労働省、枯葉剤被害者対象に月次手当提案

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年6月

5万8000人のアメリカ人と340万人のベトナム人死者を出したベトナム戦争で、アメリカ軍がベトナムの補給路と農作物を根絶やしにするため、1962年から10年間にわたって旧南ベトナム全域に散布した7200万リットルの枯葉剤、エージェント・オレンジにはダイオキシンが含まれていた。枯葉剤は、脳性麻痺、知的障害など、主に神経系統に異常を生じさせる。特に激戦地であった北緯17度線近くの家庭では何人も障害児が生まれることもあり、家族にとって重い負担となっている。また、40キロメートルにわたって森林が消滅したなど、枯葉剤による環境破壊も無視できない。

労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)は枯葉剤被害者に対する月次手当を提案した。各被害者に対する手当の水準は3種に分類され、最高で8万8000ドンとなっている。受給対象者は、枯葉剤の後遺症に苦しむ退役軍人と元少年志願兵、そして枯葉剤の影響を受けた両親から生まれた障害児である。この支援はサイゴンの傀儡(かいらい)政権下にあった民間人や労働者にも適用される。枯葉剤が散布された地域に暮らしていた人々は、汚染の証拠を提示することにより手当を受けることができる。約30万人が、この新しい手当を受けると推定される。この提案が承認されれば、枯葉剤被害者に対する初めての安定した資金援助となる。これまでは慈善事業による救済があったが、定期的なものではなかった。

なお、枯葉剤と各種障害との因果関係の解明も将来に残された課題である。フエ医科大学のグエン・ベト・ニャン教授によると、アメリカで認められている枯葉剤の被害は、アメリカ軍人退役兵の二分脊椎についてだけである。しかし、アメリカ軍人退役兵を対象にした研究は主に男性だけについての研究で、米軍は食料・飲料水などを持ち込み、ベトナムの食料を摂取していない。そのため米軍人が受けた健康被害は、長期にわたってベトナムに住む男女とその子女が受けた被害とは比べものにならない。その上、もしグエン・ベト・ニャン教授の仮説のように、枯葉剤が直接 DNA に影響を与えていれば、枯葉剤の影響が何代も残る可能性がある。障害者やその家族の高齢化が進んでいくため、枯葉剤被害者友の会は、近い将来、枯葉剤被害者に食料や治療費などの援助を提供する必要があると考えている。

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