<非正規雇用>報告4 派遣労働でキャリアが培えるか?
―過去・現在・未来の働き方からみる―:
第55回労働政策フォーラム
非正規雇用とワーク・ライフ・バランスのこれから
—JILPT平成22年度調査研究成果報告会—
(2011年10月3日、4日)

小野晶子(副主任研究員)/2011/10/3,4労働政策フォーラム

小野晶子 雇用戦略部門副主任研究員 配付資料(PDF:782KB)

皆さん、こんにちは。労働政策研究・研修機構副主任研究員の小野晶子と申します。最後の最後の報告に残っていただきまして、誠にありがとうございます。

今日の報告は派遣労働でキャリアが培えるかということで、過去・現在・未来の働きからみるということで、お話をさせていただきたいと思います。2008年から当機構で派遣労働に関して研究を進めてまいりました。今日報告する内容は2009年から実施いたしました派遣労働者に対するヒアリング調査を88人の派遣労働者の方にご協力いただきまして、いろいろその方のキャリアパスであったりとか、現在の働き方であったりとか、将来どう働いていきたいのかについて、1人あたり長い人は5時間ぐらいお話になった方もおりますけれども、大体2時間から3時間ぐらいお話を伺いまして、それを報告書にまとめました。実はまだ公表されておりません。総ページで650ページぐらいの辞書になるような報告書になる予定ですけれども、今、印刷に出しておりますので、11月中には刷り上ると思いますので、たっぷりとコピー用紙を用意していただきまして、それでプリントアウトして読んでいただけましたら幸いでございます。

2008年からこの研究を始めたわけなんですけれども、当時まだリーマンショックが起こる前でして、ただ確かに派遣労働に対するイメージが悪くなり始めていた時期だったんですね。そのころに量的にも非常に派遣労働が増えてまいりましたので研究をしなくてはいけないねという話になって、ではこの派遣労働という働き方でキャリアは培えるのかしらという素朴な疑問ですよね。最初は頭で考えたときに、いや、もう派遣労働でキャリアなんか培えないでしょうというのがおおむねの最初に持った印象であったわけです。いろいろ2008年から研究をしてまいりまして、最初の書いたものの結論としては、やはりかなり調査をしてみて、厳しいねという話になりました。でもほんとうにその可能性はないのかなと。あるとしたらどこにあるんだろうとまた考え直してさらに調査を進めました。すると、どうもないこともない。例えば技術系の派遣会社には派遣労働者はちゃんとキャリアを培えている人もいるし、 事務系の一部の人にもどうもキャリアを培えている人はいるし。派遣先に長く勤めている人は何だか賃金が上がったりしているし、じゃあ派遣元の役割は? 派遣会社に長く勤めていたら賃金は上がるのかな? 見ていくと、どうも派遣元も自分のところに専属になった派遣社員には継続して仕事を与えているようなことが見えてきたわけです。アンケート調査もとりまして、データに関する分析は今もやっておりますけれども、それもおいおいまとめて出します。

今日はヒアリングで、労働者のヒアリングの中からお話を進めていくことになります。これから話すことは、キャリアということなんですけれども、言葉として一応キャリアは今回は職務、仕事の連鎖ということで、キャリアパスは過去~現在の職業経歴、キャリア形成は職務や仕事の連鎖にともなって職業能力が向上すること。キャリア形成の中に能力の向上と伴って処遇も向上するということをプラスで入れてほんとうはキャリア形成という言葉を使いたかったんですが、前回の調査の中で、かなりこれは派遣労働者には厳しい話で、そこまでキャリアの形成の言葉の範囲を狭めてしまうとキャリア形成がなかなか難しいねという話になりましたので、ここはちょっと緩やかにして、処遇が向上すれば完全なるキャリア形成ということにしようということで、言葉は使っております。

