事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(厚生労働五一)
2026年2月26日
厚生労働省 第五十一号
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第三十三条第四項の規定に基づき、事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針を次のように定め、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和七年法律第六十三号)の施行の日(令和八年十月一日)から適用することとしたので、同条第五項において準用する労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第三十一条第五項の規定に基づき、告示する。
令和八年二月二十六日
事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針
1 はじめに
この指針は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下「法」という。)第33条第1項から第3項までに規定する事業主が職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(以下「顧客等」という。)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、当該労働者の就業環境が害されること(以下「職場におけるカスタマーハラスメント」という。)のないよう雇用管理上講ずべき措置等について、同条第4項の規定に基づき事業主が適切かつ有効な実施を図るために必要な事項について定めたものである。
2 職場におけるカスタマーハラスメントの内容
(1) 職場におけるカスタマーハラスメントは、職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。
なお、顧客等からの苦情の全てが職場におけるカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて、社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、職場におけるカスタマーハラスメントには当たらない。
また、障害者から労働者に対して、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)で禁止されている不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、職場におけるカスタマーハラスメントには当たらず、同法に基づき、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならないことに留意が必要である。
加えて、職場におけるカスタマーハラスメントには、店舗及び施設等において対面で行われるもののみならず、電話やSNS等のインターネット上において行われるものも含まれるものである。
(2) 「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等であっても、当該労働者が業務を遂行する場所であればこれに該当する。
(3) 「労働者」とは、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいう。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者についても、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第47条の4の規定により、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、法第33条第1項及び第34条第2項の規定が適用されることから、労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者についてもその雇用する労働者と同様に、3(1)の配慮及び4の措置を講ずることが必要である。なお、法第33条第2項、第36条第2項及び第37条第2項の労働者に対する不利益な取扱いの禁止については、派遣労働者も対象に含まれるものであり、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該者に派遣労働者が職場におけるカスタマーハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む等、当該派遣労働者に対する不利益な取扱いを行ってはならない。
(4) 「顧客等」とは、顧客(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある潜在的な顧客も含む。)、取引の相手方(今後取引する可能性のある者も含む。)、施設の利用者(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等の施設を利用する者をいい、今後利用する可能性のある者も含む。)その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者を指し、例えば、以下の者等が含まれる。
・ 事業主が販売する商品の購入やサービスの利用をする者
・ 事業主の行う事業に関する内容等に関し問い合わせをする者
・ 取引先の担当者
・ 企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者
・ 施設・サービスの利用者及びその家族
・ 施設の近隣住民
(5) 「その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、又は手段や態様が相当でないものを指す。
この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)との関係性等)を総合的に考慮することが適当である。また、「言動の内容」及び「手段や態様」に着目し、総合的に判断することが適当であり、「言動の内容」、「手段や態様」の一方のみが社会通念上許容される範囲を超える場合でもこれに該当し得ることに留意が必要である。加えて、社会通念上許容される範囲を超えるかどうかの判断に当たっては、事業主又は労働者の側の不適切な対応が当該言動の原因や背景となっている場合もあることにも留意する必要がある。
社会通念上許容される範囲を超えた言動の典型的な例としては、以下のイ及びロのものがあるが、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、また、イ及びロに掲げるものは限定列挙ではないことに十分留意し、4(2)ロにあるとおり広く相談に対応するなど、適切な対応を行うようにすることが必要である。
イ 言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
① そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
・ 性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求をすること。
② 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
・ 契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること。
③ 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
・ 契約金額の著しい減額の要求をすること。
④ 不当な損害賠償要求
・ 商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること。
ロ 手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
① 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
・ 殴る、蹴る、叩(たた)く等の暴行を行うこと。
・ 物を投げつけること。
・ わざとぶつかること。
・ つばを吐きかけること。
② 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
・ 店舗の物を壊すことをほのめかす発言やSNS等のインターネット上へ悪評を投稿することをほのめかす発言によって労働者を脅すこと。
・ SNS等のインターネット上へ労働者のプライバシーに係る情報の投稿等をすること。
・ 労働者の人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を行うことを含む。
・ 土下座を強要すること。
・ 盗撮や無断での撮影をすること。
