職業能力開発基本計画(厚生労働一六九)
2026年3月31日

厚生労働省 第百六十九号

 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第五条第一項の規定に基づき、職業能力開発基本計画を次のように定めたので、告示する。

  令和八年三月三十一日

厚生労働大臣 上野賢一郎

   職業能力開発基本計画

目次

第1部 総説

 1 計画のねらい

 2 計画の期間

第2部 職業能力開発をめぐる経済・社会環境の変化と課題

 1 近年の労働市場の変化と課題

 2 労働需要側の構造的な変化と課題

 3 労働供給側の構造的な変化と課題

第3部 職業能力開発の方向性と基本的施策

 1 今後求められるスキルの変化に対応した戦略的な職業能力開発支援の推進

  (1) 産業界・地域・成長分野等における人材ニーズ等を踏まえた戦略的な職業能力開発の推進

  (2) 民間教育訓練機関が提供する職業訓練の質の確保・向上

 2 労働市場でのスキル等の見える化の促進

  (1) 労働市場におけるスキルの標準化と見える化

  (2) 企業の職業能力開発に関する情報の発信等

 3 個人のキャリア形成と職業能力開発支援の充実

  (1) キャリア意識の醸成とキャリア形成支援

  (2) 個人の職業能力開発支援

 4 企業の職業能力開発への支援の充実

  (1) DX関連を含めた職業能力開発の充実のための環境整備

  (2) 中小企業に対する人材育成の支援

 5 多様な労働者の能力発揮に向けた職業能力開発の推進

  (1) 非正規雇用労働者への支援

  (2) 中高年労働者への支援

  (3) 若者への支援

  (4) 女性への支援

  (5) 障害者への支援

  (6) 就職やキャリアアップに特別な支援を要する方への支援

  (7) 外国人への支援

  (8) 現場人材のスキル向上と人材確保のための環境整備

 6 技能五輪国際大会を契機とした技能の振興

 7 職業能力開発分野の国際連携・協力の推進

第1部 総説

 1 計画のねらい

 日本経済は、緩やかな回復基調となっており、令和6年度時点においては名目GDPが600兆円を超え、賃金上昇率は33年ぶりの高さとなるなど、明るい動きがみられる。その一方で、賃金の伸びが物価の上昇に追いつかず、物価上昇の継続が消費動向に影響している状況がみられる。こうした中、コストカット型経済から脱却し、成長型経済への移行を確実なものにすることが重要である。

 中長期的にみると、我が国は、少子高齢化の進展と人口減少の継続による、必要な労働力の需要と供給のバランスが崩れることに伴う労働供給制約という課題を抱えている。また、人工知能(以下「AI」という。)等のデジタル技術の進展により、人間の業務の一部が自動化され、一部の労働需要が減少する可能性があるなど、技術や産業構造が急速に変化していくことが見込まれる。こうした中、近年、人材を「資本」として捉え、人材育成等の投資により、人材を最大限活用するという「人的資本」の考え方に変化してきており、職業能力開発の重要性が高まっている。

 こうした経済・社会環境の変化を的確に把握し、人材ニーズや働き方等の変化に対応した職業能力開発施策を推進することが求められる。

 また、我が国の経済成長は地域経済の成長にも支えられていることから、地域経済の更なる活性化を図ることが我が国全体の成長にとっても重要であると考えられる。

 第11次職業能力開発基本計画では、新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という。)の影響等による産業構造の変化や社会全体のデジタル化、人生100年時代の到来による職業人生の長期化・多様化等が進む中において、雇用のセーフティネットとしての公的職業訓練をはじめ、企業における人材育成の支援や労働者の自律的・主体的なキャリア形成の支援等の各施策を推進してきた。

 今後は、引き続きこうした施策を着実に推進するとともに、労働者や企業を取り巻く環境の急速な変化を踏まえ、個々の労働者による自律的・主体的な能力開発及びキャリア形成と、企業による積極的な能力開発機会の確保とともに、国がこれらの職業能力開発の取組を積極的に促進することにより、労働生産性の向上や処遇の向上を図り、経済社会の発展や労働者の就労意欲の向上につなげていくことが重要である。

   こうした方向性を実現するためには、以下の4つの課題に対応することが必要である。

   ① 個人、企業による職業能力開発の取組の促進

 個人における自己啓発等の取組及び企業における職業能力開発の取組をより一層促進していくことが重要である。特に、非正規雇用労働者に対する職業能力開発と中小企業における取組への支援が重要となる。

   ② 労働供給制約等への対応

 労働供給制約と人材不足という課題がある中で、経済的に発展していくためには、労働者の能力向上及び労働力の需給調整機能が重要であり、そのための労働市場の整備が必要である。さらに、非正規雇用労働者や中高年労働者、若者、女性、障害者等の労働参加や継続的な能力向上を支援するとともに、特に人材不足感が強い現場人材の育成・確保やそのスキルの向上による生産性向上等を推進することが重要である。

   ③ 労働者の自律的・主体的なキャリア形成の促進

 職業人生の長期化や、産業構造の変化など雇用と仕事を取り巻く環境が大きく変化する中では、労働者が何をしたいかを明確にし、自律的・主体的なキャリアプランの作成、振り返り及び見直しを行い、継続的に能力向上に取り組むことが重要であり、企業が環境を整備することも含め、これらの取組への支援の充実が必要である。そのためには、職務やスキル、処遇、職業能力開発機会に係る情報の充実と、これらの情報や能力開発機会そのものへのアクセスの改善が重要である。

   ④ デジタル化の進展など産業構造の変化等への対応

 AI等の技術の進展等により求められるスキルが絶えず変化する中で、人材ニーズの変化に対応した訓練プログラムの開発、提供等、迅速かつ機動的な対応が重要である。デジタルトランスフォーメーション(以下「DX」という。)の推進については、デジタル技術の開発等を担う高度な専門人材を育成するとともに、労働者全体のデジタルリテラシーの向上を図ることが必要である。また、成長分野等に必要な人材確保・人材育成や労働移動等を推進することにより、生産性向上や処遇向上等を図り、経済や産業の発展・成長につなげていくことが重要である。

 これらの課題や、現行の職業能力開発施策及び企業・個人の職業能力開発の状況を踏まえ、今後の職業能力開発施策を推進するに当たっては、個々の労働者・企業の事情に合わせた職業能力開発を行う「個別化」、一つの企業では行えない職業能力開発を産業・地域等の単位で複数の企業が連携して行う「共同・共有化」、労働市場及び企業における職務やスキル、処遇、職業能力開発機会の可視化を進めることで企業や個人の職業能力開発を促進する「見える化」の3つの視点を持つことが重要である。