それで、今日報告するに当たって、どう話を構成していこうかなという。皆様に分かりやすい話をしていかなければいけないなということで、まず最初にもう結論からお話ししたいと思います。一番最後のページから2つ目のスライド(PDF:782KB)になりますが、派遣労働者の中でキャリア形成の可能性が見えるもの。今回のヒアリング調査の中で見えたものは、女性で、高校・専門学校卒、いわゆる大学卒以外の方、そして初職が事務職じゃなくて、非事務系職種。例えばスーパーのレジを打っていたりとか、あるいはヒアリングした中にはパチンコ屋で働いていた方もいらっしゃいましたし、工場の生産労働者の方であったりとか、いわゆるデスクワークをずっとされずに高卒以降仕事をされていた方が事務の派遣に就いて、そこからキャリアが伸びていくという様を幾つも観察しました。それプラス、やはり本人の意識は非常に重要でして、キャリア上昇意識が強くないとキャリアは伸びていかないなとも感じております。

そして先ほど言いましたけれども、非事務職から事務職へ移動することによって賃金が上昇すると。さらにキャリア意識の強い人は、資格を取得して職種を移動することによってまた賃金が上がったりするという行動が見られます。例えば最初は普通の一般事務職で未経験で入られて、短期間の単発の事務職をやって、その後長期の営業事務なんかに就かれるわけですね。その中で資格を取りつつ、簿記の資格なんかを取りつつ、次に経理事務になりたいと。経理事務の仕事を探して就かれると、さらに賃金が上がっていくということを見ました。さらにそこで仕事を頑張っていると、派遣先から正社員になりませんかという打診が来たりして、正社員にそこから移り込んでいくという新しい、言わば日本の労働市場の中で初職から新卒労働市場で大学を卒業してから企業の中に入っていく、あるいは高校から学校推薦で企業に新卒で入っていくというルートとは違うルートで企業の中でキャリアを培えるルート。細いですけれども、見える可能性があります。

一応結論はこれを言いました。前のほうに戻りますけれども、3スライド目(PDF:782KB)です。キャリア形成の議論としてやはり踏まえなければいけない点がございまして、この3つについてとりあえず見ていこうということにしました。まず1つはどこのキャリアステージまで行けるかです。キャリアステージ、この中では初期、中期、後期とやっていますけれども、 大体年齢で分けると初期は27歳、28歳ぐらい。30代のちょっと前ですね。中期は大体30歳から35歳ぐらいまで、20代後半から35歳半ばぐらいまで。後期は大体30半ば以降と考えていただいたらいいと思います。いろいろキャリアの先行研究なんかもありますけれども、大体初期のキャリアというのは、リクルートワークスの大久保さんなんかはこれはいかだ下りの時期だと言っていて、何事でも挑戦すると。何でもやると。自分にその中から合ったものを見つけていくということですね。だから初期で、ある意味自分探しをして、自分に合った職種を見つけてそれ以降、30以降にそれを今まで培ったものを乗せていくということになります。派遣でどこまで培えるのだろうかということですね。あとは、派遣で正社員になりたい方もいらっしゃいますので、派遣という働き方をステッピングストーン、踏み石にして正社員に行けるのかということです。

次にとどまるべきか、行くべきかということで、要はこれは派遣先を移動するか、とどまるか、どっちが得かという話です。もう1つは派遣元を移動するか、とどまるか、どっちが得かということです。これについては実は今回の中にはありませんけれども、今データを私がいろいろ回してやっています。賃金関数に関して回しているのですが、非常におもしろい研究結果が出ておりまして、今度社会政策学会で報告するのですが、派遣先は6から7年ぐらいで賃金上昇が頭打ちとなる。その後、緩やかにカーブが下っていくのですが、派遣元に長く勤めていると、最初は全然上がらないんですよね。けれども、7年目ぐらいからぐーっと上がってきて、派遣先に長くいるのと、派遣元で長くいるのが変わってくるというカーブが推計で出てきたりしております。ですので、やはり派遣先で固定していることというのは非常に重要ではあるんですけれども、派遣元で固定して働くことも非常に重要であるなと感じております。その事例は後からも出てまいります。

