職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約(第百五十五号)(二)
2026年4月3日

職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約(第百五十五号)をここに公布する。

  御名御璽

    令和八年四月三日

内閣総理大臣 高市 早苗

条約 第二号

職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約(第百五十五号)

 国際労働機関の総会は、

 理事会によりジュネーブに招集されて、千九百八十一年六月三日にその第六十七回会期として会合し、

 前記の会期の議事日程の第六議題である安全及び健康並びに作業環境に関する提案の採択を決定し、

 この提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、

 次の条約(引用に際しては、千九百八十一年の職業上の安全及び健康条約と称することができる。)を千九百八十一年六月二十二日に採択する。

   第一部 適用範囲及び定義

    第一条

1 この条約は、全ての経済活動部門について適用する。

2 この条約を批准する加盟国は、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と可能な限り初期の段階において協議した上で、海上運送業、漁業その他の実質的で特殊な問題が生ずる特定の経済活動部門についてこの条約の一部又は全部の適用を除外することができる。

3 この条約を批准する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って提出するこの条約の適用に関する第一回の報告において、2の規定に基づいてこの条約の適用を除外することとした部門を、当該除外の理由を付すとともに、除外された部門の労働者に十分な保護を与えるためにとられる措置についての説明を付して記載し、また、その後の報告において一層広範な適用のための進展を明示する。

    第二条

1 この条約は、対象となる経済活動部門の全ての労働者について適用する。

2 この条約を批准する加盟国は、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と可能な限り初期の段階において協議した上で、特別の困難が存在する限られた種類の労働者についてこの条約の一部又は全部の適用を除外することができる。

3 この条約を批准する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って提出するこの条約の適用に関する第一回の報告において、2の規定に基づいてこの条約の適用を除外することとした限られた種類の労働者を当該除外の理由を付して記載し、また、その後の報告において一層広範な適用のための進展を明示する。

    第三条

 この条約の適用上、

 (a)  「経済活動部門」とは、労働者が雇用されている全ての部門(公務を含む。)をいう。

 (b) 「労働者」とは、全ての被用者(公的機関の被用者を含む。)をいう。

 (c) 「職場」とは、労働者が作業を理由として所在し、又は行く必要がある場所であって、使用者の直接的又は間接的な管理の下にある全てのものをいう。

 (d)  「規則」とは、権限のある機関により法的効力を与えられた全ての規定をいう。

 (e)  「健康」とは、作業に関連し、単に疾病又は病弱が存在しないことではなく、健康に影響を及ぼす身体的又は精神的な要素であって作業中の安全及び衛生に直接関連するものも含む。

   第二部 国内政策の原則

    第四条

1 加盟国は、国内事情及び国内慣行に照らし、かつ、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する一貫した国内政策を定め、実施し、及び定期的に検討する。

2 1の政策は、作業環境においてその存在が不可避な危険の原因を合理的に実行可能な限り最小限にすることにより、作業に起因し、若しくは関連し、又は作業中に生ずる事故及び健康に対する危害を防止することを目的とする。

    第五条

 前条に規定する政策は、措置に関する主要な分野であって次に掲げるものを考慮しなければならない。ただし、職業上の安全及び健康並びに作業環境に影響を及ぼす場合に限る。

 (a) 作業の物的要素(職場、作業環境、器具、機械及び設備、化学的、物理的及び生物学的な物質及び因子並びに作業工程)の設計、試験、選択、代替、取付け、配置、使用及び保守

 (b) 作業の物的要素と、作業を遂行し、又は管理する者との関係並びに労働者の身体的及び精神的な能力への機械、設備、作業時間、作業の構成及び作業工程の適合

 (c) 十分な水準の安全及び健康の達成に何らかの立場で関与する者に対する、訓練(必要な追加の訓練を含む。)、資格付与及び動機付け

 (d) 作業集団及び企業並びにその他全ての適当な段階(国の段階を含む。)における連絡及び協力

 (e) 前条に規定する政策に従って労働者及びその代表が適正にとった行為の結果としての懲戒処分からの、当該労働者及びその代表の保護

    第六条

 第四条に規定する政策を定めるに当たっては、公的機関、使用者、労働者その他の者の責任の補完的な性格並びに国内事情及び国内慣行を考慮して、職業上の安全及び健康並びに作業環境に関するこれらの者のそれぞれの職務及び責任を示さなければならない。

