事例報告2 今、直面している実態・課題と未来
- 講演者
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- 村山 大樹
- 仙台運送労働組合 中央執行委員長
- フォーラム名
- 第145回労働政策フォーラム「物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─」(2026年5月22日-29日)
- ビジネス・レーバー・トレンド 2026年8・9月号より転載(2026年7月27日 掲載)
組合員の現場目線で、直面している実態・課題などをお伝えします。
私は、2012年に仙台運送株式会社に入社し、勤続15年目になります。ドライバーとして5年ほど、2トン車の小型から大型までのトラックを運転し、配達をしていました。その後、労働組合の委員長になる前提で、事務職に職種転換をしました。係長職を10年担当し、倉庫の現場の主任などをしていました。組合歴は10年になります。
仙台運送労働組合について
組合員数は130人で年に4回、中央執行委員会を開催
仙台運送労働組合は、組合員数130人、執行委員12人が在籍しています。年に1回定期大会、年に2回中央委員会、年に4回中央執行委員会を開催しています(シート1)。
委員会では、春闘・夏季一時金の要求金額の決定やその結果報告、組合の運営状況、上部団体のUAゼンセンの方針などを共有しています。最も時間を要しているのは、各部署で報告事項を共有することです。本社以外に8つの事業所がありますが、問題点や要望点などを集約して、労使協議会などで会社側に伝えています。
仙台運送株式会社の概況については、従業員は約170人、管理職以上は非組合員になっています。当社は倉庫事業も行っており、約20社の商品の保管、入出庫作業、外部に出向しての作業を行っています。
もちろん運送業ですので、主に関東、東北地方の配送を行っています。宮城県内の軒先配送では、お店別に配達を共同配送しています。
現場の実態
ドライバーは慢性的な人手不足
次に現場の実態をお話しします。皆さんもご存じの通り、ドライバーは慢性的な人手不足になっています。当社だけではないと思いますが、平均年齢も50歳と高く、中途採用数も増加しています。やはり退職者は一定数おり、もっと楽な仕事を選ぶ人や、人間関係や作業内容なども含めて、他の運送会社に転職する傾向が今でも見受けられます。(シート2)。
倉庫作業員も人手不足で労働条件は低水準
物流2024年問題はドライバーの話が中心となりますが、倉庫作業員も人手不足で労働条件も悪く、たいへんな思いをしているということを、この場でもお伝えしたいです。人材派遣の倉庫作業員は、フォークリフトの免許が必要ですし、荷主様の入庫状況により、平均は3台ぐらいなのが、繁忙期になると15台~20台荷受けをしなければならなくなります。
それを一定数の普通の作業員だけで成し遂げようとすると、休憩が取れないこともあります。しかし、そこを人材派遣に頼ると、会社側にとっては経費面で少し負担がかかることになります。
荷主様の要望については、先ほどお話ししたとおり、繁忙期と閑散期の差がとても大きいので、それに対応するマンパワーと言いますか、もう作業員に頼るしかないという状況も知っていただければと思いました。
事務職は属人化や低給料が課題
また、人手不足というのは事務職にも関わってきており、いま、その人しかこの仕事がわからないという属人化が問題視されています。その人に頼れば何でも解決しますが、その人がいなくなると、その人はどうやって仕事をしていたのだろうかという問題点が出てきてしまいます。
シート2に低給料と書きましたが、ドライバーは運べば運ぶほど、遠いところに行けば行くほど、能率給が付きます。倉庫作業員にも少し付きますが、事務職の場合は、伝票を切ったり、電話をいっぱい受けたら能率給が付くということもなく、給料を上げる理由が他の職種に比べて弱いので、なかなか給料を上げづらいです。
ドライバーの「生の声」
生活のために残業して稼ぎたい
次に働き方改革について、ドライバーからの「生の声」をお伝えすると、「もっと残業して稼ぎたい」との声があります。理由は、残業代が生活給になっているからです。ドライバーたちからすると、生活を豊かにするためには残業しなければならないというなかで、960時間という上限の中で残業規制がされると、給料が目減りしてしまうというのが実態です。
