<メンタルヘルス>
職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査:
第55回労働政策フォーラム
非正規雇用とワーク・ライフ・バランスのこれから
—JILPT平成22年度調査研究成果報告会—
(2011年10月3日、4日)

郡司正人(主任研究員/2011/10/3,4労働政策フォーラム

郡司正人 調査・解析部主任調査員 配付資料(PDF:610KB)

皆さん、おはようございます。

若干、今回の労働政策フォーラムのテーマとはちょっと毛色の変わった報告ですけれども、私が昨年9月に実施いたしました「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」の内容をご紹介したいと思います。

まず最初に、どういった形で調査をやったかということをご説明をします。農業とか漁業とかを除きまして、民間の事業所1万4,000カ所を対象に調査を実施しております。回収率は、メンタルヘルスケア、なかなか微妙な課題でもありますので、企業の方にどれほど答えていただけるかというのが、調査をやる前の心配事であったわけですが、1万4,000まきまして、有効回収数が何と5,250とありますので、回収率が37.5%、4割近い回収率です。私どもの通常やる郵送調査は、大体2割いくとなかなか高い回収率という感じですので、 これは非常に高い関心があるというように思っています。

では、時間も限られておりますので、早速内容の説明に入っていきたいと思います。

まず最初に、実態であります。どのぐらいの事業所にメンタルヘルス不調者がいるのかということで聞いております。ちょっと小さくて見にくいかもしれませんが、これの一番上(PDF:610KB)に全体と書いてあるのが、正社員です。全体で正社員についてメンタルヘルス不調者がいるかということを聞いております。56.7%、 大体6割のところでメンタルヘルス不調者がいると。このメンタルヘルス不調者というのは何かということですが、よく精神科のお医者さんなんかがこの結果を見て、こういうあいまいな聞き方でどうかというご批判もあるわけですが、ただ、事業所で人事労務担当の方を対象にする調査といたしましては、病名を挙げて聞くとか、そういったことはなかなかなじまないということもありますので、ちょっと大ざっぱかもしれませんが、メンタルヘルスに不調を抱えている者という形でお聞きしております。それで、56.7%、これは大体6割ですね。

下に同じように帯グラフがございますが、これは企業の規模別で見たものです。事業所に調査票を配布して回答を得ているわけですが、事業所が大きければメンタルヘルス不調者がいる可能性が高くなるのは当たり前のことで、そうではなくて、事業所の大きさではなくて、その事業所の属している企業、会社の大きさで規模のクロスをかけています。ご覧いただくと、規模が大きくなるに従ってきれいに不調者が多くなっているというわけではありませんが、特に1,000人以上規模の大規模企業で72.6%、1,000人以上の企業だけ大きい割合になっているということであります。これは後ほど、メンタルヘルスケアの取り組みの状況についてもご紹介したいと思いますが、やはり大きな企業になりますと、制度的にメンタルヘルスケアの取り組みが進んでおります。実際にいるという話と、取り組めば、それに乗っかって表面に出てくるメンタルヘルス不調者もいるわけで、その取り組みと表裏の形で、1,000人以上の企業でいる割合が高くなっているということも言えるかとも思います。

下の帯グラフであります。ここ3年の傾向について聞いています。 「増えている感じですか」、「やや増えている」、「ほぼ同じ」、「やや減少」、「減少」とかを聞いております。これも非常にばくっとした聞き方でありますが、「ほぼ同じ」というのが半数近くいます。ただ、「増加傾向」と「やや増加」を足したものと、「やや減少」と「減少」を足したもの、この増加と減少を比べますと、増加の割合のほうが多くなっている。ですので、増加傾向が見られるというように言えると思います。

さて、今、規模別の結果をご紹介いたしましたが、産業別に見るとどうか(PDF:610KB)という表です。これも少し細かい表ですが、やはり産業別で随分違います。多いのは、医療・福祉ですとか、情報通信、製造業あたりが非常に多くなっているという感じです。ほかのところも半数近く、大体平均、全体と近いところ、超えているところもありますが、やはりこの医療・福祉、情報通信、製造業というのが非常に目立つ結果になっております。

