高年齢者等職業安定対策基本方針を定める件(厚生労働一三二)
2026年3月31日

厚生労働省 第百三十二号

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)第六条第一項の規定に基づき、高年齢者等職業安定対策基本方針を次のように定め、令和八年四月一日から適用することとしたので、同条第四項の規定に基づき告示する。なお、高年齢者等職業安定対策基本方針(令和二年厚生労働省告示第三百五十号)は、令和八年三月三十一日限り廃止する。

  令和八年三月三十一日

厚生労働大臣 上野賢一郎

   高年齢者等職業安定対策基本方針

目次

 はじめに

 第1 高年齢者の就業の動向に関する事項

 第2 高年齢者の就業の機会の増大の目標に関する事項

 第3 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項

 第4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項

はじめに

 1 方針のねらい

 少子高齢化が急速に進行し、本格的な人口減少社会が到来する我が国においては、経済社会の活力を維持・向上するため、全ての年代の人々がその能力を十分に発揮し、経済社会の担い手として活躍できるよう環境整備を進めることが必要である。

 特に、平均寿命や健康寿命が延伸する中、「働けるうちはいつまでも働きたい」と考える高年齢者は多く、人口減少がもたらす人手不足が深刻化する中では、高年齢者の就業意欲の高さは強みともいえる。企業においても、高年齢者の活躍に対する期待は高まりをみせており、働く意欲がある高年齢者が、年齢にかかわりなく、その希望や能力に応じて活躍し続けられる環境を整備していくことは今後ますます重要となる。

 働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者の活躍の場を整備するため、令和2年第201回通常国会において、70歳までの就業機会の確保を事業主の努力義務とすること等を内容とする、雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号。以下「令和2年改正法」という。)の規定による高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。以下「法」という。)の改正が行われた。この基本方針は、令和2年改正法による改正の趣旨等を踏まえ、高年齢者の雇用・就業についての目標及び施策の基本的考え方を、労使を始め国民に広く示すとともに、事業主が行うべき諸条件の整備等に関する指針を示すこと等により、高年齢者の雇用の安定の確保、再就職の促進及び多様な就業機会の確保を図るものである。

 また、70歳までの就業機会の確保に関する施策を推進するに当たっては、65歳までの雇用機会が確保されていることが前提である。令和6年度末には、労使協定による継続雇用制度の対象者基準を適用できる経過措置が終了し、令和7年4月からは、希望者全員を対象とする65歳までの高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入又は定年の定めの廃止をいう。以下同じ。)が全面的に施行されている。引き続き、その確実な実施に向けた取組を行うことが必要である。

 さらに、今後、就職氷河期世代の多くが高齢期を迎えることを踏まえると、今から、それらの者の将来を見据えた支援に取り組む必要がある。そのため、働く意欲のある誰もが、その能力を十分に発揮し、年齢に関わらず働き続けることができる環境の整備に向け、70歳までの就業機会の確保や高齢期の処遇の改善に向けた取組、有期雇用労働者の期間の定めのない安定した雇用(以下「無期雇用」という。)への転換を促進する取組等について、一層推進していく必要がある。

 2 方針の対象期間

 この基本方針の対象期間は、令和8年度から令和11年度までの4年間とする。ただし、この基本方針の内容は適用日時点の法の規定を前提とするものであることから、高年齢者の雇用等の状況や、労働力の需給調整に関する制度、雇用保険制度、年金制度、公務員に係る再任用制度等関連諸制度の動向に照らして、必要な場合は改正を行うものとする。

第1 高年齢者の就業の動向に関する事項

 1 人口及び労働力人口の高齢化

 我が国の人口は、平成20年(2008年)をピークに減少に転じ、現在、本格的な人口減少社会が到来している。65歳以上の高年齢者の人口は、令和2年(2020年)の約3,603万人から、令和22年(2040年)には約3,928万人になると推計されており、20年間で約325万人増加し、2.9人に1人が65歳以上の高年齢者となることが見込まれる。さらに、令和52年(2070年)には、2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上の高年齢者となることが見込まれている。

 これに対し、15~64歳の生産年齢人口は令和2年(2020年)の約7,509万人から、令和22年(2040年)には約6,213万人になると推計されており、20年間で約1,296万人減少することが見込まれる。

 一方、労働力人口については、令和2年(2020年)の約6,902万人から、令和22年(2040年)に6,536万人になると推計されており、人口減少ほどの落ち込みは見られない。65歳以上の労働力人口は令和2年(2020年)の約919万人から、令和22年(2040年)には1,262万人に増加することが見込まれており、今後も、高年齢者の就業促進はその重要性が更に増すことが期待される(総務省統計局「国勢調査」(令和2年)、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(令和5年)の出生中位(死亡中位)推計、独立行政法人労働政策研究・研修機構「労働力需給の推計-労働力需給モデル(2023年度版)による将来推計-」(2024)の成長率ベースライン・労働参加漸進シナリオ)。

 2 高年齢者の雇用・就業の状況

 高年齢者の雇用失業情勢を見ると、令和6年(2024年)における完全失業率は、年齢計が2.5%、60~64歳層が2.8%、65~69歳層が2.5%となっている。これを男女別に見ると、男性については、年齢計が2.7%、60~64歳層が3.1%、65~69歳層が3.0%であるのに対し、女性については、年齢計及び60~64歳層ともに2.4%、65~69歳層が1.8%となっている。また、65歳以上の非労働力人口に占める就業希望者数は、令和6年(2024年)においては45万人となっており、前年から約4万人増加している(総務省統計局「労働力調査」)。