 以上のような観点から、第12次職業能力開発基本計画(以下「本計画」という。)では、成長型経済への移行を確実なものとするために、国として産業界等で必要とされる人材や成長分野等に必要な人材を戦略的に育成・確保する施策を講ずる。これにあわせて労働市場の「見える化」など職業能力開発の基盤整備を進めるとともに、個人の自律的・主体的なキャリア形成支援や企業における職業能力開発の充実、多様な労働者の職業能力開発、技能の振興等を推進することとする。これらにより、労働生産性の向上及び労働者の自己実現や処遇向上等を図り、経済や産業の発展・成長につながるよう職業能力開発施策を推進していく。

 この際、これらの施策の推進に当たっては、国、都道府県、企業、労働組合、民間教育訓練機関、学校、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「JEED」という。)等の関係機関が連携して一体的に取り組んでいくことが重要である。

 なお、経済・社会情勢の変化等に伴って、本計画の対象期間中に新たな施策が必要となる場合は、本計画の趣旨等を踏まえて機動的に対応するものとする。

 2 計画の期間

   本計画の期間は、令和8年度から令和12年度までの5年間とすること。

第2部 職業能力開発をめぐる経済・社会環境の変化と課題

 1 近年の労働市場の変化と課題

 雇用情勢は緩やかに持ち直している。感染症が拡大した令和2年平均では完全失業率は2.8%、有効求人倍率は1.18倍となっていたが、令和6年平均では、完全失業率が2.5%、有効求人倍率が1.25倍となっている(総務省「労働力調査(基本集計)」及び厚生労働省「職業安定業務統計」)。

 企業における人材不足感については、足下では製造業、非製造業ともに不足とする企業が過剰とする企業を上回っており、特に中小企業の人材不足感が強い(日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(2025年12月調査))。就業者数については、2040年にかけて全体として減少するものの、その変化は産業によって大きく異なり、「医療・福祉」等では増加が見込まれる一方で、「運輸業」、「飲食店・宿泊業」、「生活関連サービス業」等では減少が見込まれている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「2023年度版 労働力需給の推計-労働力需給モデルによるシミュレーション-」)。

 名目賃金については令和3年以降増加に転じている一方、足下の実質賃金については物価上昇等の影響によりマイナスとなっている(厚生労働省「毎月勤労統計調査」及び総務省「消費者物価指数」)。職種別にみると、多くの職種では20歳代後半から50歳代後半にかけて、能力の向上や経験の蓄積等に応じて賃金上昇がみられるが、「サービス職業従事者」、「保安職業従事者」、「輸送・機械運転従事者」、「運搬・清掃・包装等従事者」など、20歳代後半から50歳代後半にかけて賃金上昇があまりみられないものもある(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)。

 また、日本の時間当たりの労働生産性をみると、OECD諸国の中でも低位となっている。持続的な賃上げと人材不足への対応に同時に取り組むためには、労働生産性の着実な上昇が必要と考えられる。

 2 労働需要側の構造的な変化と課題

 AIの進化や業務のデジタル化等の動きを背景に、労働需要において構造的な変化がみられている。長期的な産業構造の変化をみると、農林漁業等の第一次産業及び建設業や製造業等の第二次産業から、サービス業等の第三次産業へと比重が移ってきている。

 また、「2040年の就業構造推計(改訂版)」(令和8年3月5日経済産業省産業構造審議会経済産業政策新機軸部会)では、労働供給は、少子高齢化による人口減少に伴って減少するものの、AI・ロボットの活用促進や、リスキリング等による労働の質の向上により大きな不足は生じない一方、現在の人材供給のトレンドが続いた場合、職種間、学歴間でミスマッチが発生するリスクがあり、戦略的な人材育成や円滑な労働移動の推進が必要となることが示されている。

 デジタル技術の進展が労働需要に及ぼす影響として、近年、高度な分析スキルを要する非定型分析タスクや高度な対人スキルを要する非定型相互タスクが増加する一方、あらかじめ定められた基準の正確な達成が求められる定型手仕事のタスクが減少している。今後、AIやロボット等のテクノロジーの進化により、定型的なタスクの効率化が進む中、デジタル技術・リテラシーを有する人材については、更に需要が高まるものと考えられる。

 企業における人的投資の状況をみると、企業が労働者のOFF-JTや自己啓発支援に支出した費用は直近では増加しているものの、長期的にはやや減少の傾向にある(厚生労働省「能力開発基本調査」)。また、日本企業の人的投資(OJTを除くOFF-JTの研修費用等)は、他の先進国と比べて低い水準にあることが指摘されている。

 計画的OJT及びOFF-JTの実施率は、感染症が拡大した令和2年度に低下し、令和3年度以降は正規雇用労働者については徐々に回復する傾向にあるものの、過去の水準には届いていない。また、計画的OJT及びOFF-JTいずれも、正規雇用労働者と比べて、正規雇用労働者以外の労働者に対する実施率が大きく下回っており、非正規雇用労働者の能力開発機会の確保が必要である(厚生労働省「能力開発基本調査」)。

 3 労働供給側の構造的な変化と課題

 少子化の進展に伴い、我が国の人口は平成20年の1億2808万人をピークに減少局面にある。今後も地方を中心に人口の減少傾向が続き、労働供給制約が強まっていくことを前提とすると、我が国の経済成長のためには、一人ひとりの労働者の労働参加と労働生産性を高めていくことが重要となる。

 男女別の労働力率の推移をみると、男性の労働力率は横ばいで推移しているが、女性の労働力率は過去10年間で6.0%上昇、年齢階級別の労働力率の推移をみると、過去10年間で「55~64歳」の上昇幅が最も大きくなっていることから、女性や高年齢者を中心に労働参加が進んでいることが分かる。なお、令和6年平均で、非労働力人口で就業を希望する者は225万人、就業者のうち、今より仕事の時間を増やしたい者は432万人となっている(総務省「労働力調査」)。

