年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(2003年03月06日)

日本労働研究機構 発表
平成15年3月

年次有給休暇取得日数は女性よりも男性で少なく、
また実労働時間が長いほど少ない

-年次有給休暇の取得に関するアンケート調査-

調査の主目的、時期、方法

雇用労働者の年休取得の実態を把握すること。個別の対象者に調査票を郵送し、郵便で回収。2002年6月1日配布、同月中旬から下旬にかけて回収。3,000人に配布し、最終的に2,579票を回収(回収率86.0%)。無効459票を除く2,120票が分析対象(有効回収率70.7%)。

骨子

1.年休の付与日数(繰り越し分を含む)・取得日数(注)について

  1. 回答者全体の年休付与日数(繰り越し分を含む)は28.4日(平均)、年休取得日数は7.8日(平均)であった。
  2. 男女別に見ると、年休付与日数(繰り越し分を含む)は、男性30.1日、女性24.6日と男性のほうが多い。年休取得日数では、男性7.4日、女性8.7日と反対に女性のほうが多い。
  3. 職種別に見ると、年休付与日数(繰り越し分を含む)では、「管理職」が34.5日と最も多く、「製造生産関連」が26.0日で最も少なかった。年休取得日数では、「専門職」が8.9日と最も多く、「営業販売等」が6.0日で最も少なかった。
  4. 勤務先の業種別に見ると、年休付与日数(繰り越し分を含む)では、「公務」33.5日、「製造業」31.3日、「金融・保険業、不動産業」30.1日などが比較的多く、反対に、「建設業」24.4日、「卸売・小売業、飲食店」24.7日、「サービス業」25.3日などが少ない。年休取得日数では、「公務」10.7日、「運輸・通信業」9.5日などが相対的に多く、反対に「卸売・小売業、飲食店」4.9日、「建設業」5.7日などでは少ない。
  5. 勤務先の従業員規模別に見ると、年休付与日数(繰り越し分を含む)では、「3,000人以上」の33.1日が最も多く、「29人以下」の20.0日が最も少ない。付与日数(繰り越し分を含む)は、従業員規模が大きくなるほど多くなっている。年休取得日数では、「3,000人以上」の10.5日が最も多く、「29人以下」の5.5日が最も少ない。

(注)年休の付与日数は「2000年度からの繰り越し分を含んだ2001年度初めに権利として持っていた日数」としているため、厚生労働省の『就労条件総合調査』とは異なる。

2.年休取得に影響する要因について

  1. 男女計(男女全体を対象とした分析)で見ると、女性である、健康状態が悪い、大企業勤務、収入が高い、健康状態が悪い家族がいるなどの特徴(属性)を持つ労働者は年休取得が相対的に多い。一方、勤務先が「卸売・小売業、飲食店」である、失業率の高い地域に勤務している、職種が「管理職」「営業販売等」である、実労働時間が長い、などの属性を持つ労働者は年休取得が相対的に少ないという結果になった。
  2. 男性だけを対象に分析すると、年休の取得にプラスに影響する属性として、健康状態が悪い、大企業勤務、勤務先に労働組合があるなどが検出された。一方、年休の取得にマイナスに影響する属性として、失業率の高い地域に勤務している、職種が「管理職」「営業販売等」である、実労働時間が長いといった項目が検出された。
  3. 女性だけで見ると、特に年休の取得にマイナスに影響している属性は検出されなかったが、年休の取得にプラスに影響している属性として、大企業勤務、収入が比較的高いなどが得られた。これらのことから、男性と女性を総合して考えると、男性のほうが女性よりも年休を取得しにくい環境にあること、及び男性は女性よりも職種や勤務先の状況(労働組合の有無、失業率)などの影響を受けやすいことがわかった。

3.年休を取り残す労働者意識について

年休を取り残す労働者の意識を分類した結果、以下の4グループに分けられることがわかった。

  1. 「休暇に対する消極性」
    休暇を過ごす際の費用や混雑への心配が強い、休みの時期が友人や家族と合わないと考えている、休んでもすることがないという意識が強い、などの意識が強く見られるグループ。
  2. 「人事・処遇への懸念」
    休暇取得によって上司の顔色が険しくなる、勤務評価等への影響が心配、職場の周囲の人が取らないので、などの意識が強く見られるグループ。
  3. 「要員管理・業務量管理上の問題」
    仕事の量が多すぎて休めない、休むと他の人の迷惑になる、仕事を引き継ぐ人がいない、などの意識が強く見られるグループ。
  4. 「病気や急な用事のために残しておく」
    病気や急な用事のために年休を一定日数残しておくという意識が強く見られるグループ。

さらに、これら4種類の意識と年休取得率との関係を見たところ、以下のようなことがわかった。

  1. 年休取得率に対して影響しているのは、「人事・処遇への懸念」、「要員管理・業務量管理上の問題」、「病気や急な用事のために残しておく」の3つで、「休暇に対する消極性」はほとんど影響していない。
  2. 「人事・処遇への懸念」と「要員管理・業務量管理上の問題」は、年休取得率を下げる方向に影響している。特に「要員管理・業務量管理上の問題」が強いと、年休取得率は低い。
  3. 「病気や急な用事のために残しておく」という意識が強い場合は、年休取得率が相対的に高い。

以上のことから、年休取得率が低い意識面の要因として、「要員管理・業務量管理上の問題」と「人事・処遇への懸念」があり、年休取得率がすでに相対的には高いが、100%にならない要因として「病気や急な用事のために残しておく」という意識があることがわかった。

4.年休に関する希望について

  1. 取得する年休の長さ
    3週間程度の年休がすべて取得できると仮定した場合の取得期間の長さに関する希望については、「連続1週間程度の休暇を年2回と残りはその都度決める」が最も多く33.6%であった。次いで「3~4日程度の休みを年に数回と残りはその都度決める」の20.4%、「連続1週間程度の休暇を1回と残りはその都度決める」の17.9%となった。反対に「連続3週間程度の長期休暇を年1回」は6.0%と少なかった。
  2. 年休を取得する時期
    1週間以上の年休が取得できると仮定した場合の取得の時期に関する希望については、「夏(お盆の時期をはずした7~9月)」が最も多く38.7%で、夏休みの希望が多いことがわかった。次いで「秋(10月~クリスマス前)」が18.6%、「ゴールデン・ウィーク後から6月末まで」が11.6%などとなっている。
  3. 休暇時にやりたい活動
    1週間程度の休暇時にやりたい活動について質問したところ(該当するものを3つまでの多重回答)、「2泊以上の国内旅行」が最も多く62.7%であった。次いで「1週間以上の海外旅行」の34.0%、「1週間未満の海外旅行」の31.8%などと、旅行の希望が多い。旅行以外では、「家で行う趣味やスポーツ」22.0%、「家族との団らん」19.3%なども比較的多かった。

全文(PDF:59KB)

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