者の不足を指摘しているためである。たとえば、2月に公表されたリード・エンプロイメント・サービ シズの調査によれば、サービス部門の技能不足は記録的な水準に達しており、76%の企業が人材難を訴えている。
注
- 有給または無給で労働者が労働義務を免除される時間。(本文へ)
2001年5月 イギリスの記事一覧
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