(香港特別行政区)失業率2期連続で5.7%

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

政府が2000年3月20日に発表した統計によると、1999年12月 - 2000年2月期の失業率は5.7%で、1999年11月 - 2000年1月期に5.7%となって12カ月ぶりに6%を割って以来、2期連続で6%を割ることになった。失業者数は20万1000人で、前期比で3000人減少、不完全失業率は2.6%で、前期比で0.1ポイント上昇だった。失業率の低下は主に建設、不動産、レストラン・ホテル部門で見られ、その度合が、装飾・整備、運輸、商取引部門での失業率の上昇を上回ることになった。

タン・クォン・ユウ政府エコノミストは、現時点では労働市場の改善はまだ景気の回復に追いついていないが、今年度はひきつづき景気は好転するので、失業率も低下していくと述べている。また、香港科学技術大学の経済学者フランシス・ルイ教授は、香港では失業は構造的になってきており、景気の回復と失業の好転には通常時間的なギャップが伴うが、特に情報技術部門がブームを迎えている現在はそうで、失業者は情報技術の発展に追いついていかなければならないが、これには時間がかかるとしている。また同教授は、2000年末までに失業率は4%から4.5%の間で安定するだろうと予測している。

このような労働市場状況の中で3月2日、香港社会保障協会が政府の国勢調査統計の検討結果を公表し、過去10年間に所得格差が拡大したことを明らかにした。

同協会によると、低所得層に分類される30%の世帯で、過去10年間に実質所得が減少した。この中でも、最低所得層に分類される10%の世帯で実質所得の減少が著しく、1990年にこの層の平均所得は2400ドルだったが、1999年に3000ドルになったにすぎない。これはインフレを考慮すると、1990年を標準として1724ドルに相当し、実質所得は28.1%の減少になる。また、労働者の平均賃金の半分以下の貧困者層は、1991年から3.9ポイント増加して、労働力全体の11.1%になり、36万人に達した。

これに対して最富裕層に分類される10%の世帯では、同様の標準で実質賃金は1990年の3万1400ドルから1999年の4万248ドルに上昇した。

また、過去3年間においては、月収6000ドル以下の労働者は30%増加して、52万7000人に達し、他方月収3万ドル以上の者は15%増加した。

同協会の副会長ヘンリー・モク博士は、香港の大多数の市民は過去10年間の経済成長の恩恵には浴しておらず、しかも過去2年の景気後退の時期には、低中所得層が真っ先に失業と賃金カットの犠牲になったと述べている。同協会は特別行政区政府に対して、環境保護、廃棄物再処理、社会福祉等の分野で新たな雇用を創出し、最低賃金制を導入するなどして、長期的な展望をもって、所得格差の是正に積極的な役割を果たすように要請している。

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