実はこの調査で、正社員だけではなくて、非正社員、直接雇用のパートや契約社員であるとか、非直接雇用の派遣労働者についても聞いております。その結果がこの表(PDF:610KB)になっています。ご覧のように、一番右のほうのところは無回答で、非常に無回答が多いということになっています。「不調者はいない」のもこれだけ多いということですね。ただ、事業所に聞いて、非正規の方のメンタルヘルスの状況を調べるのは、この結果を見て、ちょっと難しいなと感じた次第です。ですので、皆さんに紹介しておきながら、あまり信頼できないというのも変な話ですが、事業所で非正規の方の状況まで把握しているということは、この調査の感じから見ると難しいのかなということであります。調査だけではなくて、いろいろなところでヒアリング等も行っていますが、非正規の方の不調者については、発見して云々というよりも、退職してしまうというような状況がやはり多いということで、なかなかこういった調査で非正社員の方たちの状況をつかむのは難しいということがわかると思います。

今まで紹介してきましたのが、メンタルヘルスに不調を抱える者と非常に大ざっぱなものでしたが、メンタルヘルス不調を理由にして1カ月以上休職もしくは退職した人というふうに若干定義を定めて聞いたのが、このグラフ(PDF:610KB)です。この皆さんにお見せしているグラフは、これは正社員だけのグラフになっています。正社員ということではなくて、すべての雇用形態、非正規も入れた形で見ますと、「いた」というのが25.8%ということになっています。正社員だけで見ますと、23.5%が、メンタルヘルス不調が原因で1カ月以上休職・退職したということになっています。

下が、先ほどのグラフと同じように、産業別になっています。 これも先ほどの産業別よりも目立って情報通信の割合が55.8%と高くなっています。先ほど非常に割合が高かった医療・福祉を見ますと、当然、比べると高い部類には入るわけですが、34.4%。このように少し定義をきつくすると、医療・福祉はこれだけ減るということです。何が原因なのかは残念ながら、この調査だけではわかりません。実は医療・福祉での取り組み状況も、後でも紹介しますが、紺屋の白ばかまみたいな、そういう状況があるのかもしれません。

下にあるグラフは、企業の規模別で見ています。そうすると、先ほどの大ざっぱに聞いたものよりも規模が大きいほど、1カ月休職・退職者の割合はもう少しきれいに高くなっているというような状況が出ています。

では、実際に退職した労働者がどういった人たちなのか(PDF:610KB)ということをみてみましょう。これが、一番左が「役職なし」、いわゆる平であります。これがやっぱり多いということで、66.6%、過半数を占めている。次が「係長クラス」19.8%、「課長職」が8.1%、それより上の方たちはちょっと少ないような形になっています。当然、数も少なければ、それはそうかもしれません。

これを、企業の規模別で見ております。1,000人以上を見ますと、ちょうど「係長クラス」が、ほかのところに比べて若干割合が高くなっているのがちょっと目立つのかなと思います。実はこの調査の前に、07年でしたか、そのときは私どもが持っているモニター企業、約100社ほとんどが1,000人以上の大規模企業ですが、そこを対象に似たような形でメンタルヘルスの調査をしたことがございます。そのときの問題関心が、どういった層がメンタルヘルスで悩んでいるかということで、ちょうど課長の寸前みたいな若年の後期というか、ここでいう係長クラスみたいなところは、上下の板挟みに遭って仕事でも責任が重くなるものの、処遇はなかなか進まずみたいな形で負荷が高まっているのではないか、そういったことを想定しながら設問をつくりました。そのときは比較的この若年後期というか、「係長クラス」が一番多くメンタルヘルスの問題を抱えているという結果が出ました。今回は対象を非常に広くとって、中小企業も含めて調査をして、似たような結果が出るかなと思いながら実は調査をしたのですが、この結果を見る限り、そうではなくて、やはり「役職なし」のところだということだと思います。ただ、先ほど言いましたとおり、前回やったモニター調査と同じように、1,000人以上規模で見ると、「係長クラス」というのが、ほかに比べて若干割合が高くなっているということがわかると思います。