・ 労働者の性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の者に暴露すること又は当該労働者が開示することを強要する若しくは禁止すること。
③ 威圧的な言動
・ 大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること。
・ 反社会的な言動を行うこと。
④ 継続的、執拗(よう)な言動
・ 同様の質問を執拗に繰り返すこと。
・ 当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立てをすること。
・ 同様の電子メール等を執拗に繰り返し送りつけること。
⑤ 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
・ 長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること。
(6) 「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す。
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当である。
なお、当該言動の頻度や継続性は考慮するが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回の言動でも、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じ、就業環境を害する場合があり得る。
3 事業主等の責務
(1) 事業主の責務
法第34条第2項の規定により、事業主は、職場におけるカスタマーハラスメントを行ってはならないことその他職場におけるカスタマーハラスメントに起因する問題(以下「カスタマーハラスメント問題」という。)に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる同条第1項の広報活動、啓発活動その他の措置に協力するように努めなければならない。なお、職場におけるカスタマーハラスメントに起因する問題としては、例えば、労働者の意欲の低下などによる職場環境の悪化や職場全体の生産性の低下、労働者の健康状態の悪化、休職や退職などにつながり得ること、これらに伴う経営的な損失等が考えられる。
また、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、カスタマーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
(2) 労働者の責務
法第34条第4項の規定により、労働者は、カスタマーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる4の措置に協力するように努めなければならない。
4 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容
事業主は、職場におけるカスタマーハラスメントを防止するため、雇用管理上次の措置を講じなければならない。
ただし、職場におけるカスタマーハラスメント対策を講ずる際は、消費者法制により定められている消費者の権利や、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律において、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供義務が定められていることに留意する必要があり、同法に基づく「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定)」に即して主務大臣が各所掌分野ごとに定める事業者が適切に対応するために必要な指針、内閣府がホームページ等に掲載する合理的配慮の提供等に係る障害特性に応じた事例等(以下「対応指針等」という。)も参考にして、顧客等との建設的対話を重ねるなど、事案に応じて適切に対応する必要がある。
また、各業法等によりサービス提供の義務等が定められている場合やサービスが途絶すると顧客等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合等があることに留意して適切に対応する必要がある。
(1) 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
事業主は、職場におけるカスタマーハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければならない。
その際、職場におけるカスタマーハラスメントの発生の原因や背景には、商品・サービス・接客等における問題や顧客等とのコミュニケーションの不足などもあると考えられる。そのため、職場においてこれらを幅広く解消していく取組を進めることも、職場におけるカスタマーハラスメントの防止の効果を高める上で重要であることに留意することが必要である。
イ 職場におけるカスタマーハラスメントには毅(き)然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
また、職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を顧客等に周知・啓発することも、被害の防止に当たっては効果的と考えられる。
(事業主の方針等を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例)
① 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を記載し、配布等すること。
なお、トップメッセージとして当該方針を広く社内に発信することも考えられる。
② 職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を労働者に対して周知・啓発するため、ロにおいて定める職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容と併せて研修、講習等を実施すること。
ロ 職場におけるカスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めた職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知すること。
対処の内容については、職場におけるカスタマーハラスメントが発生し、その場で労働者から管理監督者等に報告があった場合や管理監督者等が現認した場合は、当該管理監督者等が直ちに適切な対応を行うことが必要な場合もあることを踏まえ、その内容を定めること。
また、当該事業所において発生しやすい職場におけるカスタマーハラスメントの例や、商品・サービス・接客等における問題や顧客等とのコミュニケーションの不足などが職場におけるカスタマーハラスメントの発生の原因や背景となり得ることを併せて周知することも考えられる。
対処の内容の例としては、次のようなものがある。
ただし、次の例は限定列挙ではなく、各事業主が、労働者の状況等の実態に応じた対処の内容を定めること。
・ 労働者から管理監督者等に直ちに報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐこと。
・ 可能な限り労働者を一人で対応させないこと。また、必要に応じて当該労働者に代わって管理監督者等が対応すること。
・ 顧客等とのやり取りを録音・録画すること。なお、録音・録画に当たっては個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱うこと。
・ 労働者から十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりすること。
・ 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること。
・ 現場対応が困難な場合においては、本社・本部等へ情報共有を行い、指示を仰ぐこと。
・ 法的な手続が必要な場合には、法務部門等と連携し、弁護士へ相談すること。
(対処の内容等を定め、労働者に周知していると認められる例)
① 職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容を定め、当該規定と併せて、職場におけるカスタマーハラスメントの内容を労働者に対して周知すること。
② 顧客等への対応に関するマニュアル等に、職場におけるカスタマーハラスメントの内容及び職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容を記載し、労働者に対して周知すること。
③ 職場におけるカスタマーハラスメントの内容及び職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容を労働者に対して周知するための研修、講習等を実施すること。