 高年齢者の就業率については、65歳までの高年齢者雇用確保措置の導入が義務付けられた平成18年(2006年)4月1日以降、上昇傾向で推移し、令和6年(2024年)においては、60~64歳層が74.3%、65~69歳層が53.6%となっている。これを男女別にみると、男性については、60~64歳層が84.0%、65~69歳層が62.8%、女性については、60~64歳層が65.0%、65~69歳層が44.7%となっている。

 また、これらを10年前(平成26年(2014年))と比較すると、60~64歳層が13.6ポイント上昇(男性は9.7ポイント、女性は17.4ポイントそれぞれ上昇)、65~69歳層も13.5ポイント上昇(男性は12.3ポイント、女性は14.2ポイントそれぞれ上昇)しており、女性や65歳以上の者を中心に高年齢者の労働市場への参加は着実に進展している。

 さらに、国際的に比較しても、我が国高年齢者の就業率は、男女ともに群を抜いて高い水準にある。特に、令和6年(2024年)における65~69歳層の就業率はOECD加盟国平均の約2倍(男性はOECD加盟国平均が32.3%であるのに対し、我が国は62.8%、女性はOECD加盟国平均が20.9%であるのに対し、我が国は44.7%)であり、高い水準を示している(総務省統計局「労働力調査」、OECD Data Explorer)。

 また、高年齢者の雇用形態を見ると、令和6年(2024年)においては、役員を除く雇用者のうち、60~64歳層で正規の職員・従業員が44.6%、パート・アルバイトが30.1%、契約社員が11.3%、嘱託が9.7%と続く。65~69歳層では、正規の職員・従業員が25.5%、パート・アルバイトが49.0%、契約社員が11.5%、嘱託が7.7%と続いており、年齢が高くなるにしたがって、雇用形態は多様なものとなっている(総務省統計局「労働力調査」)。

 また、高年齢者の勤務形態を見ると、就業者数に占める月末1週間の就業時間が35時間以上の従業者の割合は、令和6年(2024年)において、60~64歳層で59.6%、65~69歳層で42.1%となっており、10年前(平成26年(2014年))と比較すると、60~64歳層は3.5ポイント上昇、65~69歳層は3.9ポイント減少している。年齢が高くなるにしたがって就業時間は減少する傾向にあるが、月末1週間の就業時間が35時間以上の従業者の割合は60~64歳層では半数を超えている(総務省統計局「労働力調査」)。

 3 高年齢者に係る雇用制度の状況

  (1) 定年制及び継続雇用制度の動向

 令和7年6月1日現在、常用労働者が21人以上の企業のうち99.9%が65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みである。そのうち、定年の定めの廃止の措置を講じた企業の割合は3.9%、定年の引上げの措置を講じた企業の割合は31.0%、継続雇用制度の導入の措置を講じた企業の割合は65.1%となっている。

 また、令和7年6月1日現在、常用労働者が21人以上の企業のうち、70歳までの高年齢者就業確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止又は法第10条の2第2項に掲げる創業支援等措置をいう。以下同じ。)を講じた企業の割合は34.8%である。そのうち、定年の定めの廃止の措置を講じた企業の割合は3.9%、定年の引上げの措置を講じた企業の割合は2.5%、継続雇用制度の導入の措置を講じた企業の割合は28.3%、創業支援等措置を講じた企業の割合は0.1%となっている(厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」(令和7年))。

 また、継続雇用制度については、一般的に勤務延長制度(就業規則等で定められた定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用する制度)と再雇用制度(就業規則等で定められた定年年齢に到達した者をいったん退職させた後、再度雇用する制度)に分類される。高年齢者雇用確保措置や高年齢者就業確保措置を講じている企業において、勤務延長制度の雇用契約期間を1年とする企業の割合は47.0%、1年を超える期間とする企業の割合は12.0%、6ヶ月以上1年未満とする企業の割合は3.3%、6ヶ月未満とする企業の割合は2.7%、期間を定めない企業は31.9%となっている。また、再雇用制度の雇用契約期間について1年とする企業の割合は71.6%、1年を超える期間とする企業の割合は8.8%、6ヶ月以上1年未満とする企業の割合は3.9%、6ヶ月未満とする企業の割合は2.1%、期間を定めない企業は13.5%となっている(厚生労働省「就労条件総合調査」(令和4年))。

  (2) 賃金の状況

   イ 賃金決定の要素

 過去3年間に賃金制度の改定を行った企業(40.4%)では、その改定内容(複数回答)として、「職務・職種などの仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」(26.5%)、「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」(20.9%)、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」(17.3%)を多く挙げている。これを5年前(平成29年(2017年))の調査結果と比較すると、「職務・職種などの仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」については5.2ポイント上昇、「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」については2.4ポイント上昇、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」については1.2ポイント上昇している(厚生労働省「就労条件総合調査」(令和4年))。

