パネリストからの報告1 高齢者の採用・受け入れ 活躍に向けた取り組み
- 講演者
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- 椎名 卓也
- 泰榮エンジニアリング株式会社 取締役
- フォーラム名
- 第136回労働政策フォーラム「シニア層の労働移動─就労・活躍機会の拡大に向けて─」(2025年1月8日-15日)
- ビジネス・レーバー・トレンド 2025年4月号より転載(2025年3月25日 掲載)
当社の「高齢者の採用・受け入れ、活躍に向けた取り組み」として簡単に説明いたします。
会社概要
まず、当社の概要ですが、東京・千代田区神田淡路町に本社を構えています。1996年に、当時の泰榮商工株式会社から設計、エンジニアリング部門が独立し、泰榮エンジニアリング株式会社として分社、独立しました。その後、2016年から各地域に事業所を構え、2021年からIT企業でシー・ディー・エルという会社とアドテックという会社が当社グループに仲間入りしました。2023年には、当社の一部の部門を泰榮ソリューションズ株式会社として独立させて、設立しています。
本社は東京ですが、事業拠点は茨城を中心に17拠点で展開しています。事業内容は、プラントエンジニアリングと産業機器エンジニアリングという2つの柱を持っています。プラントエンジニアリングでは、発電プラントの配管、電気計装設備、各種機器の設計、品質管理、施工管理まで行っており、産業機器エンジニアリングでは、エネルギー設備、エレベーター、鉄道、自動車などの領域で電気・制御システム、機械構造、ソフトウエアの開発・設計などを行っています。その他事業としてIT事業、人材サービス事業、教育支援事業なども行っています。
シニア採用の現状
当社の社員の構成ですが、2024年12月時点で総社員数607人となっており、男女比率は男性が約70%、女性が約30%です。シニア層の世代では、男性が121人、女性が5人となっています。年齢比は、全体の約20%が60歳以上となっており、60歳~64歳が35人、65歳~69歳が58人、70歳以上が33人です。
技術者の確保や拠点責任者の不足解消が狙い
当社のシニアの採用の取り組みを紹介します。取り組み前の課題としては、中途採用市場が活発化するなか、地方の中小企業として、採用数の確保が伸び悩んでいたというところがありました。また、お客様が要求するスキルを持つ設計技術者の確保が難しいということもありました。新しく営業拠点を開設しようとしたときに、拠点の責任者となり得る人材が乏しいという問題があり、潜在労働力であるシニア世代を積極雇用し、人手不足を解消していこうということになりました。
技術伝承や若年社員の指導・育成でも貢献
当社が考えるシニア採用のメリットを紹介します。過去の経歴や知見を生かし、経営参画や地方拠点の運営・維持に貢献ができます。また、専門技術の伝承や、自社の若年社員の指導・育成ができる。コネクションを活用した営業力の強化もあげられます。若年の育成と健康面の配慮から、若年社員とペアで設計業務に従事してもらうことで、チーム単位でお客様の提案を可能にするというところもメリットと考えています。
シニア採用に向けた取り組み
実際に採用に向けてどのような取り組みをしているかというと、シニア人材を積極採用する企業として、社内外へのPRを実施しています。まず、取引先企業や関連企業に人材がいないか提案するなど、再就職企業先としての認知度を上げる活動を行っています。リファラル採用という形で社内広告も発信しており、社内でもあっせんを行っています。就職支援事業者との連携も強化しています。
近年のシニア層の採用比率は2割前後
シニア層の採用実績ですが、2024年度は、2024年12月時点で全体の採用者80人のうち、15人が60歳以上で採用した人であり、全体の18.8%を占めます。2023年度では、全体の採用者120人のうちの21人がシニア層で、割合は17.5%です。2022年度は、全体の67人のうちの16人がシニアの方で、この年は23.9%と2割以上がシニア層となりました。
主な採用経緯ですが、自社の定年後再雇用制度で雇用継続した社員が約2割で、外部からの雇用が8割です。外部からの雇用の内訳は、自社の社員からのリファラルの受け入れ、取引先企業からの紹介、再就職支援企業からの紹介、自社の求人でハローワークやウェブ媒体等からの直接応募となっています。
半数以上は専門技術を生かした業務を担当
いまシニア層が担当している業務の内訳ですが、役員、幹部という形で会社の経営に携わっている方が22%で、専門技術を生かして、実際の設計、解析、品質管理等に関わる業務に就いている社員が54%と最も多くなっています。また、営業支援で、新顧客の開拓、既存のお客様の深掘りを担当している社員が7%、教育支援で社内研修の講師をしたり、部内の若年層の支援をしている社員が4%、管理業務が13%となっており、個々の経験を生かして幅広い業務ポジションで活躍してもらっています。
今後に向けた課題
一番の課題は安全衛生管理と健康維持
最後に、今後、対応すべき課題を述べます。やはり、シニア層社員の安全衛生管理と健康維持の向上が第一の課題になります。また、社員の年齢構成のバランスの均衡という観点から、若手もきちんと採用していかなければならない。若年社員とどうしても会話が合わないという事象もやはり出てきます。
さらに、客先に入って仕事をしていただく場合があるのですが、上長がどうしても年下になるという実態があり、上長が仕事を頼みづらくなるといった問題も時々見えています。
これらの課題への対策を講じることで、今後もシニア層の人材の積極採用を継続的に実施し、当社の設計技術力の強化や顧客との関係性の強化、労働力の確保、事業拡大を進め、会社を発展させていきたいと考えています。そういった発展とともに、シニア層人材の活躍の場を提供していきたいと考えています。
プロフィール
椎名 卓也(しいな・たくや)
泰榮エンジニアリング株式会社 取締役 ※小松正幸取締役の代理登壇
1994年泰榮商工株式会社入社。1996年に独立した泰榮エンジニアリング株式会社に所属し発電プラントのエンジニアとして従事。その後経歴を経て、発電プラント設計部門の部長として収支管理を取りまとめる。2021年に管財部の部長に就任し会社の財務・経理を取りまとめ、2022年管理本部の副本部長として財務を中心に総務・情報・人事・採用・教育などの部署を統括。2023年より取締役に就任し、会社経営、事業拡大、管理部門の合理化などに取り組む。
※所属・肩書きは開催当時のもの