組合員数、全米で2年連続増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

国内組合員数(労組によって代表されている労働者)は1998年に引き続き1999年にも僅かに増加した。労働統計局によると1999年の組合員数は1648万人で、1998年の1621万人を26万5000人上回った。しかし総雇用者数に占める総組合員数の割合は13.9%で1998年から横這いに留まった。なお政府部門における労働者の37.3%が組織化されており、民間部門の同9.4%(昨年と同じ)を大きく上回っている。労組指導者は、労働組合の長期低落傾向に歯止めをかけたと、この結果を分析している。ジョン・スウイーニー・アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)会長は、1999年の2700万人の新規雇用が主に非組織化企業で生じたにも拘わらず組合員数が増加したことに言及して「今日のデータは、我々が戦いに勝利を収めつつあることを正式に示すものだ。」と述べた。

この成果に大きく貢献したのはいくつかの大勝利である。例えばカリフォルニアでは、労組に理解がある民主党のグレイ・デービス知事の助けを得て、労働組合は7万5000人の在宅看護者の組織化に成功した。カリフォルニア大学バークレー校で労働問題を専門とするハーレー・シャイケン教授は、労働組合が(グローバリゼーションや製造業での雇用減少など)各種の大きな障害に直面しているにも拘わらず、労組が組織化に成功しつつあることを評価し、今回の組合員数増は将来に向けた重要な一歩であるとした。

近年、大規模労組の幾つかは新たな組織化活動に多額の資金を投入してきた。国際サービス労組(SEIU)は1999年に約4000万ドルをかけて新組合員勧誘に臨んだが、この金額は同労組全国組織の予算の約半分および同地方組織予算の20%を占めるものだった。同様に全米州・郡・市労働組合(AFSCME)、全米自動車労組(UAW)、全米鉄鋼労組(USWA)も積極的な活動を展開開した。AFL-CIOはこれらの活動が好結果につながったとしている。

労組は今後、先端技術諸産業や急速に伸びているサービス業での組織化という大きな課題に直面することになろう。しかし最近の医療部門における組織化や、IBMおよびマイクロソフト従業員との非公式な形の関係の確立などに見られるように労組も手をこまねいているわけではない。グローバル化する経済の中で労組が果たしうる役割を模索して、以下のように組織化以外の努力も続けられている。

労組と携帯電話買収合戦

英携帯電話大手ボーダフォン・エアタッチが1999年12月24日から開始した独通信・エンジニアリング大手マンネスマンへの株式交換による敵対的買収は結局、両社の合併合意で終結した。携帯電話を通じてインターネットなどのサービスを利用する消費者が増えつつあり、世界中で使うことができる次世代携帯電話の登場で世界的な顧客獲得機会が生まれることから、携帯電話市場は通信再編の台風の目になっている。ボーダフォンとマンネスマンとの合併で株式時価総額で世界最大の通信企業が生まれることになった。

この買収合戦はまた、アングロサクソン型経営による欧州大陸型経営への挑戦とも受け取られた。2年半前に創設されたAFL-CIO の投資部門のウィリアム・パターソン部長は、「アングロサクソン型経営が長期的な企業の市場価値を最大化する唯一の経営ではなく、ドイツ流の労使の合意形成に基づく経営を見過ごしてはならない。」と語る。

同部長は1999年11月後半、マンネスマン株を保有する米国年金基金マネージャー40人に手紙を送り、マンネスマン株主にとってボーダフォンによる買収は望ましいものではないと、買収に応じないよう依頼した。これに先立ち、同11月にジョン・スウィーニーAFL-CIO 会長は15カ国の労組指導者と会合、組合員の保険料を運用している年金基金を通して、どのようにマンネスマン買収に抵抗できるか話し合った。米国労組加盟労働者の年金基金はマンネスマン社発行株式の1%あるいは2%を保有している。しかし、これらの年金基金は他の投資者からの資金などを合わせると、潜在的にマンネスマン株の約13%を動かす力を持っている。労組による努力が買収合戦の動向にどのような影響を与えたか明らかにされていないが、今回の試みは企業買収に対して AFL-CIO の投資部門が手がけた初の国際的抵抗となった。

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