女性の仕事と家庭生活に関する調査結果(2002年07月19日)

日本労働研究機構・発表
平成14年7月

育児休業制度定着には、職場・地域等の支援システムの構築が必要
-女性の仕事と家庭生活に関する調査結果より-

<骨子>

1 企業組織再編の状況(アンケート調査)

1.妊娠・出産時における仕事の継続―第1子出産時に困難を乗り越えるかどうかが鍵―

  • 第1子出産時には多くが退職するが、第2子出産時では就業継続割合が大幅に増加。
  • 初めての育児に対する不安が大きい第1子出産時における母親への励ましと具体的支援が有効。
  1. 第1子妊娠・出産時に有職であった者の割合は、どの地域も約7割だが、そのうち妊娠・出産時に退職した者は杉並、江戸川7~8割、富山・高岡6割弱。一方、第2子妊娠・出産時に有職であった者の割合は3~4割で、数そのものは少なくなるが、その就業継続率は6~8割と高くなる。
  2. 出産前に仕事をやめた理由で多いのは、どの地域も「自分の手で子育てしたかった」(5~6割)、「仕事と子育てを両立する自信がなかった」(3割前後)など。
  3. 第1子・第2子ともに、富山・高岡での就業継続率は他の2地域に比べ高い。

2.子育ての現状―地域差の目立つ支援策と問題点―

  • 都内では「保育園」、富山・高岡では「親」が主な育児担当者。
  • 「無認可保育所」「保育ママ・ベビーシッター」の利用が都内では約2割。
  1. 第1子妊娠・出産時に就業継続したケースについて、出産から2歳くらいまでの育児担当者(ふだんの日の日中子どもの面倒をみた人)をみると、杉並と江戸川では「保育所・保育園」が6~7割、富山・高岡では「本人や夫の親」が6割となっており、地域差が目立つ。杉並と江戸川では、「認可保育所」の利用が5割近くあるほか「無認可保育所」の利用が約15%、「保育ママ・ベビーシッター」の利用が江戸川で約20%、杉並で6%となっている(注2)。
  2. 夫の家事参加は、どの地域も「たまに手伝ってくれる」約5割、「全くしない」3割。妻が「正規社員・職員」の場合に夫の家事参加度が高い傾向が見られる。

注2)江戸川区は、全国的に少子化が進むなか、出産数が減少していない地域のひとつである。これは、他地域からの若い世代の流入増加が背景にあると考えられる。また、同区は0歳時保育について原則、保育所対応ではなく、保育ママ対応の方針をとっているため杉並に比べ、保育ママの比率が高くなっていると考えられる。「ベビーシッター利用」については、それとの関係をみるべきと思われる。

3.育児休業制度の利用について
―利用したいが不安がいっぱい。ただし、不安の内容には地域差大―

  • 育休の利用意向は高いが、実際の利用は5割未満。
  • どの地域も「職場復帰後の適応」に不安大。杉並では「子どもの預け先の確保」、富山・高岡では「休業中の所得保障」がネック。
  1. どの地域も制度はよく知られている(約8割)。
  2. 妊娠・出産時、職場に育児休業制度(以下「育休」という。)があった者が、第1子の時に利用した割合は5割未満(杉並4割、江戸川3割、富山・高岡5割弱)。
  3. 育休を利用して良かった点は、「子供の健康のために良かった」「子育ての楽しさを味わえた」「子育ての大変な時期を乗り越えられた」が多く、良くなかった点は、どの地域も「復職時に仕事や職場に適応できるか不安だった」(4~6割)が多い。ただし、杉並では地域における保育事情を反映してか「子供の預け先がみつかるか不安だった」が最も多くなっている。富山・高岡では「経済的に苦しかった」とする割合が他の地域に比べ際だっている
  4. 育休を利用せずに職場復帰した者で、利用しなかった理由で多いのは、杉並、江戸川では「制度がなかった」(3~4割)、富山・高岡では「子供をみてくれる人がいた」(約4割)。また、利用しづらい職場環境のために利用しなかったとする理由も比較的多い。
  5. 育休充実のために企業・職場に力を入れてほしい点として多く挙げられたのは、どの地域も「休業がとりやすくなるよう、職場の理解を深める」、「休業期間の延長や復職時期の配慮」(4~5割)など。「休業期間中も経済的援助」「パート社員なども休業可」も多い。
  6. 仮に自分が出産時に勤めていたとして、育休を利用するかどうかについては、どの地域も「ぜひ利用したい」「できれば利用したい」が約8割にのぼる。育休を利用せずに復帰したことのある者にも利用意向は強い(約8割)。
  7. 男性が育児休業することについては、どの地域も「良いことである」が8~9割。夫が育児休業することについては、地域差が大きく、杉並が最も肯定的(6割弱)。

4.両立支援策

都内では「保育所の確保」、富山・高岡では「保育料の引き下げ」に対し高いニーズあり。

  1. 働く人の子育て支援策として社会や地域に求めるものは、杉並、江戸川では「保育所の数・定員を増やす」が、富山・高岡では「保育料を引き下げる」が多い。
  2. 両立支援のために必要な企業内制度に関しては、どの地域も半数、あるいは半数以上が「子供が病気やけがのときの看護休暇制度」を必要としている。また、「保育時間延長」よりも「労働時間短縮」、「病児保育制度」よりも「親が仕事を休めるような制度」への支持が圧倒的に多い。
  3. これらの具体的な支援策へのニーズが認められる一方で、家庭と仕事の両立に大切なものは「家族の協力や励まし」であるとする者が多く、家族外の支援とともに家族内の支援も重要であるという考えがうかがえる。

5.課題と提言(まとめ)

育休を効果的な制度とするための職場・地域・教育における役割は大きい。

  1. 復帰後の家庭生活、職業生活を考慮に入れた育児休業制度であることが重要であり、そのためには、休業期間・復職時期に関する配慮(注3)、復帰後の仕事上の不安を解消するためのプログラム(注4)、上司や同僚の理解などが不可欠である。
  2. 職場の配慮や家庭の努力が実効的なものとなるためには、地域における保育サービスがきわめて重要かつ必要である。
  3. 両立問題は、女性だけでなく男性も当事者であるという認識にたち、夫と妻が協力して家庭生活を営むための職場・地域・教育等の支援システムの構築が求められる。

注3)育休法では子どもが満1歳になるまで利用できることになっている。しかし、保育園に入所しやすい時期が年度末であるという現実を受けて、実際には1歳まで自分の手で子育てしたくても復帰を切り上げざるを得なかったり、あるいは、年度替わりまで一時的に無認可保育所を利用せざるを得なかったりという実態がある。利用者側からすると年度途中の入所が無理であるなら年度末まで利用の延長を認めてほしいというニーズが高いが、このことは、育休制度のあり方そのものとも関わってくる問題であり、保育園入所時期と休業終了後の復帰時期との問題は、さらなる検討が必要であろう。

注4)たとえば、休業中の仕事に関わる情報の提供、復帰に向けての教材等の活用など。


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