議事録:第5回旧・JIL労働政策フォーラム
働き方の多様化と多様な政策対応
(2002年3月29日) 

目次


講師プロフィール

土田 道夫(つちだ みちお)
獨協大学法学部教授(2002年4月より同志社大学法学部教授)。厚生労働省「パートタイム労働研究会」委員。主な著書に『労務指揮権の現代的展開』(信山社出版、1999年)など。労働法専攻。
 
山田 亮(やまだ りょう)
厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課長。厚生労働省「パートタイム労働研究会」担当。
 
龍井 葉二(たつい ようじ)
日本労働組合総連合会(連合)総合労働局長。連合・中小労働対策局部長、総合労働局労働政策調整局長等歴任の後、2001年より現職。 
 
紀陸 孝(きりく たかし)
日本経営者団体連盟(日経連)政策調査局経済調査部長。政策調査局賃金労務管理部賃金課長、経済調査部経済課長等を経て、1995年より現職。
 
小野 旭(おの あきら)
日本労働研究機構研究所長。東京経済大学経済学部教授。一橋大学名誉教授。2001年より現職。主な著書に『変化する日本的雇用慣行』(日本労働研究機構、1997年)など。労働経済学専攻。
 

1.多様化に向けたコンサンセス形成

【小野】 コーディネータを務めます日本労働研究機構の小野でございます。よろしくお願いいたします。
 このフォーラムの開催に当たりまして、主催者として一言ごあいさつを申し上げます。私ども、日本労働研究機構は、雇用・労働分野の専門的な調査研究機関として、労働政策の企画立案の基礎となる調査研究を実施するとともに、内外の労働情報を収集いたしまして、これを労使関係者をはじめ、広く社会に提供してまいりました。
 現在、ご承知のように、労働市場に大きな構造変換が進行していますが、日本労働研究機構はこのような変化に適切に対応した政策研究の充実を図るとともに、多面的な労働政策に関する議論を行うための場を積極的に提供していくことが重要な使命であると考えています。つまり、「どういうところに問題があるのか」とか、立場や意見の違った関係者の間において活発な政策論議をしていただき、その内容を広く情報提供いたしまして、より一層の取り組みを図っていきます。
 この労働政策フォーラムは、今回が5度目です。今後も機会あるごとにこういうフォーラムを開催したいと考えていますので、どうぞ今後ともご参加をお願いします。
 本日のフォーラムは、ご案内のように、「働き方の多様化と多様な政策対応」と題しまして、「パートタイム労働を中心として働き方が大変多様化している。それに対して政策的対応がどうあるべきか」、こういうことについて議論を深めていただきたいと考えています。
 今、景気が悪く、常用労働者あるいは正規労働者が減少している。逆に、パートタイマーとか、派遣とか、そういう非正規の雇用者が増加しています。しかし、企業の方の制度とか、慣行を考えてみますと、どうもそういう多様化の流れに十分適合したものにはなっていない。しかし、パートタイマーが増える、あるいは非正規労働者が増えるというのは、これはもう逆転できない時代の流れであると考えます。そうしますと、企業や社会の制度、慣行をもう少し柔軟な方向に変えていく必要があるのではないか。こういう問題は、単に労使関係者だけにかかわる問題ではなくて、国民1人1人の暮らし方と密接に関係するわけでありますから、広く国民的な議論とコンセンサスの形成が図られなければならないと思っています。
 先ごろ、厚生労働省のパートタイム労働研究会が「パート労働の課題と対応の方向性」という報告(中間とりまとめ)をとりまとめました。大変時宜にかなった報告であると思います。今回はそれを議論の素材にしまして討論をしていただきたいということでございます。
 フォーラムの進め方ですが、まずパートタイム労働研究会において今回の報告のとりまとめで中心的な役割を担われました土田先生から報告の概要をご紹介いただき、多様な働き方に対する諸論点を指摘していただく。ついで、第1の当事者であります行政の担当者の立場から、厚生労働省の短時間・在宅勤務課長である山田さんに、どういうふうに行政は受けとめているのかということをお話ししていただく。それから、労使それぞれの立場に立って連合の龍井さん、日経連の紀陸さんの順でそれぞれ15分ずつお話しいただいて、それぞれの立場の意見が出たところで、パネリスト相互で議論をしていただいて、最後にフロア(客席)からご質問をいただきたい。このような順序で今回のフォーラムを進めていきたいと思います。どうぞご協力のほどよろしくお願いいたします。
 それでは、まず基調報告としまして、早速土田先生からご報告をお願いいたしたいと思います。

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2.パートタイム労働研究会中間とりまとめ

(1)パート労働の現状と問題点

イ パート労働者の増加とその背景



【土田】 初めにパートタイム労働研究会の今回の中間とりまとめの概要をお話しして、現在の論点を提示したいと思います。分厚い中間とりまとめ、図表のついたものがありますが、時間が限られていますので、そのポイントをお話ししながら、私の名前で出ています「働き方の多様化と多様な政策対応」という6枚ほどのレジュメ がありますが、場合によってはそれに少し触れながら全体的な現在の問題点についてお話ししていただきたいと思います。
 まず、この中間とりまとめは大きく3つの柱からなっていまして、1つは「パート労働の現状と問題点」という柱です。それから、第2の柱が、「雇用システムの変化の方向」という柱でありまして、第1のところで現状と問題点を明らかにした上で、今後の変化の方向を大きな視点でとらえたというのが2のところであります。3としまして、「政策の方向性」という最も中心的なところです。これが第3の柱というふうになっています。順次、少し敷衍しながらご紹介をさせていただきます。
 まず、現状と問題点ということですが、ここでパート労働者の増加とその背景が書かれています。ここにありますとおり、平成12年で見ますと、いわゆるパート労働者、すなわち短時間の労働者は1,053万人、全体の2割になっています。20年前は1割でしたから、非常に増えている。
 一方、いわゆるパート、つまり労働時間がそう短くはないけれどもパ―トと呼称されている人も非常に増えていまして、1,129万人になっています。とりわけ最近は正社員が減る一方で、パートを含めた非正社員が増加している状況にあるわけです。今回のパート研究会の検討もこうした事情を背景にスタートしたものであります。
 このパート労働者が増加した背景としましては、1つは需要側(企業側)の要因としてコスト要因、賃金コストが低く、また、雇用調整が容易だという点が最も大きいと思われます。また、そのほか、サービス経済化のもとで業務が変化してきたという点もあるかと思われます。
 一方、供給側(労働者側)の要因としましては、これは調査によりますと、どういう理由でパートという雇用形態を選択しているのかで最も多いのは「時間的な自由度を評価する」という理由です。「正社員として働ける会社がなかった」という消極的な理由は比較的な少ない、1割程度です。しかし、そういった方々もいるわけであります。また、パート問題は女性問題という側面が強く、女性が再就職する場合にパートとして再入職する場合が多くあります。ただし、長期的には正社員に移行したい。こういう働き方を希望している方が多いのもまたこのパート研をスタートさせた大きな理由と思われます。さらに最近では、いわゆるフリーター現象ですけれども、若年層でこうした働き方が非常に増えている。それからまた高齢者の問題もあります。そうした供給側の要因がさまざまありまして、パート労働が増えている。
 こうしたことを踏まえますと、パート労働、こうした働き方が今後さらに拡大していくことは、もはや止められない、不可逆の流れであろう。従来の正社員と非正社員という非常に二極対立的な働き方から、とりわけ男性が若年・壮年の時期に働いて家計を支えた時代から、多様な働き方、そしてゆとりを持って働く働き方にシフトしていくことが予想されます。その意味で、企業にとっても、働く側にとっても、さらに社会にとっても、政府にとっても、働き方の柔軟性、多様性を確保していくことが今後の基本コンセプトになっていくと思われます。
 私のレジュメでは、2の政策目標というところで、3つのFということを書いていますが、この3つのFというのはFreedomということと、Flexibilityということと、Fairnessということであります。Freedomというのは、個人の属性にとらわれない選択の自由が保障されている。Flexibilityは、その場合に企業が人材を柔軟に雇用できるシステムである。ある意味最も重要なのはFairnessということで、雇用形態を自由に選択した場合に不当な取扱いを受けない、つまり公正な取扱いを受けることが保障されていること。このFairnessというものが保障されなければ、Freedomも何もないわけでして、この点がおそらくポイントになってくるのではないか。そうして初めて多様で柔軟な働き方が定着していくのではないかと考えられるわけです。