では、メンタルヘルス不調になる方の原因(PDF:610KB)というのは何なのか。これも、事業所の人事労務担当の方に聞いている設問ですので、実際どうなのかというのはなかなかわからないわけです。退職したり休職したりされる方がどういう原因で云々とかを言って、退職なり休職なりに入るということではないでしょうから。結果はちょっと意外でした。一番が「本人の性格の問題」ということで、これが約7割、67.7%でトップですね。これは複数回答で聞いております。こういうメンタルヘルスの問題を考える場合は、当然、労働政策の研究機関であるので、職場の問題ということを意識しながら調査票も設計しておりますが、続いて「職場の人間関係」であるとか、「仕事量・負荷の増加」、「使途後の責任の増大」とかが出てくるわけです。やはり「職場の人間関係」とか「仕事の負荷の増加」というのは、無視できない大きさであるということだと思います。

少し余談になりますが、この「本人の性格の問題」というのは、それにしても大きい割合だなという気がしています。メンタルヘルスケアの問題については、後ほども今後どう考えるかというデータをご紹介いたしますが、なかなか効果が表れない対策だと思うんですね。企業の中でメンタルヘルスに取り組んでおられる方のお話もいろいろと聞きますが、役員会でこういう新しくメンタルヘルスケアの対策について費用をつけてやるんだというような説明をしても、実際の効果のようなものが数字で示せなくて、なかなか説明がしづらいんだというようなお話も聞いております。企業の方でメンタルヘルスに取り組んでいろいろとやっているんだけれども、職場の環境を整えても、うまく成果が出てこないというようなお話も聞いていると、ある程度そういった取り組みが進んできてはいるので、取り組んでいるけれどもというようなところは、複数回答で聞いているので、「本人の問題」というようなところに、皆さんチェックをつけるというようなことも背景なのかなと。これはちょっと脱線して雑感ですが、調査をしながら感じた次第であります。

1カ月休職・退職された方のお話もしましたが、では、メンタルヘルスが不調になった人は、 結局その後どうなっているのか(PDF:610KB)ということを聞いています。これも非常に大ざっぱな聞き方ではありますが、休職を経て復職しているのか、それとも、そのまま休職しないで退職しているのかというようなことを聞いております。この結果をみると、「休職を経て復職」が37.2%と一番多かったわけです。これも当然ケースでそれぞれ違うので、なかなか答えにくいということでありますが、最も多いパターンは何かというような形で聞いております。次いで、「休職を経て退職」、「休職せずに治療等をしながら働き続けている」というのが14.1%、ご覧のとおりの数字になっているわけです。これで、いろんな経緯を経ても結局「退職」というのが幾つか選択肢であります。これを寄せまして、「復職」と「結果的に退職」の割合を見ますと、これが大体拮抗している感じです。

これも同じように企業の規模でクロスをかけて見ています。これも全くきれいにというわけではありませんが、企業規模が大きいほど「休職を経て復職」しているという割合が高くなっています。300人以上のところで、そういった傾向はきれいに出ていると思われます。1,000人以上規模で見ますと、企業規模が大きいほど当然さまざまな取り組みをされておりますので、「結果的に退職」するという割合は低くなっているということがわかると思います。

どんな経路をたどるのかという話に加えて、どのぐらいの割合の人たちが復職できているのか(PDF:610KB)ということも聞いておりまして、これが非常によい結果だと思いますが、「全員復職」というのが28.2%、3割弱で、一番割合が高かったんですね。全員ではないけれども「ほとんど」と「全員復職」と合わせると、4割を超える割合で復職されているということですので、この割合は低くない割合だと思われます。一方、「全員復職しなかった」というところは16.6%。これを少ないと見るか、どうと見るか、なかなか微妙かなと。ただ、全体の割合から見ると、実はもう少し高い数字が出るかと思っていたのですが、16.6%だったということです。

これも会社規模で見ています。データを見ると、そんなに大きな声で言えるような差ではないかもしれませんが、ただ、明らかに企業の規模が大きいほど復職の割合が高いという結果になっております。先ほども1,000人以上規模のところを指摘してお話をしましたが、1,000人以上規模で、「全員」「ほぼ全員」というのを足せば、過半数だということになるので、やはり規模が大きいほど復職の割合も高くなっているということであります。

