事例報告 一人でも多くの高齢者に働く場と生きがいを

当社では、シニアの方を雇用し、派遣業務と請負業務を中心に行っております。2000年に設立し、今年で設立20年目を迎えます。当社の前に報告を行った2社に比べると、規模も資本金も圧倒的に小さいのですが、小さいながらもキラリと光る会社を目指しております。

東京ガス及び関連企業の業務を請け負う会社としてスタートしたこともあり、以前は取引先の100%が東京ガス関連だったのですが、現在はその割合は約60%まで低下しております。

2018年12月時点の登録社員数は945人ですが、登録していない方も含めると1,200人程になります。このうち、実際に稼働しているのは400人になります。登録社員の平均年齢は70.5歳です。また、別途、本社で働いているスタッフが約30人おります。

高齢社におけるシニア雇用の考え方

当社の高齢者雇用に関する考え方についてご説明します。日本の大都市圏では、慢性的に人手が不足している一方、定年後、暇を持て余すシニアが大勢います。彼らは、経験豊富で、気力、体力、知力があるのに、これを活用しないのはもったいない。しかも、彼らが一日中家にいることで、奥様の生活リズムを乱すという弊害も生じます。そこで、こうしたシニアの皆さんにも仕事をしてもらうことで、労働力不足を補おうというのがそもそもの発想です。

高齢化社会を迎えるにあたり、当社として提言したいことは、「高齢者が元気に働く社会の実現」です。働くことによる適度な緊張感と責任感が健康を維持し、ひいては健康寿命の延伸につながります。健康寿命が延びることで、社会保障が軽減され、現役世代の負担軽減にも結びつくというわけです。

こうした環境づくりを進めるための一環として、人材派遣・サービス業を営む企業間で連携し、「高齢者活躍支援協議会」を設立しています。高齢者就業のネットワークを構築し、相互に情報を交換することで、ノウハウの共有を図っています。また、当社も委員として参加している任意組織「『生涯現役の日』制定・普及推進委員会」では、毎年10月1日を「生涯現役の日」と定め、生涯現役の実現に向けた取り組みを支援しているところです。

当社では、60歳以上で、かつ、気力・体力・知力のあることを登録の条件としております。勤務形態は働く人の都合を優先し、週3日程度としています。当社では一つの仕事を2人以上で分担することで、社員のワーク・ライフ・バランスに貢献できればと考えております。当社の賃金は時給制で、収入は月平均月8~10万円程度です。社員の多くは、年金と当社での収入で生計を立てております。当社ではボーナスはありませんが、年度末に経常利益に応じて期末手当を支給しています。

当社では定年を定めておりません。社員の75歳到達時に面談し、今後の意向について確認していますが、就業を継続したいという方がほとんどです。

図表は、2018年12月時点の登録者の年齢分布です。65歳以上から登録者数が増えているのがおわかりいただけると思います。平均年齢は70.5歳、就労率は41.4%です。現在の最高齢者は84歳のYさんという方です。この方は東京ガスの倉庫で伝票を見ながら、物品を出し入れしたり、業者への対応を行っています。

別の社員は、液化天然ガスの搬入時に立ち会う業務を担当しています。この業務を行うには危険が伴うため、高圧ガス取扱主任者という資格を必要とします。4人の担当者が交代で、年間364日稼働しております。

その他、家電機器修理業者のサービス車に同乗し、サービスマンが顧客のもとで修理を行っている間、助手席で待機していることで、駐車違反を回避するという業務もあります。シニアには、サービスマンが戻る際、ドアを開けてあげたり、雨天時には傘を差し掛けてあげるといったちょっとした心遣いができる方も多く、派遣先から喜ばれております。

図表 登録者の年齢分布(2018年12月6日現在)

登録者の年齢分布 棒グラフ
年齢59歳まで:8人
60-64歳:67人
65-69歳:343人
70-74歳:378人
75歳以上:149人
合計:945人

参照:配布資料5ページ(PDF:6.20MB)

シニアが働くメリット

シニアの方々が働くメリットを示すキーワードとして、当社では「きょうよう」と「きょういく」を掲げています。これはそれぞれ、「教養」と「教育」をもじったもので、「『今日、用』がある嬉しさ」、「『今日、行く』ところがある楽しさ」を意味しています。

定年前は、「定年後は遊ぶぞ」、あるいは「旅行に行くぞ」と期待しているシニアの方も多いのですが、いざ定年になってみると、経済的な制約もあり、思うように行かないのが実態です。奥様も始終、旦那と顔をつきあわせることになり、息抜きもできません。

しかし、当社で働くことで、年金以外の収入を得られるため、趣味や飲み会、孫へのプレゼントにお金を使う余裕もできます。また、社会とのつながりを維持することで、人から頼られる喜びや達成感を得られます。週3日勤務なので、体力的、精神的負荷も大きくありません。

一方、派遣先のメリットとしては、まず、期間変動業務に対応しやすいことが挙げられます。業務が集中する月末や短期の業務であってもシニアは柔軟に対応することができます。また、若い人に比べてコストが低いこともメリットです。土日の派遣であっても、休日出勤手当は支給しておらず、社会保険への加入も不要です。また、派遣先の社員と仕事をシェアすることで、残業代の削減にもつながります。

当社としてのメリットもあります。働くシニアや派遣先から感謝されることが、当社の大きな喜びにつながっています。

結びとして、当社が考える「働くこと」の意義についてお伝えします。まず、働くことで、「生きがい」、「健康」、そして「収入」が得られることです。また、シニアが働くことで、労働力の提供や、医療費の抑制といった社会貢献にも寄与していると考えます。

シニア就労の課題

一方でシニアの就労には課題もあります。まず、現役時代、高い職位に就いていた方に多いのですが、プライドが高いこと。このようなプライドは捨てていただきたいと思います。高齢期になると健康面で不安が出てくるのも課題の一つです。さらには、退職したシニアの方によく見られるのが、新しいことにチャレンジしようという気概が不足しがちということです。先ほどからご説明しているように、働くことで得られるメリットも多いので、このような方々にはぜひ一歩踏み出していただきたい。

最後に「定年延長による影響と解決案」について当社の考えをご説明します。定年延長は働く側にとってはありがたいことですが、企業側にとってはコスト増加や生産性の低下、適材適所の配置の難しさといった課題があります。

そこで、当社では、まず、定年を迎えた方々には、派遣社員として登録いただくことをお勧めします。これにより、「適材適所」の選択が可能になります。派遣先の仕事には、今まで経験した仕事もありますし、比較的負荷の軽い仕事もありますので、自分にあった仕事を見つけていただきたいと思います。

高齢者の強みとしては、経験が豊富で我慢強いこと、そして、真面目で前向きなことが挙げられます。当社では、シニアの働きぶりを見た派遣先の方々が、再度仕事を依頼するという好循環が生まれています。

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