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ロ 問題点と課題

 では、そうした方向に向けてどのような課題が考えられるのか。まず現状を見てみますと、この中間とりまとめに「問題点と課題」というのがあります。1つは、パート労働者の基幹的な役割が増大していることです。正社員と同じ仕事をしているパートがいる割合は、正社員から見て4割強という数字に上っておりまして、これは非常に増えている状況です。
 では、そうした基幹的役割が増大している一方で処遇の実態はどうなのかを見ますと、給与を時間換算しますと、男性では正社員と比べて5割強、女性で7割弱という水準でして、従来に比べて格差は拡大しています。ただ、職種構成、就業調整といった影響がありまして、これを含めて修正しますと、今申し上げた数字よりは拡大していないということも言えます。しかし、今の5割強、7割弱という点で言いますと、縮小はしていない。さらに賞与・退職金制度の適用は、パートの場合、賞与が4割強、退職金が1割に満たないという非常に大きな格差があります。加えて、いわゆる常用パート、期間の定めのない雇用契約で雇用されているパートの割合は、日本では4割と非常に少ない、言いかえると有期契約という雇用形態で雇用されているという問題点があります。
 ということで、基幹的な役割が増大しているにもかかわらず、処遇は改善が必ずしも進んでいないという状況があります。こうした状況、実態についてどういうことが問題になるのか。パートタイム労働研究会が認識した問題点は約3点あります。
 第1に、今のような形で処遇格差があるままで、正社員からパートにシフトしていくと、労働市場が非常にアンバランスな形になってしまう。いわばパートという働き方が増えながら、処遇の均衡がとれたものになっていないということで、市場そのものがアンバランスになっているという問題点であります。
 第2に、パートタイマーの方々の働き方が変わってきていることです。従来のように、家計補助ではなくて、家計の支え手として働くパートの方も増えてきています。
 第3に、今のはパートタイマーの側の変化ですけれども、正社員の側にも意識の変化が生じていることが挙げられます。非常に高い処遇だけれども同時に高い拘束のもとで働くこれまでの働き方から、とりわけ女性を中心に変化が生じてきています。つまり、自由度は高いけれども雇用保障や処遇も低いという、この二極対立の構造だけでは、若年層や女性、あるいは高齢者のニーズに対応できないという問題点があります。

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(2)雇用システムの変化の方向

 そうしますと、こういった変化を踏まえてどういう課題が挙げられるのかというのが、その第2の柱である「雇用システムの変化の方向」であります。パートタイム労働研究会で1つの視点としましたのは、「正社員を含めた雇用システム全体の見直しが必要ではないか」ということです。およそ雇用労働政策の問題はある問題だけを切り取って、それだけを検討してもうまくいかないことが多いというか、うまくいかないのが普通です。当然のことです。したがってパート問題についても、パートではない正社員の方々の働き方を含めた問題としてトータルにとらえる必要がある。正社員を含めた雇用システムの多元化ということが書いてありますけれども、これはこういう趣旨です。それを具体化しますと、このパート研の中間報告については、「パートタイマーの処遇を考える際に、正社員の処遇を見直す」という形でとらえられることが多く、そういった点もあります。けれども、最もパート研として考えたのは、「多様で柔軟な働き方を選択できる社会、雇用システムを考えるためには正社員の働き方、正社員も含めた雇用システムを考えなければ、政策なり、制度の設計はできない」ということです。その多様で柔軟な働き方というのは、当然、正社員もパートも含めたトータルの雇用システムの問題ですから、その場合には正社員も含めた雇用システムの多元化を考えていかざるを得ないということです。それについてこの中間とりまとめでは、3点、具体的な課題として挙げています。
 第1は、今申しました「雇用システムの多元化」ということです。従来の「処遇は高いが拘束も高いフルタイム」と、「処遇は低いが拘束も低いパート」という非常に格差の大きい二者択一から、中間形態なり連続性を持った働き方をつくっていく必要がある。これは「短時間正社員」というような言葉でも言われていますけれども、配転や残業などの拘束性は少ないけれども基幹的な仕事を行う中間形態を形成していく必要があるだろうということです。そして、その人たちを含めて処遇や雇用保障について連続的な仕組みをつくっていくということ、これは既に正社員について導入されている複線型の人事管理を敷衍したものとも言えます。これが第1点。
 第2に「働きに応じた処遇」の確立です。パートタイマー、つまり従来のフルタイム正社員ではない人たちを正当に評価する、Fairnessを確立していくときに非常にポイントになるのは、この「働きに応じた処遇」です。つまり、年齢や勤続年数から能力・成果を重視した、能力主義、成果主義とも言っておりますけれども、そちらにシフトしていくということです。そうすることで「能力、成果に関係なく、高い処遇と雇用保障を保障される」、「そうでない」という二極対立から、能力を重視して処遇をしていくことで均衡なり連続性というものを確立していく。こういうことが重要であろうということです。既に成果主義が日本の企業で多く取り入れられていますから、その延長線上で考えることができます。
 第3に、「ライフステージに応じて多様な働き方の間を行き来できる連続的な仕組み」です。これもある程度女性をポイントにして見ておりますけれども、短時間就業を中心として、フルタイムとパートの間の行き来の可能性を広げていくことです。再就職する場合に、最初はパートから入っても、基幹的な働き方に移行できるという、そういった仕組みをつくっていく必要があります。
 こうしたシステムをつくることで、一体労使にどういうメリットがあるのかということですが、我々の認識は、現在の先ほどのような労働市場のアンバランスを続けたままでは、働く型のモラルダウンが生じてきて、ひいては生産性が低下していくという危険を考えています。ということは、基幹パートの処遇を改善することによって、短時間であるけれども、優秀な人材を確保し、そして生産性を上げていく、こういったメリットが企業側にあるのではないか。働く側にとっては、当然ながら、多様な雇用、しかも多様で公正な処遇が保障されるというメリットが出てきます。
 

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(3)政策の方向性

 イ 基本的考え方

 さて、以上を踏まえまして、第3の柱であります「政策の方向性」に入ります。整理しますと2点あります。第1は、正社員の働き方、処遇も含めた雇用システム全体について、労使の主体的な合意形成が最も重要だということです。ワークシェアリングの議論が出ていますけれども、日本の雇用を含めた社会において労使が社会的、包括的な合意を形成することが非常に重要であるという認識です。
 もう1点は、では労使が合意しなければ、言いかえれば労使自治が機能しなければ、何もしない、何もできないのかというと、パートタイム労働研究会の中間とりまとめは、そういう考え方には立っていないということです。それは政策なり、制度改革を政府の役割として積極的に果たしていく必要があるだろうということです。労使の合意なり、労使自治という場合に、パート労働について1つ問題になるのは、実は労のほうが、必ずしもパート労働者の利益を完全に代表する機能を果たし得ない場合があるということです。それを背景に考えますと、実はパート労働はここ15年、20年大きな課題になっていまして、その間現在の短時間労働者法を中心に労使自治を尊重しながら政策を進めてきたわけですが、必ずしもそれによって改善されてきていません。一言で言えば、労使自治に委ねても是正されない、あるいは、市場に委ねても是正されない問題であることは否めないという認識があります。そうしますと、今度は政策としてそこに一歩踏み込んで考える必要がある。ただし、その場合に、政府が何か一刀両断的にパートはこうだと決め付けて政策をつくっていくのではなくて、労使自治を促しながら労使の今申し上げた社会的な合意を促しながら、政策を改革を進めていくことが重要であろうという認識があります。
 では、その場合に一体、政策の視点なり、制度改革の視点とは何かというと、これもさらに2点ありまして、1つは、「多様な働き方が可能となるような制度改革の視点」です。具体的には、これはパートではありませんが、派遣の問題、あるいは有期契約の拡大といったものが既に進んでおります。
 もう1つは、その場合に、「多様な働き方が広がった後、処遇に不公平が生じないようなルールを社会的に確立する」ということです。この2つの柱はどちらも重要でありまして、どちらが欠けてもうまくいかないとパート研では考えます。すなわち、仮に多様化だけで制度改革を行うと、格差が縮まらないまま非正社員化だけが進行する。逆に、いわば一刀両断的な公正なルールの確立だけをしようとすると、今度は企業の自由度を損ない、結果的にパートタイマーの雇用機会を狭める恐れをなしとしない。したがって、先ほどの私の言葉で言いまと、FlexibilityFairnessという、この2点を同時並行に進めなければ、政策としては十分のものにならないという認識でございます。
 

