昨年の労働争議の「総争議件数」は292件に増加
 ――厚生労働省の2023年「労働争議統計調査」結果

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厚生労働省が8月29日に発表した2023年「労働争議統計調査」結果によると、ストライキやロックアウトなどの争議行為を伴う争議(75件)と、労働委員会などが関与した争議行為を伴わない争議(217件)を合わせた「総争議」は前年より22件多い292件となり、3年ぶりに増加した。「争議行為を伴う争議」で最も多かった産業は「医療、福祉」の28件で、以下、「情報通信業」の14件、「運輸業、郵便業」の10件が続いた。要求事項では「賃金」が157件で最多。

調査は、労働争議の実態を明らかにすることを目的に実施。労働争議の発生・解決状況や、 争議行為の形態、参加人員および労働損失日数などを調べている。争議行為については、ストライキやロックアウト(作業所の閉鎖)、サボタージュ(怠業)などの争議行為が現実に発生した「争議行為を伴う争議」と、解決のために労働委員会など第三者が関与した「争議行為を伴わない争議」に大別。その両者を合わせた労働争議を「総争議」と呼んでいる。なお、労働損失日数は、労働者が半日以上のストライキやロックアウトなどで仕事をしなかった延べ日数をいう。

総争議の総参加人数が前年比9割増の約10万1,253人に

調査結果によると、2023年の「総争議」の件数は前年より22件(8.1%)増えて292件。総参加人数は同4万7,734人(89.2%)増の10万1,253人となった。「総争議」の件数は長期的には減少傾向だったが、2019年からは横ばい圏内で推移。2020年の303件以降は2年続けて減少していたが、2023年は増加に転じた格好だ。

「争議行為を伴う争議」の件数は75件で、前年から10件(15.4%)増加した。総参加人員は同4万2,419人(112.0%)増の8万300人。行為参加人員は8,414人で、前年より1,967人(30.5%)多い。

「争議行為を伴わない争議」の件数は前年比12件(5.9%)増の217件で、総参加人員は同5,315人増の2万953人となっている。

「争議行為を伴う争議」の件数と行為参加人員は「医療、福祉」が最多

「争議行為を伴う争議」を産業別にみると、件数が最も多いのは「医療、福祉」の28件。これに「情報通信業」(14件)、「運輸業、郵便業」(10件)などが続く。行為参加人員も「医療、福祉」(5,442人)が最多。以下、「製造業」(1,102人)、「卸売業、小売業」(932人)の順だった。

労働損失日数は「運輸業、郵便業」(1,274日)が最も多く、次いで「卸売業、小売業」(931日)、「製造業」(607日)となっている。

主要団体別の争議は、連合11件、全労連40件、全労協2件に

民営企業における「争議行為を伴う争議」をみると、争議行為を伴う争議のあった企業数(延べ数)は前年比35社増の181企業で、行為参加人員は同1,967人増の8,414人、労働損失日数は同1,863日増の3,652日となった。企業規模別では、企業数(延べ数)は「300~999人」、行為参加人員及び労働損失日数は「1,000人以上」で最も多くなっている。

「争議行為を伴う争議」について、加盟している主要団体別に、①件数②行為参加人員③労働損失日数――それぞれについてみていくと、「連合」は①11件(前年比6件増)②1,122人(同1,050人増)③1,268日(同1,142日増)、「全労連」は①40件(同3件増)②6,937人(同872人増)③981日(同378日増)、「全労協」は①2件(同1件減)②9人(同31人減)③10日(同11日減)だった。

争議事項は過半数を「賃金」関係が占める

「総争議」の件数を主要要求事項別にみると(複数回答)、「賃金」に関する事項が157件(総争議件数の53.8%)で最も多く、次いで「経営・雇用・人事」に関する事項が118件(同40.4%)、「組合保障及び労働協約」に関する事項が88件(同30.1%)、「賃金以外の労働条件」に関する事項が38件(同13.0%)となった。

さらに、主要要求事項の詳細をみてみると(複数回答)、「賃金」では「賃金額(基本給・諸手当)の改定」(61件)や「賃金額(賞与・一時金)の改定」(51件)が多く、「経営・雇用・人事」は「解雇反対・被解雇者の復職」(57件)が多かった。「組合保障及び労働協約」については「組合保障及び組合活動」(81件)、「賃金以外の労働条件」に関しては「職場環境・健康管理」(23件)が目立つ。

争議の4分の3が2023年中に解決

労働争議の解決状況をみると、「総争議」292件のうち、2023年中に「解決又は解決扱い」になった件数は221件で総争議件数の75.7%を占めたほか、「翌年への繰越」が71件(同24.3%)となっている。

解決方法をみると、「労使直接交渉による解決」が63件(解決又は解決扱い件数の28.5%)、「第三者関与による解決」が70件(同31.7%)、「その他(解決扱い)」が88件(同39.8%)。なお、「第三者関与による解決」では、労働委員会関与の「あっせん」が66件(同29.9%)で最も多かった。

労働争議の解決状況を労働争議継続期間(争議発生から解決に至るまでの日数)別にみると、「30日以内」が69件(解決件数の31.2%)で最も多く、次いで「91日以上」が67件(同30.3%)、「61日~90日」が49件(同22.2%)、「31日~60日」が36件(同16.3%)だった。

(調査部)

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