   ロ 高齢労働者の賃金

 令和6年(2024年)における一般労働者の年齢階級別所定内給与については、60~64歳層が317.7千円、65~69歳層が275.5千円であり、これを5年前(令和元年(2019年))と比較すると、それぞれ12.9%、11.3%増加している。また、55~59歳層の所定内給与を100とした場合における60~64歳層の所定内給与の水準は81.0であり、これを5年前(令和元年(2019年))の水準と比較すると3.7ポイント上昇している(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年))。

 さらに、企業における高齢労働者の定年後の賃金水準について、令和6年(2024年)においては、定年前の8割以上とする企業が全体の39.6%となっており、5年前(令和元年(2019年))の調査結果と比較すると、15.1ポイント上昇している(内閣府「多様化する働き手に関する企業の意識調査」(令和元年)、内閣府「人手不足への対応に関する企業意識調査」(令和6年))。

   ハ 転職者の賃金

 転職時の賃金変動の状況をみると、1割以上の減少となっている者の割合は45~49歳で16.5%、50~54歳で21.0%、55~59歳で30.7%、60~64歳で53.9%となっており、概ね年齢が高くなるにつれて上昇する傾向にある。ただし、65歳以上では34.7%となっており、その割合は低下する。また、この割合を5年前(令和元年上半期)の調査結果と比較すると、60~64歳で11.2ポイント、65歳以上で13.1ポイント低下している(厚生労働省「雇用動向調査」(令和6年))。

 4 高年齢者の職業能力開発の状況

 60歳以上の労働者の職業能力開発の状況についてみると、OFF-JTの受講率については、全体の労働者の受講率が37.0%であるのに対し、60歳以上の労働者の受講率は21.1%となっている。また、自己啓発の実施率については、全体の労働者の実施率が36.8%であるのに対し、60歳以上の労働者の実施率は20.6%となっている(厚生労働省「能力開発基本調査」(令和6年度))。

 5 高年齢者の労働災害の状況

 高齢化の進展に伴い、令和6年(2024年)においては、雇用者全体に占める60歳以上の割合は19.1%となっている中で、労働災害による休業4日以上の死傷者に占める60歳以上の割合は30.0%に達している。また、令和6年(2024年)の60歳以上の男女別の労働災害発生率(度数率)をみると、60~64歳では男性が1.71、女性が2.32であるのに対し、65~69歳では男性が2.23、女性は3.37となっている。このように高年齢者は労働災害の発生率が高く、加齢に伴って労働災害発生リスクが高まる傾向にある(総務省統計局「労働力調査」、厚生労働省「労働者死傷病報告」)。

 6 高年齢者の就業意欲

 60歳以上の男女の就業意欲についてみると、収入を伴う仕事をしている者のうち、70歳くらいまで仕事をしたい者の割合が22.8%、75歳くらいまで仕事をしたい者の割合が20.1%、80歳くらいまで仕事をしたい者の割合が7.4%、働けるうちはいつまでも仕事をしたい者の割合が33.5%となっており、「70歳くらいまで」又はそれ以上の年齢まで仕事をしたいと考える者は8割を超えている(内閣府「高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)」(令和6年度))。

第2 高年齢者の就業の機会の増大の目標に関する事項

 高年齢者の職業の安定その他の福祉の増進を図るとともに、人口減少社会の中で経済社会の活力を維持・向上するためには、個々の企業の実情を踏まえつつ、本人の希望や能力に応じ、年齢にかかわりなく働ける企業の拡大を図り、高年齢者の雇用の場の拡大に努めること等により、高年齢者の就業の機会を確保し、生涯現役社会を実現することが必要である。

 また、令和7年度からは、公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が男性については65歳へ引き上げられたほか、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第78号)による改正後の法に基づく、希望者全員の65歳までの高年齢者雇用確保措置が全面的に施行されたところである。引き続き、雇用と年金の確実な接続を図るため、全ての企業において、希望者全員の65歳までの高年齢者雇用確保措置が講じられるよう取り組む。

 加えて、働く意欲がある高年齢者が年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮し活躍するためには、本人と企業の双方のニーズに応じた多様な活躍の場を整備するとともに、個々の企業の実情に適した職務や能力等に基づく処遇を進めることが重要である。

 このため、令和2年改正法による改正後の法に基づき、70歳までの高年齢者就業確保措置が企業において更に拡大するよう、各種支援措置の強化を図るとともに、職務や能力等に基づく処遇の改善に取り組む企業への支援措置の強化を図ることで、高年齢者の活躍を後押しする。

 なお、高年齢者の雇用対策については、その知識、経験等を活かして働くことが、本人にとっても、雇用する企業においても有益であることから、企業における安定した雇用の確保が基本となるが、それが困難な場合にあっては、在職中からの再就職支援等により、高齢期においても、円滑に企業間の労働移動を行うことができるよう再就職促進対策の強化を図る。

 また、有期雇用労働者については、労働契約法(平成19年法律第128号)第18条第1項の規定による無期転換ルールに基づく無期雇用への転換が円滑に行われるよう、労働者や企業等に対して周知徹底を図る。さらに、就職氷河期世代を含む有期雇用労働者については、定年前に無期雇用への転換に取り組む事業主に対して助成措置の強化を図るとともに、高齢期に離職する労働者等に対しては、その早期再就職が可能となるよう再就職促進対策の強化を図る。