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ロ 具体的方向性

 さて、それでは、こういった認識を踏まえて具体的にどのような政策を考えていくのかということです。3点ありますが、1つは、先ほども出てきました「政労使による包括的合意形成の推進」です。ワークシェアリングを特に中心に考えています。
 第2に、「雇用システムの多元化のもとでの雇用の安定性の確保」です。これは実は、先ほどの正社員を含めた雇用システムとも関連してくるわけですが、先ほどの中間形態をつくるということの1つの意味は、この雇用保障を変えるという意味があります。従来のいわゆるフルタイムの正社員よりは雇用保障はゆるやかだけれども、いわゆる雇用の調整弁となるような位置づけではないという、こういう方向性を目指しています。
 と言いますのは、例えば中間形態というのは短時間正社員や職種、勤務地限定社員、あるいは基幹パートといった人たちですが、この人たちに対する企業の解雇回避努力義務は、フルタイムの拘束性の高い正社員に比べると、ゆるやかにならざるを得ない面があります。だからといって、パートを含めてそうした人たちが、今度の雪印の問題で見られるように、正社員に先駆けて一律に切られてしまうというようなことは従来の二極対立的な雇用システムが生んだものであって、そうしたやり方はやはりフェアではないという認識がございます。
 そこで、パート研で考えていますのは、そうした中間形態、あるいは連続性を保障することによって、従来よりも雇用保障はゆるやかだけれども、それぞれの雇用継続の期待利益に応じた保障を受ける、こうした形態をつくっていきたいと考えているわけであります。
 第3に、おそらく最も皆様が関心の深いところが「日本型均衡処遇ルールの確立」です。パート研では今回、日本型均衡処遇の確立という考え方を打ち出しました。これの趣旨について少し申し上げたいと思います。ヨーロッパでは同一労働、同一賃金の考え方が非常に強いですけれども、それを直ちに日本に輸入して確立することはなかなか難しいという認識がまずあります。
 一方、日本の場合にはヨーロッパと違って正社員1つをとっても仮に仕事が外形的に同じであっても、年齢、勤続年数その他の要素でもって処遇が異なってくるという特性がございます。そうしますと、やはり日本型の均衡処遇ルールというものを確立していく必要があるのではないかということを考えたわけであります。その意味で、ヨーロッパのように同一労働同一賃金がいわゆる公序になっているとは考えにくいとしますと、では一体日本で多様な柔軟な働き方が広がっていくには何が必要か。それが「日本型の均衡処遇ルールの確立」です。これは幾つか要素がありますが、まず正社員とパートが同じ職務の場合には処遇の決定方式を合わせるということであります。この処遇の決定方式は、実は能力開発とか評価を含めたものとして考えることが可能であります。しかし第2に、残業、配転、転勤等の拘束性、これには実はほかに責任とか、長期雇用への期待度といったものも入ってくるかと思うのですが、それが正社員と異なる場合には合理的な格差もあり得るというのが第2点です。
 第3に、仮に決定方式が異ならざるを得ない場合にも、「水準についてのバランスを図る」という考え方です。
 このように日本型均衡処遇という言い方をしますと、必ず出てくる反論は、「均等」と違って「均衡」というのはバランスをとるということですから、「非常に曖昧である」ということです。「企業に配慮し過ぎている」という言い方もされることがあります。この「均衡」についてはかなり誤解があると思いますので、最後にこの点だけ、私のレジュメで補足したいと思います。5の(3)というところに「均衡配慮義務立法:一つの可能性」というのがあります。この中間とりまとめでは、立法なり法制についてはまだ結論を出していません。したがいまして、これはあくまでも私の私見として話しますけれども、均衡と均等の違いというものをそこで述べています。ここは実はパート研の中でも必ずしも完全なコンセンサスができているわけではないのですが、今日私の私見として一言言わせてもらいます。「均等」と「均衡」の違いは何か。均等というのは、要するに同じ労働であれば同じ賃金を支払うという考え方であります。しかし、この均等処遇の1つのポイントは、「格差に合理的理由があればその格差は正当化される」ということであります。仮に「同一労働であれば、完全に賃金を同じにせよ」というのなら、先ほどの市場への影響が大きいということで、必ずしも受け入れがたいわけです。仮に格差の合理的理由があれば格差が正当化されるということになると、逆に救済の範囲が非常に狭まるという危険があるわけです。日本型の均衡、すなわち「同一労働であっても、拘束性に違いがあれば格差を認める。しかし、その格差は合理的なものでなければならない」という考え方の1つのポイントは、「格差を認めるけれども合理的でなければいけない」ということです。したがって、その「均衡」というところに書いてありますが、「拘束性に違いがあれば格差を認める」けれども、それは「均衡のとれたもの」であることを要する。例えば「8割」であるということをこの均衡の考え方は含んでいます。したがって、拘束性について格差があるという場合に、均等の考え方でいけば、これは6割のまま救済されないのですが、均衡であれば8割までは保障しなさいという考え方が出てくるわけでありまして、そこに違いがあるというふうに私は認識しています。
 最後にあと2点ですが、「では、均衡は8割なのか」という受け取り方をされることがありますけれども、しかし、これは、個別具体的な判断とならざるを得ないのであって、「8割」は今、労使の納得度が高い数字ではあるけれども、目安であろうと考えています。
 それから最後に、このガイドラインを含めた今後の手法については、従来の努力義務と変わらないという批判もしばしばなされますけれども、我々が考えているのは、少なくとも今度の中間とりまとめのポイントになっているのは単なる努力義務ではない。すなわち仮に同一労働で同一拘束、あるいは高い拘束のもとで、顕著な格差が放置されていれば、それはパートタイム労働法なり、公序良俗違反として司法的な制裁、救済が得られるとして今度の中間とりまとめでは考えています。従来のいわば非常に行政主導立法的な現行の短時間労働者法の努力義務とは違うという認識でパート研では考えてきたわけです。
 以上で私の基調報告は終わらせていただきます。
【小野】 どうもありがとうございました。それでは、行政側がどんなふうな受けとめ方をしているかということで、山田課長からお話をうかがいます。

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3.行政の考え

(1)現状認識

【山田】  厚生労働省の山田です。レジュメを1枚用意ありますので、これに沿ってごく簡単に申し述べたいと思います。ただいま土田先生のほうから丁寧に報告書についての概括的な説明がありました。これをどう受け止めているかということです。
 まず、1番目の現状認識ですが、今ほどのお話の中で、多様な働き方が広がっていく、こういう1つの流れは踏まえながら、今、現実に進んでいる正規から非正規への代替の問題をどう考えるかということが非常に重要です。正社員の入り口がかなり狭まっている状況の中で若年者の雇用がどうなっているか。
 ちょうど日本労働研究機構の調査が昨年10月に実施されました。高校卒業した直後の就業状態がどうなっているかということであります。男子、女子と分かれておりまして、卒業年次が上から下へ最近時になるにしたがってどうなっているかということであります。一見してわかるのが、特に男子のところで、高校を卒業して正社員になっている比率が非常に小さくなって、そのかわりにパートあるいはバイトという形で就業する方の割合が非常に大きくなっています。
 これは当然、若年者の意識の問題もあるわけですけれども、先ほど来お話のあった労働市場の問題、パート、バイトが正社員に比べて割安である、コスト的に非常に難しい状況の中で正社員からパートへの切りかえが行われているという労働市場の流れの中でこういう現象が起きているということです。
 フリーターの問題というのは、今、非常に議論をされておりますが、「若年者のキャリア形成というような面からこの問題をどう考えるのか」という非常に大きな問題をはらんでいます。こういった観点からもパートの構造問題を考える必要があるのではないかということが1点。
 それから、その横のところにグラフがございます。主に自分の収入で暮らしているパートの割合であります。これを見ますと、平成2年から平成7年の間で見てもいわゆる家計補助ではないパートの方の割合がかなり増えているという状況が見られます。こういうことから考えますと、パートの問題というのは単に家計補助的な主婦パートの問題から、若年者の雇用機会あるいはキャリア形成の問題も含めた労働市場全体の問題になりつつあるということです。この問題を何とかしなければならない。非常に大きな問題であると認識する必要があるのではないかという現状認識です。

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(2)問題解決の方向

 これを受けて問題解決の方向、先ほどの土田先生のお話に尽きるかと思いますが、2点整理をしています。1つは正社員の働き方、処遇を含めた見直しという問題であります。何とかしなければならないというときに、正社員とパートの処遇差、この問題をどうしていくのか、この処遇に均衡をもたらさなければならない、こういう命題があるわけです。そのときに考えなければならないのは正社員の年功処遇の現実であります。単にそこにパートを合わせていくだけでいいのかということです。今、非常に経済情勢も厳しく、グローバリゼーションが進んでいく中で、今の年功処遇にパートを合わせていくという発想はむしろ空洞化を促進してしまう、日本全体として雇用機会が減ってしまう、こういう懸念もあります。そこのところを考えなければならない。正社員の働き方や処遇も含めて見直しをするということです。これまでのように「辞令1本でどこへでも行く」という正社員の拘束性の高い働き方、これをどう考えていくのか。それから、これまでは夫1人で家計を支える、こういう考え方で賃金もつくられてきた。この考え方をどういうふうにこれから変えていくのかというようなことも含めて検討していく必要があるのではないか。
 特に労働組合のスタンスがどうなっていくのかということが非常に重要な点を含んでいると考えています。いきなり正社員の処遇を明日から変えるということはなかなか難しいかもしれませんけれども、働き方や処遇を時間をかけて見直していく中で、全体としてのバランスをどう図っていくのか考える必要があるのではないかということです。
 それから、2点目の日本型均衡処遇ルール、この問題はもう土田先生のお話に尽きていると思います。これまでのパート法の世界の中でパートの均衡処遇という考え方は、当然あったわけですけれども、これは企業の自主的な取り組みに委ねられてきた。それから、もう8年を経過しているわけですが、その中でなかなか改善されてこなかったという経過がある。企業内の努力に委ねるだけではなくて、何らかの社会的ルールが必要ではないか。ただ、そのときに、先ほど土田先生の話にあったように、日本の実情に合ったルールを考えていく必要がある。中間とりまとめの考え方というのは、そういったことに十分配慮したかなり現実的なルールではないかと考えています。
先ほどご説明のあったのはパートの研究会の中間報告でございますが、今後、最終報告に向けまして、お話のあったガイドラインという考え方、先ほどの均衡処遇ルールというものを具体的に考えていったときにどういうものになるのかということを、今、研究会の中でも詰めていただいているところです。企業にとっても、「さすがにこのくらいはクリアしなければ世の中の非難を免れない」というようなルール、「それをやることが企業にとってもメリットになるんだ」というような現実的なルール、というものをどこまで詰められるかということがこれからの課題になるのではないかと考えています。
 それから、社会保険の問題についても、いわゆるパートの130万円、労働時間でいえば通常の労働者の4分の3という3号被保険者という壁の中で働いていらっしゃる方がかなり多いわけですけれども、この問題が働き方に中立的な税、社会保険制度の仕組みをつくっていくべきではないかという観点から、厚生労働省の中でも検討しています。基本的にはパートに対してもこういった社会保険適用を拡大していく、そういう方向で今検討がなされているという状況です。
 それから、今後の展開でありますけれども、中間とりまとめをパート研に出していただきましたので、今日のようなことも含めて世の中の皆様方の感じをいろいろお聞きしながら、7月ぐらいを目途に最終のとりまとめをしたいと考えています。こういった研究会の結果を踏まえまして、その後、公労使3者の審議会で検討して、我々としては年末までに政府としてのパートについての基本方針、それからガイドラインの策定といったことを、労使も合意をしていただく形の中で固めていきたいと考えています。これから労使双方からもコメントをいただきますが、いずれにしてもこのパートの問題というのは、労使の考え方に非常に大きな隔たりのある問題です。先ほど来申し上げたように、現状のままではやはりいけないんだ、これではまずいんだという共通認識がなければ、こういう隔たりのある考え方、双方歩み寄ろうという気持ちにもなかなかなれないわけであります。そういう共通認識を醸成しながら問題解決に向けて1歩でも、2歩でも前進するという道を探っていきたいと考えています。
 また、ワークシェアリングの議論も政労使の間で進めているところです。今日ご出席の龍井、紀陸、ご両者も、このワークシェアリングの会合にご出席をしていろんな形で検討しているということであります。特にワークシェアリングの議論の中でも中長期的な「多様就業型のワークシェアリング」をどう進めていくのかということが重要なテーマになっていまして、その中で、多様な働き方の中でも非常に大きな割合を占めているパートの処遇の問題、これをどうするかが非常に大きなポイントになっています。この問題につきまして、どうも4月以降もワークシェアリングの議論が進むというようなことでありますので、ぜひこういった枠組みも活用しながら合意形成につなげていきたいと考えています。