働き方改革のなかで残業時間は減っていると私も感じていますが、ドライバーからは残業をして稼ぎたい、残業できないから稼げないという話をよく聞きます。
また、「長距離運転がしたい」という声もあります。拘束時間などの兼ね合いから高速道路を使って配達はできますが、運賃に高速道路代が入っていなければ一般道路を利用するしかない時もあります。けれども一般道路を利用すると長時間拘束になってしまうこともあり、やむを得ずその仕事をお断りすることが発生します。もちろん、毎日、家に帰れることは幸せなことだと思いますが、ドライバーからみれば、自分でハンドルを握って長距離運転をしたいという人もいました。
さらには、「バラ積み・バラ降ろしがつらい」という声もあります。今、「パレット化」というダンボールなどのバラバラな荷物をパレットと呼ばれる荷役台に載せ、人の手ではなく、フォークリフトを使って保管や輸送を行い、作業時間等を削減していく物流手法が進んでいます。
しかし、これから秋のお米の収穫などがあると、現場ではパレットよりも荷物を一つひとつ手作業で積み上げるバラ積みが多くなります。積載効率やトン数の問題で、20~30キロの荷物をたくさん積む際はバラ積みが多いです。小麦、大豆、カップラーメン、お菓子も実はバラ積みになります。「パレット化」は進んではいると思いますが、実際はまだまだバラ降ろし・バラ積みが存在しています。
有給休暇を取得しづらい風潮
あとは「有給休暇はいらないので、余った有給を買い取って欲しい」といった声もあります。ドライバーは有給がなかなか使いづらい職種です。「こんなに忙しいのに有給を使っていいのか」といった、昔ながらの風潮があります。有給休暇を取るのが悪というわけではないのですが、人手が足りないので、「こんな時に自分のことだけを考えていいのか」と考えるドライバーがたくさんいます。
当社の場合、事務職は比較的有給休暇を取りやすいです。しかし、ドライバーは法定の年5日の取得義務はクリアしていますが、それ以上に自分の時間を有効に使うために有給を使うかというと、そうではないと思います。例えば、「子どもが熱を出したから休む」「病気になったので有給を使いたい」など、有給の意味がドライバーにはまだまだ浸透していないのではないかと感じています。
「給料が安い、浮き沈みが激しい」といった声もあります。やはり繁忙期は人手不足なので稼ぎが大きくなり、ドライバーの給料はとても良くなります。ただし、閑散期は稼ぎが少なくなり、給料が一定的ではないので、生活が難しいです。ですので、稼げる時に稼ぎたいという考えになってしまいます。
年を取ると働きづらい
あとは「年を取ると働くことが難しくなる」ということもあります。倉庫作業員やドライバーは60歳を超えた人たちが多いです。当社では組合側から要望して65歳定年にはしましたが、組合員からは、「ありがとう。これでいっぱいまた稼げる」という声もあれば、「60歳で辞めたかったのになんでそんなことをしたのか」という声もあり、どこに照準を合わせたらいいかわかりませんでした。
重いものを持ったり、残業時間が多かったり、夏は酷暑の中で、仕分け作業も体力的にとても厳しくなってきています。膝が痛い、足が痛い、腰が痛いという職業病にもなると思いますが、そういうことが多々問題になっています。
仕事と育児や介護との両立が難しい
あとは、「育児、介護しながら働けない」という課題もあります。先ほども申し上げたとおり、人手不足なので1人でも欠けると、そこの部署の皆さんがその1人分の仕事を被るので悪くて休めないという風潮があります。
例えば、育児で言えば、「熱が出たけど保育所に迎えに行けない」といったことがあります。事務職であれば可能ですが、やはり今、育児はお父さんも関わらないといけないので、実際ドライバーの場合、1回配達に出た時に保育所から電話がかかってきて、「迎えに来てください、お父さん」と言われても、迎えに行けないという実態もありました。
労使共同の取り組み
月に1回の「労使協議会」と「安全衛生委員会」
