事例報告 RPAによる組織・働き方の変化

講演者
矢頭 慎太郎
パーソルテンプスタッフ株式会社 業務改革推進本部 業務改革推進部 RPA推進室 室長
フォーラム名
第102回労働政策フォーラム「デジタルエコノミーの進展と働き方の変化」(2019年3月25日)

当社は人材総合サービスを展開しているパーソルグループの中核企業です。本日は、RPAが当社の組織・社員の働き方にどのような変化をもたらしたのか、三つの観点でお話しします。一つ目は、生産性の向上。二つ目が、組織文化の変革。そして三つ目の観点が、社員のキャリアアップです。

労働集約型、業務増加などが導入の背景

では一つ目の、生産性の向上についてお話しします。なぜRPAに取り組む必要があったのかを簡単に説明すると、第一に、労働集約型の構造に自社があるという課題がありました。第二は、相次ぐ労働法の改正により、増え続ける業務に対して対応しなければいけなかったということがあります。三つ目が、働き方改革という問題です。仕事が増え続けるなか、いかに残業時間を抑え、有給休暇の取得を促進していくかといったところにも本気で取り組まなければなりませんでした。これらの問題から、業務の構造改革は待ったなしという状況に置かれていたのです。

この構造改革にどのように取り組んできたのかというと、まず、社員が行っている業務を、コア業務とノンコア業務に切り分けました。コア業務は、クライアントやスタッフのための営業活動と定義づけし、そこに付随する事務業務全般をノンコア業務として位置づけ、業務の棚卸し、精査を進めました。

次に、切り分けたノンコア業務を分業化し、事務センターへの集約を図りました。これによって、営業は本来やるべきである営業活動に集中できるようになりました。さらに、分業化、集約をした業務に対してRPAを活用。業務の標準化や組み直しといった、いわゆるBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)活動とセットで行い、ロボ最適になるように業務の再構築を行いました。

100人分のノンコア業務をRPAが担う

その結果、現在では約100名分のノンコア業務をRPAロボが担う状況になっています(シート1)。今でも、増え続けている業務を、人員を増やすことなく、そのまま対応することができており、人手に依存した構造から脱却することができました。定型業務はRPAロボが自動処理を行い、社員は非定型業務にどんどんシフトすることができています。今ではロボでの自動化比率は7割を超えるところまで来ています。

こうした取り組みによって、営業は、我々が「ピュアセールスタイム」と呼んでいる営業活動時間を増やすことができました。また、営業部門だけではなく企画部門も、定型業務を切り出したことによって、業務の改善活動や企画の立案に時間を振り向けることができるようになっています。RPAを使った構造改革によって、社員はより付加価値の高い活動にシフトすることができるといった変化がもたらされています。

この取り組みを始めた当初は、人の仕事を奪うのではないか、人員削減するということですか、そのような声が正直、聞かれました。しかし、構造改革での効果を社員が実感してくれるようになり、次第にこうした声は聞かれなくなりました。また、RPAは定量面でも成果を出しています。社員の1人当たりの残業時間が、2年前と比較をすると3割ほど削減することができています。その一方で、売り上げ利益は、おかげさまで増収増益を続けることができています。

組織文化に変化をもたらすRPA

続いて二つ目、組織文化の変革についてです。RPAの導入では、業務の可視化や標準化といったプロセスを現場の部署と協議しながら進めています。実は、このプロセスが組織に良い変化をもたらしてくれています。例えば、「これまで暗黙知で進めていた業務を可視化/型化する習慣が身に付いた」「業務の見直しによって、今まで気づくことができなかった無駄を発見することができた」といった声が寄せられています(シート2)。さらに、RPA対象業務以外でも、業務のフローの再構築をして効率化を進めていく部署が増えてきたり、もっとRPA化できる業務があるのではないかと自発的に改善の種を探すなど、各所で変化が見られ始めてきている状況です。これまでは比較的、個人の感覚や工夫のなかで業務を進めることが傾向として強かったのですが、RPAを進めていくことによって、組織としての業務改善意識が向上されてきているというところは大きな収穫だったと感じています。

RPA人材の社内育成も開始

三つ目の、社員のキャリアアップについてですが、外部の人材の活用に加え、RPA人材を社内でも育成することに取り組み始めています。具体的には、事務センターでオペレーションを担う契約社員の人たちに、研修とOJTを通じてプログラミングスキルを身につけてもらった上で、専任のRPAの開発者にキャリアチェンジをしてもらっています。キャリアチェンジをした開発者のメンバーには、さらに難易度の高い開発などにチャレンジをしてもらう機会も提供し始めています。この取り組みでは、スキルに応じてキャリアの階段をつくり、処遇のアップとセットで進めるようにしています。この取り組みで年収の2割前後アップが実現できるなど、社員のキャリアアップや処遇アップの機会を提供することができています。また、チャレンジをしてくれている社員も非常に意欲的に前向きに取り組んでくれているというところもありますので、RPAがもたらしてくれた非常にすばらしい変化だと考えています。

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