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4.3つの論点

【小野】 どうもありがとうございました。お二方からお話を伺いまして、私なりに大まかに整理させてもらいますと、3点ばかりあります。1つは、柔軟で多様な働き方が時代の流れになって、一体その背景はどういうものなんだろうか。それから、そういう時代の流れと言われているけれども、パート化にどういう問題点があるのだろうか、こういう点が1つ出てきます。
 それからもう1つは、この報告書の中でもそうですが、いろいろ提案があります。大きくまとめると3つぐらいですかね。つまり正社員の働き方や処遇も含めた雇用システム全体を見直していくとか、それから、日本型の均衡処遇ルールの確立とか、それから、社会保険のパートへの適用拡大とか、こういう提案があります。そういう提案を労使それぞれの立場からどんなふうにお考えになるのであろうか、どういうふうに評価されるのだろうか、これが第2番目の問題。
 第3番目は、ここで提案されているような方向に進むにしても、一体どういうふうに具体的にこの問題に取り組んでいくんだろうか。どういうところに具体的なとっかかりをつかんでいくんだろうかと、こういう問題があります。雇用システム全体の見直しと言いましても、どこから着手するのだろうか。処遇の均衡といっても、一体どうやってそれを実現していくんだろうか。実際論としてはそういうことが当然問題になってきます。今、ワークシェアリングというものと絡めてというお話がありましたけれども、もっと実践的な問題がもう1つあるように思われます。
 それでは、今申し上げた論点に限定する必要はございませんけれども、労使のパネリストの方々からそれぞれご意見を聞かせていただきたいと思います。

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5.労使の意見
(1)労働者側の主張
 イ 働き方のトータルな見直しという視点

【龍井】 連合の龍井でございます。パートタイム労働研究会の中間とりまとめを読ませていただきましたが、前に一遍挫折したパート法の段階からずっと振り返っても、いろいろな論議をされてきたわけですけれども、非常に幅広い多岐にわたる論点を的確に整理されています。そして、おふた方からもお話がありましたように、いわゆる正規の働き方を含めたトータルの見直しの視点ということでは非常に評価すべき論点を含んでいると思います。特に社会的ルール化についての方向性は、まだ結論は出ていませんけれども、指し示されたということについては高く評価をしたいと思っております。ただ、お二人の話を聞きながら改めて感じたのですが、正規を含めた見直しということでも、我々と少し考え方の角度が違うのではないかと思います。
 パート問題と申し上げましても、パートという働き方そのものが実は多様化していて、典型的な「主婦パート」ではもうなくなりつつあります。そして、いわゆる補助型ではない単身パートの方が複数就労しながらようやく家計を支えているケースも稀ではなくなってきています。レジュメ(PDF:18KB)でお示しした「『パート問題』とは何か?」というチャートは一昨年の連合白書からコピーしてきたものですが、そう考えますと、ここで図解したいわゆる補助型パートというのは実はパートの典型ではなくなっているかもしれません。ただ、パート問題の枠組みを考えるときのひな型として、ここはまず押さえておかなくてはいけないだろうと考えています。
 もう1つ補足しなくてはならないのは、男性中心の長時間労働、女性は補助パートと書いていますけれども、統計をとりますと、実は長時間残業している女性が増えています。週60時間以上という働き方をする女性がここ数年増えている。そういう意味では、男女とも長時間残業で家庭生活では両方とも不在という形になります。それに全部アウトソーシング型というのも増えています。そういう意味でこれらはとても網羅しきれていないわけですが、ただ、パート問題の所在を考える際にはレジュメに示した典型モデルで考えたいと思います。
 パートにも出ない完全な専業主婦型というのが一時期ございました。産業社会の成り立ちそのものが「専業労働者プラス専業主婦」というユニットで構成され、初めてそこで専業主婦というのが生まれたわけです。そこから始まって、家計補助や社会参加などいろいろな動機からパートに出ていくという形ができてきます。そのとき特に日本では、男性が長時間労働になり、家庭生活のほうに全く不在にはならないまでも、いわゆる役割分担で言うと固定的分業があるとずっと言われてきました。そして家庭あるいは生活領域で、特に世帯を考えていく場合に女性の負担が高まり、働き方としてはパートにならざるを得なくなりました。このため、「なぜパートで働くのか」という質問をしたときに、自発か非自発かよくわからないという答えになるのです。つまり、「病気の親を抱えているので、自由な時間を選べる働き方を選びます」というのは一見自発に見えますが、もとをたどれば非自発な理由なわけです。結局、職場だけではなく、トータルの見直しというのを考えないといけません。問題の1つの断面が今、パート問題として出てきているのです。
 そういうパートの働きぶりというのは企業社会の中で一人前とは見なされないわけです。一人前と見なされないというのは、処遇だけではなくて、仕事の分担でもそうですし、責任の範囲でもそうです。ただ、これは先ほど土田さんがご指摘されたように変わりつつあります。9割がパートの方で、若い店長が1人で、何のことはない、仕事を上司が長期勤続のパートの方から教わっているケースも出始めています。そういうギャップがあるというのはご指摘のとおりです。
 ただ、基本パターンを考えた場合、生活を含めた分業関係というのが実はもっとアンバランスなほうにシフトしています。職場での残業は景気が後退すると減るものですが、これだけ人員削減が進みますと減っていきません。そういう負荷が高まっていて、この構図の危機的な状況はもっと進んでいるのではないかと考えています。おそらく経営サイドにとっても、こうした無理な、極めて無理だと私は思っているのですが、そういう働きぶり、あるいは生活ぶりはおそらく持続できないのではないか、臨界点にきているのではないかという認識を持っています。したがって、これは一部実現されたところがあることかもしれませんが、いわゆる「生活シェアリング」を含めたトータルな見直しという視点でパート問題を考えていかざるを得ないというのが基本的認識です。
 

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ロ 「中間形態」ではなく「両極の是正」で

 先ほど「拘束性」というキーワードが出ましたけれども、そういう拘束性を保ったうえで、長時間残業と補助的なパートという両極の「中間形態」をとるのが望ましいと考えるのか。それとも両極のアンバランスを是正していく、そこに向ってトータルな働き方を見直していくと考えるのか。それによって考え方はだいぶ違ってくるのではないでしょうか。
 これは均等処遇のあり方にもかかわりますが、我々としては典型社員、正社員の中で今の拘束性が当たり前になっていることをベースに働き方を変えていくというのではなく、そのベース自体を変えていくべきだと考えています。16年前の男女雇用機会均等法をつくる時の議論にも、「男並み(に皆が長時間働く社会)を目指すのか。いや、そうではない」と言ったわけです。そうやって均等法ができましたが、結果、男の働き方は変わったのか。やはり基本的には変わっていないと思います。パートの均衡処遇でもそういうことがあり得るわけで、やはりここはトータルで見直すことに手をつけなくてはいけません。
 おそらく恒常的な残業を余儀なくされる人、あるいは広域配転という形で勤務する人はいるでしょう。でも、それがコース別選択の一般コースの標準かというと、そうではないと言いたいわけです。そういう働き方をする人はごく一部に限定されるべきです。恒常的残業が当たり前というのはおかしい。そういうところで私どもの働きぶりを考えていかなければなりません。長時間残業が例外的になるようなスキームを考えなければいけないという意味でも、やはり「中間形態」という言い方は気になります。両極が変わらないまま、例えば基幹パートや専門職パート、あるいは常用パートの一部が第3の軸である中間形態のほうに寄ってくる。拘束性が弱い正社員というのも下手をするとコース別に組み込まれかねませんが、これも中間形態のほうに寄ってくる。こういうことはトータルとして均等処遇と言えるのか。あるいは、働き方をトータルに見直すということと合致するのか。そうではないというのが私たちの基本的な提起です。