    第七条

 職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する状況は、主要な問題を特定すること、これらの問題に対処するための効果的な方法及び措置の優先順位を発展させること、並びに結果を評価することを目的として、全般的な又は特定の分野に関し、適当な間隔で検討される。

   第三部 国の段階における措置

    第八条

 加盟国は、法律若しくは規則又は国内事情及び国内慣行に適合するその他の方法により、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、第四条の規定を実施するために必要な手段をとる。

    第九条

1 職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する法律及び規則の執行は、十分かつ適当な監督制度により確保する。

2 執行の制度は、法律及び規則の違反に対する適切な制裁を定める。

    第十条

 加盟国は、使用者及び労働者が法的義務に従うことを援助するため、これらの者を指導するための措置をとる。

    第十一条

 権限のある機関は、第四条に規定する政策を実施するため、次の業務が漸進的に行われることを確保する。

 (a) 事業に係る設計、構造及び配置に関する条件、事業の開始に関する条件、事業に影響を及ぼす主要な変更及び事業目的の変更に関する条件、作業に使用される技術的設備の安全に関する条件並びに権限のある機関が定める手続の適用に関する条件の決定(危険の性質及び程度により必要とされる場合に限る。)

 (b) 作業工程の決定並びに権限のある機関により曝(ばく)露が禁止され、若しくは制限され、又は許可若しくは管理の対象とされる物質及び因子の決定(この場合において、同時に二以上の物質又は因子に曝(ばく)露することに起因する健康への危険を考慮する。)

 (c) 使用者又は適当な場合には保険機関若しくはその他の直接関係する機関による職業上の事故及び疾病の届出手続の制定及び適用並びに職業上の事故及び疾病に関する年次統計の作成

 (d) 作業中に又は作業に関連して生ずる職業上の事故、疾病その他の健康に対する危害であって重大な事態をもたらすと認められるものの調査の実施

 (e) 第四条に規定する政策に従ってとられる措置及び作業中に又は作業に関連して生ずる職業上の事故、疾病その他の健康に対する危害に関する情報の毎年の公表

 (f) 国内事情及び国内の可能性を考慮した上での、労働者の健康への危険に関する化学的、物理的及び生物学的な因子の調査を行う制度の導入又は拡大

    第十二条

 加盟国は、職業上の用に供される機械、設備又は物質を設計し、製造し、輸入し、提供し、又は輸送する者が次のことを行うことを確保するため、国内法及び国内慣行に従って措置をとる。

 (a) 合理的に実行可能な限り、機械、設備又は物質が、これを正しく使用する者の安全及び健康に危険を引き起こさないことを確保すること。

 (b) 機械及び設備の正しい取付け及び使用並びに物質の正しい使用に関する情報、機械及び設備の危険並びに化学物質並びに物理的及び生物学的な因子又は製品の危険な特性に関する情報並びに既知の危険を回避する方法に関する指針を利用可能なものとすること。

 (c) 研究及び調査を行うこと又は(a)及び(b)の規定を実施するために必要な科学的及び技術的な知識に常に精通していること。

    第十三条

 自己の生命又は健康に対する急迫した重大な危険が存在すると信ずる合理的な理由のある作業状態から自ら退避した労働者は、国内事情及び国内慣行に従い、不当な結果から保護される。

    第十四条

 加盟国は、国内事情及び国内慣行に適する方法で、かつ、全ての労働者の訓練に関するニーズを満たす方法により、全ての段階の教育及び訓練(高等技術教育、高等医学教育及び高等専門教育を含む。)において、職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する内容を含めることを促進するための措置をとる。

    第十五条

1 加盟国は、第四条に規定する政策及びその政策の適用のための措置の整合性を確保するため、最も代表的な使用者団体及び労働者団体並びに適当な場合にはその他の団体と可能な限り初期の段階において協議した上で、第二部及びこの部の規定の実施を要請される様々な当局と団体との間における必要な調整を確保するために、国内事情及び国内慣行に適する措置をとる。

2 1に規定する措置には、状況が必要とし、かつ、国内事情及び国内慣行が許す場合には、中央機関の設置を含む。

   第四部 企業の段階における措置

    第十六条

1 使用者は、合理的に実行可能な限り、その管理の下にある職場、機械、設備及び工程が、安全かつ健康に対する危険がないものであることを確保することを要求される。

2 使用者は、合理的に実行可能な限り、適切な保護の措置がとられる場合には、その管理の下にある化学的、物理的及び生物学的な物質及び因子が、健康に対する危険のないものであることを確保することを要求される。