(2) 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならない。
なお、相談に対応する担当者として、労働者の上司に当たる管理監督者等を定めることも考えられる。
イ 相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。なお、職場における他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置をすることも考えられる。
(相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)
① 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
② 相談に対応するための制度を設けること。
③ 外部の機関に相談への対応を委託すること。
ロ イの相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、被害を受けた労働者(以下「被害者」という。)が萎縮する
などして相談を躊(ちゆう)躇(ちよ)する例もあること等も踏まえ、相談を行った労働者(以下「相談者」という。)の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるカスタマーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるカスタマーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。例えば、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合等が考えられる。
(相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)
① 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と関係部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
② 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
③ 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。
(3) 職場におけるカスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
事業主は、職場におけるカスタマーハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じなければならない。
イ 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。なお、行為者が、他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)である場合には、必要に応じて、他の事業主に事実関係の確認への協力を求めることも含まれる。
(事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例)
① (1)ロにおいて定める対処の内容を踏まえ、管理監督者等がその場で事実関係を確認し対応すること。
② 相談窓口の担当者、関係部門又は専門の委員会等が、相談者から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。
また、必要に応じて、周囲の労働者からも事実関係を聴取したり、録音・録画等の客観的な証拠を確認したりする等の措置を講ずること。なお、録音・録画等の客観的な証拠を確認するに当たっては個人情報の保護に関する法律等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱うこと。
加えて、必要かつ可能な場合には行為者からも事実関係を聴取することも考えられる。
③ 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、法第37条に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。
ロ イにより、職場におけるカスタマーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
(措置を適正に行っていると認められる例)
① (1)ロにおいて定める対処の内容を踏まえ、事案の内容や状況に応じ、管理監督者等が被害者に代わって対応すること、被害者と行為者を引き離すこと等の措置を講ずること。
また、あわせて、暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については警察へ通報すること。
② 事案の内容や状況に応じ、行為者に対応する担当者の変更又は複数人で対応すること、被害者と行為者を引き離すための配置転換、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。
また、あわせて、暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については警察へ通報することや、法的な手続が必要な場合には法務部門等と連携し、弁護士へ相談することも考えられる。
③ 法第37条に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。
ハ 改めて職場におけるカスタマーハラスメントに関する方針を周知・啓発し、必要な場合には、職場におけるカスタマーハラスメントの発生の原因や背景となった商品・サービス・接客等における問題や顧客等とのコミュニケーションの不足などの改善を図る等の再発防止に向けた措置を講ずること。その際、必要に応じて、接客等における慣行の見直しなどの職場環境の改善や組織風土の見直しを行うことも考えられる。
あわせて、必要に応じて事案の内容や対応経緯を記録し、個人情報の取扱いに留意して関係部門に共有し、再発防止に活用することも考えられる。
なお、職場におけるカスタマーハラスメントに係る言動の行為者が、他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)である場合には、必要に応じて、他の事業主に再発防止に向けた措置への協力を求めることも含まれる。
また、職場におけるカスタマーハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
(再発防止に向けた措置を講じていると認められる例)
① 職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針及び職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
また、職場におけるカスタマーハラスメントの発生を契機として、職場におけるカスタマーハラスメントの原因や背景となった商品・サービス・接客等における問題や顧客等とのコミュニケーションの不足などが把握された場合には、その問題等そのものの改善を図ること。
② 労働者に対して職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針及び職場におけるカスタマーハラスメントへの対処の内容を周知・啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。
また、職場におけるカスタマーハラスメントの発生を契機として、職場におけるカスタマーハラスメントの原因や背景となった商品・サービス・接客等における問題や顧客等とのコミュニケーションの不足などが把握された場合には、その問題等そのものの改善を図ること。
(4) 職場におけるカスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
事業主は、職場におけるカスタマーハラスメントの抑止のための措置として、労働者に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知するとともに、当該方針において定めた対処を行うことができる体制を整備しなければならない。
なお、特に悪質と考えられるものへの対処の例としては次のようなものがあるが、当該方針に記載する対処の内容を検討するに当たっては、各業法等による定めがある場合等、業種・業態等により必要な対応が異なる場合があることに留意しつつ、それぞれの状況に応じた方針を定めることが効果的である。
・ 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること。
・ 行為者に対して警告文を発出すること。
・ 法令の制限内において行為者に対して商品の販売、サービスの提供等をしないこと。
・ 行為者に対して店舗及び施設等への出入りを禁止すること。