 また、高齢期には、個々の労働者の意欲や能力、健康、体力等の個人差が拡大し、その就労ニーズも雇用形態、労働時間等において多様化することから、このような、高齢期の多様なニーズに応じたきめ細かなマッチング支援に取り組むとともに、地域における雇用・就業機会の確保を図る。

 これらの施策により、高齢社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定。以下「大綱」という。)で示された以下の政策目標の達成を目指す。

 ・2029年までに、60~64歳の就業率79.0%以上

 ・2029年までに、65~69歳の就業率57.0%以上

 ・2029年までに、70歳までの高年齢者就業確保措置の実施率40.0%以上

第3 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項

 1 事業主が行うべき諸条件の整備に関する指針

 事業主は、高年齢者が年齢にかかわりなく、その意欲及び能力に応じて働き続けることができる社会の実現に向けて企業が果たすべき役割を自覚しつつ、労働者の年齢構成の高齢化や年金制度の状況等も踏まえ、労使間で十分な協議を行いつつ、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用機会の確保等のために次の(1)から(7)までの諸条件の整備に努めるものとする。

  (1) 募集・採用に係る年齢制限の禁止

 労働者の募集・採用に当たっては、労働者の一人ひとりに、より均等な働く機会が与えられるよう、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)において、募集・採用における年齢制限が禁止されているが、高年齢者の雇用の促進を目的として、60歳以上の高年齢者を募集・採用することは認められている。

 なお、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和41年労働省令第23号)第1条の3第1項各号に該当する場合であって、上限年齢を設定するときには、法第20条第1項の規定に基づき、求職者に対してその理由を明示する。

  (2) 職業能力の開発及び向上

 高年齢者の有する知識、経験等を活用できる効果的な職業能力開発を推進するため、必要な職業訓練を実施する。その際には、公共職業能力開発施設・民間教育訓練機関において実施される職業訓練も積極的に活用する。

  (3) 作業施設の改善等

 作業補助具の導入を含めた機械設備の改善、作業の平易化等作業方法の改善、照明その他の作業環境の改善並びに福利厚生施設の導入及び改善を通じ、身体的機能の低下等に配慮することにより、体力等が低下した高年齢者が職場から排除されることを防ぎ、その職業能力を十分発揮できるように努める。

 その際には、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)が有する高年齢者のための作業施設の改善等に関する情報等の積極的な活用を図る。

 また、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号。以下「安衛法等一部改正法」という。)による改正後の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)第62条の2第1項において、高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずることが事業者の努力義務とされ、同条第2項に基づき厚生労働大臣が当該措置の適切かつ有効な実施を図るための指針を公表しており、これに基づき、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善等に取り組む。

  (4) 高年齢者の職域の拡大

 企業における労働者の年齢構成の高齢化に対応した職務の再設計を行うこと等により、身体的機能の低下等の影響が少なく、高年齢者の知識、経験、能力等が十分に活用できる職域の拡大に努める。

 また、合理的な理由がないにもかかわらず、年齢のみによって高年齢者を職場から排除することのないようにする。

  (5) 高年齢者の知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進

 高年齢者について、その意欲及び能力に応じた雇用機会を確保するため、職業能力を評価する仕組みや資格制度、専門職制度等の整備を行うことにより、その知識、経験等を活用することのできる配置、処遇を推進する。

  (6) 勤務時間制度の弾力化

 高齢期における就業希望の多様化や体力の個人差に対応するため、短時間勤務、隔日勤務、フレックスタイム制等を活用した勤務時間制度の弾力化を図る。

  (7) 事業主の共同の取組の推進

 高年齢者の雇用機会の開発を効率的に進めるため、同一産業や同一地域の事業主が、高年齢者の雇用に関する様々な経験を共有しつつ、労働者の職業能力開発の支援、職業能力を評価する仕組みの整備、雇用管理の改善等についての共同の取組を推進する。

 2 再就職の援助等に関する指針

 事業主は、解雇等により離職することとなっている高年齢者が再就職を希望するときは、当該高年齢者が可能な限り早期に再就職することができるよう、当該高年齢者の在職中の求職活動や職業能力開発について、主体的な意思に基づき次の(1)から(4)までの事項に留意して積極的に支援すること等により、再就職の援助に努めるものとする。

  (1) 再就職の援助等に関する措置の内容

 再就職の援助等の対象となる高年齢者(以下「離職予定高年齢者」という。)に対しては、その有する職業能力や当該離職予定高年齢者から聴取した再就職に関する希望等を踏まえ、例えば、次のイからホまでの援助を必要に応じて行うよう努める。

   イ 教育訓練の受講、資格試験の受験等求職活動のための休暇の付与

   ロ イの休暇日についての賃金の支給、教育訓練等の実費相当額の支給等在職中の求職活動に対する経済的な支援

   ハ 求人の開拓、求人情報の収集・提供、関連企業等への再就職のあっせん

   ニ 再就職に資する教育訓練、カウンセリング等の実施、受講等のあっせん

   ホ 事業主間で連携した再就職の支援体制の整備

  (2) 求職活動支援書の作成等

 離職予定高年齢者については、求職活動支援書の交付希望の有無を確認し、当該離職予定高年齢者が希望するときは、その能力、希望等に十分配慮して、求職活動支援書を速やかに作成・交付する。交付が義務付けられていない定年退職者等の離職予定高年齢者についても、当該離職予定高年齢者が希望するときは、求職活動支援書を作成・交付するよう努める。

