職場の半数で組合員ゼロ、TUCは組合員増加を予測

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

1998年に労働組合員がまったく存在しない職場の数が全体の約半数にのぼったことがブリテン・アット・ワークの調査でわかった。その一方で、9月に開催された労働組合会議(TUC)の年次大会でジョン・モンクス書記長は、組合承認の義務づけを含む雇用関係法の成立を背景に、組合員数は今後5年間で100万人増加すると予想している。

政府が後援した同調査は、職場3000カ所(従業員3万人)を対象としている。それによると、組合員が存在しない職場が半数にのぼったほか、従業員代表者の存在しない職場が3分の2、従業員の意見を代表する共同の ヲ議委員会をもたない職場が半数に達している。従業員の利害を代表する正式な制度をもたない職場は3分の1で、とくに建設、ホテル、ケータリング、事業サービスの分野で顕著であった。

結果に関し報告は、組合の役割は多くの職場で「周辺的」なものになっていると指摘しているが、他方で3分の2の従業員にとって組合との係わりは今なお職場生活の一部をなしており、これらの従業員をうまく説得できれば、組合への新規加入の可能性は十分に残されているとしている。

職場での組合の有無に関しては、民間部門で組合のない職場は3分の2、また使用者から承認された組合のある職場はわずか4分の1にとどまった。

1970年代に労働運動が頂点を迎えて以降、たしかに組合のプレゼンスは低迷の一途を辿ってきたが、労働党政権が成立して以降、わずかながら変化の兆しが見えはじめている。7月27日に成立し段階的施行が予定されている雇用関係法は、労働者の権利の拡大と組合規制の緩和をはかるもので、なかでも組合承認規定は組合員の増加に寄与するものと労働界では期待されている。団体交渉の相手として使用者に承認された組合であれば、従業員が加入する誘因は大きくなる。新法が成立する前に承認した方が得策と考えた使用者も多く、たとえば、都市一般労組(GMB)は新法成立までの過去1年間に100件を上回る承認協定を締結した。GMBのジョン・エドモンズ書記長によれば、1980年代のサッチャー政権下では年に2~3件の承認協定を締結できれば運がよい方だったと振り返っている。

組合員が今後5年間で100万人増加するとのモンクスTUC書記長の年次大会での予測は、こうした動きを背景とするものだが、さらにTUCに対しても、小売、レジャー、金融など計15万人以上を雇用する大手企業から新法の施行前にパートナーシップ協定を結びたいとの申し出が寄せられているという。

その反面で同書記長は、すでに組織率の高い産業部門で獲得争いが激化する一方で組織率の低い部門を無視する危険性を指摘、破滅的な結果をもたらしかねない組合間競合を避ける必要を訴えた。また、英国の労働者の平均年齢が34歳なのに対し組合員の平均年齢が46歳に達していることを挙げ、組合は未来のものではなく過去の遺物だと考えている若い世代にとって、組合はもっと魅力的にならなければならないと訴えた。これを受けて大会に参加した組合代表らは、(1)すべての職場に組合の声を浸透させるキャンペーンに着手する、(2)組合間関係の調和を保つ新しい方法を編み出す、(3)未加入者に組合加入の利点を理解させる計画を作成する――などを投票で決定した。

大会参加者のほとんどはモンクス書記長の立場を支持したものの、鉱業労働者組合の指導者、アーサー・スカーギル氏は書記長を激しく批判した。スカーギル氏によると、TUCの提案する小手先の措置では新規加入者を引きつけるには不十分であり、もっと直接的に組合員の権利のために戦う姿勢こそ効果的なやり方だと主張した。下位裁判所の職員を代表し、過去4年間に組合員を50%増加させるのに成功した下位裁判所職員組合(Association of Magisterial Officers)のロージー・イーグルソン書記長は、スカーギル氏の見解を支持し、組合が成功するのは組合員の利害のために戦うことによってであると主張した。

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