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ハ 働く側に「選択権」を

 そこでもう1つ「行き来」という非常に重要な言葉が出てきます。よく(働き方の)多様化と言われていますが、それはほんとうに多様化と言えるのか。つまり働く者に選択権があり、例えばAという働き方、あるいはBという働き方、Cという働き方を望んで選べるかというとそうではないでしょう。変な比喩ですが、企業規模を超えた労働移動を考えた場合、大体大手から中堅、中小へという移動しかなく、中小から中堅、大手へというコースはまずあり得ません。同じように働き方の場合でも、典型雇用、正社員から派遣、パート、今はいきなり新卒派遣というものまでありますが、そのような非正規へという向きはあっても、パートという働き方で入職して、正規のほうへ行くということはまずないですよね。そういう「行き来」ができないのでは、いろいろな選択肢があると言われても、それは私どもにとって選択権があるとは言えません。
 そういう働きぶりは何も今に始まった話ではなく、昔から臨時・社外工・下請など典型雇用を囲むものがありました。周辺労働はずっと昔から典型というところの周りにバッファーとしてあったのです。そういう働き方が社会保険制度も含め中立的になって初めて、行き来ができ、多様化だと言えるわけです。今はやはり(経営側にとって)使い勝手のいい多様化に過ぎず、働く側にとってそうはなっていない。そこを社会的インフラ、場合によっては法律的な仕組みをつくって、ほんとうの意味で選択肢がある働き方に変えていく。これは非常に大きな問題で、企業・労使の努力だけではできないことだろうと思います。ここは何としても研究会の問題提起を踏まえ、現在、連合と日経連、政府でワークシェアリングを検討しているような一種の社会合意的な視点の中で、日経連の主張するポートフォリオが我々にとってのポートフォリオになるような働きぶりをつくっていかなくてはなりません。
 労働組合というのは今までこの枠組みの中にいたわけで、そこに安住していた面があったかもしれません。正社員組合が中心でしたから、場合によっては(非正規の労働を)調整弁と認識し、雇用保障をやってきた。そこをどう乗り越えていくのかということも含め、この課題にチャレンジしていかなくてはならないというのが基本的な視点です。
 選択肢、選択権と言うときですが、少し中間とりまとめの中で気になった表現があります。働き方の選択肢を規制改革でつくっていくということですが、働き方にはいろいろなものがあるわけです。では、例えば派遣や請負という雇用形態まで選択肢に入るのか。我々からするとそういう働き方、契約の結び方は自由に選べる選択権という領域には入りません。時間に関する選択権を持てるかどうかが一番です。
 さきほど短時間正社員という言葉が出てまいりました。オランダではそういう制度が整備されつつあるようで、一定勤続年数以上の人は働く時間を自由に選べる。これは企業内のシステム、つまり福利システムとしてやるのではなく、そういう働き方を社会的に保障していく。そういう意味での選択権がつくられて初めて選択肢となるという話になります。そこはいわゆる規制された論議の中で言われている選択肢とはちょっとレベルが違う話であるということをつけ加えておきたいと思います。

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ニ 「一人前賃金」の水準をどこに置くのか

 あと、均等処遇についてですが、これはほんとうに大変な問題でありまして、年齢差別禁止に関する研究会でもやはり同じようなことが議論されています。年功的処遇を含めて今までの日本の制度というのがこれからは、キーワードで言うと「働きに見合った」、あるいは成果、業績という言葉も出てきましたが、そちらのほうにシフトすべきだという流れがあります。結局、戦後の日本で職務給、能力給が導入されましたが(運用上年功的色彩のきわめて強い)日本的職務給、能力給にならざるを得なかった。そういう中で形成された採用、配置、育成、そして処遇というフルセットをどう組み換えるか。これもまたトータルな課題になるわけで、賃金制度だけ、処遇制度だけを変えるというわけにはいきません。
 もう1つの問題ですが、ついつい欧米型との対比になりますけれども、先ほど「パートのところが一人前ではない」と申し上げましたが、ヨーロッパ流の仕事別賃金というのは「一人前賃金」です。したがって、世帯モデルの是非はともかくとして、日本は個人賃金ではありません。単身賃金ではなくて、世帯賃金です。どういう歴史的事情があれ、欧米の場合の仕事別賃金というのは、「一人前になったら、とにかくそこから食っていける」という仕事別の賃金です。日本で今「年功の中でどのレベルをとるのか」というとき、非常にやっかいなのは、入職の段階、つまり入社時点は単身者賃金で企業の中の格づけも半人前であり、OJTを通じてどこかの時点で一人前になるというシステムだということです。そこを欧米流にと言いますか、働きに見合ったシステムに変えるとすれば、そういう意味での「一人前賃金」を社会的にどう設定するのか。そこのところが明確でない限り、どんなに仕事シフトと言っても、我々からすれば「水準がすべて」ということになります。どんな水準にするのか。賃金カーブが途中で寝てもいい。寝てもいいけれど、それが20万円で寝るのか、40万円で寝るのかで、もう全然違うわけです。やはり「働きに見合った」ということだけではなく、水準論までいかないといけません。そこは賃金論の本質にかかわる問題ですから、間を採ればいいという話でもないし、8割でいいという話でもありません。まさに日本型のルールをつくっていかざるを得ない。そういう大変な課題だと思っています。
 私どもとしましても、既得権擁護的に年功がすばらしくて、これが理想で守るべきものだとは決して思っていません。ただ、それを納得がいくように、そして仕事の配置や育成とも合わせて働きに見合う処遇にシフトしたようなあり方を見出すのがほんとうに大変だということを認識した上で、お互いに議論に入っていきたい。今にも「総取り替え」が可能であるかのような、あるいはそうあるべきだという議論が一部に見受けられるわけですが、そう簡単なものではありません。ただし、今までの世帯モデルが男性中心であったことは事実ですし、それとの対で(女性が)補助という位置づけをされてきたことは間違いないわけで、そこの組み換えは絶対必要だと思っています。今日はそれ以上展開する時間がありませんけれども、それだけ大変な課題だということをお互いに認識した上で議論に入りたいと思います。

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ホ 差別禁止という大原則を

 そうしたものが解決しないと先に進めないのかと言うと、土田先生の話にあったように、そういうことではなくてスタートをしたいのです。スタートしたいところが幾つかありまして、1つはルール化です。先ほどの土田さんの説明ですと、「法律を定めると罰則がついてがんじがらめになりがち」ですが、私どもが考えているのはそういうものではなく、かといって努力義務でもなくて、やはり差別禁止です。
 報告では有期雇用の問題というのが落ちています。山田さんは入れたかったんだと思いますが、この研究会ですべての問題を扱えるわけではないという苦しさがあったと思います。やはり有期雇用の問題を含めて、合理的理由のない差別があってはいけません。有期雇用の話で言えば、「本来、合理的理由がなければ期間の定めのある雇用はいけない」というものだと思います。その議論はここでは置いておきますが、働き方について「合理的理由のない差別があってはいけない」という大原則、大法則があって初めて、今まで行政指導、説明責任ということにとどまっている個々の職場で起きた問題を社会問題化できる。あるいは、どこかの相談に持ち込める。斡旋に持ち込める。場合によると裁判に持ち込める。そういう根拠法があって初めて問題が社会化されていくのです。
 「丸子警報器」の問題は非常にインパクトが大きかったわけですが、これは一般論ではありません。あの職場の働き方、職場の実態に基づいて判断が示されたということです。そういうのが、ごまんと出てくるような、そういう形の中でしか問題は解決しないと思っています。ごまんというのは別に裁判という意味ではなく、そういうことが社会問題化されて、第三者が入ったり、労使の努力の中で合理的な解決を見出したりしていく。そういう例がいろいろ出てきて、1企業、1職場の問題にとどまらなくなり、何となくそれがルール化されていく。そういう道筋をとらざるを得ないのではないでしょうか。せっかくですが、研究会で基準がつくられて、それが適応されるという種類の問題ではないのだと思います。逆に言うと、まずルールが先だって、それがどんな曖昧なものであったとしても、原則をお互いに認識してスタートすることで、10年かかるかどうかはわかりませんが、そういうこと(問題の社会化やルール化)ができるのではないかという方向で考えています。

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ヘ すぐにでもルール化に着手すべき分野

 もう1つは、短時間正社員という働き方についてですが、これは法律がなくてもできるわけですから、現に出始めています。個別労使の話し合いの中でルールをつくることができるのかどうか。
 あと、今の時期にやむを得ずぶつかっていることではありますが、いわゆる60歳以降の働き方のところで短時間の働き方が増えているという点です。そこをどう処遇していくのか。一方でその職場のほかの短時間の人をどのように見ていくのか。そういうことがもう個別労使の中で話し合いが始まっています。職務と配置、処遇について、もう応用問題として始まっているわけです。そういう切り口の中で問題を個別のものにとどめず、お互いに情報を共有化し、上からではなく下からルール化を図っていく。そういう取り組みにチャレンジしていきたいと思います。
 奇しくも今晩、ワークシェアリングのとりあえずの政労使合意ができるわけですが、審議会だけではなく、いろいろな場での社会合意の枠組みが自治体ごとの労使も含めてつくられてきています。そういうものをこれからどれだけつくっていけるのか。オランダモデルの中でもう1つ学ばなければいけないのがそういう社会合意のシステムそのものです。そういうものをこれからつくる中で、お互いに汗を流しながら問題解決にあたっていきたいと考えております。

