副業先を非雇用に限定することで、過重労働につながる副業を抑止
――コンビニ事業E社
企業ヒアリング
コンビニ事業E社は、新卒採用での副業許可の問い合わせをきっかけとして、2020年に、副業形態を非雇用型に限定することで、許可制による副業制度を構築。副業申請書の記載事項に副業の活動時間を盛り込むことで、本業に支障がない副業であるかを確認している。過重労働になる副業は不許可にすることで、副業での健康障害の予防にも取り組む。近年、副業申請は増加傾向にあり、特技や趣味を生かした副業も出始めている。
1.自社が副業・兼業者を送り出す場合の状況
新卒採用での副業許可の問い合わせをきっかけに、非雇用に限定し副業を認める
E社の業種は小売業(大企業)。業態はフランチャイズシステムによるコンビニエンスストア事業(以下、「コンビニ事業」)。コンビニ事業は、フランチャイズ本部(E社)とコンビニ店舗によって構成される。E社は店舗を運営・経営するための、商品・物流・品質管理・マーケティングなどの様々なものを提供するフランチャイザーであり、フランチャイズ店(加盟店。以下、「FC店」)とフランチャイズ契約を結ぶ。FC店の雇用主はオーナーであり、E社ではない。店舗のほとんどがFC店であり、残り数%はE社が直接経営している直営店である(以下、「直営店」)。
主な職種としては、大きく分けて、①本社のバックオフィス業務(店舗開発、物流、システム、経営企画、経理財務、管理(人事・人財育成・法務)等)②スーパーバイザー(本社とFC店をつなぎFC店の経営コンサルティングや指導を行う仕事)③直営店のスタッフ――がある。
E社では、新入社員の最初の配属は、基礎教育期間(1年半~2年)として、直営店になる場合が通常である。その後の配属として、大半がスーパーバイザーを3~4年経験し、その後は、スーパーバイザーを継続するパターンと、本社スタッフとして配属されるパターンに分かれるイメージ。適用労働時間制度は、通常の労働時間管理制度で、所定労働時間は9時~17時30分の7.5時間勤務。直営店の場合、交替勤務(夜勤)がある。
E社は、2020年に、許可制で副業を認めている。「もともと、(従業員に対して、)自分の会社に関わる仕事を一生懸命取り組むよう求めるスタンスでやってきたため、(副業解禁も)積極的に副業を認めるという方向で動いていたものではなかった」などと当時を振り返る。
副業を認めたきっかけは、2020年頃の新卒採用時に、趣味のイラストで収入を得ている学生から、入社後も趣味の範囲内で活動を続け、イラストで収入を得ることは副業にあたるのか問い合わせがあったため。偶然、その年に他の新卒者からも同じような申し出があり、学生からは、「副業を認めてくれなければ、入社が難しい」との声もあがっていたという。これが副業制度を検討するきっかけにつながった。
検討段階で焦点となったのは、副業が雇用型であるかどうか。「やはり一番懸念していたのは、時間外の算定。残業がうち(E社)なのか向こう(副業先)なのか。そのほかにも、(労働時間が)長くなったときの安全配慮義務はどうなるのかは、議論があった」。雇用型ではこれらの問題が生じ得ることから、「非雇用型であれば認めてもよいのでは」との結論になったという。
本業に支障がある場合や、利益相反が生じ得る副業である場合は不許可
副業希望の新卒者への対応としては、同社では、副業申請書を提出してもらい、①非雇用であること②本業に影響を与えない範囲の副業であること――について、会社が判断すれば、副業を認める形となった。新卒者の採用時に副業を認めたことから、これを新卒者だけではなく、全社員にも適用することとなった。社員向けに案内したところ、既存の社員からも副業の申請があがってくるようになった、という。
副業は全社員が申請可能。副業として認める形態は、非雇用に限定されている(雇用型は禁止)。本業に支障がある場合は許可しない。副業の業務内容については、同社と利益相反が生じ得る業務ではないことも要件となっている。例えば、本業(コンビニエンスストア事業)と関係のある副業(例:コンビニ他社)は認められない。競業の禁止、企業秘密の漏洩も禁止されている。
副業申請書では、副業の活動時間を記載事項に盛り込むことで本業に支障がないかを確認
具体的な副業の申請方法としては、社内イントラに掲載されている副業申請書を本人が記載したうえで、所属長に提出。所属長は、申請書の記載内容を確認し、人事部に提出する流れとなっている。最終承認は人事部長。基本的には申請書の記載内容のみに基づき許可の判断をしている(記載内容に不明点があれば本人に確認する場合はある)。申請提出のタイミングは、その都度でも可能であり、年間を通して複数回案件が見込まれる場合は、まとめて申請することも可能である。