 就業者数と労働時間を乗じて算出した労働力供給量は、1人当たり平均労働時間が減少したことなどから1990年代以降緩やかな減少傾向で推移してきた。2010年代以降は、女性や高齢者の就業者数が大きく増加したことで、その傾向は緩和し、横ばいで推移している(総務省「労働力調査(基本集計)」)。今後について、就業者数は2030年までは横ばいで推移し、その後減少に転じること、就業者の年齢構成は60歳以上の割合が増加していくことが見込まれている(独立行政法人労働政策研究・研修機構「2023年度版 労働力需給の推計-労働力需給モデルによるシミュレーション-」)。

 労働者の平均勤続年数をみると、男女ともに長期化する傾向にある(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。その一方、平成23年以降、転職者数は緩やかに増加する傾向にあり、感染症の影響で一時減少したものの、令和4年に再び増加に転じ、令和6年は3年連続増加の331万人となった。特に「より良い条件の仕事を探す」ことを目的とする転職が増加している(総務省「労働力調査(詳細集計)」)。

 雇用形態に着目すると、正規雇用労働者は、女性を中心に増加傾向で推移している。非正規雇用労働者は、女性や高年齢層を中心に労働参加が進む中で長期的には増加傾向にあるものの、令和元年以降はおおむね横ばいで推移しており、女性の正規雇用労働者数と非正規雇用労働者数の差が縮小傾向にある(総務省「労働力調査(詳細集計)」)。

 フリーター数については、平成15年の217万人をピークにおおむね減少傾向にあったものの、近年は130万人台で推移しており、令和6年は136万人となっている。ニート(若年無業者)数については、令和4年以降は増加傾向にあり、令和6年は61万人となっている(総務省「労働力調査」)。

第3部 職業能力開発の方向性と基本的施策

 本計画のねらいや職業能力開発をめぐる経済・社会環境の変化と課題を踏まえ、以下の観点から、今後の我が国の職業能力開発を推進していく。なお、本計画に基づき施策を推進するに当たっては、適切に目標を設定し、進捗状況について把握していくこととする。

 1 今後求められるスキルの変化に対応した戦略的な職業能力開発支援の推進

  (1) 産業界・地域・成長分野等における人材ニーズ等を踏まえた戦略的な職業能力開発の推進

 産業界や地域、成長分野等において求められている人材ニーズを的確に把握し、これらの人材ニーズやデジタル技術の進展等の経済社会の動きを踏まえるとともに、労働者の希望に応じた労働移動もキャリアアップの選択肢の1つであること等も考慮しつつ、効果的な職業能力開発を推進していくことが必要である。このため、国レベル及び都道府県レベルにおいて、公的職業訓練の実施に関する計画を的確に策定するとともに、データに基づくPDCAサイクルにより訓練の効果検証や、必要に応じて訓練プログラムの開発等を行いながら、関係省庁や関係機関と連携して効果的な職業訓練を推進していくことが求められる。

 また、実習や就労の機会を組み込んだ訓練政策は、積極的労働市場政策として効果が大きいが、我が国では普及が進んでいない。さらに、実習併用職業訓練などの職場内での実務経験を組み合わせた訓練については、訓練の直接の対象となる労働者だけでなく、他の労働者のスキル、モチベーションの向上、全社的な人材育成体制の整備の進展という波及効果が期待できるため、こうした訓練の普及も必要であると考えられる。

 中小企業は、単独で職業能力開発に十分対応することが困難な状況にある。指導者、訓練設備、訓練のノウハウや共通課題の対応策の共有など、人材育成の単位を「企業単独」から、人材ニーズが重なり、開発するスキルを共有できる産業・地域等の単位の「複数の企業」に拡大する仕組みを作ることが重要である。さらに今後は、人材の獲得がますます難しくなるため、業界全体で人材を育成する取組を進めることや、産業・職業等の単位で人材を評価し、キャリア形成を支援する仕組みを整備することが必要であると考えられる。

 労働者及び企業双方の成長等を実現する職業能力開発を効果的に推進するためには、労使が能力開発の意義や方向性等について共有するとともに、労働者一人ひとりが主体的に能力開発に取り組む意識を持つことが重要であることから、労使の協働した取組をより促進していくことが必要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 成長分野等に必要な人材の育成に向けた戦略的な職業訓練を推進する。中央職業能力開発促進協議会及び地域職業能力開発促進協議会の機能を強化し、産業界等と連携して必要とされる人材像やスキルの把握、訓練の重点分野に係る中期的な方針等の策定、地域の産官学の連携のもと、地域の人材ニーズ等を踏まえた訓練機会の創出等に取り組む。

    ・ エネルギーなどの戦略分野等における人材育成・確保を加速化するため、関連の産業界と協働した人材育成プロジェクトの実施や、業界団体による人材開発支援助成金の活用の促進等に取り組む。また、当該分野等における教育訓練給付金の指定講座の拡大に取り組むことで個人の職業能力開発支援を進める。

    ・ 技術革新の進展等も踏まえながら、JEEDにおいて、職業訓練指導員の育成・確保を含めた体制整備を推進するとともに、職業能力開発大学校及び職業能力開発短期大学校のリソースを活用した、在職者向けの新たな訓練プログラムを検討し、必要な施策を講ずる。

    ・ ハローワークにおいてキャリアコンサルティング、能力向上、職業紹介までの切れ目ない支援サービスを実施するとともに、都道府県やJEEDとの連携強化や職員の育成等を含む体制整備を図る。

    ・ 実習併用職業訓練や日本版デュアルシステムなど実務経験を組み合わせた訓練機会の拡充の方策を検討し、必要な施策を講ずる。

    ・ 認定職業訓練の活性化に向けた支援等を含め、産業・地域単位での複数企業の連合体が「共同」で人材育成を行う仕組みについて、産業・地域等の単位で複数の企業が行う訓練の好事例を広げる取組や業界単位での訓練を支援する効果的な仕組み等を検討し、必要な施策を講ずる。

    ・ 産業・職業等の単位での人材の評価・育成について、団体等検定制度の活用促進を図ることや教育訓練給付金の指定講座の拡大、公的職業訓練における訓練カリキュラムの設定、人材開発支援助成金の活用促進等により推進する。

    ・ キャリアコンサルタントが、職務やスキル、処遇、職業能力開発機会等に係る情報を活用できる仕組みを構築する。

    ・ 職業能力開発に関連する情報や制度に対するアクセス・利便性の向上のため、各種助成金等の申請手続のオンライン化等の推進や、在職中の方や子育て・介護中の方などが訓練を受講しやすい環境整備を実施する。