・ 民事保全法(平成元年法律第91号)に基づく仮処分命令を申し立てること。
(措置を講じていると認められる例)
① (1)ロの措置を実施する際に、併せて、職場におけるカスタマーハラスメントのうち、特に悪質と考えられるものへの対処の方針を定め、労働者に対して周知すること。加えて、当該対処を講ずることができるよう、関係部門間の連携等の体制を整備すること。
(5) (1)から(4)までの措置と併せて講ずべき措置
(1)から(4)までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じなければならない。
イ 職場におけるカスタマーハラスメントに係る相談者等の情報は当該相談者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該カスタマーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。なお、相談者等のプライバシーには、性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報も含まれるものであること。
(相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていると認められる例)
① 相談者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。
② 相談者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。
③ 相談窓口においては相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。
ロ 法第33条第2項、第36条第2項及び第37条第2項の規定を踏まえ、労働者が職場におけるカスタマーハラスメントに関し相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたこと(以下「カスタマーハラスメントの相談等」という。)を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
(不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例)
① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、カスタマーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。
② 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、カスタマーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。
5 他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力
法第33条第3項の規定により、事業主は、当該事業主が雇用する労働者又は当該事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)による他の事業主の雇用する労働者に対する職場におけるカスタマーハラスメントに関し、他の事業主から、事実関係の確認等の雇用管理上の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、次の措置を講ずるよう努めなければならない。
(1) 事業主は、他の事業主からの協力の求めに応ずるように努めなければならない。
また、同項の規定の趣旨に鑑みれば、事業主が、他の事業主から雇用管理上の措置への協力を求められたことを理由として、当該事業主に対し、当該事業主との契約を解除する等の不利益な取扱いを行うことは望ましくないものである。
(2) 事業主は、他の事業主からの協力の求めに応じて、労働者へ事実関係の確認等を行うに当たっては、これに協力した労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いを行わない旨を定め、労働者に周知・啓発することが望ましい。
加えて、事実関係の確認により、職場におけるカスタマーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、事業主は、就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずることが望ましい。
6 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組の内容
事業主は、職場におけるカスタマーハラスメントを防止するため、4の措置に加え、次の取組を行うことが望ましい。
(1) 事業主は、職場におけるカスタマーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、次の取組を行うことが望ましい。
なお、取組を行うに当たっては、労働者が自社の商品やサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図ることは、職場におけるカスタマーハラスメントの被害者になることを防止する上で重要であることや、顧客等からの社会通念上許容される範囲で行われる正当な申入れについては、職場におけるカスタマーハラスメントには該当せず、労働者が、こうした正当な申入れを踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要であることに留意することが必要である。
イ 労働者が自社の商品やサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図るために研修等の必要な取組を行うこと。
(顧客等への対応力の向上を図るために必要な取組例)
① 接客についての研修、商品やサービスについての研修、顧客等からの苦情への対応についての研修等の実施や資料の配布等により、労働者の顧客等への対応力等の向上を図ること。
ロ 労働者が顧客等への理解を深めるために必要な取組を行うこと。
(労働者が顧客等への理解を深めるための取組例)
① 消費者の心理や障害特性等についての資料の配布や研修等の実施により、労働者の顧客等への理解を深めること。なお、障害特性に応じた対応については、4に記載した対応指針等を参考にすることが考えられる。
(2) 事業主は、4の措置を講じる際に、必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めることが重要である。なお、労働者や労働組合等の参画を得る方法として、例えば、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第18条第1項に規定する衛生委員会の活用なども考えられる。
(3) 職場におけるカスタマーハラスメントは、業種・業態等によりその被害の実態や必要な対応も異なると考えられることから、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めることも、被害の防止に当たっては重要である。また、同じ業種・業態等の複数の事業主が一体となって取組を行うことも考えられる。
(4) 労働者が取引の相手方に対して職場におけるカスタマーハラスメントに係る言動を行う場合もあることから、3のとおり、事業主及び労働者の責務として、事業主は、当該事業主が雇用する労働者が、他の事業主が雇用する労働者に対する言動についても必要な注意を払うよう配慮するとともに、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)自らと労働者も、他の事業主が雇用する労働者に対する言動について必要な注意を払うよう努めなければならず、こうした責務の趣旨も踏まえ、事業主は、4(1)イの職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針の明確化等を行う際に、他の事業主が雇用する労働者に対する言動について、職場におけるカスタマーハラスメントを行ってはならない旨の方針を併せて示すことが望ましい。
7 事業主が職場において行われる自らの雇用する労働者以外の者に対する顧客等の言動に関し行うことが望ましい取組の内容
事業主は、4(1)イの職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針の明確化等を行う際に、職場における当該事業主が雇用する労働者以外の者(他の事業主が雇用する労働者及び個人事業主等の労働者以外の者)に対する顧客等の言動についても、同様の方針を併せて示すことが望ましい。
また、これらの者から職場におけるカスタマーハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、4の措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい。