職業能力と賃金のリンクは可能かということで、賃金の上昇要因は何かを見ていきたいと思います。 どんどん先に結論を話したいと思っておりまして、最後から3番目ぐらいのスライドですかね。23番目のスライド(PDF:782KB)ですね。 結論に、 今の議論に対する答えをもう既に書いております。 どこのキャリアステージまで行けるかという答えなのですが、まず職種については事務職、技術職は製造業務や軽作業よりもキャリアを培えると。これは皆さん感覚でそうだろうなと思います。それで初期、中期キャリアまではどうやら事務職なのですが、行けるという感じです。けれども、職務内容はこの辺でどうも頭打ちになってくるなということで、その辺が大体30歳、ストレートでずっと派遣に働き続けていられる方、30歳前後ぐらいのそのぐらいのところで、中期キャリアが達した方は正社員転換を打診される方がものすごく多いんですね。だからその辺でやはり何か1つのポイントが出てくるのかなという感じはしております。

とどまるべきか、行くべきかということは、賃金上昇に関して見ると、派遣先を固定するというのは2年以上固定しないとやはり賃金は上昇しないということがわかっている。20代はやはり自分自身の能力開発のために動いて、40代以降になるとやはり転職市場もかたまってきますので、派遣も同じで移るところもなくなってくるということがありますので、固定をしていったほうがいいだろうということですね。正社員転換に関しては、登用に関する情報なしに入っていっている方もかなり多いので、やはり派遣先を決めるときに自分が正社員に転換を通じてなりたいという人は、事前にちゃんと派遣元に情報を得てから、働き始めることが時間を無駄にしないかぎであろうと。派遣元固定に関しては、フォロー、交渉をちゃんとやってくれるところが良い。これは当たり前の話ですね。

3つ目。職業能力と賃金はリンクするのかということですが、ここで1つ非常におもしろい点が出てきたのは、労働者側のアピール。賃金交渉が非常に大きく賃金を上げるに当たって効くということがわかっております。これはデータの回したものでも、交渉要因がものすごく賃金を上昇させる影響があるという結果が出ておりますので、やはり本人が交渉しなければいけない。それは派遣元に対して声を上げて、それを派遣元が派遣先に仲介役となって交渉していくことによって賃金が上がるんだということが非常によくわかります。そしてやはり職務を派遣元であっても、派遣先と一緒に職場の状況がわからないということを言わずに三者で職務遂行能力を評価しているところについては賃金が上がりやすいということがわかっております。

一応、結論がこういう形になりました。なので、とりあえず事例を過去・現在・未来に分けて話をしていくということで、ようやく本題の中に入りたいと思います。過去・現在・未来の枠組みとして、これはスライドの4ページ(PDF:782KB)のところにあります。そしてそれぞれ過去・現在・未来となっていまして、その下にどういうことを見ていくかが出ております。