    ・ 職業能力開発に係る各種支援策について、処遇向上等の成果の把握を通じて政策効果の検証を行い、支援策の見直しや重点化を検討し、必要な施策を講ずる。

    ・ 労働者や企業における職業能力開発(リスキリング)の必要性・重要性の認識・理解を促進して、社会全体の機運醸成を行うための取組(リスキリングを促進する国民運動)として、機運醸成に向けたシンポジウムの開催や様々なチャネルを活用した情報発信等を行い、この取組の中で、例えば、労使でコミュニケーションを取りながら事業内職業能力開発計画(以下「事業内計画」という。)を作成する等労使の協働の取組が促進されるよう周知啓発等を実施する。

  (2) 民間教育訓練機関が提供する職業訓練の質の確保・向上

 42%の事業所がOFF-JTの実施方法として民間教育訓練機関を活用し、個人が行う自己啓発についても14%の者が民間教育訓練機関の講座を受講している(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」)。また、公的職業訓練のうち7~8割は民間教育訓練機関が実施を担っている。このため、効果的な職業訓練の推進のためには、民間教育訓練機関の訓練の質の向上を図ることが重要である。

 民間教育訓練機関にPDCAサイクルによる運営改善等を推奨する「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」(平成23年12月策定。以下「職業訓練ガイドライン」という。)が、民間教育訓練機関が行う訓練の質の向上を促す仕組みとして有効であることから、民間教育訓練機関をはじめとする職業能力開発関係者における認知度を高め、活用を促進していく必要がある。

 また、民間教育訓練機関が行う職業訓練が労働市場のニーズに応えたものになるよう、民間教育訓練機関による訓練のニーズ把握の促進を行うことや、民間教育訓練機関が行う職業訓練の効果について適切な評価を行うことも重要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 国とJEEDが連携し、職業訓練ガイドラインに関連する施策について、民間教育訓練機関をはじめとする職業能力開発関係者における認知度の向上・普及の取組を推進する。特に、職業訓練ガイドラインに沿った運用を行っている民間教育訓練機関を評価する適合事業所認定制度について、より多くの事業所が申請しやすくなる仕組みを検討し、制度の見直しを行う。

    ・ 職業訓練ガイドラインの普及を通じて、民間教育訓練機関が訓練ニーズを的確に把握することを促進する。

    ・ 民間教育訓練機関が行う職業訓練の効果について適切な評価を行うことができるよう、訓練内容と訓練成果に関するデータの分析を行うための方策を検討する。

 2 労働市場でのスキル等の見える化の促進

  (1) 労働市場におけるスキルの標準化と見える化

 産業構造の変化や働き方の多様化が進む中で、労働者がそれぞれの事情に応じて働き方や職業を選択し、自律的に能力の向上を進めるためには、職務やスキル、処遇、職業能力開発機会等に係る職業の情報を含めた基盤を整備することが重要である。

 また、労働者におけるキャリア形成・能力開発及び企業における人材の確保・育成を効果的に進め、処遇向上等につなげていくためには、労働市場や企業内部において、労働者の有するスキルと企業が個々の労働者に求めるスキルの「見える化」を促進することが必要である。職業に求められるスキルを整理したスキル標準や、企業内の職務に求められるスキルを整理した社内版スキル標準を作成することは、労働市場における労働者の職業能力の評価や、企業における人材育成や適材適所の配置を実現するために必要であると考えられる。

 さらに、労働者個人が仕事や職業訓練等を通じて習得した能力を把握し、それを労働市場や企業に対して証明することを支援する仕組みを整備することも重要である。

 なお、こうしたスキルの標準化と「見える化」を進める上では、今後、産業構造等の変化の中で、求められるスキルが変化していくことにも留意することが必要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 「職業情報提供サイト(job tag)」について、能力向上や処遇向上等につながる情報や戦略分野等のキャリアラダーに関する情報など職業に関する情報について、労働者が効果的に活用できる環境を整備するため、一層の充実を図る。

    ・ リスキリングの各種支援策に関する関係省庁の情報の連携・一体化を進め、労働者や企業等にとって包括的で利便性の高いプラットフォームを構築する。あわせて、当該プラットフォームを通じた申請手続のデジタル化についても検討し、必要な施策を講ずる。

    ・ 技能検定、認定社内検定及び団体等検定の整備・活用を促進するとともに、技能検定が産業界の人材ニーズに適合したものとなるよう、業界団体の協力を得ながら職種や作業等について不断の見直しを行う。また、業界単位で行う職業能力評価の取組に対する支援を拡充する。さらに、若手の技能人材等の確保・育成のため、地域の技能士・業界団体等の連携による人材育成の体制を整備する。

    ・ 企業内の職務に求められるスキルの「見える化」を図るため、職業能力評価基準をベースとしつつ、海外事例等を参考にしてスキル標準の企業導入を促進する方策の検討を行い、必要な施策を講ずる。

    ・ JEEDや都道府県が行っている訓練について、業界単位で共通性が認められるものは技能検定等の職業能力評価制度や資格につなげるなどにより、訓練で得られたスキルの「見える化」を進めるとともに、個人・企業が活用しやすいよう訓練で得られるスキルに関する情報を整理して発信する取組を行う。

    ・ ジョブ・カードについて、認知度の向上を図るとともに、個人のスキルを労働市場に伝達する効果的な仕組みの検討を行い、必要な施策を講ずる。

  (2) 企業の職業能力開発に関する情報の発信等

 労働者がそれぞれの事情に応じて働き方や職業を選択し、自らの望むキャリアを形成していくためには、企業が行う職業能力開発の取組の情報を得られるようにすることが重要である。

 多くの企業が人材育成に関する課題として「人材育成をしても辞めてしまう」ことを挙げているが、労働者の職場定着と、能力開発機会に対する満足度や人材育成に関する基本方針の策定状況との間には相関関係がみられている。また、労働者にとって能力開発機会を得られることが職業選択の重要な条件になりつつあり、これらのことから、企業の職業能力開発の取組は離職防止や人材の確保につながると考えられる。

 今後、労働者個人が自らの意思で企業内の能力開発機会を活用してキャリアを形成でき、職業能力開発に積極的に取り組む企業が労働者から評価され、人材確保の面でのメリットを享受することができる環境を整備することが重要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 労働者の自律的・主体的なキャリア形成や企業の人材確保・定着等に資するよう、企業による職業能力開発の効果的な情報発信の進め方について検討する。