3 使用者は、必要な場合には、事故の危険又は健康に対して悪影響を及ぼす危険を合理的に実行可能な限り防ぐため、適切な保護衣及び保護具を提供することを要求される。

    第十七条

 二以上の企業が同一の職場において同時に業務に従事する場合には、これらの企業は、この条約の適用に当たり協力する。

    第十八条

 使用者は、必要な場合には、非常事態及び事故に対処するための措置(適切な応急措置を含む。)をとることを要求される。

    第十九条

 企業の段階において、次の事項に係る措置がとられなければならない。

 (a) 使用者が自らに課された義務を履行することについて、労働者は、作業中において協力すること。

 (b) 事業場における労働者代表は、職業上の安全及び健康の分野において使用者と協力すること。

 (c) 職業上の安全及び健康を確保するために使用者がとる措置に関する十分な情報が、事業場における労働者代表に対して提供されること、並びに事業場における労働者代表が、商業上の秘密を漏らさないことを条件として、当該労働者代表を代表する団体と当該情報について協議することができること。

 (d) 労働者及び事業場における労働者代表は、職業上の安全及び健康について適当な訓練を受けること。

 (e) 労働者の作業に関連する職業上の安全及び健康のあらゆる側面について、労働者又は労働者代表及び、場合に応じ、事業場における当該労働者又は労働者代表を代表する団体が、国内法及び国内慣行に従って、調査することができること及び使用者から協議を受けること。この目的のため、相互の合意により企業の外部から技術顧問を招くことができる。

 (f) 労働者は、自己の生命又は健康に対する急迫した重大な危険が存在すると信ずる合理的な理由のある状態を直ちに直接の管理者に報告すること。この場合において、使用者は、必要がある場合に是正措置をとるまでは、労働者に対し、生命又は健康に対する急迫した重大な危険が引き続き存在する作業状態に戻ることを要求することができない。

    第二十条

 経営者と労働者又は労働者代表との間の企業内における協力は、第十六条から前条までの規定に従ってとられる組織的措置及びその他の措置の基本的要素を成す。

    第二十一条

 職業上の安全及び健康に係る措置は、労働者に経費を負担させるものであってはならない。

   第五部 最終規定

    第二十二条

 この条約は、いかなる国際労働条約及び国際労働勧告も改正するものではない。

    第二十三条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

    第二十四条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国であってその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。

2 この条約は、二の加盟国による批准が国際労働事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

3 この条約は、この条約が効力を生じた後は、いずれの加盟国についても、自国による批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

    第二十五条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に通知する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、廃棄が登録された日の後一年間は効力を生じない。

2 この条約を批准した加盟国であって1に規定する十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

    第二十六条

1 国際労働事務局長は、加盟国から通知を受けた全ての批准及び廃棄の登録について全ての加盟国に通報する。

2 国際労働事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録について加盟国に通報する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

    第二十七条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定に従い、前諸条の規定に従って登録した全ての批准及び廃棄の文書の完全な明細を、登録のため国際連合事務総長に通知する。

    第二十八条

 理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

    第二十九条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する新たな条約を採択する場合には、その新たな条約に別段の定めがある場合を除くほか、

 (a) 加盟国によるその新たな改正条約の批准は、その新たな改正条約が効力を生じていることを条件として、第二十五条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。

 (b) この条約は、その新たな改正条約が効力を生ずる日に加盟国による批准のための開放を終了する。

2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容により引き続き効力を有する。

    第三十条

 この条約の英語及びフランス語による本文は、ひとしく正文とする。

 以上は、国際労働機関の総会が、ジュネーブで開催されて千九百八十一年六月二十四日に閉会を宣言されたその第六十七回会期において、正当に採択した条約の真正な本文である。

 以上の証拠として、我々は、千九百八十一年六月二十五日に署名した。

 総会議長

   アリウヌ・ディアーニュ

 国際労働事務局長

   フランシス・ブランシャール

総務大臣 林  芳正 br /> 外務大臣 茂木 敏充
厚生労働大臣 上野賢一郎
経済産業大臣 赤澤 亮正
国土交通大臣 金子 恭之
防衛大臣 小泉進次郎
内閣総理大臣 高市 早苗

(右条約の英文)

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