社会保障評議会、ジョブ・ネットワークの改革を提案

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

社会福祉団体を統轄する全国組織であるオーストラリア社会保障評議会(Australian Council of Social Service-ACOSS)は、政府が行っている職業紹介サービスの民間委託政策に関する提言をまとめ、それを公表した。現自由・国民党連立政権は、それまで公共職業紹介所が行っていた職業紹介業務を民間に委託した。そのため現在では委託を受けた民間職業紹介機関等からなるジョブ・ネットワークを通じ、職業紹介サービスが提供されるようになっている。

このジョブ・ネットワークを管轄する雇用職場関係小規模事業省(DEWRSB)は、同ネットワークの成果評価を行っており、その第1弾がすでに公表されている。ACOSSは、このDEWRSBの成果評価報告書を詳細に分析し、それに基づき今回の提言をまとめた。

ACOSSの分析と提言

ACOSSは、ジョブ・ネットワーク参加機関が失業者等に提供する各種のサービスのうち、長期失業者を主な対象とする「個別支援サービス」の不備を指摘している。具体的には ACOSSは、調査対象期間中に、長期失業者となったあるいはすでに長期失業者であった者のうち、実際に「個別支援サービス」を受けることができたのは半数に満たないと概算している。また、個別支援サービスを受けた者のうち、37%は失業期間が12カ月未満であった(通常、長期失業者とは失業期間が12カ月を超える者を指す)。個別支援サービスを受けた長期失業者で、サービスを終了してから3カ月後に職に就いていた者は、34%にすぎなかった。

長期失業者に関する成果が芳しくない理由として、ACOSSは、サービス提供機関が相対的に低コストのサービスしか提供しないことにあると分析している。個別支援サービスを受けた者のうち、コストのかかる職業訓練を受けた者は19%にすぎなかった。

また、サービスの提供機関の増加により、失業者は、求職活動のためにそれだけ多くの機関に接触しなければならなくなった。それに要する移動費用の保障がないため、失業者の負担が高まる傾向にある。

ACOSSは、政府がサービス提供機関に支払う報酬体系にそもそもの問題点があると考えている。つまり、連邦政府の予算削減措置により、質の高い個別支援サービスを提供するのに十分な報酬体系となっていないのである。

そのうえで、ACOSSは、長期失業者に対する支援強化の観点から次のような提言を行っている。

  • 失業期間が12カ月を超えるすべての失業手当受給者等には、自動的に個別支援サービスが適用されるべきである。
  • 個別支援サービスを受ける者は、まず最初の3カ月間は、サービス提供機関による面接や求職技術訓練等を受ける。3カ月経っても就職できない長期失業者に対しては、より実質的な就職支援サービスが提供されることになる。そのためにはこれまで以上の予算が必要となる。
  • 基本的な職業紹介サービスは、すべての失業者とオーストラリア在住者に無料で提供されるべきである。移動費用に対する援助も検討されなければならない。
  • 職業紹介サービスを監督し、必要な情報を提供する独立した公的機関が設置されるべきである。

連邦政府自身も、すでにいくつかの変更を実施しているが、ACOSSは、より根本的な問題解決が求められているとして今回の提言を行った。

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