    ・ 事業内計画の作成や職業能力開発推進者(以下「推進者」という。)の選任を促進するとともに、その機能が発揮されるよう、全社的な人材育成方針を含む事業内計画の作成に係るモデルや好事例の提示、推進者に対する支援、「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(令和4年6月策定)の周知啓発等を行う。

 3 個人のキャリア形成と職業能力開発支援の充実

  (1) キャリア意識の醸成とキャリア形成支援

 就業構造が大きく変化する中、労働者の仕事に対する価値観や生活スタイルの多様化が進むとともに、職業人生も長期化しており、キャリアや働き方の多様化が進んでいる。また、企業においては、人材の最適配置やエンゲージメント向上による生産性向上を実現し、処遇向上等を図っていくため、キャリア形成や能力開発に取り組むことが求められている。

 労働者が自身の将来のキャリアについて考え、主体的に能力開発に取り組み、自らの能力を発揮していく自律的・主体的なキャリア形成に取り組むためには、個人が、労働市場における仕事とスキルの情報をもとに、「何をしたいか、何ができるか、何が必要か」を考え、職業生活の計画であるキャリアプランを立てた上で、職業能力の獲得・向上に努めていくことが必要である。

 一方、雇用と仕事を取り巻く環境の変化が激しくなる中、労働者個人が単独で、労働市場や会社の状況、自分の能力等を適切に把握して、キャリアの目的を定め、それに向かって能力開発を行うことは難しくなってきている。このため、キャリアコンサルティング機会の充実を通じて、労働者がキャリアプランを作成し、定期的に振り返り、状況に応じて見直すことに対する伴走支援が必要である。

 また、企業が個人に対するキャリア形成の伴走支援を行うには、職場の上司の役割が重要となることから、上司のキャリア相談を専門的な立場から支援する体制を整備することが必要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 労働者や企業等がキャリアコンサルタントを活用しやすくなるよう、相談プロセスや、キャリアコンサルタントが有する知識や経験を可視化するとともに、労働者の多様なニーズに対応できるようキャリアコンサルタントの育成・確保を推進する。

    ・ キャリア形成・リスキリング支援センター等においてキャリアコンサルティングの機会を拡充するとともに、企業が労働者の自律的・主体的なキャリア形成を促進・支援するための総合的な取組であるセルフ・キャリアドックの導入を促進する。

    ・ キャリアコンサルタントの専門性の向上に向け、活動領域ごとに求められる能力を体系的に整理するとともに、企業の理解の促進や職場の管理者への助言等についての講習の設定及び実践的な学びの機会の確保に向けた取組を促進する。

    ・ キャリアコンサルティングの活用促進のため、キャリア形成の必要性等やキャリアコンサルティングの効果等に係る社会全体の理解を促進する取組を行う。

  (2) 個人の職業能力開発支援

 労働者が能力開発を行う上で、自己啓発は企業から提供される職業訓練と同様に重要な能力開発の手段であるが、自己啓発に取り組む労働者は36.8%という状況にある。自己啓発を行う上での問題点として、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」、「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」という時間的制約や、「自分の目指すべきキャリアがわからない」等のキャリア形成上の理由を挙げる者が多い(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」)。

 有給の教育訓練休暇制度の導入も含め、企業が労働者の自己啓発やキャリア形成を支援することを後押しする取組の促進、労働者が働きながら自ら学び、能力を向上していく機会の充実が重要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 労働者が離職せずに生活費等への不安なく教育訓練に専念できるよう、教育訓練休暇制度の周知や、雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金制度の活用促進、企業における環境整備のための人材開発支援助成金の活用による教育訓練休暇制度の導入支援等を推進する。

    ・ 労働者が自ら学び、能力を向上していく機会を充実するため、教育訓練給付金の指定講座について、夜間・休日に受講できる講座やオンラインで受講できる講座をはじめとして講座の拡大を図る。

    ・ キャリア形成・リスキリング支援センター等においてキャリアコンサルティングの機会を拡充するとともに、企業が労働者の自律的・主体的なキャリア形成を促進・支援するための総合的な取組であるセルフ・キャリアドックの導入を促進する。

 4 企業の職業能力開発への支援の充実

  (1) DX関連を含めた職業能力開発の充実のための環境整備

 人材確保が難しくなる中で、企業が、雇用する正規雇用労働者及び非正規雇用労働者の能力開発を推進するとともに、DXによる業務効率化を図ることを通じて労働生産性を向上させていくことがより一層重要である。また、企業における人材育成の取組は人材の確保及び定着を推進する上でも重要性が増してきている。しかしながら、労働者の人材育成に関して「問題がある」とする事業所割合は約8割に上り、その主な理由としては、「指導する人材が不足している」が59.5%、「人材育成しても辞めてしまう」が54.7%、「人材育成を行う時間がない」が47.4%となっている(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」)。

 企業が雇用する労働者の職業能力開発を段階的かつ体系的に行うため、職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)においては、事業内計画の作成や推進者の選任を企業の努力義務としており、事業内計画の作成に当たっては、経営方針を実現するために必要な人材像等を定めた人材育成方針や、労働者の配置、賃金、昇給等に関する方針を定めた雇用管理方針等を盛り込むこととしている。労働供給制約が強まる中では、限られた時間の中で効果的な訓練を行う必要があり、人材育成の目標の明確化や人材育成のPDCAによるマネジメント体制の整備、習得したスキルを配置や処遇に反映させる仕組みの整備を行うことが重要である。しかしながら、事業内計画を作成している企業や推進者を選任している企業はいずれも2割程度となっており、事業内計画の作成や推進者の選任を促進するとともに、その機能が発揮されるよう支援等を実施する必要がある。あわせて、各企業の状況や課題に合わせた好事例の提供を行うなど個別化された伴走支援の仕組みが求められる。

 また、DXの推進等により作業の省力化を図ることで時間を生み出し、それをDX等による効率化に適さない業務や職業能力開発に充てることで、生産性を高めることも重要である。多くの企業がDXを進める上での課題としてDXを推進する人材の育成を挙げており、DXを推進する人材の育成や労働者全体のデジタルリテラシーの向上等に係る企業の取組を支援していくことが重要である。また、中小企業においては、経営者や役員がDX推進の主な発案者となるため、これらの者に対して、人材戦略を立てる企画段階から支援をすることが重要である。

