高裁判決で使用者の財政難による協約変更が可能に
使用者の財政難を理由とする労働協約変更の是非をめぐる控訴審で、高等裁判所は9月7日、使用者の「財政難(financial hardship)は労働協約の条項を変更するための根拠になりうる」との判決を下した。
高等裁判所に控訴していたのは、セラミック・タイル製造業のプレステッジ・セラミック社。アジア経済危機によって業績が急激に悪化したため、「1967年労使関係法」第56条2項の「特別の事情」を根拠に、労働協約で定めた賃上げ・賞与支給の一時停止を労使裁判所に求めた。しかし、同裁判所は、財政難を「特別な事情」に含めれば、同じ理由で労働協約の変更を求める申請が殺到するとの理由で、財政難は労働協約を変更するための「特別な事情」を構成しえないと判断、同社の関係組合、非金属鉱物製品製造従業員組合に有利な裁定を下したため、同社は高等裁判所に控訴していた。
ところが、高等裁判所のファイザ判事は、労使裁判所が、財政難は労働協約を変更する根拠になりえないとする1967年労使関係法の硬直的な規則に固執したのは適当でないとして、労使裁判所の裁定をくつがえし、プレステッジ・セラミック社の訴えを認めた。
43頁に及ぶ判決文の中で同判事は、労使裁判所は同社の財政難の原因を究明し、そのうえで、それが「特別な事情」を構成するかを検討すべきであったにもかかわらず、最終的な結果が財政難であれば、それがいかなる原因から生じようと「特別な事情」を構成しないという誤った結論に至ったと指摘。同社の準備金がわずか1年間で1800万リンギから1万リンギへ、また限界利益(売上高―変動費=固定費+利益)が120万リンギからマイナス1600万リンギへ、それぞれ激減した点を「特別な事情」に該当するとの判断を示した。
労使裁判所からの控訴については、高等裁判所の判決が最終的であるため、本裁判はこれで確定したことになる。と同時に、「1967年労使関係法」に新たな解釈が加えられたことで、今後の労使問題に影響を及ぼすものと見られている。
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