基礎情報:韓国(1999年)

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

  1. 一般項目
  2. 経済概況
  3. 対日経済関係
  4. 労働市場
  5. 賃金
  • 国名: 大韓民国(韓国、アジア)
  • 英文国名: Republic of Korea
  • 人口: 4545万人(1996年)
  • 面積: 9万9310平方キロメートル
  • 人口密度: 458.6人/平方キロメートル
  • 首都名: ソウル
  • 言語: 韓国語
  • 宗教: 仏教、プロテスタント、カトリック
  • 政体: 共和制

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  • 実質経済成長率: +5.5%(1997年)、+7.1%(1996年)、+8.9%(1995年)
  • 通貨単位: ウォン(Won)。US$1=1175ウォン、100ウォン=8.74円(1999年10月)
  • GDP: 4425億米ドル(1997年)、4848億米ドル(1996年)、4564億米ドル(1995年)
  • 1人当たりGDP: 9622米ドル(1997年)、10646米ドル(1996年)、10176米ドル(1995年)
  • 消費者物価上昇率: +4.5%(1997年)、+4.9%(1996年)、+4.5%(1995年)
  • 主要産業: 製造業(カラーテレビ、電子レンジ、VCR、乗用車、エチレンなど)

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  • 対日主要輸入品目: 鉄鋼、集積回路、有機化合物、プラスチック、非鉄金属、音響映像機器部品など
  • 対日輸入額: 15337百万ドル(1998年)、26201百万ドル(1997年)、29448百万ドル(1996年)
  • 対日主要輸出品目: 半導体電子部品、鉄鋼、衣類・同付属品、魚介類、揮発油、肉類など
  • 対日輸出額: 12062百万ドル(1998年)、14658百万ドル(1997年)、16025百万ドル(1996年)
  • 日本の直接投資: 543億円(1997年)、468億円(1996年)、433億円(1995年)
  • 日本の投資件数: 53件(1997年)、33件(1996年)、25件(1995年)
  • 在留邦人数: 1万4,792人(1997年10月)

出所:統計庁『韓国統計年鑑1997年』

出所:[日本]大蔵省(財政金融月報、外国貿易概況)、外務省(海外在留法人数調査統計)

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1. 労働市場の概況

韓国の労働市場は1997年末の経済危機を機に、大量の失業者が発生し、不安定な雇用形態が急増するなど、大きな転換点を迎えているが、それ以前にも幾つかの転換点を経験している。

まず1970年代、重化学工業育成政策により軽工業から重化学工業への産業構造の転換が図られるなか、1977~1978年頃労働力の無制限供給状態が終わり、いわゆるルイス転換点を経験している。

第2に、80年代半以降、重化学工業部門が輸入代替国産化の段階から輸出指向の段階に成長するに伴い、高学歴若年層の求職難と生産職若年層の求人難が同時に深刻さを増すなど、労働力需給のミスマッチが大きな課題として浮上してきた。

その一方で、失業率は1970年代前半の6~7%台から4%台へ、さらに1990年代に入っては2%台へと下がり、完全雇用状態を実現するに至った。

特に1987年の民主化宣言後、企業別組合の間で強い交渉力を盾に組合員の雇用保障と労働条件の引き上げを勝ち取る動きが一気に広がったことも、労働移動率の低下と労働市場の安定化に寄与したところが大きい。

その他に、製造業からサービス業への産業間の労働移動も不安定な雇用形態の増加を伴いながら進んだ。

つまり製造業部門では人件費削減策や人手不足への対応策の一環として自動化と合理化が急速に進むにつれ、就業者数の比重が1988年の27.7%をピークに下がり続ける反面、サービス業でのその比重は非正規職労働者を中心に上昇し続けているのである。

政府はこのような労働力の需給ミスマッチを解消し、産業構造の転換に伴う労働力の移動を促進するために、3K業種における中小企業を対象に外国人産業研修生制度に基づいた外国人労働者の受け入れを認めるほか、雇用保険制度を1995年から30人以上の事業所を対象に導入するなど、労働政策の軸足を労使関係の安定化から積極的な労働市場政策に移した。これに伴い、1995年5月の労働部の組織改編で、職業安定局と職業訓練局が統合され、雇用政策室が新設された。