過去については、就職活動の初職。キャリアパス。派遣社員を選んだ理由などを調査では聞いて、現在は派遣社員の仕事の内容、正社員の仕事との異同、能力開発をどうしているのか。そして賃金はどういう推移を描いているのかということ。将来、正社員希望と求職活動をどうやっているのか。そして正社員転換の打診みたいなものを受けたことがあるのかということを主に聞いているわけです。今日はその中から過去についてはここに赤字で書いているものを中心にお話をしたいと思います。まず就職活動と初職(PDF:782KB)についてですけれども、これはここに見ていただいてわかりますが、初職正社員と初職非正社員に分けて、88人の中を見ています。初職正社員だった者は全部の中の48人でした。1994年以前に卒業年を迎えて正社員になった者は8割いるんですね。それが就職氷河期になって、これが6割になり、4割になりということで、初職正社員の割合がどんどん減っていくということが見えています。同様に初職が非正社員の割合はどうなるかというと、ほとんど94年以前というのは2割ぐらいでいないんですね。それが4割になり、2000年以降初職が非正社員で現在派遣社員をやっている人間が増えているということになっております。初職が就職氷河期で正社員になれなかったという者もおりまして、1つは就職活動の困難性があります。この中で初職非正社員になった者の中で、就職活動をしなかった者が結構いるんですね。なぜ就職活動をしなかったのかという話になったときに、1つは働きたくないとか、無気力化してあきらめているとか、モラトリアム状態なんですよね。この世の中の厳しい就職戦線を見ていると、就職活動自体をやる気がなくなったという人もかなりいました。それプラスちょっとの逃げがあるんでしょうけれども、音楽であったりとか、留学であったりとか、あと芸能とかに引かれて就職活動をせずにそのまま非正社員を続けながら音楽を続けたり、留学の夢に夢追いという形で行くという人も結構おりました。これが大体、84人の中の3分の1ぐらいのケースはこういう人たちで、そういう人たちが派遣に入ってきているという背景もあります。けれども、3分の2の人間はほぼ就職活動をやったんだけれども、正社員になりたかったんだけれども、なれなかった。あるいは一瞬なったんだけれども、不本意な就職活動で不本意に就職したわけですから、やっぱり嫌になっちゃって、やめちゃってフリーターになったとか、派遣社員になったとかという人がおります。ですので、やはりこの1990年代以降の就職氷河期がやっぱり派遣の労働には色濃く残っていて、その人たちは今20代後半から30代になっていると思ってください。

じゃあそういう人たちはやはりどこのキャリアステージまで行けるかという人的資本の蓄積の問題が出てきます。どこで能力を培わなければいけないのか。やはり正社員というのは能力開発に関してはきちっとある程度教育をしますので、蓄積が出てくるわけですよね。例えば正社員経験ありという人のキャリアパスと、正社員の経験がない人のキャリアパス(PDF:782KB)というのはどう見られるのかということで見ました場合に、正社員の経験がありの人はほとんどが正社員のときにやった仕事をそのまま引きずるような形で派遣社員になっている方が多いんですね。自分がやったことをそのまま派遣社員で同じようなことをやる。けれども、正社員の経験のないという人の多くは先ほど言いましたように非事務職であって、パート、アルバイトの延長線上で高時給を理由に派遣に入っていくような形で、例えば最初は未経験の事務。派遣に入る前の非正社員でやっていた職と派遣になってからの職が全然違う職をやっている場合が非常に多いんですね。1つの理由としては事務職のほうがやっぱり賃金が高い。賃金が高い事務職、派遣でやるということに関して、あこがれて派遣に入ってくるという人が多いということがわかります。

これが1つのキャリアパスです。次に現在のところを見ていきますが、賃金推移(PDF:782KB)というところを見ていきます。賃金推移でポイントとして見るのは、職場を移動して賃金が上がっているのかということと、同じ派遣先で上がっているのかと。要は外部労働市場に位置づけのある労働者ですので、職場を移動しながら能力を上げたり、 スキルを上げたり、より高い賃金の職業に移ったりして、自分自身でキャリアパスを移動しながら描いていくというのが1つの外部労働市場の姿ではあるのですが、おおむねこれまでの調査の中でそういう動き方というのはあまりないという結論になっていたわけです。そこで賃金推移を3つぐらいのパターンに分けてみようということで、1つは上昇傾向にある賃金推移を描いている人というのはどういう要因があるのかと。パターン2としては横ばいになっている人というのはどういう要因があるのか。パターンの3つ目としては、上下変動がものすごく激しい人もいるんですね。こういう人たちはどういう要因なのかを見ていったということです。