【小野】  どうもありがとうございました。では、引き続き紀陸さんからお願いします。
 

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(2)使用者側の主張
イ 評価は会社への貢献度で

【紀陸】 日経連の紀陸と申します。私ども経営側としましても、雇用形態の多様化を進めるということはもう以前から言ってきております。日経連では95年に「新時代の日本的経営」という報告を出しましたが、その段階から考え方として「雇用形態の多様化を進めないと企業経営も持たないし、働く人の意識が変わってきているので、それを受けとめることもできない」という観点から雇用形態の多様化を進めるべきであると言ってきました。今日の晩にまとめられる政労使間合意、一応ワークシェアリングと銘を打っておりますけれども、そのポイントは「中長期の雇用多様化を進めよう」という合意でありますので、そういう方向についてのコンセンサスはすでにできつつあると思います。
 ただ問題は、「公正な処遇をどういうふうに図るのか」という点に尽きると思うのです。雇用形態を多様化すると会社の中にいろんな社員が出てくるわけですから、その場合にそれぞれの働きに応じた処遇をどういうふうに保障するのか。雇用形態の多様化と言うからには、きちんとした処遇の説明責任が経営側にも出てくるということを私どもは申し上げております。
 その場合に最も問題になるのは、パート研究会で言うような「職務と責任と配転等の拘束性」ではありません。これは実際何を言われているのかよくわからないのですが、一見同じような仕事をしているから賃金・処遇も同じでという前提に立っておられます。しかも、これをパートと正社員の問題に絞って論じておりますけれども、果たしてそういうことなのか。
 これは外形の話であって、一番私どもが重要だと思っておりますのは、「会社に対する貢献度」であります。例えば大企業と中小企業とでは非常に賃金格差がありますね。大企業の経理の人も中小企業の経理の人も、あるいは大企業の人事の人も中小企業の人事の人も、それぞれ同じような仕事をやっているわけです。場合によっては中小企業の人事の人のほうが総務をやったり、経理やったり、1人でもっと多様な仕事をされておられます。それなのに何で賃金格差があるのか。それは結果として、大企業なり中小企業なりでそれぞれが生み出す付加価値の幅が違うからです。要するに個々人の働きがその会社の付加価値の増大ということにどれだけ貢献しているか、その多寡によって賃金差違が出てくる。例えば1つの会社の中でも、外から見て同期入社の人が同じような仕事をしていても、実際には賃金に差違が出る。なぜか。評価の結果、貢献度に差違があると見なされて、賃金に差違が出る。それがだんだん長期勤続になってコストが上がるにつれて差違が広がってくるのです。同じような仕事だとか、責任は同じだとか言っても、付加価値増大に対する貢献度の度合いをどうやって評価するのか。その物差しは会社にしかないわけであります。それをルール化しようと言ってもナンセンスな話であります。
 

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 ロ 企業は評価の物差しづくりを模索

 正社員の数が減ってきてパートの人が増えてくる。その場合に賃金格差が広がってくる。これはゆゆしき社会問題だから格差を是正しなければいけない。今は大変な高コストで日本はどんどん空洞化しつつありますから、是正する場合、正社員の賃金を下げるのが一番手っ取り早いですね。食えない賃金ではない。もちろん不満はありますけれども、2割高かったら2割下げる。大体日本の賃金コストは欧米に比べて3?4割高いわけですから、その程度下げればちょうど先進国標準になるわけです。しかし、そんなことは非常にナンセンスな話でありまして、私どもが思っておりますのは、貢献度をどういうふうに計るかといった場合、やはり問題は仕事だということです。
 今、どの企業でも規模にかかわらずみんな悩んでいるのは、年功序列から職能評価と言いますか、能力主義、その次に成果主義になって、それぞれの評価の物差しをどうやってつくっていけば従業員の不満がなくなるのかということです。そこでみんな模索しているわけです。今日は企業の方もいらっしゃいますけれども、どの企業でも評価の物差しをどうやってつくり、きちんと運用していけるのかというところに、非常に努力をされている過程にあります。しかも、企業外の環境が大きく変わってきましたから、それに合わせながら「我が社にとって一番いいやり方は何だろうか」と模索している段階なのです。
 これは正社員の中の話ですが、パートの話もそうであります。よく考えてみますと、パートの仕事というのは単純・定型業務ですよね。ですから「時間当たり単価幾ら」で決まってくる。正社員は今、職務、職能、役割という世界にいます。本来、断然別々の世界にいる。ぱっと横から見て一見似たような仕事をしているから、そこで賃金も同じというのは少しおかしいのではないでしょうか。
 パートで単純・定型で時間給の世界におられる方は、本来そこの仕事だけやっていれば正社員との賃金格差の問題は出てこないはずです、全然住んでいる世界が違うはずですから。同じ職場で並んでいるにしても、片方の正社員はずっと続けて60歳までいくわけです。片方のパートは、少なくとも1年、更改はありますけども時間当たりで単純・定型の仕事をされている。正社員でも単純・定型の仕事がありますけれども、だんだん高度複雑業務が混じってくる。そういう世界です。それがきちんと分かれていれば、区別なり、差別なり、アンバランスなりという話は出てこないはずです。しかし、現実にはパートの人に正社員と同じような仕事をさせたりするところが出てくるので問題になるわけです。
 

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 ハ 「外からのルール化」より企業の責任で

 雇用多様化を進めるために、単純・定型のパートの仕事はきちんと評価し、正社員の仕事もきちんと評価する。それから、仮にその中間的にある仕事、今百貨店で準社員という方が出ておられますけれども、そういう新しい処遇の必要な仕事をやっているパートが出てきたら、それらをきちんと評価する物差しをつくる。それが企業の課題であり、雇用多様化を進める場合の経営側のやるべきことです
 特に単純・定型業務の場合は、成果ではないんですよね。その仕事をやってくれればいい、その仕事をやっていくこと自体が価値でありますから。単純・定型業務では、いくら優秀な人であろうが、能力に関係ないわけであります。その仕事さえやってくれればいい。ここのところは能力評価はいらない。そのほかにもう少しレベルを上げていく過程で能力評価なり、成果評価なりの問題が出てきます。そこのところはそれぞれ物差しを変えていかなければなりません。それをやればいいわけです。ただ、口で言うのは簡単ですが、会社の中にはいろいろな業務がありますし、その物差しをどうやってつくるかということで非常に悩んでいる。単純に「パートと社員の格差がこうだから」という世界の話ではありません。会社は仕事の内容をきちんと分析して、「何でこういう差があるのか」という説明をする責任を負っているわけでありますから、それをこれからどうやって詰めていくのか。これが経営側の私どもの責任だと思っております。それは外からルール化するという世界の話ではないでしょう。これからどんどん少子高齢化が進みますと、これはパートの女性の話だけではなくなります。高齢者の処遇の問題も非常に大事になってきます。団塊の世代の人たちがどんどん出てきますので、きちんと処遇しないと、まさに企業のアカウンタビリティーが問われるわけです。
 優秀な仕事、あるいは社会から望まれている仕事ほど価値が高くて、現実にはそういう仕事をする人を会社が採れなくなる社会が出てきます。これからいろんな意味でそういうアンバランス、需給ミスマッチがもっと広がるでしょう。それなりにきちんとした処遇をしないと、会社のほうで必要な人が採れない。賃金のレベルも市場のニーズで決まってきます。ですから、ルールがどうのこうのなんて言わなくても、きちんとしたことをやらない企業はもう優勝劣敗の世界で置いていかれてしまうわけです。私どもとしましては、企業のほうにどんどん「きちんとした処遇をしてくれ」というアプローチをしていけば、ことは足りると思っております。

【小野】  ありがとうございました。これでひとわたりご意見を聞かせていただいたわけですが、他の方の発言について何かコメントがありましたらどうぞ。

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6.討論
(1)「中間形態」から始めないと時間がかかる

【土田】 龍井さんと紀陸さんのおっしゃったことはそれぞれもっともな点もあると思いますが、意見と質問をそれぞれ1つずつしたいと思います。
 まず、龍井さんのペーパーにあります「中間形態」批判というところと関係しますけれども、「中間形態や連続性をつくるのではなくて両極を変える必要があり、その2つのスタンスは全然違う」というご意見についてです。確かに事実認識としてフルタイムの正社員が、それこそ法定労働時間で働いているのではなくて、非常に恒常的な残業があったり、配転があったりして、両極化、極端化しています。それはそうだと思うんです。ですから、そこを是正する必要があるというのは、私も長期的にはそのとおりだと思います。しかし、ここがおそらくパート研究会の認識との違いだと思いますが、一言で言えば、「両極を是正しなければ、パート問題についての政策的対応が進められないのか」ということであります。
 おっしゃったことは、非常に突き詰めれば「まずそこをやりなさい」、あるいは「そこをやりながらパートの均衡なり均等を考えるべきだ」ということだと思います。そこはもちろん重要な課題ですけれども、パートの問題について正社員も含めた政策を考えるとき、「両極のところをまず是正してから」というのでは結局何もできないことになってしまいます。言い過ぎかもしれませんが、その両極を是正することが先にありきでは、パートの政策も進められない。なぜならば、そこを是正するのは非常に時間がかかるからです。
 ですから、差し当たってはといいますか、今のパート研究会の政策の考え方としましては、両極の部分の是正は当然課題として必要でしょうが、まずはその中間形態なり、連続性を考えることから始める。そうしないと現実的な政策をつくれないのではないかということを考えているわけです。これが1点です。