次に労使共同の取り組みについてお話しします。当社では、「労使協議会」を月1回、月末の月曜日に行っています。最初に経営側から経営状況の報告を受けて、私たち組合側から現場の声、職場環境の改善、組合からの要望などを話しています。
また、労使協議会後に「安全衛生委員会」を必ず行っています。夏は熱中症対策、冬は防寒着を支給やその経過報告、また、労災事故の報告、健康診断やストレスチェックの要請、受診率・受診後の結果報告や周知依頼など、会社側と一緒に取り組んでいます。
この安全衛生委員会は年間の安全衛生方針などと組み込んで、シート3のように、どの月に何をするのかをまとめた計画を記載しています。
経営側との懇親会も企画
このほか、労使共同の取り組みとしては、前々委員長の代から「労使懇談会」を開催しており、ここ数年、恒例になっています。社長や事業部長を交えた意見交換会とボウリング大会を開催しています。事業部長と同じ事業部の組合員については、事業部長と話す機会は少しありますが、他の執行委員では、事業部長と話したことはないとよく聞くので、そういう交流の場を、委員長として経営側にお願いをして、意見交換会をしています。
「労使懇談会」では、社長も交えているので、意見を執行部で一度集約して、会社側に事前に提出して、こういう質問をするので答えてくださいと申し送りしています。例えば、「倉庫が雨漏りしているので、直してください」といったことを伝えます。社長も入っての労使懇談会なので、そこで返事をしてしまったら経営側はやるしかないという状況になります。要は切羽詰まった労使協議会のような形を取っていて、経営側と組合側の両方に利点があると思います。
あとはボウリング大会を企画しています。当社の社長がボウリング大好きなので、コミュニケーションをとるために私が企画しました。社長と話したら良いことが聞けるのではないかと思い、勝手にチームを作って社長のレーンに入れます。年々開催しているうちに参加人数が増えています。最近、組合員から「今年はいつ開催するのか」と聞かれるようになったので、継続してコミュニケーションをとらなければならないと思っています。
その場でしか聞けない内容も
「委員長・社長談話」を行っています。組合は毎年賀詞交換会を行っていますが、その場には経営側も呼んでいます。その二次会で、社長にその場でしか聞けないようなことを聞いています。
そうすると社長は「あの時はありがとう」「あの時は申し訳なかった」などと本音で話してくれます。逆に組合員側も「シャッターをフォークリフトでぶつけてすみませんでした」と本音で話し、「いやいや気にするな。やってしまったことは仕方ないよ」と社長から言われると、組合員側も次回から気をつけようとなります。こういった、本当にぶっちゃけた話を社長と毎年1回しています。
机をたたいてストライキをするだけではなく、会社側の要望を聞いたり組合員の要望を聞いてもらうためには、きちんと情報を共有できるようなコミュニケーションをとることが大事だと思い、「委員長・社長談話」を続けています。
未来に向けた取り組み
まずはドライバーの意識改革
最後に、未来に向けて今後の話をします。まず、「ドライバーの意識改革」が最初に来るのではないかと思います。ドライバーは職人だと私は思っています。A地点からB地点に配達する時に、そのルートについて、会社側も指揮はしますが、例えば、渋滞や事故があれば、どこのルートで回って遠回りしたらB地点に早く着けるか、要は遅刻しないで納品できるかをドライバーが自分で考えなければなりません。
そういったなかで荷物を届けることができると、「俺の腕はやっぱり確かだ」と、ドライバー自身が自分の運転が正しいと思ってしまいます。そして、会社の言うことを聞かなくなり、会社を理解する文化というのは浸透しにくいのではないかと思います。
しかし今は、世の中は職人ではなく会社員にしようという働き方が進んでいるのではないかと思います。昔は寝ないで働いたのは美学でしたが、今は8時間働いて、その余った時間で自分の人生を楽しくするという考え方になってきています。しかし、先ほどから話しているとおり、「まだまだ稼ぎたい、休みたくない」というドライバーがいます。
共に教育しあっていく
そのためにも、「教育(共育)」が必要だと思います。共に育つというのは、教育については、会社側も任せっきり、やったきりということが多かったりするので、私はお互いに共に教育しあって育っていって、スキルアップしなければならないと思います。