 さらに、企業の職業能力開発の効果を最大限発揮するためには、労働者がその意義を理解し、意欲をもって学習に取り組むことができるよう、労働者が自律的・主体的にキャリア形成を行う意識を持つことや、企業の経営者が労働者に学び・学び直しの重要性を伝える等、企業の人材戦略と個人のキャリアプランをすり合わせ、適切な能力開発機会を提供することも重要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 事業内計画の作成や推進者の選任を促進するとともに、その機能が発揮されるよう、例えば、全社的な人材育成方針を含む事業内計画の記載に係るモデルや好事例の提示、推進者に対する支援、労使でコミュニケーションを取りながら事業内計画を作成するなど労使協働の取組の促進、「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」の周知啓発等を行う。

    ・ 効果的な在職者向けの訓練の実施のため、JEEDが設置している生産性向上人材育成支援センター(以下単に「生産性向上人材育成支援センター」という。)や中小企業リスキリング支援事業により、事業戦略を踏まえて人材戦略を立てる企画段階から経営者等にアドバイスをする等の伴走支援を推進する。その際、生産性向上人材育成支援センターにおいては、中小企業・小規模事業者等の経営支援を行うよろず支援拠点等と連携した支援を実施する。

    ・ 企業の事業内計画の作成や人材管理等の仕組みの整備等に対して伴走支援する専門人材の育成のため、キャリアコンサルタントが人材マネジメント関連の専門家と協働して伴走支援に取り組む体制を整備する。

    ・ 公的職業訓練や人材開発支援助成金等において、DXを推進する人材の育成や労働者全体のデジタルリテラシーの向上支援を引き続き推進するとともに、生産性向上人材育成支援センターにおいて、DX関連も含めた企業に対する人材育成の支援の充実を図る。

    ・ 企業がキャリア面談とキャリア研修などを組み合わせて、労働者の自律的・主体的なキャリア形成への取組を体系的・定期的に支援するセルフ・キャリアドックを普及・促進する。

  (2) 中小企業に対する人材育成の支援

 企業規模別に計画的OJTやOFF-JTの実施率をみると、規模が小さいところほど実施率が低く、中小企業において職業能力開発の取組に困難を抱える状況が見られる。また、技能継承の取組についても、若年・中堅層への教育訓練による技能・知見等の伝承や、伝承するべき技能・知見等のマニュアル化やデータベース化等の積極的な対策は、事業所規模が大きいほど進んでいる(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」)。

 中小企業においては、相対的に離職率が高い状況にあるほか、職業能力開発の専任者がいないことが多いため、能力開発に計画的に取り組むことが難しい、受講者数が少なく社内でOFF-JTを企画しにくい、研修を受けている間の代替要員の確保が難しいなど多様な課題を抱えていることから、「個別化」した伴走支援を行うことが重要である。

 また、OFF-JTの実施の際に活用する外部の教育訓練機関に関する情報を得られるよう支援することも重要である。

 さらに、中小企業1社では職業能力開発に対応することが難しい状況もあるため、産業・地域等の単位で複数の企業が集まり「共同・共有化」した人材育成を支援することも必要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 職業能力開発の専任者を置くことが困難な中小企業に対して、生産性向上人材育成支援センターや中小企業リスキリング支援事業により、事業戦略を踏まえて人材戦略を立てるという企画段階から経営者等にアドバイスを行うとともに、訓練内容に合わせ外部の教育訓練機関に関する情報の提供を行う等の伴走支援を行う。その際、生産性向上人材育成支援センターにおいては、中小企業・小規模事業者等の経営支援を行うよろず支援拠点等と連携した支援を実施する。

    ・ 産業・地域単位での複数企業の連合体が「共同」で行う人材育成に関して、産業・地域単位の複数の企業による訓練の事例の提供を行うとともに、産業・地域等の単位での訓練を支援する効果的な仕組みの検討を行い、必要な施策を講ずる。

    ・ 企業が労働者にOFF-JTを実施する際に必要となる業務代替に対する支援等について検討を行い、必要な施策を講ずる。

 5 多様な労働者の能力発揮に向けた職業能力開発の推進

 今後、労働供給制約が強まる中では、労働参加を進め、労働者一人ひとりがスキルを向上させて、その持てる力を発揮し、労働生産性を向上させ、処遇向上等を実現していくことが一層重要となる。

 一方で、仕事と家庭の両立を重視するなど働く意識の変化も背景に労働者の求める働き方が多様化していることを踏まえ、職業能力開発についてもそれぞれのニーズに応じて個別化した支援策を講じ、社会全体としてスキルを底上げしていく必要がある。

  (1) 非正規雇用労働者への支援

 現状、計画的OJT、OFF-JTの実施率については、正規雇用労働者と正規雇用労働者以外の間で大きな開きがある。また、自己啓発を行った労働者の割合を正規雇用労働者・正規雇用労働者以外の別にみると、正規雇用労働者以外の取組割合が相対的に低くなっている(厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」)。

 このような状況も踏まえ、非正規雇用労働者については、職業能力開発機会を確保することが必要であり、公的な職業訓練において支援していくことが重要である。特に、30代以降で女性の非正規雇用労働者の割合が増加する傾向にある中、継続的な能力開発機会の確保が課題である。

 また、非正規雇用労働者に対する職業能力開発については、家事、育児、介護等との両立を理由に非正規雇用労働者を選択する労働者が一定数存在することなどを考慮し、オンライン訓練を組み合わせた方法により、効果的・効率的に行うことが必要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 非正規雇用労働者等の能力開発機会の充実を図るため、非正規雇用労働者等が働きながら学びやすいオンラインを活用した職業訓練を全国展開するほか、教育訓練給付金による支援、人材開発支援助成金を活用した正規雇用労働者への転換等への支援を引き続き推進する。

    ・ 非正規雇用労働者などキャリア形成の機会に恵まれにくい労働者のキャリアアップを図るため、ハローワークにおいてキャリアコンサルティング、能力向上、職業紹介までの切れ目ない支援サービスを実施する。

  (2) 中高年労働者への支援

 65歳以上の就業率の上昇により、就業者の年齢構成のうち60歳以上の割合が増加していくことが見込まれており、労働供給制約が強まる中では、高齢期も視野に入れたキャリア形成を考えて労働者を支援していく必要性が高まっている。

 中高年労働者の職業能力開発上の課題は、組織内における役割の変化への対応が求められること、若年層と比べてOJTやOFF-JTの機会が乏しいこと、デジタル化など時代の変化への対応が求められることなどが挙げられる。また特に、リスキリングを行い、新しい職務に挑戦する中高年労働者は、習得したスキルを実践する機会が乏しいという課題がある。実務経験を組み込んだ訓練は高い効果が期待されるため、中高年労働者についても当該経験が得られる訓練機会を増やすことが重要である。

