6大経済研究所、1999年春季景気動向・労働市場予測を発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年7月

連邦雇用庁が4月8日に3月の失業者数と失業率(それぞれ428万8000人、11.1%)を発表したのに続いて、6大経済研究所が恒例の春季景気動向・労働市場予測を4月27日に発表した。今年の特徴は、IGメタルの賃上げ闘争を踏まえて賃金政策について立入った判断を示し、これが賃金政策を巡る労使の議論を再燃させたことである。

6大研究所は経済成長(前年比での国内総生産の増大)については1999年は1.7%(1998年は2.8%)、2000年は2.6%と予測しており、連邦政府と経済界よりも若干楽観的な見通しとなっている。地域別では、1999年は西独地域で1.7%、東独地域で2.0%、2000年は両地域とも2.6%との予測である。また年平均の失業者数と失業率については、それぞれ1999年は402万5000人(前年比25万4000人減少)、10.6%(前年比0.6ポイント減少)、2000年は375万5000人、9.9%と予測している。昨年秋季発表の1999年成長予測2.3%は幾分下方修正されたものの、同研究所は、輸出の後退が向こう何カ月間かに改善し、金融緩和政策の影響も現われ、さらに1999年下半期の内需拡大が予測されることが、比較的楽観的な景気動向・労働市場予測の理由だとしている。

ただ6大研究所の多数意見(SPD に近いベルリン・ドイツ経済研究所だけを除く)は、東独地域においては雇用が依然として雇用促進措置に大きく依存していることからも、予測される失業の低下は安定した労働市場の好転を反映するものではなく、したがって賃金政策に関しては依然として控え目な賃上げ水準が妥当であるとしている。そして1999年の賃上げ交渉での3%を超える妥結額は、この水準を超えるものであり、このような高めの賃上げ水準が持続的に継続すれば、企業の雇用の削減をもたらし、投資の妨げにもなり、その意味でも前年度までの控え目な賃上げ水準の維持が有効であるとしている。

これに対して使用者側は、多数意見の分析は賃金政策の方向転換の必要性を確証するもので、持続的な労働市場の好転を図る方法はそれ以外にあり得ないとして、賛成を表明した。他方、労働側は、1999年の賃上げ妥結額の正当性を強調し、多数意見は自己の統計のみに依拠して不当な結論を引き出したものだと批判し、ツビッケルIGメタル会長は、金属産業の今年の妥結水準によって初めて国内景気の上昇の前提条件が創出されたのだと言明した。

さらに6大研究所は、「雇用のための同盟」と賃金政策の関係についても言及し、この同盟は賃金コストの上昇の不安定要因を除去するために、連邦政府の関与のもとに中期的な賃金政策の策定に努めるべきだと歓告した。6大研究所は、賃金政策は第一次的には労働協約当事者間の問題であるが、連邦政府が国家財政等の影響の及ぶ賃金外コスト等について、その中期的展開に関して信頼し得る案を策定することは、協約当事者間にとっても有益であるとしている。

この「雇用のための同盟」と賃金政策の関係については、IGメタルと鉱山・化学・エネルギー労組(IGBCE)等の立場の違いはあるものの、これまではIGメタルの指導のもとに、労働側は政府及び使用者側と賃金政策を議論することを協約自治の侵害を理由に拒否してきた。その意味でも6大研究所の勧告は、賃上げ水準に関する意見ともども、一石を投じたものと言える。

1999年7月 ドイツの記事一覧

関連情報