労働力人口及び雇用の推移
  労働力人口 労働力率 就業者数 失業者数 失業率
1996年 21,188千人 62.0% 20,764千人 425千人 2.2%
1997年 21,604千人 62.2% 21,048千人 556千人 2.8%
1998年 21,390千人 60.7% 19,926千人 1,463千人 7.6%

出所:韓国労働研究院『KLI労働統計1999年』

製造業における雇用の推移 (千人、カッコ内は増減率)
  全産業 製造業 生産職 事務職
1996年 5,321(1.5%) 2,553(-2.6%) 1,599(-4.2%) 954(0.3%)
1997年 5,194(-2.4%) 2,447(-4.2%) 1,519(-5.0%) 928(-2.7%)
1998年 4,803(-9.79%) 2,119(-17.0%) 1,316(-17.7%) 803(-15.8%)

注:常用労働者10人以上の事業所を対象にした労働力実態調査

出所:労働部『1998年年平均賃金、労働時間及び雇用動向』1999年2月26日

雇用政策室には雇用総括審議官、雇用保険審議官、能力開発審議官がおかれた(1996年6月には勤労女性政策局も新設。1999年5月の行政組織改編では雇用政策室の審議官は3人体制から2人体制へ)。

第3に、1997年末の経済危機の影響で労働力人口と就業者数は減少に転じる一方で、失業者数は1997年10月の45万2000人から1999年2月には178万5000人へと130万人が増え、失業率は2.1%から8.7%に跳ね上がるなど、完全雇用の時代は呆気なく幕を下ろした。産業別には製造業と卸・小売り及び飲食宿泊業における常用労働 者数の減少幅が著しく、それぞれ17%、10.1%に達した。

2. 雇用調整の実態と政府の失業対策

1997年と1998年の労働法改正で労働市場の柔軟性向上策の一環として整理解雇と労働者派遣の法制化がようやく実現したものの、経済危機で大量の失業者が発生していることもあって、政府はどちらかといえば、雇用の流動化よりは雇用の安定を重視する方向で失業対策を講じている。

また、労働界も組合員身分の不安定化と企業別組合組織の弱体化に直結するような構造改革と整理解雇には徹底抗戦の構えを崩していない。

そういう中で、1998年8月の現代自動車における整理解雇をめぐる労使紛争を機に、企業の間では整理解雇のみでなく希望退職、人件費削減(基本給の他、ボーナス、福利厚生費の削減、時間外労働の短縮、年月次有給休暇の使用等)、分社化(経営陣や従業員による事業買収[MBO、EBO])による雇用調整の動きも広がっている。つぎの表のような韓国労働研究院の実態調査からもその動きが明らかになっている。

雇用調整の実施状況
  1997年1~11月 1997年12月~1998年3月 1998年4~10月
労働時間の調整 60社(20.0%) 110社(36.7%) 199社(56.1%)
人員の調整 59社(19.7%) 131社(43.7%) 247社(69.6%)
機能的調整 38社(12.7%) 73社(24.3%) 106社(29.9%)
事業構造の再構築 18社(6.0%) 34社(11.3%) 109社(30.7%)
賃金の調整 32社(10.7%) 116社(38.7%) 280社(78.9%)
合計 97社(32.3%) 181社(60.3%) 304社(85.6%)
調査対象企業数 300社(100.0%) 300社(100.0%) 355社(100.0%)

出所:韓国労働研究院『企業の雇用調整実態調査』

政府のまとめによると、1997年末以降の失業状況には次のような特徴がみられる。

第1に1999年2月末現在大都市の失業率は9.8%で全国平均の8.7%を上回っており、大都市ほど失業状態が深刻。

第2に1997年末以降発生した失業者130万人余りのうち、100万人余りが中小企業の在職者と日雇い職労働者で占められている。その他、政府の構造改革4大課題として位置づけられている公共部門、金融部門、大手企業グループ(上位30社)ではそれぞれ7万4000人(そのうち、非自発的な退職3万6000人)、8万2000人(6万3000人)、23万7000人(13万1000人)の人員削減が行われたと推定されている。

