ムンバイ港、特別自主退職制度を発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

ムンバイ港湾トラストは、全労働者の約半分1万4000人を余剰人員と見なし、新たに特別自主退職制度(特別VRS)を陸上運輸大臣に申請した。特別VRSは、定年年齢以前に自主退職した労働者に毎年2カ月分の給与支払いと5年毎に奨励金を支払うというもの。これは、毎年1.5カ月分の給与を支給するという1992年のVRSを改善したものである。アラン・マルゴ・ムンバイ港湾トラスト会長は、すべての余剰労働者がこの制度を利用した場合70億ルピー(1ルピー=2.36円)の経費が必要になると見積もっている。

ムンバイ港にとっては、資金面は今のところ重要な問題ではない。黒字額は減少しているが、500億ルピーを超える資金を保有している。問題は、1万4000人の労働者のうちどのくらいが退職するかで、僅か1500人が以前のVRSを選択したに過ぎない。まず、労働組合の協力が必要になるが、労組は、港湾労働者の合理化に反対してきたので支持しそうになく、過去の経緯を考慮すると極めて困難なものとなると予想される。

余剰人員は、インドの主な港湾でここ数年経営の負担となっており、ムンバイ港ではこの問題はほとんど改善していない。定年が60歳から58歳に変更されたが、それでも余剰人員問題が依然として存在し、人件費は港湾運営経費の70%を占める。

加えて、ムンバイ港は、近年港湾間の競争激化により危機感を抱くようになった。ムンバイ港の1999年度のコンテナ取扱量は15%減少し、僅かに4.9億ルピーの黒字で、状況は今年も改善されそうにない。もし賃金改定の施行が延期されなかったら、この黒字額でさえ不可能であった。

マルゴ会長は、ムンバイ港は過剰人員を抱えるうえに設備も老朽化しているため、生産性は他港と比較して低いが、ムンバイ港が設備を更新する十分な資本を持っていたにもかかわらず、政府が古い機械の原価償却年限が終了するまで最新の設備の購入を許可しないことを批判した。ムンバイ港は、水位が浅いという固有の弱点を持つ。港湾トラストは、長期計画を立てられず、無気力な政府当局と好戦的な労組が存在する。これらすべてにより、ムンバイ港は最も経費のかかる港湾となってしまった。例えば、ターミナル取扱料金(THC)は、主要港の中で最も高いが、港湾トラストが、THCの経費構成要素をほとんど管理できない。港湾トラストは、主要港の税関に働きかけ、これらの料金を公示し、これにより労組を説得したいと目論んでいる。

このため、ムンバイ港は完全な自主権をもつ経営が必要となってきた。港湾トラストは、インフラを整備し、他の港湾の荷物取扱基準と競争しなければならない。このため、今後港湾トラストは、VRSではなく、強制的退職制度を検討する必要がある。

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