若者の組合離れ、ブルーカラー労組でより深刻

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

労働生活研究所のAnders Kjellberg氏によると、1993年以降、16~24歳の若年層の組合加入率は62%から47%へ低下した。労働生活研究所が出したKjellbergリポートは、1999年9月に開催されたスウェーデン労働組合総同盟(LO)代表者大会をきっかけにまとめられたものである。労働組合組織に詳しいスウェーデンの著明な研究者である同氏は、この加入率低下を組合組織の不適切な戦略のせいであると言う。地方レベルでも中央レベルでも中高年男性が大半を占める労働組合指導者を見て、若年労働者が共感をおぼえることは少ない。また同氏は、多くの職場の労働組合(クラブ)が、臨時雇いの若年労働者が組合に加入することを拒否している事例も挙げている。

Kjellberg氏は、多数の臨時労働者から成り立つ「新しい経済」に組合役員が当惑していることも認めている。現在、労働市場に参入する16~24歳の年齢層の2人に1人は臨時雇いの仕事に就く。組合役員はこれまで、新規常用労働者が労働組合に加入するのは当然のこととしてとらえていた。しかし、他の職場にすぐに移るであろう臨時雇いの若年労働者が自然に労働組合に加入するとは期待できない。こうした若年労働者は、階級意識やイデオロギーのために労働組合に加入するというよりは、むしろ純粋に生活手段のために労働組合に加入する傾向が強い。だが生活手段のために労働組合を選んだ若者にとっては、失業保険基金に加入することでその目的は果たされている。失業保険基金は組合が運営しているが、労働組合員であるなしにかかわらず加入できるからである。

最も勢力伸長の著しい労働組合組織である大卒専門技術労働者労組連合(SACO)は、将来組合員になりそうな学生が大学に入学した時点で会い、きわめて安い組合費の学生組合員資格を与えている。40万人の組合員を擁するSACOの10%以上が学生組合員であり、こうして若いうちから専門職としての自己認識(アイデンティティ)を持っている。職員労働組合連合(TCO)傘下のホワイトカラー労働組合のうち最大規模の2組合、事務技術系職員労働組合(SIF)と商業俸給労働者組合(HTF)も、そうした青年職業組織を結成している。同様の試みはフィンランドにも見られるが、惜しむらくは職種ごとの特定の利益に関心が強いために、労働運動一般に大きな影響を与えているとは言い難い。一方、ブルーカラー労働組合は、新規高卒者や労働市場の底辺で短期の仕事につこうとしている多数の高校中退者に職業上の自己認識を植えつけることは困難としている。

若年労働者の労働組合加入率が低下しても、労働者全体としての労働組合加入率は低下することなく80%以上を維持している。16~24歳の年齢層の労働力に占める割合が6人に1人であった90年代初期に比べて、現在は10人に1人と減少しており、労働力人口の中での若者の比率が低下しているためである。

Kjellberg氏はまた、移民の組合加入率についても調査した。それによると、移民の組合加入率は高く、時にはスウェーデン生まれの労働者よりも高いことさえある。しかしその中でも不利益を蒙っているグループがある。それは政治亡命者である。彼らは人種的差別を受ける。そのうえ生産・サービス部門では、旧来のテーラー・システムの頃に比べて、現在でははるかに高度の言語能力が要求されるからである。

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