 求職活動支援書を作成するときは、あらかじめ再就職援助に係る基本的事項について、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と十分な協議を行うとともに、求職活動支援書の交付希望者本人から再就職及び在職中の求職活動に関する希望を十分聴取する。

 なお、求職活動支援書を作成する際には、当該交付希望者が有する豊富な職業キャリアを記載することができるジョブ・カード(職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第15条の4第1項に規定する職務経歴等記録書をいう。)の様式を積極的に活用する。

  (3) 公共職業安定所等による支援の積極的な活用等

 求職活動支援書の作成その他の再就職援助等の措置を講ずるに当たっては、必要に応じ、公共職業安定所等に対し、情報提供その他の助言・援助を求めるとともに、公共職業安定所が在職中の求職者に対して実施する職業相談や、地域における関係機関との連携の下で事業主団体等が行う再就職援助のための事業を積極的に活用する。

 また、公共職業安定所の求めに応じ、離職予定高年齢者の再就職支援に資する情報の提供を行う等、公共職業安定所との連携及び協力に努める。

  (4) 助成制度の有効な活用

 求職活動支援書の作成・交付を行うことにより、離職予定高年齢者の再就職援助を行う事業主等に対する雇用保険制度に基づく助成制度の有効な活用を図る。

 3 職業生活の設計の援助に関する指針

 事業主は、その雇用する労働者が、様々な変化に対応しつつキャリア形成を行い、高齢期に至るまで職業生活の充実を図ることができるよう、次の(1)及び(2)の事項の実施を通じて、その高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう努めるものとする。

 この場合において、労働者が就業生活の早い段階から将来の職業生活を考えることができるよう、情報の提供等に努める。

  (1) 職業生活の設計に必要な情報の提供、相談等

 職業生活の設計に関し必要な情報の提供を行うとともに、職業能力開発等に関するきめ細かな相談を行い、労働者自身の主体的な判断及び選択によるキャリア設計を含めた職業生活の設計が可能となるよう配慮する。

 また、労働者が職業生活の設計のために企業の外部における講習の受講その他の活動を行う場合に、勤務時間等について必要な配慮を行う。

  (2) 職業生活設計を踏まえたキャリア形成の支援

 労働者の職業生活設計の内容を必要に応じ把握しつつ、職業能力開発に対する援助を行う等により、当該労働者の希望や適性に応じたキャリア形成の支援を行う。

第4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項

 1 高年齢者雇用確保措置等(法第9条第1項に規定する高年齢者雇用確保措置及び法第10条の2第4項に規定する高年齢者就業確保措置をいう。以下同じ。)の円滑な実施を図るための施策の基本となるべき事項

 国は、高年齢者雇用確保措置等が各企業の労使間での十分な協議の下に適切かつ有効に実施されるよう、次の(1)から(5)までの事項に重点をおいて施策を展開する。

  (1) 高年齢者雇用確保措置等の実施及び運用に関する指針の周知徹底

 65歳未満定年の定めのある企業において、希望者全員の65歳までの高年齢者雇用確保措置が確実に実施されるよう、法第9条第3項の規定に基づく高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24年厚生労働省告示第560号)の内容について、その周知徹底を図る。

 また、70歳未満定年の定めのある企業又は70歳未満を上限年齢とする継続雇用制度を導入している企業において、70歳までの高年齢者就業確保措置の実施に向けた自主的かつ計画的な取組が促進されるよう、法第10条の2第4項の規定に基づく高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針(令和2年厚生労働省告示第351号)の内容について、その周知徹底を図る。

  (2) 高年齢者雇用確保措置等に係る指導及び事業主への各種支援措置の強化等

   イ 希望者全員の65歳までの高年齢者雇用確保措置の確実な実施

 都道府県労働局及び公共職業安定所においては、全ての企業において、希望者全員の65歳までの高年齢者雇用確保措置が確実に講じられるよう、周知の徹底や企業の実情に応じた指導等に積極的に取り組む。

 その際、特に、高年齢者の意欲と能力に応じた雇用の確保を図るため、賃金・人事処遇制度の見直しによる高齢期の処遇の改善に取り組む企業の好事例やその他の情報の収集及びその効果的な提供に取り組むとともに、高齢期の処遇の改善に取り組む事業主に対する助成制度について、その強化を図る。

 また、高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書を発出し、勧告に従わない場合には企業名の公表を行い、各種法令等に基づき、公共職業安定所での求人の不受理・紹介保留、助成金の不支給等の措置を講じる。

   ロ 70歳までの高年齢者就業確保措置の更なる普及促進

 高年齢者就業確保措置は、令和2年改正法により設けられた努力義務であり、令和7年6月1日現在、常用労働者が21人以上の企業における実施率は34.8%である。65歳以降も働きたいと考える高年齢者が多い中、年齢にかかわりなく活躍を続けたいというその希望に応えるためには、個々の企業の実情に適した形で、高年齢者就業確保措置の更なる拡大に取り組む必要がある。

 このため、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、高年齢者就業確保措置の実施について、改めて制度の趣旨や内容についての周知啓発を徹底するとともに、企業の実情に応じた助言及び指導に積極的に取り組む。