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(2)「均衡処遇」は労使の取り組みを促す社会的ルール

【土田】 それから、紀陸さんの言われたことですけれども、例えばパートについて非常に格差として重要な問題は企業貢献度であるという点についてです。それを含めてどう公正な処遇を図っていくかについては「企業で考えるべきことだ」ということだったかと思います。おっしゃったことは我々としましても十分わかっております。企業貢献度なり、会社貢献度なり、あるいは責任の問題、長期育成の問題、要するに外形だけではわからない目に見えない部分が確かにあります。ですから、あまり機械的、画一的に均等とか、同一労働同一賃金という原則を打ち出していないわけです。むしろ均衡という「日本型の均衡処遇ルール」というものを立てていく。しかも企業や労使の考え方を重視しながら、委ねるけれども、それを促すようなガイドライン、社会的ルールを確立する必要があるのではないかと申し上げているわけです。
 つまり、企業や労使の意向を無視して、社会的な、客観的な、強力なルールを上から打ち出すのではなくて、そこはぜひ考えてくださいということです。そのためのガイドラインや社会的ルールを我々としては考えたい。
 それに対して、企業は「いや、そうではない」「アカウンタビリティーが非常に重要になるので企業で考える」と言われますが、それでは一体それをずっとこの10年やってこられてどうだったのか。そこができていないから、今度のパート研究会の申し上げた労使、企業の取り組みを促すような社会的ルールの確立が重要だと考えたわけです。

【小野】 ありがとうございました。龍井さん、紀陸さん、今のコメントについて何かございますか。

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(3)パートの仕事は単純・定型と考えてはいけない

【龍井】 1つだけコメントさせていただきますと、両極を変えていくことの意義が認められるとすれば、それがこの中間報告から先にどういう方向でつながっていくのかが見えないというのが率直な感想です。ですから、先ほど男女雇用機会均等法の例を持ち出しましたが、均等といって原則を確認していながら、結局はどちらの方向を目指していくのか。均衡処遇と言う場合、何を基準に考えるのか。あるがままの正社員なのか、そうではない働き方なのか。それによって、その尺度も、さきほど紀陸さんのおっしゃった物差しも違ってくるわけです。その物差しのつくり方が現状の尺度でいいのかと言うと、見直さなくてはけないでしょう。そういう問題提起です。
 正社員の絶対数が減ってパートを採用する中でパートの職務も変わってきています。単純・定型という世界も大分変わってきているのではないかという認識を持っていますので、さきほど紀陸さんが言われたように(正社員とパートで仕事や処遇が)違うのが当たり前というよりは、職場の段階ではむしろそういった考えが逆に問われているのではないかという認識を持っています。

【紀陸】 土田先生が報告をおまとめになられるとき、いろいろ勘案されておつくりになったという経緯もわかりますし、言葉としていろいろなことがこの中に込められているということもわかります。要するにこれは、「成果主義賃金のおすすめ」とか、「職務給体系導入のおすすめ」といったものではないでしょうか。それが何でパートと正社員の問題を取り上げて論じるのか。正社員の中にも問題があります。では、派遣の方はどうなのか。請負の方はどうなのか。基本的に短時間就労というくくりであれば、長時間就労と短時間就労の問題になるかもしれませんが、その格差の問題だけではないでしょう。
 一番会社が困っているのは「物差しづくり」です。物差しづくりに困っている場合、公的な機関が言うべきことは、「いろいろな物差しをきちんとつくりましょう」というぐらいの話であります。「パートについての日本型処遇均衡」なんてそんな大げさな話ではなく、中身は要するに「きちんとした物差しを各企業でおつくりください」という話なのです。「おつくりください」と言われても、企業は悩んでおりまして、大事なことは、企業の経営者なり、従業員の方々が意識を覚醒して、そういう処遇づくりに一生懸命労使で取り組む流れをつくることです。「ルールをつくりましょう」という話ではありません。これは言い方の問題なのでしょうが、ルールだけ言い出すとそれに引き連られてものごとが動いてしまう。そして、この中には「貢献」という言葉がありません。さきほど申し上げましたように貢献が一番大事なのに、それが入っていないで、賃金体系や人事制度で評価されては少し困るということであります。

【小野】 山田さん、全体の議論をおうかがいの上で何かご発言がございますか。

【山田】  やはり紀陸さんのご報告についてですけれども、土田先生のお話とも重なるのですが、おそらく正社員であろうとパートであろうと、個々人の企業に与える貢献度というのは違うと思います。そして、正社員と同じような仕事をして、同じような責任を持ち、配転や転勤、残業をしないといけないというようなパートが登場しつつあります。
 21世紀職業財団の調査によりますと、パートの中の4?5%は正社員と全く同じ働き方をしているという部分が厳然として存在しているわけです。そうだとすれば、そういう方々に対して賃金のレベルを合わせるということまではなかなか言えないと思いますが、少なくとも評価の土俵を合わせていくことぐらいは、やはり公正の観点からいっておかしいとは言えないのではないか。これがパート研究会の考え方です。
 「何で正社員とパートの問題だけを目くじら立てて言うのか」というお話ですけれども、やはり21世紀職業財団の調査によれば、パートという働き方が出てきた起源にもよっているのだと思いますが、仕事の内容が基本的に違うという前提に立って、正社員とパートで違う賃金制度をとっているところが非常に多いわけです。正社員と働き方が全く同じようなパートが出てきている中で、そこのところが果たして公正なのかどうか。パート全体を正社員と同じ賃金体系にしろということではありませんが、ある程度働き方の実態に応じて、「パートだから」、「正社員だから」ということではなく、働き方の実態に応じてその人をどちらの賃金制度にそろえていくのかということぐらいはやはり考える必要があるのではないかという考え方です。

【紀陸】  企業の中にそういういびつなことがあったとしたら、ほんとうは連合がどんどんパート組合をつくればいいんですよ。そこでやっていけば、もう別に問題はないので、これは連合さんの怠慢じゃないですか。

【龍井】 怠慢だという点を認めざるを得ないようなところが正直ありますが、問題はやはり、「ルールづくり」が一種のキーワードになっていますけれども、それをどう受け止めるかということだと思います。私どもは法律という言い方をしていますけれども、この点は今回の報告の中でも2通り出されていて、まだ結論が出ていません。しかし、それが大きな方向としてあるのとないのとでは全然違うわけです。
 さきほど紀陸さんがおっしゃった「労働市場の広がり」というのをもし考えるとすれば、今のそれはルールのない市場に近いと思います。そこでどう知恵を使っていくのか。法律がすべてではありません。組合のないところも含めた労使の話し合いとか、協約とか、いろいろな手段で均衡処遇をやらなくてはいけません。私どもは決して法律に依存しようとは思っていません。ただ、いろいろなものを動員してでも、そういう環境をつくっていく。そういう役割というのは、地域でも、業界団体でもいろいろなレベルであります。労使関係にしても企業の中だけ、正規のほうだけで自己完結しない、あるいは、それがすべてだったという神話が崩れつつあるという前提でルールをつくっていかなくてはいけない時代に来ていると考えています。

【土田】 今のお二人のやりとりについてですが、実は研究者のほうでも、「パートタイマーが処遇の改善を求めるには労働組合をつくればいい」、「自分たちで(組合を)つくる方法があるのではないか」、あるいは、「連合で組織をすればいい」という議論があります。だから逆に政策としては何もしないほうがいい、むしろパート自身の問題なのだという意見があるわけです。それもよくわかりますが、この問題には、市場や労使に委ねても是正されてこなかったという経験則があります。そうだとすれば、もう政策的な対応を求められている時期に来ている。ただし、それは何か公の機関が一刀両断的にやるのではなく、まずはそれぞれの企業で、労使で考えてほしいから、同一労働同一賃金というような大きな強力なルールではなく、日本型処遇ルール、労使自治を促すようなルールを立てているわけです。つまり労使自治の問題ということを意識した上でこのルールを出していることをぜひ認識していただきたいと思います。

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7.質疑応答

【質問者】  土田先生に2点ほどおうかがいしたいのですが、均等と均衡ということで、均衡で法的な救済が可能になるということですが、配慮義務違反あるいは公序良俗違反で、具体的に法的に争われた場合の立証責任は労働者側、使用者側、どちらにあると考えるのでしょうか。それが労働者側にある場合、実際の企業内ではいろいろ立証するのは難しいと思われますので、法的な技術的な措置として一定の義務違反の立証責任を使用者側に転嫁するという法的な措置と言いますか、そういうことをお考えかどうかおうかがいしたいのですが。

【土田】 均衡の場合の立証責任というのは、非常に立証責任の配分が難しいところがあります。丸子警報器事件もそうだったのですが、今のところ不法行為の問題になっているものですから、労働者側の立証責任、つまり差別の事実を挙げて、それに合理的理由がないというところまで立証するのが労働者側の責務になるという原則論は動かせないと思います。
 ただし、今後ガイドラインができた場合、あるいは基準というもの、要素というものが明らかになった場合ですけれども、その場合は「何が均衡なのか」という要素づけが幾つかできますから、それを客観的に区分けして立証していくことは必ずしも難しくない。
 一方、企業は、これも実は均衡の要素の中に入ってくるので難しいところもあるのですが、十分な配慮をしてこなかった、あるいは格差の合理的理由を埋めるようなことをしてこなかったという部分では、企業側の反証事項になるかと思います。
 さらに、これは将来的な課題ですけれども、仮に法律までいけば、立証責任は全然違ってきます。つまり不法行為責任の問題ではなくて、法律違反の問題になります。その場合には立証責任の転換が生じてくると思いますが、これは将来の課題です。

