仕事上のストレスで、割合が最も上昇したのは「顧客、取引先等からのクレーム」
――厚生労働省「2023年労働安全衛生調査(実態調査)」結果
国内トピックス
厚生労働省が7月に発表した2023年労働安全衛生調査(実態調査)結果によると、現在の仕事や職業生活に関することで「強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は82.7%で、前回調査(2022年)とほぼ同じ割合だったが、「強い不安、悩み、ストレス」の内容(3つ以内で回答)では、「顧客、取引先等からのクレーム」の割合が26.6%で前回調査から4.7ポイント上昇し、上昇幅が最も大きかった。
調査は、原則として2023年10月1日現在の状況を聞き、一部の事項について過去1年間(2022年11月1日~2023年10月31日)について聞いた。事業所調査と個人調査からなり、有効回答数は、事業所調査が7,842事業所(有効回答率55.7%)、個人調査が8,431人(同45.3%)となっている。
ストレスを抱える割合が最も高い年齢層は「40~49歳」
個人調査の結果からみていくと、現在の仕事や職業生活に関することで「強い不安、悩み、ストレス(以下、ストレス)と感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は82.7%で、前回調査の82.2%から0.5ポイント上昇した。年齢階級別にみると、最も割合が高かったのは「40~49歳」(87.9%)で、「50~59歳」(86.2%)と「30~39歳」(86.0%)も8割台。「20~29歳」は72.0%で、「60歳以上」が64.8%などとなっている。
男女別にみると、男性が84.0%、女性が81.1%で、男性のほうがやや高い。就業形態別にみると、「正社員」(86.1%)に次いで高いのは「派遣労働者」(83.5%)で、「契約社員」が79.8%、「パートタイム労働者」が65.2%となっている。
ストレスの内容のトップは「仕事の失敗、責任の発生等」
ストレスと感じる事柄があるとした労働者が答えたストレスの内容をみると(3つ以内で回答)、「仕事の失敗、責任の発生等」が39.7%で最も回答割合が高く、次いで「仕事の量」(39.4%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(29.6%)、「仕事の質」(27.3%)、「顧客、取引先等からのクレーム」(26.6%)、「会社の将来性」(22.2%)、「役割・地位の変化等(昇進・昇格、配置転換等)」(15.8%)などの順となっている。
前回調査からの割合の上昇幅をみると、「顧客、取引先等からのクレーム」が4.7ポイント増で最も上昇幅が大きく、「仕事の失敗、責任の発生等」(3.8ポイント増)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(3.4ポイント増)と「仕事の量」(3.1ポイント増)が3ポイント以上、上昇した(図表)。
図表:ストレスと感じる事柄があるとした労働者が答えたストレスの内容(3つ以内で回答)(単位:%)
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(公表資料から編集部で作成)
ストレスの内容を就業形態別にみると、「正社員」では「仕事の失敗、責任の発生等」(42.9%)の割合が最も高く、「仕事の量」(41.2%)も4割台。「契約社員」では「雇用の安定性」(38.2%)が最も割合が高く、「パートタイム労働者」では「仕事の量」(31.1%)と「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(30.1%)が3割以上に及んだ。「派遣労働者」では「仕事の失敗、責任の発生等」(36.3%)と「仕事の質」(35.1%)、「雇用の安定性」(31.7%)が3割以上に及んだ。
相談先、実際に相談した人ともに、「家族・友人」「同僚」の順
現在の自分の仕事や職業生活でのストレスについて相談できる人がいる労働者の割合は94.9%で、前回調査から3.5ポイント増加した。ストレスを相談できる人がいる労働者が答えた相談できる人(複数回答)は、「家族・友人」が71.7%で最も割合が高く、次いで「同僚」(64.9%)、「上司」(61.3%)などの順だった。「産業医」は7.3%、「保健師または看護師」は2.7%にとどまり、「事業場が契約した外部機関のカウンセラー、『こころの耳電話相談等』の相談窓口」は2.0%だった。
実際に相談したことがある労働者の割合は73.0%で、前回調査から3.6ポイント上昇した。実際に相談した相手(複数回答)をみると、「家族・友人」が65.7%で最も割合が高く、「同僚」(60.0%)、「上司」(54.3%)などと続いた。「産業医」は3.1%、「保健師または看護師」は1.3%で、「事業場が契約した外部機関のカウンセラー、『こころの耳電話相談等』の相談窓口」は0.3%となっている。
過去1年間でメンタル不調による休業・退職が出た事業所は13.5%
事業所調査の結果をみると、過去1年間(2022年11月1日~2023年10月31日)にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%で、前回調査の13.3%とほぼ同じ割合だった。産業別にみると、「情報通信業」(32.4%)が最も割合が高く、次いで「学術研究、専門・技術サービス業」(23.4%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(23.3%)、「金融業、保険業」(22.3%)、「教育、学習支援業」(20.8%)などの順となっている。
過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所のうち、連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.4%(前回調査10.6%)で、退職した労働者がいた事業所の割合は6.4%(同5.9%)となっている。
メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者の割合は、前回調査と同じ0.6%。退職した労働者の割合も前回調査と同じで0.2%だった。
30人未満の事業所で低下するメンタルヘルス対策の実施率
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.8%で、前回調査(63.4%)とほぼ同じ割合だった。事業所規模別にみると、「10~29人」が56.6%、「30~49人」が71.8%、「50~99人」が87.4%、「100~299人」が96.6%、「300~499人」が99.8%、「500~999人」が99.5%、「1,000人以上」が100.0%となっており、100人以上の企業では大半の企業で対策が講じられているが、30人未満の事業所では取り組み率が50%台にとどまる。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の取り組み内容(複数回答)をみると、「ストレスチェックの実施」が65.0%で最も割合が高く、これに「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」(49.6%)、「職場環境等の評価及び改善〈ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む〉」(48.7%)、「メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備」(45.0%)、「メンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供」(33.3%)、「メンタルヘルス対策の実務を行う担当者の選任」(33.1%)、「健康診断後の保健指導等を通じた産業保健スタッフによるメンタルヘルス対策の実施」(31.5%)などが続いた。
(調査部)
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