復職については、なかなか難しい問題(PDF:610KB)がたくさんあるというふうにヒアリング等でもお伺いしています。ではどういったことが問題点になっているのかということで聞いています。「どの程度仕事ができるかわからなかった」が59.9%でトップになっています。また、次に、本人の状況、実際に治っているのか治っていないのかとか、どういうふうに対応すればいいのかなど「正確な医学的な情報が得られなかった」。これは本人の担当のお医者さんと、また、会社の産業医さんとか、その間の連携がなかなか難しいので、こういった医学的情報が得られなかったと。特に医学的情報は機微情報ですので、なかなかやりとりが難しいということもあるかと思います。次に、「本人に合う適当な業務がなかった」。やはり復職に当たっては、いきなり現職、もとの仕事をそのままというのはなかなか難しい場合も多いかと思われます。ただ、そうはいっても、そういった仕事を用意するというのはなかなか難しいという状況がここに出ていると思われます。この3つが問題点の中でも大きく目立った点だと思われます。

さて、この表がメンタルヘルスケアの取り組み(PDF:610KB)であります。これも大ざっぱに、取り組んでいるのか、取り組んでいないのかという話で聞いていまして、全体で見ると、「取り組んでいる」が50.4%でかろうじて過半数、「取り組んでいない」が45.6%とほぼ拮抗した形になっています。下の段のところが規模別になっていますが、やはり規模が大きいところほど取り組んでいるということです。ですので、一番下の1,000人以上規模を見ますと、75.4%で7割を超えて取り組みがされているということだと思います。やはり大企業の取り組み割合が非常に高い。上のところのクロスが、これが産業で見たものです。電気・ガス・熱供給・水道業というのが88.8%、金融・保険業が75.3%、次にくる情報通信、メンタル不調者が非常に多かったところでありますが、75.0%、7割強が取り組んでいる。これは当然、メンタルヘルス不調者が多いというのが背景にあり、そういう状況を反映しているのだと思われます。逆に、非常に産業によってばらつきがあり、取り組んでいない割合が非常に高くなっているのが、鉱業とか生活関連サービス・娯楽、宿泊・飲食サービスといったところであります。

当然、メンタルヘルス不調を抱えている人がいなければ、取り組んでいなくても当たり前ではないかということだと思われます。ですので、実際に1カ月以上の休職または退職した方の有無とこの取り組み(PDF:610KB)をクロスして見てみました。そうすると、そういう方がいるところの64.0%が取り組んでいると。これはそうだろうなと思う数字ですが、もっと取り組んでいてもいいんだろうなという数字かもしれません。いないところといるところを比べると、やはりいないところのほうが取り組んでいる割合は低くなっています。ここで、「いる」「いない」を比べて、 最初は取り組みの大きさを比べる目的で表をつくりましたが、それよりも、実際にメンタルヘルスが原因で1カ月以上休職もしくは退職した方がいるところでも、この32.2%のところが取り組んでいない。要するに、そういう人がいないのならば、取り組んでいないというのも納得できるようなところもありますが、実際にそういう人がいますよというところであっても、この32.2%が取り組んでいないと答えています。大企業を中心に、メンタルヘルスケアの取り組みは進展しているように思われますが、やはりまだまだ実態をカバーするような形で取り組みが進んでいない部分があるんだろうなと。大手を中心に進んでいるわけですから、中小企業のほうでの取り組みが今後必要になってくるだろうということだと思われます。