これは上昇傾向の事例の (1)(PDF:782KB)なんですけれども、スライド8ですね。この人はぱっと見ていただいてわかるように、最初800円ぐらいのところで、これは医療事務で始まっています。医療事務で始まって、ここで医療事務の資格を取りましたが、自分は医療事務は合わないということから、 職種を変更するんですね。ここで営業事務に就きます。ここの移った時点で簿記3級を取得して、営業事務をやると。で、営業事務をやって、派遣先を今度は経理で職種を紹介してもらって、現在1,600円ということで、800円賃金が上がるという傾向を描いております。ちなみにこの人は高校卒で、地元のスーパーに正社員として学校推薦で入社しましたが、上司との折り合いが悪くて、 それがトラウマになって離職します。その後、ちょっと精神的に苦しくなってしまい、軽作業の単発の派遣をずっとやられて、あまり人と接触しないような仕事をしながら、ホテルの住み込みアルバイトとかをやって、大分回復してきたということで、医療事務の資格を取ろうと。やっぱり自分はちゃんとしたキャリアを歩もうということで、27歳のときにこの医療事務の資格を取って派遣で働き始めるというような方で、現在30歳の方ですね。このときは、26歳かな。というようなキャリアを歩まれています。

これもちょっと似ていますが、同じように経理をやっている男性のパターン(PDF:782KB)です。 これも同じように営業事務をやっているときに、専門学校に通って、簿記2級を取って、職種変更して経理事務になって、現在1,800円。今の同一の派遣先で少し30円ぐらい賃金が上がるということを経験していらっしゃるというパターンですね。ちなみにこの方は非常に優秀な方で、ここの派遣先の1番のところで働きを認められて、慰留されて正社員にならないかと言われていますね。

これが、同一派遣元で、同じ派遣先でずっと毎年、毎年50円ずつ上がっていくという非常に特異なパターン(PDF:782KB)です。これの1つのポイントとしては資本系の派遣会社。旅行会社です。旅行会社の派遣先に勤めていらっしゃって、旅行会社の派遣元、グループ会社の派遣元に勤めていらっしゃるというパターンで、何も賃金交渉とかしていないのに50円ずつ毎年上がっていくというパターンになっています。でももともとのスタートが非常に低いんですね。キャリアも非常におもしろくて、もともと最初はカスタマーサービスをやっていたのですが、次に隣の島に行くんですね。隣の島の旅行企画のアシスタントをやるわけです。旅行企画のアシスタントをやった後に、ほんとうに企画の担当に回されて、正社員とまったく同じ仕事をやるようになって、そのときに正社員の転換の打診を受けていらっしゃるというパターンです。

これが次のパターン(PDF:782KB)ですが、この方は非常に長い間、初職から派遣社員でずっと働いていらっしゃる方です。同じ派遣元にずっと一貫して勤めていらっしゃって、派遣先もちょこちょこ変わってはいるんですが、今現在の派遣先の4というのが13年も勤めているんですよね。最初に入ったときが1,600円なんですが、 現在1,890円まで、こういうカーブを描きながらだんだん上がっていくという方です。これはOA事務機器操作、英語の事務なんかも入っていますけれども、そういう長いスパンで見るような事務作業のプロジェクトに就いている事務の方です。本人も正社員になるつもりも一切ないし、このままで私はいいんだと。正社員になってと言われたら、うーん、なりたくないわねとかとおっしゃっているような方です。何でこれ上がるんですかと言ったら、非常におもしろいことを言っていました。毎年3月になると、1人春闘をするんだって言うんですね。派遣元に対して1人春闘するんですよって、上がるにしろ、上がらないにしろ、必ず賃金交渉はしますと彼女は言っていて、派遣元も去年とマージン率が変わらないので、「じゃあうちの派遣元の身銭を切る形で30円時給を上げますよ」というようなことを言ったりして、賃金交渉をしていらっしゃるという非常におもしろい話を聞きました。

変わって、これは横ばいのケース(PDF:782KB)なのですが、これは製造業ですね。派遣元のこれは1は愛知県。ここ以降は神奈川になっていくんですけれども、ほとんど地域差がないというのが製造業の1つの特徴でもあるんですが、大体同じぐらいのこのぐらいで推移していくという感じですね。これはデータ入力(PDF:782KB)。同じように横ばい。この方は仕事が広がるのが嫌なんだと。すごく優秀な方でいろいろな提案事項であったりとか、改善事項、エクセルでこうやったらいいんじゃないかとか、マクロを組んだらこういうふうになっていいんじゃないかとかということを会社内で非常に提案されて、いろいろやられる方なのですが、それ以上に会社側が期待して、じゃあ、こういうのもやって、こういうのもやってと言って職種が広がり過ぎると、私はやっぱり嫌だと言って、派遣先をどんどん移られるという決まった枠で私は働きたい、正社員にもなりたくない、派遣社員をずっと続けていたい、この働き方がいいんだと初志貫徹されているような方ですね。