当社では人事評価制度を取り入れて、評価が反映される変動給を設けています。会社側に顔色をうかがって仕事をするのではなく、私たちがこうしたら会社が良くなるのではないかというボトムアップを重視した人事評価になっていて、そのためのスキルアップを行っていますが、まだまだ浸透するまで時間がかかると思います。
また、「管理職者の意識改革」というところでは、固定観念ではなく、周りの意見を取り入れることも大事です。例えば、配車マンと呼ばれる荷主様からの依頼内容に合わせて、適切な車両とドライバーを割り当て、配送計画を組み立てる現場の統括者がいます。
現場目線で言うと、「本当だったらこの人にこれを配達させればもっと効率がいいのではないか」「さっきバラ降ろしを担当したのにまた次の配達もバラ降ろし」「あの人はパレットばかり任せられている」などと、配車マンの采配に不公平感を感じる組合員もとても多いです。
AIで配車を組むという仕組みもできているようなので、現場からの声もふまえ、組合側からも経営側に「AIの配車にしたほうが良いのではないか」という声も届けています。経営側には「人に頼る配車だと偏ってみえたり、不公平さがあるのではないか」という話を労使協議会でしています。
コミュニケーションも大事
「コミュニケーション」も大事です。普通の会社員ですと、在宅ワークなど働き方が多様になっていますが、私たち運送業はそうはいかないのが現実です。「儲かるから仕事がある」だけでなく、儲からないけど続けなければいけないお客様もいらっしゃいます。
それを理解してもらうためにも、経営側が組合員の目を見て、「これは大変だけどやってほしい。なぜならば、こういうことにつながるからこの仕事はやってほしい」と、丁寧に説明することが大事だと思います。
そこを話さずに、経営側から「配達や集荷してきて」という話だけだと、ドライバー側からすると、「何でこんなことしなきゃならないの」と考える人たちがたくさん出てきてしまいます。
自社だけを考えない運営
次にあげたいのは、「自社だけを考えない運営」です。とは言っても、どんな会社でも自分の会社が儲かることが1丁目1番地だと思います。ただ、運送業界では、他社より安く運ぶと、その運送会社に仕事が流れてしまう傾向がまだまだあります。
当社も外回りをして、仙台運送なら仕事を任せられる、他の運送会社と違うところをアピールできるように、アンケートを年に1回とって、何か指摘されたら私が先方にお邪魔してお話をうかがいます。他の運送会社もやっていないことに取り組んで、ブランド力を高めなければいけないと思います。安く運ぶ、サーチャージ料を取らない、運賃が安いというアピールでいくと、運送業界全体で低利益になり本末転倒ではないかと思います。
運送業界だけでは解決しないので、国も対応することが大事
最後に、「国・荷主・業界の調和」です。やはり私たちだけでやれることには限界があり、荷主様も安くすると経費が削減されるので、会社が儲かるというその狭間で行き来をしていると思います。そうすると、やはり国がきちんと動かないと、この問題は解決しないのかなと思います。ですので、情報の共有、世の中の動きを捉えるというところが必要なのではないかなと思います。
まだまだ私も勉強している最中ですので、これからも組合の委員長として組合員の声を会社に届け、会社と一緒に業績を上げて給料を上げていくことをしていかなければならないと思っています。
プロフィール
村山 大樹(むらやま・ひろき)
仙台運送労働組合 中央執行委員長
仙台運送株式会社2012年入社。2013年ドライバー職を兼務しながら労働組合の執行委員に就任。2015年労働組合の書記長に就任。2018年労働組合の中央執行委員長に就任。事務職(係長)を兼務、その後、UAゼンセン宮城県支部副議長になり、まちづくり委員会・教育委員会副委員長・部門協議会議長経て、UAゼンセン本部の部会委員・物流分科会の座長を行い、組合員に寄り添う活動の為、こくみん共済の理事、地区会長・東北労働金庫の推進委員長を兼務し、連合推薦で宮城県労働審判委員に任命。また、障がい者雇用のサポートをする為に、障がい者就職生活相談員を取得する。