これは、先ほどメンタルヘルス不調者の方がその後どういう経路をたどったか(PDF:610KB)というパターンのデータをご紹介しましたが、それと取り組んでいるか取り組んでいないかというものをクロスした表です。先ほど、いろんなところでお話を聞くと、メンタルヘルスケアの対策について、効果が表れない、その効果を説明できなくて、なかなかその対策実施が難しいんだよというお話を聞いたということもご紹介しましたが、これを見ますと、やはり取り組んでいる事業所のほうが復職している割合が高く出ています。この10ポイントぐらいの差でどこまで言えるかというのはなかなか難しいかもしれませんが、明らかに取り組んでいるほうが復職している割合が高い。ただ、もう1つ、このクロス表を見て目につくのが、「長期の休職または休職、復職を繰り返している」割合です。人事労務からすると厄介なケースだと思うのですが、これが、取り組んでいるところのほうが倍近くになっている。5%と10%ですから、それをただ倍という言葉で表現していいかどうかはわかりませんが、きちんと取り組んでケアするがゆえに、長期の休職であるとか、休職、復職を繰り返すというような状況が生じているんだろうと思います。

先ほどもメンタルヘルスケアに取り組んでいない、実際に不調者等がいると言っているにもかかわらず取り組んでいないところが3割あるよというお話をしましたが、なぜ取り組んでいないのか(PDF:610KB)という理由も聞いていまして、これも実際にメンタルヘルス不調者がいるのに取り組んでいないというのと付合するのかもしれませんが、調査結果を見て、私どももそうかなと思ったのですが、「必要性を感じない」というのが42.2%でトップです。後ほど、今後メンタルヘルスケアについてどう考えるかという質問の回答をご紹介しますが、メンタルヘルスケアについては、今回の調査でも回収率が高くて、関心がある中で、なかなかその取り組みは難しいにしても、これだけすぱっと必要性を感じないんだという意見がトップになるとは思っていませんでしたが、こういう結果になっています。次いで、「専門スタッフがいない」が35.5%、中小零細でありますと、専門スタッフを活用するということが難しいということもあると思います。 「取り組み方がわからない」というのも31.0%で、それに次いでいます。必要性や実際に深刻な状況があったりしても、ではどうすればいいのということですね。次いで、「労働者の関心がない」、「経費がかかる」というような形で続いています。

これもこの表で企業規模でクロスをかけて見ています。規模が小さいほど、「必要性を感じない」とか「経費がかかる」という割合が高く出ています。いろんなところでお話を聞いて、1,000人以上規模だと、「必要性を感じない」と回答する方はそんなにいないのではないかという想定でしたが、結果を見ますと、34.0%で、少なくない数字だと思います。これは先ほどの問いと同じになりますが、規模が大きくてもメンタルヘルス不調者がいないということもあるでしょうから、いないから必要性を感じないのかなと。下に「いる」「いない」ということでクロスもかけています。これを見ると、実際にそういう人がいるよというところでも、「必要性を感じない」が2割を超えている。これはメンタルヘルスケア対策について、さらに促進する必要があるんだろうと実感できる数字だと思われます。

では、具体的にどんなことを(PDF:610KB)各企業が行っているか。相談窓口の整備がトップです。あとは、管理監督者、労働者に対する研修であるとか情報提供が上位に上がっています。

メンタルヘルスケアには、まず労働者本人が自分たちで気づいて対応するセルフケアの分野と、あとは、会社の上司や部下とかいう関係のラインでケアをするというもの、また、外部の専門スタッフを使うようなものと、こういったタイプがあります。メンタルヘルスの原因は「本人の性格」という話もありましたから、企業はセルフケアを非常に重視していると思われますが、ここで見ると、メンタルヘルスケアの担い手(PDF:610KB)は、「職場の上司や同僚」だろうと。これが38.3%でトップで、ラインケアを重視しているという結果になっています。次いで、「人事部門」がきて、「本人の自己管理」、これが先ほど言ったセルフケア、それから、「専門家」というような形になっております。

ラインケアを最も重視するということであるので、では、実際に役職の方たちに、メンタルヘルスケアについてどういうふうに役割を置いているのか(PDF:610KB)ということも聞いています。過半数を超える事業所は、「定期的ではないが、部下のメンタルヘルスに注意を払うように指示」ということです。「特段の役割を定めていない」が25.3%。「定期的ではないが、部下のメンタルヘルスに注意を払うよう指示」というのは、これは果たして役割を与えているのかどうかという議論もあると思います。ただ定期的に面談をやれとか、そういう形でかちっと決めているところと、全くやっていないところと。段階的な回答を拾いたいと思いましたので、こういう選択肢を置きましたが、実態上は、ラインケアを重視しているといっても、ラフに行われていることが多いということは、これを見てわかると思います。