第3に年齢別には1999年2月末現在20歳代と30歳代がそれぞれ33.2%、25.7%を占めており、高学歴未就業者の割合が高い。第4に失業期間の長期化に伴い、低所得層の増加が目立っている。例えば、離職して1年以上失業状態にある者は1998年2月の14万人から1999年2月には24万人に増えている。

出所:政府の経済対策調整会議資料、新規雇用創出と失業者保護のための失業対策の強化案、1999年3月22日)

このような特徴を踏まえて、政府は新規雇用の創出と社会安全網の拡充に重点をおいた新たな失業対策を打ち出した。その他に、雇用保険制度は当初の趣旨である「積極的な労働市場政策」よりは「緊急避難措置としての失業対策(消極的な労働市場政策)」の主な手段として位置づけられ、1999年4月からは全事業所に拡大適用されるととも共に、失業者の救済と雇用の安定に重点がおかれるようになった。また外国人産業研修生制度による外国人労働者の受け入れ規模は縮小され、国内労働者への代替が奨励されるようになった。

ただし、求職難が深刻さを増すなかでも、3K業種の中小企業に対する国内労働者の就業忌避傾向や高い離職率には改善の兆しが見えず、同部門における求人難は依然として解消される気配を見せていない。中小企業庁が外国人研修生を活用している中小企業98社を対象に調査したところによると、その過半数以上が求人難を理由に「引き続き外国人研修生を活用したい」と答えている。

1. 賃金制度の概要

1998年末現在の賃金制度の実態をみると、年功給のみのところが3割強で最も多く、年功給をベースに職能給や職務給の要素を加味しているところも5割強を占めている。その一方で、個人や部署の成果や業績を反映する仕組みとして成果配分制度と年俸制を導入する企業も急速に増えている。

賃金制度の状況
賃金制度 事業所の割合
年功給のみ 31.6%
年功+職務+職能給 23.7%
年功+職能給 14.9%
年功+職務給 13.0%
職能給のみ 6.5%
職務給のみ 5.1%
職能+職務給 5.1%

注:調査対象は製造業の事業所252カ所。

出所:韓国労働研究院『1998年賃金交渉実態調査』

表:成果配分制と年俸制の実施状況
  成果配分制 年俸制
1996年11月 334カ所 94カ所
1997年10月 405カ所 205カ所
1999年1月 689カ所(13.5%) 649カ所(15.1%)

注:1999年の調査対象は100人以上の事業所4304カ所。成果配分の基準は利益(66.0%)、売上高(42.6%)、付加価値(32.1%)の順。

出所:労働部『年俸制及び成果配分制実施事業所調査』各年

政府は同制度の普及を狙って税制上の優遇措置を検討したり、各地方労働官庁に出した1999年の賃金交渉勧告指針で同制度の導入を勧奨するよう指示している。1999年の賃金交渉勧告指針には「能力および成果中心の賃金制度への転換を積極的に勧奨すること」が大きな柱として盛り込まれていると共に、具体的な指導方法として次のような点が提示されている。

第1に、各種手当の統廃合や基本給の比重の引き上げを通して賃金体系の簡素化を図る。

第2に、年功・序列的な要素の比重を減らし、個人や部署の成果を反映する職能・職務的な要素のそれを増やす。

第3に、年俸制と成果配分制の導入に当たって、労働者や労組との協議、同意などの法的手続きを必ず踏むこと、管理職・専門職・営業職などのように職務上の裁量権があり、職務分析や業績評価が容易な分野を主な対象にすること、会社の経営方針、目標、組織文化などをより慎重に検討したうえで実施することなどである。

2. 最低賃金

最低賃金制度は1988年1月1日、まず製造業部門における10人以上の事業所を対象に導入され、1990年から全産業の10人以上の事業所に拡大実施された。1999年3月9日には「1999年9月から5人以上の事業所に拡大する」ことを主な内容とする最低賃金法施行令改正案が確定した。

本来零細事業所の低賃金働者を保護するために導入されたにもかかわらず、10人以上の事業所に限定されていたため、最低賃金制度の適用対象労働者のうち、実際に最低賃金制度によって賃金が保障されたのは0.4%(1998年9月~1999年8月)にすぎないなど、本来の趣旨とはほど遠いのがいままでの実状であった。

