雇用審判所への申立件数が急増

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年1月

助言斡旋仲裁局(ACAS)が2000年10月に公表した年次レポートによると、2000年度に労働者個人による個別的労働関係申立件数が前年度比30%増加し、16万4000件を記録した。英国産業連盟(CBI)はこの増加を「驚異的」と評し、雇用審判所の抜本的改革を求めていく方針を打ち出している。

申立内容では、不公正解雇に関するものが最も多く、過去1年間に4万2826件から5万2791件へ23%増加した。このうち48%が解決を見たものの、再雇用につながったケースは3%にすぎない。賃金に関する申立件数は2万6837件から3万6837件へ37%増加した。また、人種差別に関しては、20%増大し、3922件となった。

こうした結果を受け、CBIのジョン・クリドランド副理事長は、雇用審判所での審問は、他に争議解決の方法が存在しない場合だけに限定すべきであり、今後審判所は、勝ち目のない申立を自粛させる必要性に迫られるだろうとの見方を示した。また、問題解決の一案として、ACASによる事前審問や個別仲裁を積極的に活用することを指摘している。

申立が増加している要因としては、(1)組合が、集団的労働関係のみを支援してきた従来の立場を離れ、現在では加入者個人の権利を保護することに努力を傾けるようになったこと、(2)使用者が組合を承認しているか否かに関わりなく、申立人は雇用審判所において組合によって代表される資格を有するようになったこと、(3)不公正解雇に関わる新規則が1999年6月1日に施行され、労働者が不公正解雇で雇用審判所に不服を申し立てる権利を得るための勤続年数要件が、2年から1年に緩和されたこと――などが考えられる。

政府は近く、雇用審判所への申立に代わる新しい自主的仲裁制度(ACASの所轄)を発表するものと見られている。

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