 さらに、労働者が高齢期にわたって望むキャリアを形成するには、労働市場の「見える化」によるスキル等の情報や企業が発信する職業能力開発の情報等を活用して、中年期からキャリアの棚卸しを行い、職業生活設計を考える取組を強化することが必要である。その際、同世代の労働者との企業を超えた横のつながりを持つこと等も重要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 中高年労働者の職業能力開発上の課題に対応するため、生産性向上支援訓練(JEED)のミドルシニアコースについて、「役割の変化への対応コース」、「技能・ノウハウ継承コース」といったミドルシニア向けのコースを実施するとともに内容の充実を図る。

    ・ 実務経験を積む機会の確保を図るため、中高年労働者に対するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練についても人材開発支援助成金の対象となるよう見直しを行う。

    ・ 企業を超えた同世代との横のつながりを持つこと等も含め、中高年労働者に対するキャリア形成支援を強化するため、キャリア形成・リスキリング支援センター等における中高年齢層に対する支援を推進する。

  (3) 若者への支援

 若者人口が減少傾向にある中、大学卒業者は長期的には増加傾向である一方で、高等学校卒業者は長期的には減少傾向にあり、新規高等学校卒業者の求人倍率は上昇傾向となっている。

 また、学校等を卒業後、就職して3年以内に離職する者の割合は、高等学校卒業者及び大学卒業者において、近年は微増傾向にあり、直近は低下したものの、今後も低下傾向で推移するか否かは、なお見通し難いところである(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」)。若者の有効求人倍率の高さや職業意識の変化により、労働移動が以前よりも容易に行われる状況が想定されるが、キャリアプランを持たない若者もおり、労働移動が必ずしも職業能力の開発・向上につながらないことも懸念される。このような状況に対応するためには、学生等の時期から職業意識の醸成やライフステージの変化を見据えた自律的・主体的なキャリア形成支援を行うことが重要である。

 また、特に、キャリア形成の初期段階にある若者に対しては、企業が労働者の人材育成に関する方針や計画を策定し、キャリアに関する相談の機会を提供するなど若者に寄り添った取組を実施することが有効である。加えて、企業を超えて地域等で若者を育てていく観点も重要であり、そのような人材育成の取組を支援することも必要である。

 さらに、近年、不登校児童生徒数が大きく増加するなど、就労に当たって困難を抱える一定の層が確認でき、今後増えていくことが懸念されていることから、専門家による支援の強化や学校をはじめ多様な主体と連携したアウトリーチを含めた支援の充実を図ることが必要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 学生等の時期から職業意識の醸成を行うため、国や学校が連携し、在学段階からキャリアについて相談する機会を増やす等の取組を推進する。

    ・ 学校生活から就労への円滑な移行のため、キャリア教育を行う専門人材の養成が求められていることから、適切にキャリア教育を実施できるようキャリアコンサルタントを養成する。

    ・ 若者のキャリア形成を支援するため、ハローワークやキャリア形成・リスキリング支援センターにおけるキャリアコンサルティング機会の確保やセルフ・キャリアドックの導入を促進する。

    ・ 若者の採用・育成に積極的で雇用管理が優良な企業を認定するユースエール認定制度の活用を促進する。

    ・ 地域で働く青少年を対象とした研修会や座談会等の開催を通じて、地域で活躍する担い手となる青少年の育成を支援するとともに、地方公共団体とも連携しつつ、産業・地域等の単位で複数の企業が行う訓練の好事例を広げる取組や業界単位での訓練を支援する仕組み等を検討し、必要な施策を講ずる。

    ・ 就労に当たって困難を抱える若者に対する、キャリアコンサルタントや臨床心理士等の専門家を活用した支援や、学校をはじめとする多様な主体と連携したアウトリーチを含めた支援等、個々のニーズや課題に応じた支援の充実を図っていく。

  (4) 女性への支援

 女性の活躍推進の観点から、職業能力開発機会の充実とともに、女性が直面している多様な課題やニーズを捉えたきめ細かな支援策を講ずる必要がある。また、就業率という量的な面だけではなく、育児、出産等により一旦離職した後に非正規雇用労働者となる場合や、離職せずに継続就業をした場合であってもキャリアアップの機会が制約される傾向もあることから、雇用の質や能力発揮のためのキャリア形成の面にも焦点を当てていくべきである。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 子育て中の女性、母子家庭の母等を含め、一人ひとりの希望、状況等に応じたキャリアコンサルティングを提供するとともに、育児、出産等により離職した方が就業意欲に応じた再就職やキャリアアップができるよう、公的職業訓練において職業能力開発の機会を提供するほか、子育て中の女性が受講しやすくなるよう育児等の時間に配慮した訓練コースや託児サービス付きの訓練コースの設定等を実施する。

    ・ 非正規雇用労働者等が働きながら学びやすいオンラインを活用した職業訓練を全国展開する。

  (5) 障害者への支援

 民間企業等の雇用障害者数が伸びている中、障害者職業訓練の受講者数は平成22年度をピークに減少している。また、障害者職業訓練の主な対象について、かつては身体障害者であったところ、近年では、精神障害者や発達障害者が増加している状況である。障害特性や個別ニーズ、企業が求める能力等を踏まえた訓練機会の確保・拡充や、障害者が企業の発展に寄与する人材としてやりがいを持って働き続けることができるよう、訓練受講者に対する就職・定着支援の強化等が重要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 障害者職業能力開発校(以下「障害者校」という。)において、一般の公共職業能力開発施設(以下「一般校」という。)で受入れが困難な重度障害者や、特に近年増加傾向にある精神障害者や発達障害者を積極的に受け入れるとともに、効果的な職業訓練が実施できる環境整備を推進する。

    ・ 障害者校における職業訓練及び障害者委託訓練について、オンラインによる職業訓練の普及等、障害者や企業のニーズ等に応じた効果的な職業訓練を推進する。

    ・ 一般校への障害者職業訓練のノウハウの共有や精神保健福祉士等の配置、施設のバリアフリー化の推進等により、一般校においても障害者が訓練を受けやすい環境整備を推進する。