 加えて、企業における高年齢者就業確保措置の更なる拡大に当たっては、事業主に対する各種支援措置の強化が必要であり、高年齢者の雇用の機会の増大に資する措置や高年齢者就業確保措置に取り組む事業主への助成制度については、その有効な活用を図るとともに、大綱で示された政策目標の達成等に向けて、助成措置の強化を図る。

 また、創業支援等措置については、高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針において、雇用時における業務と、内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせることは、法の趣旨に反するものであること、労働関係法令による労働者保護が及ばないことから、過半数労働組合等の同意を得た実施計画を策定することや、過半数労働組合等に対して創業支援等措置を選択する理由を十分に説明する必要があること、さらに業務の内容や支払う金銭等、実施計画に記載する事項の留意点等を示しており、制度趣旨に反する措置を講ずる事業主に対しては、措置の改善等のための指導等を徹底する。加えて、創業支援等措置において、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)の遵守が図られるよう指導を行う。

 その上で、高齢期の特性やニーズを踏まえた多様な就業選択が可能となるよう、企業の労使間で合意され、適切に実施又は計画されている高年齢者就業確保措置に関する好事例その他の情報の収集及びその効果的な提供に取り組み、更なる活用の拡大を図る。

  (3) 継続雇用される高年齢者の待遇の確保

 継続雇用により働く高年齢者の賃金等の労働条件については、法の趣旨を踏まえるとともに、雇用に関する各種法令の規定等を遵守した上で、事業主と労働者の間で十分に話し合い決定することが重要である。高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針においては、継続雇用されている高年齢者の賃金について、就業の実態、生活の安定等を考慮し適切なものとなるよう努めること等を示しているところである。事業主がこれらの規定に留意し、高年齢者の労働条件を適切に設定するよう、都道府県労働局及び公共職業安定所においては、上記指針の周知徹底を図るとともに、改善を促す指導に適切に取り組む。

 また、定年後に継続雇用で働く有期雇用労働者については、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)の適用を受けるものであり、同法第15条第1項の規定に基づく短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第430号)については、裁判例を踏まえた各待遇の記載の充実等、更なる明確化のための見直しが行われることを踏まえ、見直し後の同指針の周知及びこれに基づく指導を図り、不合理な待遇の相違の解消に向けた同法の履行確保の一層の徹底を図る。

 さらに、高年齢者のモチベーションや納得性に配慮した、能力及び成果を重視する評価・報酬体系の構築を進める等、高齢期の処遇の改善に取り組む事業主に対する助成制度について、その強化を図るとともに、70歳雇用推進プランナー等による事業主への専門的・技術的支援に積極的に取り組む。

 なお、一定数の高年齢者が高年齢雇用継続給付を受給している現状を踏まえると、上記の取組を一層推進していくことで、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を図るとともに、高齢期の処遇の改善を促進する。

  (4) 70歳雇用推進プランナー等との密接な連携

 企業が高年齢者雇用確保措置等のいずれかを講ずるに当たり高年齢者の職業能力の開発及び向上、作業施設の改善、職務の再設計、賃金・人事処遇制度の見直し等を行う場合においては、機構に配置されている70歳雇用推進プランナー等が専門的・技術的支援を有効に行うことができるよう、公共職業安定所は、適切な役割分担の下で、機構と密接な連携を図る。

 2 高年齢者の再就職の促進のための施策の基本となるべき事項

  (1) 再就職の援助等に関する指針の周知徹底

 企業において、離職予定高年齢者に対する在職中の求職活動の援助等に関する自主的な取組が促進されるよう、第3の2の内容について、その周知徹底を図る。

  (2) 公共職業安定所による求職活動支援書に係る助言・指導

 離職予定高年齢者については、法により事業主に義務付けられている高年齢者雇用状況等報告や多数離職届、事業主からの雇用調整の実施に関する相談、本人からの再就職に関する相談等を通じてその把握に努め、また、離職予定高年齢者が希望した場合には求職活動支援書の交付が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。

 さらに、求職活動支援書の交付が義務付けられていない定年退職等による離職予定者についても、求職活動支援書の自主的な作成・交付及びこれに基づく計画的な求職者支援を実施するよう事業主に対して啓発を行う。

 加えて、事業主に対しては、機構と連携し、求職活動支援書の作成等に必要な情報提供等を行う。

 なお、離職予定高年齢者の的確な把握に資するため各事業所における定年制の状況や解雇等の実施に係る事前把握の強化を図るほか、法において高年齢者雇用状況等報告や多数離職届の提出が事業主に義務付けられていることについての十分な周知徹底を図る。

  (3) 助成制度の有効な活用等

 離職予定高年齢者に対して在職中の求職活動を支援する事業主に対する助成制度の有効な活用を図り、高年齢者の円滑な労働移動を支援する。

 また、高年齢者の再就職支援に当たっては、就職が特に困難な者を継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主を助成する制度の有効な活用を図る。

  (4) 公共職業安定所等による再就職支援

 公共職業安定所において、求職活動支援書の提示を受けたときは、その記載内容を十分参酌しつつ、可能な限り早期に再就職することができるよう、職務経歴書の作成支援等、的確な職業指導・職業紹介及び個別求人開拓を実施する。

