事例④ 日立製作所のキャリア開発支援施策の概要

講演者
小寺 亜美
株式会社日立製作所人事教育総務センタ
キャリアサービスグループ部長代理
フォーラム名
第89回労働政策フォーラム「新時代のキャリアコンサルタント─その使命と責務─」(2017年2月3日)

私は、企業内のキャリアコンサルタントとして、人財部門のなかでキャリア開発を推進しています。日立というフィールドのなかで、一人ひとりの社員が活き活きと働いていくことが重要なテーマですが、一方で、個人の働く場は無限大という視点で、社外のフィールドも含めて個人のキャリア開発を支援することも大切にしています。

私の所属する人事教育総務センタは、本社の人財部門の一部にある、社員にサービスを提供する部門です。その中で当グループはキャリア開発施策の立案や運用、プログラムを開発しています。また、直接支援として、キャリア研修の講師・ファシリテーターやキャリア相談室のカウンセリング等も行っています。グループ員は6人で、そのうち3人が有資格者です。私どもの施策の対象となる従業員は約3万7,000人で、それに加え、グループ会社数十社も共通のリソースを利用しています。

個人の成長を組織の成長につなげる

当社のキャリア開発支援は2002年より本格的に始まりましたが、その目的を一言で言うと、「個人の成長を組織の成長に結びつけていくこと」です。会社が求める成長もさることながら、その人本人の成長も大事な要素として加え、それらを両立することで個々人のキャリアの充実につなげようと考えています。

また、当社ではキャリアを仕事人生と表現しています。自分の人生のなかでのキャリアの充実には、ワーク・ライフ・バランスや心身の健康も含まれます。日立で働くことを、いかに本人のキャリアに統合していくかについて、一人ひとりに実践してもらう形で展開しています。

キャリア開発とは、仕事人生の質を高め成長していくこと。そして、その支援とは、いろいろな状況・環境下に置かれている社員一人ひとりが、自分の人生と日立で働くことについて、仕事と向き合いながら自分で考え選択し、どのように成長していくかといったところに寄り添いながら応援することだろうと思います。そこで、キャリアは自ら切り拓くもの、といった意識の醸成を基盤に施策を展開しているのが現状です。

日々の仕事を通じた成長を下支えするキャリア支援

当社のキャリア支援施策は、日々の仕事をキャリア開発の原点と捉え、職場における日々の仕事で、PLAN、DO、CHECK、ACTIONを回していくなかで成長していくことを基本にしています。

これについては、「GPM」という目標管理を踏襲したパフォーマンスマネジメントプログラムをグローバル共通で展開しています。具体的には、半年から1年で仕事のサイクルを見ていくもので、その際に事業目標と個人目標の連動性と上司のコーチングフィードバックを強化することで、パフォーマンスの最大化を目指していくものです。これにキャリア面談を連動させることで中長期的な視点を入れて持続的な成長を促す形です。

そして、それを下支えするものとして「キャリア開発支援プログラム(CDP)」があります。CDPについては、各社員のキャリア発達課題やライフステージに対応した様々なプログラムを展開しています。ポイントは、自分のキャリアは自分で決めて自分で引き受ける(自己決定・自己責任)ということ。個人の自立・自律をテーマに、その前提となる自己理解を深められるような形でサポートすることをプログラムの柱に据えています。

その枠組みのなかで行う中心的なプログラムはキャリア開発ワークショップ(CDW)です。主任任用時に、自己理解を深めながら将来的なキャリアプランを考えていくということで、1泊2日の時間をとって実施しており、現在、年間約1,000人が参加しています。

プロフィール

小寺 亜美(こでら・あみ)

株式会社日立製作所人事教育総務センタキャリアサービスグループ部長代理

1991年株式会社日立製作所入社。約10年のITソリューション営業職経験を経て、2003年より本社人財部門にてキャリア開発支援施策推進を担当。キャリア開発施策の企画立案・各種プログラムの開発運営、並びにキャリア研修講師及びキャリア相談室のキャリア・カウンセラーとして従事。社内関連部署との連携により、ダイバーシティやメンタルヘルス関連研修の開発・講師・トレーナー養成等も行っている。2級キャリア・コンサルティング技能士、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、日本キャリア開発研究センター(JICD)認定キャリア開発カウンセラー、NPO日本キャリア・カウンセリング研究会(JCC)認定ファシリテータ。

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