【質問者】 土田先生にご質問したいのですが、私はかつてパートタイム雇用研究会のメンバーをしていまして、当時、均衡と均等の問題について、配転の有無、残業等々の事情がある場合、「合理的な差」を設けるということを議論しました。その後、果たしてそれらがほんとうに合理的な差なのかどうかと考えています。例えば育児・介護休業法でも、社員に対してこういう事情がきちんと配慮されるようになってきています。ただし、そういう社員に対して企業は短時間勤務制度なり、残業の免除なり、配転の配慮なりをきちんとやって、その際に合理的な差ということは規定しておりません。そもそも流通の世界でパートをやっている方の理由というのは、ほとんどが育児・介護です。そういった場合はもう均衡ではなくて、100%であるべきだという考え方に立てないのかというのが1点です。
 それともう1つは、社会、働き方を変えていかなくてはならないということは十分わかります。それは研究会報告でも述べられています。ただし日本の場合は、仕事給なり、職務概念というのが非常に薄い。社員はゼネラリストとして配置転換を通じていろいろな仕事をしているわけです。そうした場合、これは山田課長さんにうかがいたい部分でもありますが、職務なり、仕事給という概念を社会的にいかに定着させるかということをあわせてやっていかないとなかなか難しいところがあります。その点についてコメントいただければと思います。

【土田】 パート研究会でも、残業とか、配置転換といった拘束性、あるいは格差の合理的理由について詰めきれていない部分が確かにあります。先ほど紀陸さんがおっしゃったような要素もありますし、責任という問題もおそらくあると思います。
 残業や配転を合理的な格差理由として認めてよいかどうかということはあると思いますが、例えば育児・介護休業制度が普及してきたからといって、それらが格差の合理的理由になる、あるいは均衡の要素になることを否定しきることはできません。つまりそういう変化は生じてきているけれども、それを要素の中の重要なものとして否定しきることはやはりできないのではないかと思います。
 しかし、先ほど紀陸さんがおっしゃった目に見えないようなものまで含めて考えていく必要があるのかどうか。これは中間とりまとめ以降、ガイドラインをつくる過程でさらに考えていきたいと思っています。
 ただ、もう1つは、パートタイマーの側も自由度あるいは責任が少ないといった部分を意識している点がやはりあると思うのです。そのあたりはやはり考えていかないと、例えば拘束性を抜きに考えてしまうと、逆に混乱してしまうのではないかと思います。
 それと、龍井さんとのやりとりにもありましたが、今おっしゃったようなこと(合理的な差)を踏まえないと、あるいはそういうところを抜きにしておかないと、このパートの議論は始められないのかという疑問があるものですから、やはりそこは前提として踏まえた上で議論していくのが現実的ではないかと考えています。
 もう1点についてですけれども、職務給の問題までいくと非常に難しいのですが、パートタイマーを非常に公正かつ有効に活用しているような企業の例を見ると、例えば職能資格制度をうまく適用、活用して処遇改善に結びつけているというところがあります。その職務給の職務の概念まで明らかにするというのは非常に難しいとは思いますが、まずはそこから出発するのかなという、非常にお答えとしては不十分ですが、そんな気がしています。

【小野】 「日本では仕事の概念がはっきりしていないのではないか」という点から均等待遇について疑問が出されているわけですが、行政としてはどんな将来の見込みをお持ちでしょうか。

【山田】 日本の企業の働き方をすべて職務という切り口で整理しきれるかというと、それは非常に難しいだろうということを行政としても感じております。今までは、1つは年齢という尺度で企業の中の処遇の仕組みができていました。それが年齢にかかわりなく働ける社会をつくるために、年齢とは違う尺度を見出す必要が生まれ、それは何かと考えていくと、やはりある程度、職務概念というものをはっきりさせていく、その職務が持っている価値というものをはっきりさせていくという取り組みが必要であろう。そういう考えは持っております。今、職業能力開発局で、能力評価という観点からいろいろな職務をどう整理して、その職務の価値をどう計っていくのかという研究を行っているところです。ただ、これは非常に難しい問題だと思います。

【小野】  基本になるデータの1つが職種のデータです。アメリカですと、3桁分類で400職種ぐらい持っているようですが、日本の賃金構造基本統計調査では120?130くらいです。もっとそういうものの充実が必要ですし、パートと正社員の賃金格差を職種別に比較できるようになるといったことが、こういう議論を契機に必要とされてくると思います。

【質問者】 「パートだって組合をつくればいいじゃないか」というご意見がございました。確かにそのとおりだと思いますが、なぜパートが組合をつくれないかと言ったら、それは有期雇用だからです。何十年働いても、半年契約とか、3カ月契約という有期雇用であるがために、パートが組合をつくれないという現実があることを知っていただきたいと思います。「つくればいいじゃないか」、「つくらないのが怠慢だ」、確かに怠慢なところもありますが、つくれないそういう大きな事情があるということはきちんと知っていただきたいと思います。
 拘束性についてですが、結局、企業の貢献度イコール拘束性、拘束性イコール残業、配転、あるいは転勤というふうに非常に短絡して考えられていると思います。こういった考え方というのは、日本の批准しているILO156号条約(家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約)に違反しないのだろうかということについて意見をぜひお聞かせいただきたい。
 育児・介護休業法は、この156号条約を批准するためにつくられた法律ですけれども、残業とか、あるいは配転、転勤についてもちゃんと考慮しなくてはいけないというようにどんどん改正をされてきていますよね。それにもかかわらず、このパートの問題で、拘束性があるかないかで格差をつけていいというのは、やはり家族責任についてきちんとした考え方が入っていないということではないかと思います。
 山田課長は、「辞令1本でどこへでも飛んでいく拘束性の高い正社員」という言い方をされました。実際にこれは、龍井さんが言われたように特殊な事情であって、日本のパートを見てみた場合、統計の中にもありますけれども、30人以下の企業規模で働いているパートが40%もいるわけです。100人以下だったら、もう過半数です。ということは、そんな転勤だとか、辞令1本でどこかへ飛んでいく正社員なんかいないような企業で働いているパートが圧倒的です。それなのに、なぜ突然拘束性ということで転勤や配転、あるいはいつ何時でも残業ができるように待機していなくてはいけないという正社員と比較するのか。やはりこういう考え方を合理的理由として入れることにはどうしても納得がいきません。やはりこれはILO156号条約に違反しているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

【土田】 今のILO条約との関係で言えば、これは正社員とパートの問題ですから、法的な意味、厳密な意味での違反ということには、ならないとお答えしておきます。
 実質的な内容については、理解できるところはあります。拘束性を考慮に入れることがILO条約とは別に間接差別的な考え方になるという点もおそらくあろうかと思います。それも承知の上で申し上げますけれども、日本の実態として言われた中小企業の点については確かにそのとおりだと思いますが、そうでないケースもあります。例えば大企業ですね。そのときに、そういった要素を含めないでこの均等なり、均衡の問題を考えていくことは、やはり今の日本における政策として現実的ではないと考えています。
 非常に抽象的な言い方になりますが、我々は何か非常に美しい絵を描いて、それに惚れ惚れと見とれるというスタンスでやっているのではありません。実際に今の日本の労使なり、企業が置かれている状況のもとで、ほんとうにパートの処遇を改善するにはどうすればいいのだろうか、どれが現実的な方策かという視点で考えているのです。そうだとすると、今言われた企業への貢献度、責任、それから、それが具体的にあらわれた拘束度というものは、やはり格差の理由としては考えざるを得ない。そこを労使に納得してもらえなければ一歩も進めないと考えているわけです。お答えになったかどうかはわかりませんが。

【小野】 本日の議論を非常にうまく絵にしたのが図表28 (PDF:367KB)新しいウィンドウです。三角形の絵がございますが、下側の三角形がパート研究会で提案されているものであります。上に行くほど、今問題になりました拘束性とか、雇用の保障とか、賃金が高くなる。下のほうに行くと逆です。左がフルタイマーで、右がパート。真ん中の灰色になっているところが、議論の中心になりました中間形態です。ここの部分についてパートと正規の均等保障、待遇が問題になっているわけです。
 今日議論されたようないろいろな現実の動きを見ますと、今後我が国が雇用形態を考える上でこれは大変重要な1つのデザインになると考えています。
 ただ、少し心配なのは、三角形の底辺の右下、白抜きのところです。パートと書いてある底辺のすぐ上。ここのところは賃金の格差を認めているわけですよね。しかも、臨時的、一時的社員です。要するに今のパートのようなものがここに入っている。今はグローバル化などのために企業としてはなるべく労働者を安く使いたい。そういう要請はこの図の中にも出ていますけれども、そのときに、この白抜きのところだけがどんどん肥大化して、パート研究会の狙いであったグレーに塗った部分があまり膨らんでいかないとなると、非常におもしろい制度をお考えになっても、現実が必ずしもそれにマッチしないということが起こってしまいます。「絵に描いた餅」と言ったら大変失礼ですが、それに近いことが現実に起こり得るかもしれません。
 そういうことを考えますと、一番下の白抜きのところにたまたま就職して不満を感じた人が別の企業に移動できるようなチャンスをつくらないとやはり具合が悪い。そうすれば、この白抜きのところだけが肥大化することは避けられます。では、不満な人が移動できるためにはどうしたらよいか。
私は研究会の報告を非常におもしろく読みましたけれども、制度を立派につくっただけでは不充分ではないでしょうか。我が国の経済成長率がもう少し高まって、労働市場の需給バランスが多少逼迫ぎみにならないと、こういう立派な制度をつくっても、下の部分だけが肥大化するということが起こってしまうのではないかという心配を少し持ちました。
本日はどうもありがとうございました。

(文責:事務局)

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