    ・ 障害者委託訓練の質の向上を目的とし、有効な訓練を実施できる環境整備を推進するとともに、在職者訓練についても普及・活性化に向けた取組を推進する。

    ・ 障害者職業訓練受講者に対する就職支援及び定着支援の体制確保に向け、各種協議会(地域職業能力開発促進協議会等)の活用、ハローワークや障害福祉サービス等との連携を強化する。

    ・ 全国障害者技能競技大会(アビリンピック)を引き続き実施する。

  (6) 就職やキャリアアップに特別な支援を要する方への支援

 就職氷河期世代など、新卒時に希望する就職ができず、不本意ながら不安定な仕事に就いている、あるいは、無業の状態にあるなど、経済社会の影響により様々な課題に直面する者に対し、個別の課題やニーズに応じたきめ細かい支援を効果的に実施していくことが必要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議の決定を踏まえ、様々な課題に直面している就職氷河期世代に対して、その周辺の世代と合わせ、リスキリング支援等による「就労・処遇改善に向けた支援」及び就労に困難を抱える者の職業的自立に向けた支援等による「社会参加に向けた段階的支援」に取り組む。

  (7) 外国人への支援

 人材育成を通じた国際貢献を目的とする技能実習制度については、制度目的と実態がかい離しているという指摘等を踏まえて、制度を発展的に解消し、新たに人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度が創設されたところであり、令和9年4月の施行に向け、円滑な施行に努める。また、日系人等の定住外国人等に対して、その日本語能力等に配慮した職業訓練を実施する等、必要な支援を着実に進めていくことが重要である。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 育成就労制度の円滑な施行に向けた取組を実施するとともに、外国人育成就労機構の体制整備を行う。

    ・ 日本語でのコミュニケーションに課題を抱える外国人等が職業訓練を受けるに当たり、訓練内容を理解する上で必要な支援等を実施する。

  (8) 現場人材のスキル向上と人材確保のための環境整備

 今後、進歩が激しいAI・ロボット等を使いこなす仕事や人間でしかできない仕事に求められる技能の重要性が増すと考えられる。こうした新しい技能を身につけた現場人材(生産工程、建設、輸送・機械運転、介護、サービスなどの職業)の育成を強化していくことが重要である。

 現場人材の確保と生産性の向上を図るには、現場人材のスキルの標準化と「見える化」を進めることで処遇向上等につなげ、仕事の魅力を高めるとともに、デジタル技術等の活用による業務効率化や省人化を図ることの両者に戦略的に取り組むことが必要となる。また、現場人材に対し必要なデジタルスキルの習得を支援する方策を強化すべきである。このような取組は、業界や業所管省庁とも協力しながら進めていくことが重要であり、その進め方について検討することが必要となる。

    こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

    ・ 団体等検定等の職業能力評価制度の活用促進や、業界ごとに資格や経験等と処遇を紐付けるキャリアラダーを構築・整備するための調査研究の実施等、現場人材のスキルの標準化と「見える化」を処遇向上等につなげる取組を推進する。

    ・ AI・ロボット等の技術革新の進展等を踏まえ、現場人材を含め、デジタルリテラシーの向上や生産性向上のための在職者訓練・生産性向上支援訓練を積極的に推進するとともに、職業能力開発大学校及び職業能力開発短期大学校の訓練カリキュラムの抜本的な見直しを実施する。

 6 技能五輪国際大会を契機とした技能の振興

 デジタル等の技術が進展する中で、改めて技能の重要性が高まると考えられ、我が国の産業・企業の国際競争力を高めるためには技能労働者の人材育成の取組をより一層推進していく必要がある。

 その一方で、技能者を目指す若者は減少している状況にある。2028年技能五輪国際大会が愛知県で開催されることを契機として、関係省庁や業界団体、技能士等とも連携しつつ、中学・高校生の段階から技能を尊重する機運を醸成するとともに、技能労働者の能力向上や技能継承のための取組の強化を進める必要がある。

   こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

   ・ 日本のWSI(WorldSkills International)加盟組織である中央職業能力開発協会と都道府県職業能力開発協会との緊密な連携による着実な技能検定の実施(技能検定委員の確保も含む)、技能五輪国際大会に出場する選手の一層の競技力強化、未派遣職種の解消に向けた取組の実施、技能五輪全国大会、技能グランプリ等の技能競技大会の実施を通じて技能振興の取組を推進する。

   ・ 2028年の技能五輪国際大会の開催地である愛知県や2028年技能五輪国際大会日本組織委員会等と連携し、大会の実施や2028年技能五輪国際大会の開催を契機とした技能振興、技能の魅力発信等について、「リスキリングを促進する国民運動」の取組とも連携しながら推進する。

   ・ 技能者の地位と技能水準の向上にもつながるよう、「卓越した技能者の表彰」制度の普及の促進や、業界団体や学会等における表彰・評価等の活動を促進する。

   ・ 若年層に対する技能尊重の機運醸成として、若年技能者人材育成支援等事業において、「ものづくりマイスター」を工業高校や中小企業等に派遣し、実践的な実技指導やものづくりの魅力を伝える取組を実施する。

   ・ ものづくりの高付加価値化によって、技能の魅力向上を図るため、熟練技能者の知見等の継承や顧客ニーズ等に対応する知識・技能の習得のための体制を整備する。若手の技能人材等の確保・育成のため、地域の技能士・業界団体等の連携による人材育成の体制を整備する。

 7 職業能力開発分野の国際連携・協力の推進

 経済のグローバル化が進展し、我が国の企業の海外進出等が活発化する中で、グローバル人材の活用・育成が重要となっている。その一方で、国際社会の一員として国際協力を推進することの重要性はますます高まっている。これまでも我が国は、開発途上地域等が自立的発展を実現するための根幹となる人材育成について、自らの経験や知見、教訓及び技術をいかし、技術協力や人材の育成・確保のためのシステム作り等の「質の高い成長」に向けた支援を実施してきたところであり、引き続き、こうした支援を効果的・効率的に推進していく必要がある。

   こうした方向性を踏まえ、以下のような施策を講ずる。

   ・ 「技能評価システムを通じた技能移転事業」について、我が国の強みであるものづくり分野や中小企業が持つノウハウを最大限活用しながら推進し、日本型技能評価システムである技能検定のノウハウをアジア地域の開発途上国に移転する。

   ・ 外国人の技能実習については、育成就労制度施行後においても経過措置として実習を継続する技能実習生もいるため、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号)に基づき、引き続き技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図っていく。