副業申請書の記載内容としては、①活動内容欄に非雇用型のチェック欄がある(非雇用型しか選択できないため、雇用型は許可されないことになる)。チェックされた非雇用の副業については、②具体的な活動内容の記載欄がある。それ以外の記載事項として、③副業の活動期間、④具体的な活動日・時間(週の活動回数や、見込みの時間(1日○時間、週○時間、月○時間、年○時間程度になりそうか等)、⑤報酬の見込額、⑥その他特記事項――がある。
申請では、注意喚起の観点から、非雇用型でしか副業の申請が認められないことや、本業に支障がでないようにすること、利益相反しない活動であることなどが強調されている。特に副業の活動日・時間は、本業に支障が生じないかの判断材料になっている。E社では、副業許可において、本業に支障をきたす場合があるかを申請書から判断しているが、これについては次のように説明した。
「(副業の許可基準として、)要は、本業に本当に影響がないかを確認している。例えば、イラストを一生懸命やっていて、毎日、平日5時間ぐらいイラストに費やさなければならない、という話になると、『本業の仕事に身が入らなくなるのでは』『本業がおろそかになるんじゃないですか』となる。起業という形になると、本業がメインなのだから、兼業で(起業を)やれるのか(は確認する)。要は7.5時間、週5で本業で働いてもらう前提で、(副業をして)本当に大丈夫なのかを、確認させてもらう」
副業申請が認められて以降は、副業者が禁止事項等を理解したうえで許可を出していることから、人事部として、副業の実際の労働時間数に関して確認はしていない。基本的には自己管理の形で、副業を許可している状況だ。
副業申請は増加傾向で、資格を生かした副業だけでなく、特技、趣味を生かした副業も
過去1年間(2023年度)の副業の許可状況は14件。近年、「増加傾向にある」との認識だ。副業の内容の事例として最も多いのは、キャリアコンサルティング。本社の人材開発担当が、業務を通して取得したキャリアコンサルタントの資格を生かし、平日の夜や休日を使い、単発の相談業務を行っている事例がみられる。それ以外は、外国人観光客のガイド、カメラマン、障害者の支援活動、外国人向けの日本語教師、大学の特任講師、アイドル活動(ライブ出演等)など様々であり、個人の特技や趣味を生かした活動がみられる。
特徴としては、年齢は比較的高めで「50代が多い」という。また、副業の収入では、高収入の者はほとんどいない。副業の頻度は、単発(スポット)の仕事が多く、毎週定期的に副業がある人はいない。
申請段階で過重労働になる副業を不許可にすることで、副業での健康障害を予防
副業者の労働時間管理については、副業が非雇用の形態で許可されているため、労働時間の把握はしていない。非雇用であるため、労働時間の通算(割増賃金の調整等)も不要である。副業先(企業の場合)との労働時間関連の調整もしていない。申請段階の申請書で労働時間の確認はされており、本業に支障をきたすおそれのある副業は許可されないことから、副業での長時間労働は想定されていない。E社としても、副業の労働時間については、「本人の申請通り」との認識である。また、健康障害に至るような副業はない前提であるため、健康管理のための措置はしていない。
雇用型の副業を認めないことで、利益相反にあたる業界(コンビニ他社)での副業を抑止
申請書の許可基準では、雇用型でないことや利益相反しない活動であることが明記されている。同社の場合、利益相反が生じ得る業態としては、例えば、コンビニ(他社)が想定されるが、申請書上で、雇用型を認めていないこと、利益相反にあたる活動を不可とする注意喚起もしていることから、利益相反にあたる副業の申請はない(例えば、雇用型を認めていないことから、コンビニ(他社)の申請はない)。「実際に申請であがってくるのは、本業に関係がなさそうなものばかり」という。
副業申請の増加傾向をふまえ、今後、副業ができる環境の整備に課題感
副業の効果(メリット・デメリット)を尋ねたところ、「(調査時点で)副業制度でメリットを感じているところはない」という。例えば、副業経験の本業へのフィードバックや、離職者防止につながっている等の認識はない。副業制度を認めることで、採用面での応募者数の増加につながるかについても、プラスに働く場合もあるかもしれないが、その検証ができているわけではなく、制度導入により効果があるとの認識はない。一方、大きなデメリットも感じていない。
副業制度の課題としては、副業制度の環境整備をどうするかがある。副業を認める社会的な趨勢は強まると感じており、近年、E社において、副業の申請数が増加傾向にあることから、「自分の趣味を生かして、副業から収入を得ようとする社員は、今後も増えてくる」と想定している。同社は、今後の副業ができる環境整備の必要性について、次のように語った。