 また、全国の主要な公共職業安定所に設置している「生涯現役支援窓口」においては、概ね60歳以上(特に65歳以上)の高年齢求職者に対して、その多様なニーズに応じたきめ細かなマッチングを行い、高年齢者の再就職を重点的に支援する。

 その際、高年齢者の労働参加が進む一方で、職種や条件等が合わないと考える高年齢者が増えている現状を踏まえ、就労・生活支援アドバイザーを中心に、職業生活の再設計に係る丁寧かつ高年齢者に寄り添ったキャリアコンサルティング支援を行うとともに、高年齢者の多様な就労経験やスキル等を踏まえた求人の開拓を通じ、能力と希望に応じた再就職を実現できるよう支援に取り組む。

 なお、こうしたきめ細かな再就職支援を実施するためには、生涯現役支援窓口の機能強化が求められるところであり、体制の確保を図るとともに、関係機関と連携した公共職業安定所への誘導や65歳以降のセカンドキャリア研修の実施等、在職中からの支援にも取り組む。

 さらに、公益財団法人産業雇用安定センターにおいて、企業を退職する高年齢者のキャリア情報等を登録し、その能力の活用を希望する企業に対して人材を紹介する「高年齢退職予定者キャリア人材バンク事業」との連携を図り、高年齢者と企業とのマッチングを一層促進する。

  (5) 募集・採用に係る年齢制限の禁止に関する指導、啓発等

 高年齢者の早期再就職を図るため、積極的な求人開拓を行う。また、高年齢者に対する求人の増加を図り、年齢に係る労働力需給のミスマッチを緩和するため、募集・採用に係る年齢制限の禁止について、民間の職業紹介事業者の協力も得つつ、指導・啓発を行うとともに、労働者の募集・採用に当たって上限年齢を設定する事業主がその理由を求職者に提示しないときや当該理由の内容に関し必要があると認めるときには、事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告を行う。

 3 その他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項

  (1) 生涯現役社会の実現に向けた取組

 人口減少社会の中で経済社会の活力を維持・向上するためには、個々の企業の実情を踏まえつつ、本人の希望や能力に応じ、年齢にかかわりなく働ける企業の普及を図り、高年齢者の雇用・就業の機会を確保し、生涯現役社会を実現することが必要である。

 また、こうした社会や環境整備の実現に向けては、労使の理解や協力を得るとともに、国民各層の意見を幅広く聴きながら、当該社会の在り方やそのための条件整備について検討する等、高年齢者の活躍を図る社会的な気運の醸成に努めることも必要である。

 このため、都道府県労働局及び公共職業安定所を通じて、機構その他の関係団体と密接な連携を図りつつ、各企業の実情に応じて、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止等によって、年齢にかかわりなく雇用機会が確保されるよう、必要な支援に積極的に取り組む。

 また、機構その他の関係団体においては、年齢にかかわりなく働ける企業の普及及び促進を図るため、都道府県労働局等との連携を図りつつ、事業主のほか国民各層への啓発等の必要な取組を進める。

  (2) 高齢期の職業生活設計の援助

 職業人生の長期化や、雇用と仕事を取り巻く環境が大きく変化する中で、労働者が、職場の上司等との面談や支援等を通じ、早い段階から何をしたいかを明確にしつつ、キャリアプランの作成や実行、その結果を踏まえた振り返りや見直しを行う等、自律的・主体的なキャリア形成に取り組むことにより、高齢期において、多様な働き方の中から自らの希望と能力に応じた働き方を選択し、実現できるようにすることが重要である。このため、公共職業安定所等が行う高齢期における職業生活の設計や再就職のためのキャリアの棚卸しに係る相談・援助等の利用を勧奨するとともに、事業主がその雇用する労働者に対して、高齢期における職業生活の設計について効果的な援助を行うよう、第3の3の趣旨の周知徹底等により啓発及び指導に努める。

 また、個々の労働者がそのキャリアプランに沿った能力向上に取り組めるよう、相談援助体制の整備に努める。

  (3) 各企業等における多様な職業能力開発の機会の確保

 労働者が高齢期においても急激な経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応できるよう、教育訓練の実施、教育訓練休暇の付与等を行う事業主に対して必要な援助を行い、各企業における労働者の希望、適性等を考慮した職業能力開発の機会を確保する。

 また、高年齢者の主体的な職業能力開発を支援するため、雇用保険制度に基づく教育訓練給付制度の周知徹底及びその有効な活用を促す。

 さらに、AIの進化や業務のデジタル化等を背景にした人材ニーズの変化に伴い、既存の知識、経験等に加え、AIの活用を含むデジタル等の新たなスキルを身につけることが一層求められる。業務のデジタル化に対応する、あるいは、新たな職業や職務に就こうとする高年齢者については、事業主に対して必要な助成を行い、実務経験の不足を補うため、OJTを組み込んだ訓練を実施する等、実践的な職業能力開発機会の確保に取り組む。

  (4) 職業能力の適正な評価等の促進

 高年齢者の職業能力が適正に評価され、当該評価に基づく適正な処遇が行われることを促進するため、各企業における職業能力を評価する仕組みの整備に関し、必要な助成を行うとともに、取組事例の収集、整理及び提供に努める。