うまく復職していくというのはケース・バイ・ケースでなかなか難しいものだと思いますが、その復職の手続き(PDF:610KB)についてルールを決めているのかということを聞いています。「人事担当者がその都度相談してやり方を決めている」がトップです。これもちょっとやわらかく書いていますが、実際はその都度、ルールはなくて、ちょっと言葉は悪いかもしれませんが、その場その場でやっているよということだと思います。これが43.1%で半数近くいるということですね。次が、「復職に関するルールを決めている」が32.9%。「それぞれの上司・担当者に任せている」というのが17.4%。ですので、先ほどの43.1%と17.4%を足すと、6割のところが、きちんとしたルールがないんだということだと思います。これも規模が大きいほど取り組んでいるので、ルール化も進んでいるということです。1,000人以上規模では、53.6%がルール化をしているという回答であります。これも、1カ月休職者・退職者がいるのかいないのかというのでクロスをかけて、「いる」ところのほうがルール化も進んでいるという結果になっています。

復職後、復職したら後は知らないよというのでは、なかなかうまくいきませんので、支援策(PDF:610KB)をとられているところがあるわけです。ただ、聞いたところ、「特段の支援措置はないんだ」というのが3割を超えています。これがトップです。次いで、「人事労務担当者や上司が定期的に面談・助言する」が30.9%。ですので、専門家のサポートを実施しているところはあまり多くはなくて、「必要に応じて産業医や専門担当者等が面談・助言する」が24.0%、「一定の期間、産業医や専門担当者等が定期的に面談・助言する」が8.8%と、足すと3割程度ということです。

今後、メンタルヘルスケアについて状況がどういうふうに変わっていく(PDF:610KB)と考えているのかということも聞いております。深刻になるのか、深刻ではなくなるのかということですが、約半数の事業者が「深刻化する」というふうに答えています。これが「深刻になる」と「やや深刻になる」を足した数字で46.0%、「現状のままだろう」というのが42.1%で、「改善に向かう」というのは少なくて、1割もいっていない。これも企業の大きさでクロスをかけて、1,000人以上規模だと、53.0%が「深刻化する」と答えていますので、規模が大きいほど「深刻になる」と考えているということがわかると思います。

メンタルヘルスの問題は、 企業にとって何が問題なのか。従業員個人の問題で、企業の経営にあまり影響がなければ放っておいてもいいということはないでしょうけれども、やはり労働者の健康問題というだけではなくて、経営者にとっては、事業との関係が非常にあるんだろうという想定で、企業パフォーマンスとの関係(PDF:610KB)を聞いています。企業パフォーマンスと「関係あり」というところが、「どちらかと言えば」も含めて86.2%。「どちらかと言えば」というのは少し中間的かもしれませんが、多分、これを省いても、6割を超えるところが、企業パフォーマンスとメンタルヘルスの問題が関係があると言っています。「密接に関係がある」というところも2割を超えているというような状況になっております。 ですので、企業にとっては、メンタルヘルス問題が非常に取り組むべき問題だという認識はあるのだろうと思われます。

では、メンタルヘルスケアは今どういう位置づけ(PDF:610KB)になっているのか。先ほどの認識は、何となく深刻化するし、パフォーマンスとも関係あるしというような事業所が多いのですが、現在は、「重要」派と「重要ではない」派が大体拮抗しているというような状況です。これも規模が大きいほど、「重要課題」だと考えておられるところが割合が高くなっています。1,000人以上規模ですと、68.5%が「重要な課題」だと思われています。

では、今後はどうだという話(PDF:610KB)も聞きました。これを見ると、やはり現状よりも「強化すべきだ」というところが非常に多くなっています。今はメンタルヘルスケアに取り組んでいない事業所でも、過半数が「強化すべきだ」と答えております。やはり現状必要ではないと答えているところであっても、今後は強化していくというようなところも多いんだろうと思われます。

大分時間も超過してしまいましたが、私からの報告は以上です。ご清聴ありがとうございました。

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