(香港特別行政区)香港エアクラフト・エンジニアリング会社(Haeco)で賃金紛争

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

香港最大の航空機整備会社である香港エアクラフト・エンジニアリング会社(Haeco)で、残業手当のカットを巡り労使が対立し、ストライキ騒動にまで進展している。以下スト騒動に至る経緯を概観する。

Haecoはキャセイ・パシフィックとスクワイア・パシフィックに所有され、3300人の整備工を雇用し、キャセイの150フライトを含み、1日約300の航空機を整備しているが、会社側が収益低下による経費節減を理由に賃金カットを通告し、特に残業手当を最高16%までカットするとしたことで、従業員側との対立を生じた。

従業員側はHaeco従業員組合が中心となり、基本給が低額で収入の50~60%は残業手当であることを主張し、歯科診療手当や児童の教育手当のカットには応じることを示唆したが、残業手当の16%カットには応じられないとし、会社の経費の真の節減は管理部門のリストラと簡素化によるべきだとした。これに対して会社側は、選別された従業員代表である労働協議委員会との話し合いで残業手当のカットについて同意を得ており、1999年11月15日を期限として条件をのむか退職するかのいずれかを選ぶように通告し、組合とのいかなる交渉にもこれ以上応じないとした。

そこで従業員約1000人が、1999年10月15日からキャセイの150フライトを標的として遵法闘争に入り、会社側が交渉に応じない場合にはストライキに訴えるとの意思表示を行った。しかし、会社側は交渉に応じず、組合側が遵法闘争を他の航空会社の150機にも及ぼすとの対抗措置に言及したが、会社側は中国本土の関連会社から臨時の整備工を就労させ、フライトの混乱を防ぐ構えを見せた。

そこで10月19日、従業員約1000人の代表がストライキを行うことを決定し、職工会連盟(CTU)スポークスマン、タム・チュン・イン氏によっても確認され、会社側によると、10月20日に100人、10月21日に140人が職場放棄を行った(組合側によると10月21日は400人)。

このストライキ騒動に対して民間航空局も慎重に事態を見守り、航空の安全とスケジュールに影響しないように注意を払っていたが、労働局も10月21日、従業員組合と会談し、会社側に対しても交渉に応じるようにはたらきかけた。会社側は、大陸からの臨時の整備工が要求される国際的技術水準の認定を受けており、フライトスケジュールにも混乱を生じていないことを理由に、当初は交渉を拒否したが、22日に至って交渉に応じ、組合側も約600人の参加した3日間のストライキを一旦中止した。

だが、再開された交渉も10月30日に結局決裂した。チャン・ピン・キットHaeco専務取締役は、組合側の手当に関する要求は受け入れ難く、特に向こう4年間賃金ルールを変更しないという条件は、市場の変化を考慮すれば到底呑めないものだとした。これに対して組合側は、再びストライキに打って出る可能性を示唆しており、ストライキ騒動にまで発展した賃金紛争の今後の成り行きが注目される。

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