これも横ばいのケース(PDF:782KB)です。多少ここで上がったりもするのですが、 大体この方もこういう形で横ばいにしていくというようなこういうパターンもあります。

これが上下動が激しいパターン(PDF:782KB)なのですが、これの大きなポイントは勤務地が変更するということですね。ここでは職種が変更していると。ここで最後のところでガーンと落ちたりしていますけれども、あとはこの人のパターンとしては派遣先が変わるたびに派遣元を変わるという形で、1つの派遣先において賃金が上昇するということはないんですよね。1つの派遣先においてはもうフラット。そして派遣元を変わって、また賃金が変わるということをずっとやっていると。

この方(PDF:782KB)は、この一番最後の派遣元6以外を見れば、ずっと上がっていくというような傾向にあるんですね。最後、これ何で職種変更をこんなにしてこうなっちゃったかというと、この方も短大卒なのですが、最初は、工場で働いていたりしていたのですが、いろいろな仕事を経て、どんどん仕事が広がっていって、キャリアが上がっていくんですけれども、ここで突然私は旅行業界に行きたいと。今までのキャリアをリセットしてでもやっぱり旅行業界で働きたいんだと。ただ旅行業界というのは未経験者は非常に入るのが難しい。未経験で旅行業界に入るには最初はコールセンターからしかないんだという話でコールセンターに入るんですね。これでとりあえず旅行業界を働いた経験をここでつけると。私はここで半年、あと半年働いてここから旅行業界でまた転職しますと彼女は言っていると。こういうケースがあります。

賃金推移の傾向のまとめ(PDF:782KB)として、賃金上昇の要因としては、一番大きいのは職種要因です。製造、軽作業、医療事務って。やはり低い賃金の相場のものから事務に変わっていくと高くなる。事務の中でも一般事務、営業事務から資格が必要な、例えば経理とかになるとやはり高くなると。だからそういう意味からして、派遣の労働市場ではやはりかなり職種別賃金になっているということが言えると思います。

地域移動に関しては地方と東京の賃金格差。製造業を除いてですけれども、かなり違います。

派遣先の移動に関しては専門職に関しては同一職務において移動するときに賃金上昇がしやすいと。特に経理なんかはそうですね。キャリアをつけやすいということがあります。

派遣先を固定するときに、賃金が上昇するのは大体2年以上の勤続。職務が広がりやすい職。先ほどどんどん伸びていっているような人もいましたけれども、ああいう人は職場でこれもやって、あれもやってというのは派遣法の中ではこれはまずいよと言われるような話ですけれども、あれもやって、これもやってということを全部吸収しながらどんどん自分の職域を広げていき、高めていき、そしてそのことを持って派遣元に交渉させて、派遣先に給料を上げるという行動をしている人というのが給料を高めるということになります。派遣元というのは2年以上勤続。同じような理由ですね。あとはその人がどういう人かということの人物担保をすると、積極的に賃金交渉なんかもしてくれて、 上がりやすくなると。

あとは先ほど言った職務が広範化・高度化すること。先ほど言った賃金交渉が賃金上昇につながっていると。

賃金横ばいになるというのは先ほど言った逆のこともあるんですけれども、やはりシーリングがあるんですよね。賃金相場の。そこに頭打ちになる。つまりこれはジョブイコール賃金の派遣業界はそういう世界ですから、つまりジョブがもう頭打ちになる。これ以上の仕事はさせないよという仕事まで来ちゃうという、その仕事の範囲がどうも派遣にはあるようですねということです。

