事例報告 ライフ・ワーク・バランスの実現に向けた東京都の施策

講演者
平野 茂
東京都産業労働局雇用就業部労働環境施策担当課長
フォーラム名
第93回労働政策フォーラム「子育て世帯の働き方を考える─行政、企業、家庭をつなぐ─」(2017年10月3日)

ワークよりライフが大切

「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がよく使われますが、東京都では小池都知事の就任後、ワーク(仕事)よりライフ(人生)のほうが大切だということで「ライフ・ワーク・バランス」と呼んでおります。そして「ライフ・ワーク・バランス」を充実させるため、東京都では「働き方改革」の政策を展開しております。

2016年12月に策定された計画「都民ファーストでつくる『新しい東京』」では、①「セーフシティ」、②「ダイバーシティ」、③「スマートシティ」という三つの「シティ」を掲げています。①は災害から都民の命や財産を守り「安全で安心できる」街づくり、②は誰もが活き活きと生活できる・活躍できる都市、③は成長を続け、世界に開かれた環境先進都市、という新しい東京像を描いています。「働き方改革」はこのうちの②「ダイバーシティ」に位置づけられています。

本日は、「働き方改革」の施策として推進している「TOKYO働き方改革宣言企業」制度とテレワーク推進事業の二つについてご紹介させていただきます。

「TOKYO働き方改革宣言」で最大100万円の奨励金を支給

「TOKYO働き方改革宣言企業」とは、従業員の長時間労働の削減と年次有給休暇の取得促進のため、2~3年後の目標と取り組み内容を定め、同宣言を行い、全社的に取り組む企業等を指します。この制度は、奨励金(1社当たり最大100万円)を活用する場合と活用しない場合に分かれます。奨励金を活用する場合は、目標と取り組み内容の設定、問題点の抽出、原因分析、社内周知を行う「働き方改革宣言事業」の実施が必須となり、30万円が支給されます。その後、フレックスタイムや時間単位年休等の働き方と休み方の「制度整備事業」を実施するとさらに最大30万円が支給されます。また、宣言して終わりということではなく、その後の取り組みも支援するため、制度の利用状況に応じて最大40万円の奨励金が支給されるという仕組みも用意しています。

初年度の宣言企業は1,000社強に

この制度は2016年度に開始され、初年度が終わった段階ですが、具体的な取り組み内容としては、例えば社員の誕生日やボランティア休暇の導入、あるいは管理職の声かけなどを盛り込むケースが多いようです。宣言内容については東京都が「宣言書」という形で発行しており、専用ポータルサイトでも各社の宣言書を掲載しています。

宣言企業数は2020年度までの5年間で5,000社を目標としており、初年度は1,003社を達成しました。2年目に当たる2017年度は、東京商工会議所の事務局が第1号の宣言企業となったので、会員企業への波及も含めて、より広く普及させていきたいと考えております。

テレワーク導入のワンストップサービスを提供

東京都では、時間や場所にとらわれないテレワークを「働き方改革」の起爆剤として位置づけています。2017年7月24日、国家戦略特区の事業として「東京テレワーク推進センター」を飯田橋に開設しました。同センターは、テレワーク導入に関する様々なサービスをワンストップで提供しており、ITや業務改善などに精通したコンシェルジュが来所者のニーズに合わせ、多種多様な機器・ソフトの体験や、先進企業の取り組み事例の紹介や行政の支援等の情報提供などをご案内しています。その他にもテレワークに関する様々なテーマを題材にしたセミナーやイベントを毎月開催するほか、さらに具体的に導入を検討する企業には助成金の受け付けやコンサルタント派遣等も行っております。開設から9月末までの2か月余りで1,000人を超す来場者をお迎えしており、社会的な関心の高まりを実感しているところです。

モデル実証事業をスタート

テレワークの導入にはメリットがある反面、労務管理や情報セキュリティの確保などに不安を感じる企業も多いのが実情です。そこで東京都では、中小・中堅企業20社をモデル企業として募集し、導入の準備から実施・検証までを支援するという「モデル実証事業」を行っています。

具体的には、コンサルタントが各企業の現場の状況を調査して、在宅やモバイル、サテライトオフィスなどのどのようなテレワークの形が適合するのか助言するほか、IT機器の導入だけではなく、就業規則など制度的な課題についても一緒に整理し、テレワークの運用に必要な環境整備と、導入に向けた研修までを一貫してサポートする事業を実施しています。

モデル事業を通じて実証が得られた好事例を広く発信し、導入を躊躇する企業にも前向きにご検討いただけるようにしていきたいと考えています。

出張セミナーを都内で開催

さらに、テレワークの基礎知識や導入のメリットなどを紹介する「座学」と、実際に機器を操作できるテレワーク体験をセットにした出張型のセミナーを新たに開始します。このセミナーは、東京テレワーク推進センターになかなか来られないという都民や企業関係者を対象に、身近にテレワークを感じていただく機会を提供するため、都内各地に出向いて開催するものです。セミナー終了後には、参加企業からの個別相談もお受けしております。

反響の大きさを実感

このように、テレワーク推進の施策を矢継ぎ早に打ち出して実施していることもあり、社会の反響の大きさを感じているところです。例えば最近では、人気育児雑誌7誌が選ぶ子育てトレンドの「第10回 ペアレンティングアワード」の「コト部門」に東京都のテレワークに関する取り組みがノミネートされました。こうした社会的な気運の盛り上がりを今後の施策展開にも結び付けていきたいと考えております。

東京都では引き続き、官民で連携しながら、「働き方改革」やテレワークの推進に取り組んで参ります。ご関心がおありの方は是非一度、「東京テレワーク推進センター」にもお越しください。

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