ベルマ委員会3銀行のリストラ案を発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

ベルマ委員会は、1999年10月4日、政府系銀行の中でも特に経営が悪化しているインデアン、ユナイテッドコマーシャル、ユナイテェッドインドの3銀行に対する再建計画を発表した。内容は予想以上に厳しく、550億ルピー(1ルピー=2.41円)の再建支援と見かえりに、全労働者の25%の自主退職計画(VRS)と5年間の賃上げ凍結を実施するよう3銀行に要請している。委員会は、更に6つの政府系の銀行(アラハバド銀行、セントラルインド銀行、インドオバーシイ銀行、パンジャブアンドシンド銀行、ユニオンインド銀行、ビジャヤ銀行)が、今後一層経営悪化に陥ると警告をしている。

ベルマ委員会は、1999年2月に準備銀行(RBI)によって設立され、進行中の銀行改革の一環として政府系銀行の再建政策を勧告する。委員長の M. S. ベルマ氏はインド最大の政府系金融機関、インドスティト銀行(SBI)の元頭取である。この委員会は、「経営が悪化している政府系金融機関の再建作業グループ」として知られ、銀行改革調査のために韓国、タイを訪問している。

委員会は、準備銀行に再建計画を提出し、3銀行の自主退職計画(VRS)に必要な約120億ルピーの費用は、政府資金により弁済すると規定している。更に、委員会は次ぎのように要求している。若くて、大胆で非常時に対応できる頭取が十分な報酬で指名され、ダイナミックな改革を実施する。3銀行の子会社と海外業務を売却または閉鎖する。

問題の核心である不良債権については、政府が出資する100億ルピーの資産再建資金(ARF)の設定により、この問題を解決するよう規定している。再建計画の主な内容は以下の通り。ARF は、不良債権を買い上げ、民間部門で専門に資産を運用する会社に引き渡す。政府が、追加の300億ルピーを財務内容を改善するために、30~40億ルピーを技術改良のために注入する。委員会は、厳しい方法による経営再建は、これらの銀行を閉鎖しないための唯一の方法であると述べ、政府がその勧告の採用を反対しないよう警告し、中途半端な処置や漸進政策をする余地はないとしている。

委員会は財務改革のような手緩い手法を拒否し、経営面が改革されない限り長期的存続は保証されず、付随的な問題に繋がるだけで、将来更なる犠牲を伴う大きな改革を余儀なくさせると警告している。

更に、委員会は、各銀行が情報技術を導入し、全国的銀行を求める代わりにそれぞれの産業において地位を確立する経営改革を求めている。

委員会は、ニューインド銀行とパンジャブナショナル銀行の合併失敗を例に挙げ合併を拒否している。また、これまで無視されてきた民営化は、経営責任を強化するものとして望ましいとしている。

銀行従業員労働組合は、ベルマ委員会の銀行改革案に衝撃を受け、即座に、全ての銀行労組が団結して反対し、ストを実施する可能性を発表した。大規模なデモ行進が1999年10月5日、カルカッタとチェンナイで行われた。全インド銀行従業員労働組合(AIBEA:銀行業界で最大の行員組合)チャクラボーチ書記長は、煽動的な行動やストの可能性を表明し、勧告は一面的で改革の全ての重荷が労働者に課されていると批判した。

労働者のコミュニケは次ぎのように批判している。たとえ全労働者がVRSを受け入れ、今後10年間賃上げが無くても、巨大な不良債権が回復しない限りこれらの銀行の経営は回復できない。ベルマ委員会は銀行の貸借対照表に体裁のいい誤魔化しをし、政治機構の中で後援された大口の借入者の不良債権を明らかにしてない。

1999年10月5日、9つの銀行従業員労組から構成された合同会議が、この情況を検討するために開かれた。今後の行動に関する確固とした決定が、新政府の構成が決まった後に採用される見込みである。合同会議は、1999年10月12日~14日に再度開催された。

また、インド銀行協会(IBA)は、係争中の賃金改定を決定するために、労組と管理職組合とそれぞれ会談する予定である。但し、労組は、IBA は賃金交渉を解決するために条件付でベルマ委員会の報告に賛同するかもしれないと見ている。

全インド銀行従業員連合(INBOC)のネル書記長は、3行の賃金カット等を提案している委員会報告は、銀行と政府間の協定による暴力的な行為であると述べた。また、労組は、契約不履行者に罰則を適用するという「本当の論点」を婉曲に表現する中に、強い利害関係があると強調した。保険のような他の金融サービスの労組は、銀行労組を支持している。

全インド管理職員労働組合も、ベルマ委員会の勧告は銀行業界に産業的不安を発生させたと非難し、さらにラジュ同労組委員長は3行の賃金凍結の提案は、一連の騒乱を引き起こしたと述べた。

管理職労組が発表した内容は以下の通り。銀行業界は、ベルマ委員会が他行と比較し損失の大きい3行の経営を強化する積極的で具体的な処置をとること、不良債権と取り組み、政府の法制改革を推進する厳しい方法を発表することを期待していたが、慢性的な不良債権を資産再建基金という名目で新しく設立された組織に移すという計画は、身勝手で富裕な契約不履行者の責任を免除するものである。他の公共部門の銀行の過剰な支店を調整するための、再投資、支店の移動、新規認可への確たる提案にも失敗している。

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