今回の最低賃金法施行令改正は最低賃金制度本来の趣旨に沿ってその実効性を高めるためのものである。

最低賃金の推移
  時間給 上昇率 適用労働者 受給労働者
1996年9月~1997年8月 1,400ウォン 9.8% 5,240,135人 127,353人
1997年9月~1998年8月 1,485ウォン 6.1% 5,324,834人 123,513人
1998年9月~1999年8月 1,525ウォン 2.7% 5,136,061人 22,980人

注:1999年9月から5人以上の事業所に拡大され、新たに49万6000人が追加。

出所:韓国労働研究院『KLI労働統計1999年』(最低賃金審議委員会の資料)

3. 賃金関連情報

韓国における賃金交渉は企業別交渉を基本としている。70年代後半に韓国労総主導の産別交渉の動きが一時広がったこともあるが、80年代に入って企業別組合体制が法的に義務づけられるようになってから企業別交渉体制が定着している。韓国労働研究院の調査によると、1996年末現在企業別組合6424カ所の86.6%が企業別交渉を行っている。ちなみに労働協約改訂交渉の場合は全体の87.4%が企業別交渉を行っている。

もちろん1960年代から今日に至るまで韓国労総と韓国経総(1969年の綿紡績業における労働争議を機に韓国労総に対抗する使用者団体として1970年に設立)はそれぞれ生計費および実質賃金の保障、生産性及び支払い能力などに基づいた賃上げ指針を出してきた(1995年に旗揚げした民主労総も別途の賃上げ指針を提示)。そして政府は労使間の自律的な交渉を原則としながらも物価上昇や景気変動などに応じて賃金ガイドラインの提示や行政指導(生産性と競争力重視の立場)を通して一貫して賃金の抑制を誘導するなど、賃金交渉に直接、間接的に介入してきた。

とくに1987年6月の民主化宣言以降、賃金の急上昇と諸手当の急増(1996年8月主要企業の調査結果によると、115種類)に伴い、労働費用が急速に膨らむと共に、賃金体系も複雑さを増してきたこともあって、政府は1990年代に入って総額賃金制に基づいた賃金ガイドライン(1992年)を提示したり、成果配分制や年俸制の導入(1999年)を誘導するなど、賃上げの抑制もさることながら賃金体系の簡素化と動機誘発機能の強化に重点をおくようになった。

労使の賃上げ要求案と賃上げ率の推移
  韓国労総 民主労総 韓国経総 賃上げ率 名目賃金上昇率
1996年 12.2% 14.8% 4.8% 7.8% 11.9%
1997年 11.2% 10.6% 凍結 4.2% 7.0%
1998年 4.7% 6.6~9.0% 総人件費20%減 -2.7% -2.5%
1999年 5.5% 6.2~9.2% 凍結、削減

出所:労働部『1999年の賃金交渉のための主要賃金統計』1999年4月

賃金項目別構成比
  定額給与 超過給与 特別給与
1996年 67.6% 8.5% 23.8%
1997年 69.2% 8.0% 22.8%
1998年 73.6% 7.0% 19.4%

注:全産業を対象にしたもの

出所:労働部『毎月労働統計調査報告書』各年号

経済危機の中で迎えた1998年の賃金交渉では雇用安定との連携を優先し、賃上げで大幅な譲歩に踏み切った企業別組合が多く、賃上げ率はマイナス2.7%で1980年に統計を取り始めて以来最も低い水準を記録した。

1998年末現在、賃金の凍結または切り下げに合意した事業所は全体(100人以上の事業所のうち賃金交渉が妥結した5156カ所)の84.5%に達した。

賃金項目別構成比の推移をみると、1987年以降定額給与と超過給与の比重は低下する反面、特別給与のそれは増加するパターンが定着していたが、1997年から定額給与の比重は上昇に転じる反面、超過給与と特別給与のそれは下落し続けている。

これには景気の急激な落ち込みと稼働率の低下が影を落としている。

基礎情報:韓国(1999年)

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