事例① 企業内キャリアコンサルティングのアプローチ

講演者
三橋 明弘
旭化成エレクトロニクス株式会社人事室室長
フォーラム名
第89回労働政策フォーラム「新時代のキャリアコンサルタント─その使命と責務─」(2017年2月3日)

昨今の企業人事の課題

今日は、企業内人事そして一人のキャリアコンサルタントとして、思っていることをお話ししたいと思います。

いま、企業の人事における課題として、①タレントマネジメント、②組織開発、③OJT──の3点が挙げられると思います。タレントマネジメントについては、いわゆる事業リーダーやプロフェッショナル人材をどのように確保・育成するのか。そして、組織開発については、ダイバーシティマネジメントの一環としてどうするのか。あるいはオープンイノベーションを推進する形で、どのように新しいものを生み出していくのか。もっと言えば、ミドル・シニア層の活性化の観点でも、組織開発が重要になっていて、旭化成グループとしても、人事にとって必須な知識・スキルだということで、実際に大学の先生と教育会社を交えて新しい教育プログラムをつくり、自ら受講することを始めています。

最後のOJTに関しては、職場で人が育たなかったり上司が教えられないといった機能不全を起こしていて、当社でも問題意識を持っています。その背景には、忙しいうえに教えた経験もないようなミドルマネジャーが増えていることがあります。そのため、目標管理と人事考課もなかなか機能せず、期末に評価するだけで終わってしまうような実態も垣間見えます。

人事の活動と企業内キャリアコンサルタントの融合

私が考えている課題は、こうしたことが起きているなかで企業内キャリアコンサルタントは何ができるのだろう、ということです。そこで、人事部門の活動と企業内キャリアコンサルタントとしての取り組みが融合できるのかを模索しています。

例えば、タレントマネジメントであれば、いま、リーダーやハイパフォーマーにコーチングをする会社が増えています。コーチングとキャリアコンサルティングは理論的には少し違いますが、この辺は隣接領域ではないでしょうか。

組織開発に関しても、特定の組織へのコンサルテーションが働きかけの一つになるかもしれません。今は人と人が結びつきにくくなっています。ややもすると、一日中、パソコンに向かってデスクワークをして帰ってしまうケースも少なくありません。以前は飲み会などもありましたが、最近はワーク・ライフ・バランスでそういったものもなかなか集まらないなか、大勢の人数と話さずに一日を終えてしまいます。そういった状況のなかで、組織としての力をどう高めていくか──。この点について、私たちは今、ソーシャルキャピタルという概念を用いて、個々のネットワークづくりを支援するため、交流会や座談会などの場を多く設けるようにしています。実際にわれわれもファシリテーターとして参加したり、一人ひとりのキャリアを語ってもらうといったことを、10人ぐらいまでの人数で車座になって話をします。そして終了後には、「時間がある人は食事でも」といった感じで次に流れていくようなことを地道にやっています。

OJTについても同様です。どういうふうに教育していけば良いのか、若い人とどうコミュニケーションを取ったら良いか等、マネジャーは大変苦労しています。しかし、ただキャリアコンサルティング、キャリアカウンセリングといってもなかなか相談に来ません。そこで、我々の側から、悩みを出し合うようなワークショップを作っていきます。

キャリコンの役割の拡大を

キャリアコンサルティングは、1対1がベースで、それはとても重要だと思います。ただ、私自身はキャリアコンサルタントという仕事を、最近言われる「ジョブ・クラフティング」、「ジョブ・ストレッチング」などといった形で役割を広げていかないと、企業やクライアントに対して役に立つことが難しい気もしています。個人的にはキャリコンの存在意義について危惧していて、お話ししたような動き方をしています。

プロフィール

三橋 明弘(みはし・あきひろ)

旭化成エレクトロニクス株式会社人事室室長

1988年に旭化成株式会社に入社。住宅事業部門の営業を経て、事業部門、工場、研究部門担当の人事、本社人事部において、主に公募人事や目標管理等の制度企画、人事情報システムの企画開発、年代別キャリア研修企画及びファシリテートを担当。同グループの人材・教育サービス会社に出向し、経営企画、人材派遣、人材紹介、人材教育事業を担当。主に大学キャリア教育、PBL、就職支援の企画、運営を経験し、2015年より現職。産業カウンセラー、CDA、2級キャリアコンサルティング技能士。

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