第2回日系企業の人事労務管理に関する実態調査結果
(2002年08月06日)

日本労働研究機構 発表
平成14年8月6日

1.調査の目的と方法

グローバル化している日本企業は、海外で300~400万人の労働者を雇用し、長期10万人、短期を加えると40万人の日本人を派遣、現在では世界のあらゆる地域で事業を展開している。これら日本企業は、現地との摩擦を少なくし、現地のさまざまな環境に適応しながら、人材を有効活用し、かつ成果を上げるのに最もふさわしい人事労務管理のあり方を模索している。本調査は、経営形態のグローバル化を図りながら、海外投資を進める日本企業の国際人事戦略の把握を念頭に置き、進出先国の環境にいかに適応しながら人事労務管理、人材開発を進めているか、労使関係にどのような政策を持って対応しているかなどの実態を明らかにすることにより、日本企業の海外における円滑な事業活動に資することを目的として、2001年9月に実施したもので、1999年に実施した第1回調査に引き続く2回目の調査である。

調査は、現地の日本人商工会議所、日本人会等の協力を得て58カ国・2地域の日系企業2,522社に調査票を配布、有効回答数は50カ国・2地域、967件(有効回答率38.3%)。

2.調査結果の特徴点

  • 約3割の企業が現地の優秀な人材の採用で苦戦
  • ホワイトカラーの人事制度は「ローカルの人事制度」の採用割合が高い
  • 日本人派遣の理由は「本社との調整」・「現地従業員が十分育成されていないから」等

採用、人事制度、能力開発

(1)約3割の企業が現地の優秀な人材の採用で苦戦

「現地で第一級の人材を採用することができる」について、約3割の企業でほぼうまく採用できている一方で、「全然そうではない」が6.1%、「ややそうではない」が21.9%と、これとほぼ同じ割合の企業で、現地の優秀な人材の採用が思うに任せないとの結果であった。

図1 画像画像クリックで拡大表示(新しいウィンドウ)

(2)ホワイトカラーの人事制度は「ローカルの人事制度」の採用割合が高い

ホワイトカラーの人事制度について、ローカル企業の人事制度を「全面的に取り入れている」が20.3%、「やや取り入れている」が36.2%となっており、一方で、日本本社の人事制度・グループ内兄弟企業の人事制度については「全くとりいれていない」・「あまりとりいれていない」とする割合が高く、日本本社やグループ内兄弟企業の人事制度と比較して、ローカル企業の人事制度を採用している割合が高い。

図2 ホワイトカラーにおける人事制度(評価、昇進等)の取り入れ状況画像クリックで拡大表示(新しいウィンドウ)

(3)現地従業員の能力開発手段は「日本本社・社外研修への派遣」や「社内研修」

現地採用の大学・大学院卒従業員の能力開発のために実施している手段は、「日本本社への短期の研修派遣」が42.7%、「社内研修」が42.3%、「社外研修への派遣」が40.6%、「自己啓発への援助」が37.3%となっている(複数回答)。

(4)給与の決定に際しては「年齢や勤続年数」より「職務」を重視

人事労務管理の状況で、「部下の育成は、管理職の重要な職責である」(そういえる:50.3%、ややそういえる:36.0%)、「現業部門を含めたすべての従業員に人事考課を行っている」(そういえる:58.6%、ややそういえる:21.5%)、「給与の決定に際しては職務を重視している」(そういえる:25.6%、ややそういえる:53.9%)について、「そういえる」・「ややそういえる」とする企業割合が高い。一方、「従業員の採用は経験者よりも新規学卒者を重視している」、「能力や業績の差は短期的には処遇に反映されない」、「給与の決定に際しては年齢や勤続年数を重視している」については、「そうはいえない」・「あまりそうはいえない」とする割合が高い。

図3 画像画像クリックで拡大表示(新しいウィンドウ)

(5)現地従業員の意欲を高めるために「給与や報酬」「ボーナスや個人報奨金」を重視

ローカルスタッフの仕事意欲を高めるために重視している方法は、管理職層、非管理職層ともに、「給与や報酬」(管理職:70.8%、非管理職:81.4%)、「ボーナスや個人報奨金」(同45.3%、56.4%)、「昇進・昇格」(同 42.3%、44.2%)で高くなっている(3つまでの複数回答)。また、非管理職との相対比では、管理職層は、「権限の委譲」、「仕事の自由裁量度の増大」、「経営の意志決定への参加」とする割合がやや高い。

日本人派遣の理由

「本社との調整」「現地従業員が十分育成されていない」

日本人派遣の主な理由は、取締役以上では「日本本社の経営理念・経営手法を浸透させる必要があるから」が71.8%、中間管理職では「日本本社との調整に必要だから」が56.5%と最も高い(複数回答)。

前回調査と比較すると、取締役以上では「現地従業員が十分育成されていないから」が減少し(前回:37.2%、今回:30.1%)、中間管理職では「日本からの技術移転が必要だから」が増加している(前回:35.1%、今回:40.4%)。

図4 画像画像クリックで拡大表示(新しいウィンドウ)

現地経営上の課題

「意思の疎通」「現地従業員の能力不足」

人材に関する現地経営上の課題や問題点は、「意思の疎通(日本人派遣者・現地スタッフ間)」が37.3%、「現地国籍一般従業員の士気(モラール)や能力の不足」が35.9%、「意思の疎通(日本本社・子会社間)」が32.4%、「現地国籍中間管理職(部課長層)の能力不足」が32.1%となっている(複数回答)。

労使関係

紛争の原因は「賃金」が5割強でトップ

労使紛争は、「現在も過去5年間も発生したことがない」とするものが81.1%。発生したことがある場合、原因は、「賃金」が51.5%と最も高く、「雇用調整」が24.0%、「労働時間、休日、休暇」が18.6%などとなっている(複数回答)。

前回調査と比較すると、「賃金」(前回:62.8%、今回:51.5%)、「福利厚生」(前回:23.8%、今回:14.1%)は減少し、一方「雇用調整」(前回:19.2%、今回:24.0%)はやや増加している。


全文(PDF:190KB)

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