「(副業の申請数が高くなっていることをうけて)認めてあげたほうがいいだろうし、結局あんまり厳しくすると、『じゃあ辞めます』みたいな、『こういうことを認めてくれる会社へ移ります』となっても、もったいないので、積極的に、ってわけじゃないですけど、ある程度、門戸はちゃんと広げてというか、社員に向けて案内をして、一応、雇用型でなければ認めてあげるというスタンスはやってもいいのでは(と思います)」
2.他社から副業・兼業を受け入れる場合の状況
直営店では非正社員(アルバイト)で副業者がいる可能性も
E社は、正社員採用では、他に本業を持っていないかを確認している。就業規則で、副業を原則禁止しており、許可がある場合にのみ副業を認めているため、採用段階で、他に働いていないことを誓約書の形で提出させている。
一方、非正社員の採用に際して、他に本業を持っていないかを確認しているかについては、E社の直営店において、「非正社員として副業者を受け入れたことがあるかもしれない」としているが、「雇い入れ時に本業があるかどうかを確認していないのでわからない」との回答だった。同社の場合、直営店における、副業でのパート・アルバイトの掛け持ちタイプが相当するが、「その実態は把握できていない」という。直営店では、アルバイトの採用権限は店長にあり、本社人事課ではない。この点で直営店の採用実態は見えにくい面がある。
一方、直営店側からみると、「誰でも働いてくれれば歓迎で、副業をしている人ももちろん歓迎になる」という。つまり、店舗店長としては、アルバイト採用に際して、勤務日・時間帯に働けることを確認することが重要で、その他の活動(本業の有無)までは把握していないであろうし、また、通算の労働時間についても把握はしていないだろう、とのことだった。採用手続きの段階で扶養控除(異動)申告書の手続きで副業の有無について把握できる可能性はあるが、これは雇用後に気づくことがほとんどだという。E社は次のように語る。
「直営店では日々、人を雇ったり退職したりしている。その中では、直営店に入ってくるアルバイトが、本業を持っている可能性は大いにあると思うんですね。コンビニのバイトならあり得ることなので。それが何なのかってところまでは、ちょっと把握しきれていないという状況です。(略)特にもう、人が雇えれば、それが別に他で何をしている人だろうが構わないっていうところで、直営店はたぶん採用もしているでしょうから。誰でも働いてくれれば歓迎で、副業をしている人ももちろん歓迎、っていう感じではあるので」
仕事を掛け持ちする人の働き過ぎによる労働災害、労働時間の通算に課題
副業者の受け入れに関する課題については、アルバイトの就労状況を把握しきれていないことから、労働時間の通算や働き過ぎによる労働災害について懸念があることをあげている。コンビニ業界は24時間営業のため、早朝(5時~8時)、準深夜(22時~翌1時)、深夜(翌1時以降~)など、様々な時間帯で短いシフトが組まれている。このような短いシフトに合わせて働いてもらえる人を必要としており、他で仕事をしている人がサブ的にコンビニを選ぶことについても、「時間さえ合えば働いてくれることは歓迎」だという。
その一方で、仕事を掛け持ちする人の労働時間を把握しきれていない現状について、「労働時間の通算は昔から、懸念点としてある」という。とはいえ、「他で仕事をしていない人のみを雇うこと(副業者は採用しない)というのは、コンビニ業界では『非常に無理な話』」との認識も示した。現状では副業者の本業の就労状況を把握できていないことから、「本業で働いていて疲れている状態でコンビニでも働き、労働災害などが発生してしまうことは懸念される」と付け加えた。
(ヒアリング実施日:2024年10月18日)
2026年11月号 労働組合取材の記事一覧
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- 「ジョブ型人財マネジメント」の一環として副業制度を導入し、自律的なキャリア形成に成果 ――製造業B社
- 健康確保の観点から自己申告により月単位で副業時間を把握 ――食品製造業C社
- 働き方改革の一環として副業制度を導入、社員のエンゲージメント向上に効果 ――金融業D社
- 副業先を非雇用に限定することで、過重労働につながる副業を抑止 ――コンビニ事業E社
- 副業推奨の社会的時流に対応し、パートタイムでの副業の許可申請を制度化 ――小売業F社
- 店舗での人員配置の柔軟性を確保する観点から、正社員の副業・兼業を禁止 ――外食産業G社
- コロナ禍を背景に収入補償のため副業のルールを明確化。近年、スキルアップ目的の副業も増加 ――旅行業H社