 特に、事例の収集に当たっては、高齢期の職務や賃金、高年齢者の雇用における企業側及び労働者側のメリット等の把握に加え、企業の課題や検討プロセス等にも焦点をあてて行う。

  (5) 高年齢者が安心・安全に働ける職場環境の推進

 高年齢者がより長く企業で活躍できるようにするため、高年齢者の労働災害防止対策、健康確保対策及び労働時間対策を推進し、高年齢者が安心・安全に働ける職場づくりを推進する。

 特に、安衛法第62条の2第1項において、高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずることが事業者の努力義務とされ、同条第2項に基づき厚生労働大臣が当該措置の適切かつ有効な実施を図るための指針を公表しており、これに基づき周知、指導に取り組む。

 また、労働契約によらない働き方となる創業支援等措置による就業についても、創業支援等措置を講ずる事業主が委託業務の内容等に応じて高年齢者に対し適切な配慮を行うよう当該指針を周知・広報する。なお、安衛法等一部改正法により、労働者と同一の場所で働く個人事業者等を既存の労働災害防止対策に取り込み、かつ、当該個人事業者等による災害の防止を図るため、個人事業者等自身や注文者等が講ずべき措置が強化されたところであり、その円滑な施行に向けた周知・広報を図る。

 さらに、高年齢者の雇用機会の確保、高年齢者にも働きやすい職場環境の実現等に配慮しつつ、長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進及びフレックスタイム制等の普及促進を重点に労働時間対策や柔軟な働き方を推進するとともに、本人の希望を踏まえつつ、正社員化やフルタイム勤務も含む多様な働き方を選択することができるよう取組を進めていく。

  (6) シルバー人材センターによる多様な雇用・就業機会の確保

 企業を定年退職した後等、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する高年齢者に対しては、地域の日常生活に密着した多様な仕事を提供するシルバー人材センター事業の活用を促進する。

 特に、シルバー人材センター事業においては、高年齢者の多様な就労・社会活動のニーズを、各種産業の人材ニーズや地域課題とマッチングし、幅広い就労・社会活動機会を提供できるよう、活動内容の充実を図る。

 このため、高年齢者の健康状態に合わせて活躍できる社会参加の促進や、女性会員やホワイトカラー職種の経験を有する会員のニーズを踏まえた就業先の拡大等、高年齢者の幅広い活躍の機会の提供を進めるとともに、こうした積極的な取組への支援や好事例の展開により、シルバー人材センター事業の活性化を図る。

 また、安衛法等一部改正法により、労働者と同一の場所で就業する個人事業者等に対する保護措置や、個人事業者等自身が講ずべき措置等が定められたことから、シルバー人材センター事業を活用する高年齢者、注文者等に対し、シルバー人材センターと連携し、同法の周知を図り、安全で健康に働くことのできる職場づくりを推進する。

 さらに、シルバー人材センターは、都道府県知事が市町村ごとに指定する業種等においては、高年齢者に労働者派遣事業又は職業紹介事業を行う場合に限り、労働時間が週40時間までの就業の機会を提供すること等ができることを踏まえ、より長い時間働きたいという高年齢者のニーズや、これにより人手不足を解消したいという地域産業のニーズ等にも応えるため、当該仕組みを活用した高年齢者の雇用・就業機会の確保に取り組む。

  (7) 高年齢者の起業等に対する支援

 高年齢者の多様な就業ニーズを踏まえて、その能力の有効な発揮を幅広く推進する観点から、フリーランスをはじめ起業等により自ら就業機会を創出する場合に対しては、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の施行も踏まえつつ、必要な情報提供を行う。

  (8) 地域における高年齢者の雇用・就業機会の確保

 自治体が中心となり地域の関係機関(労働組合、経済団体、社会福祉協議会、シルバー人材センター、金融機関、労働者協同組合等)とともに協議会を設置し、高年齢者へのワンストップ相談窓口や多様な就業機会の創出、社会参加等のマッチングを行う「生涯現役地域づくり環境整備事業」においては、地域の課題を踏まえた多様な就業等の機会の提供を官民連携して推進する。

 また、当該事業について、より多くの自治体に関心を持ってもらえるよう、事業の見直しや積極的な広報に取り組むとともに、協議会の取組を後押しするきめの細かい伴走型支援を行い、地域における持続可能なモデルづくりを促進する。

  (9) 雇用管理の改善の研究等

 高年齢者の就業機会の着実な増大、雇用の安定等を図り、また、生涯現役社会の実現に向けた環境整備を進めるため、必要な調査研究を行うとともに、高年齢者の活躍に向け積極的な取組を行う企業の事例や自治体が取り組む高年齢者の雇用創出等の事例を収集及び体系化し、個々の企業や自治体における検討に際して、その活用を促す。

 また、毎年度、高年齢者雇用状況等報告に基づき、定年、継続雇用制度等の状況や高年齢者の就業機会の確保に関する状況について、定期的な把握及び分析に努め、その結果を公表する。

 さらに、国際的な高年齢者の雇用に係る情報交換等を推進し、今後の高年齢者雇用政策の参考となる知見を得るとともに、人口減少と高齢化が急速に進行する日本の高年齢者雇用政策の現状や取組を発信し、国際的な理解や関心が更に深まるよう努める。