インターネット企業の労務管理に関する訴え増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年1月

インターネット関連企業が、労働法違反で従業員から訴えられることが多くなっている。アメリカ・オンライン社に対し、元従業員が400万ドル(1ドル=112.5円)の賠償金を求めて訴訟を起こしたケースでは、女性従業員のジャスミン・ハッキ氏が、母親の末期癌治療に対応するための休日を希望し、労働時間について融通をきかせてもらうように上司に要望していた。しかし、休日は不承不承与えられ、母親が昏睡状態に陥った1週間後に遠隔地の会議に出席するように指示され、母親が亡くなって1カ月もたたない1999年1月に、理由なしに解雇されたという。1999年11月12日の証言でアメリカ・オンライン社の人事担当重役のダニエル・ギリック氏は、同社が急成長したため、労働法規通りの制度を整備しきれていないと語った。また、ハッキ氏の元上司の女性は証言で、家族医療休暇法に関する社内規定を読んだことはないと語っている。ハッキ氏の訴訟では、家族医療休暇法によって12週間までの休暇を取ることができることを同社がハッキ氏に知らせていなかった点が主要な係争点になった。同法の一般的な解釈によると、部下が上司に対して同法が適用されるべきだと言わなくても、その必要を申し出れば、上司が同法について情報を与えるべきだとされている。ハッキ氏は、休暇などを要求した後で、居心地が悪くなるような対応を上司から受けたと主張したが、会社側はこれを否定した。ハッキ氏とアメリカ・オンライン社は、2000年夏に和解したが、その内容は外部に公表されていない。

ネット企業が人事に関して訴えられた他のケースには、時間外手当の未払い、年齢あるいは性別による差別などがある。多くの場合、早期に労使が個人的に和解に達しているため、労働法の専門家も、これらの訴訟が何件ぐらいあるのか把握しきれていない。しかし、雇用機会均等委員会(EEOC)は、いくつかのネット企業が、雇用に関する差別禁止法を軽視していたり、適切な差別防止措置を取っていないという情報を得ている。例えば、バージニア州のソフトウェア製造のマイクロ・ストラテジー社の元従業員は、同社が女性差別をしたと EEOCに訴えた。これに対し、会社側は、この女性が企業秘密を盗用したために解雇したとし、EEOCが調査中である。

いくつかのネット企業の不振が伝えられるようになって、悪い労働条件に対する従業員の不満をよく聞くようになった。この背景には、ネット企業のいくつかが伝統を無視し、残業は当たり前で、仲間同士が仕事を楽しみ、将来の巨万の富を目指して働いているという事情がある。ストック・オプションの価値がなくなった今、従業員が劣悪な労働条件に耐える意味もなくなりつつある。

2000年7月にプライスライン・コム社を訴えた元従業員エリック・ディーン氏は、同社が約25万7000ドルの時間外手当を支払っていないと主張している。公正労働基準法は、非管理職の従業員に、週40時間以上のすべての労働時間に対し、通常の時間給の5割増の賃金支払いを定めている。同社は、ディーン氏が管理的職種にあったと主張している。これに対しディーン氏は、部下が1人もいなかったので管理的職種ではないとして係争中である。

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