あと賃金下降の要因としては職種移動であったりとか、地域移動が主でありますということです。

観察した中でリーマンショックが挟んでいましたので、相当厳しい人もいたんですけれども、そのリーマンショックを理由に同じ職場内で賃金を下げられたという人はほとんどいなかったですね。じゃあどうなったかといったら、賃金を下げるという行動よりもやはり派遣先はもうその契約自体を切っちゃうということになるようです。賃金が下がるというよりも契約終了になるという傾向にあるということです。

次に未来の話になりますが、ちょっと時間が押していますので、パッと行きます。正社員転換を打診(PDF:782KB)される派遣労働者像ってどういう人なのかなということですが、仕事の変化であったりとか、労働時間等、コミットメントとかがどう変わるのかと。あと正社員の職域とどう変わっていくのかと。あと乗り入れ時の賃金はどういうものかということに注目してみるということです。

仕事の変化の傾向(PDF:782KB)として、こういうふうに十字を切りまして、縦に定型化、非定型化ということを入れ、横に仕事が正社員と同じか、違うかということを入れるわけですね。ここの一番下の第3象限のところが大体最初はみんな仕事は定型的で、正社員と違う仕事をするというのがもともとのそういう働き方なんですが、大体正社員転換を打診される人の傾向としてはこういうふうに仕事の判断要素が非定型にどんどんなってくるということですね。正社員と別の仕事になる人と、正社員とほぼ同じ仕事もして、判断要素もあるようなほんとうに正社員と同じような仕事をする人、この大体2つのパターンに分かれます。必ずあるというのは判断業務というか、非定型になってくる。難しい仕事をやり始めるというのが1つ大きなポイントであるということですね。ではこの2つの差というのはどういうことかという話なのですが、非常に単純に物理的な話で考えますと、例えば正社員が営業、派遣社員が営業事務という職場を考えていただいたらいいんですが、幾らこれ、営業事務の人の判断業務が増えていったとしても、営業にはなりませんよね。物理的に。そういった場合はこの下の三角のような図になるわけです。要はここの下の部分で仕事の量はすごく増えてくる。で、判断業務も増えてくるんだけれども、こういう三角形になって、正社員とまったく同じにはならない。こっちの場合、例えば企画なんかをやっている場合は派遣も能力があったらどんどん企画を出していって正社員と同じような仕事になっていくことがあります。そういう場合はまったく対照的に派遣社員と正社員が同じような仕事になるという職場の様相があらわれてくるということがわかりました。

正社員転換の打診のまとめ(PDF:782KB)として、仕事の変化として広範化、行動化が見られると。働き方としてはフルタイムは当然なのですが、残業もみんなよくするという正社員の行動に非常に匹敵するような働き方をする人が多い。コミットメントも非常に高い人が多いということですね。

そして正社員の職域と賃金ということですけれども、2つ先ほど言いましたけれども、正社員と同様の仕事、責任の仕事を任せられるような人は正社員と同様の賃金をもらえるんだと。先ほどの正社員と異なる職域になるという人というのは正社員転換を打診されるときにはアンダーにはやはりコストカットの目的があって、派遣社員はやはり派遣料金が高いということで、直接雇用にしたらちょっと安くなるということで、正社員もあるけれども、契約社員としての打診も非常によく見られたケースです。

そういう理由から正社員の希望者であっても、そこの派遣先で必ずしも正社員転換を望まない人もいるよということになりました。

以上、最初の結論(PDF:782KB)に戻っていくわけですが、おおむね派遣社員のキャリアの傾向としては、キャリアを培うのはかなり難しいのは難しいのですが、ではどこで見られるかって言ったときに、先ほど最初に言った就職氷河期のときに、非正社員になってしまっている人たち。潜在的にはものすごく高い能力を秘めているんだけれども、それが開発されないまま残っている人たちがいて、その人たちが派遣という言わば入職のハードルが低いもの。その働き方を利用して、正社員の転換という形を使って上に上っていくということがどうも事例の中からも拾い上げられたなと思っております。

ちょっと今日は長くなりました。疲れさせてしまってすみませんでした。では、今日はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

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