III 調査結果
1 昇進・昇格について (1) 職位昇進基準 職位昇進の基準について定めている企業割合は、事務、技術・研究、現業のいず れの職種においても3割〜4割となっている。係長相当への昇進についてみると、事 務職45.8%、技術・研究職34.2%、現業職43.5%となっている。 職位昇進の基準を定めている企業について、昇進基準の内容(複数回答)を職種別 にみると、どの職種でも「能力評価」とする企業割合が、8割とおおむね最も高く なっており、次いで「業績評価」が7割〜8割、「在籍年数」が4割〜5割、「人柄」 が3割〜4割となっている。係長相当への昇進の場合、事務職では「能力評価」 86.1%、「業績評価」79.8%、「在籍年数」50.3%、「人柄」39.8%となっている (第1図、付属統計表第1表)。 (2) 資格制度 イ 資格制度の実施状況 資格制度のある企業割合は31.9%となっている。これを企業規模別にみると、 5,000人以上93.4%、1,000〜4,999人86.5%、300〜999人72.7%、100〜299人46.0%、 30〜99人22.1%と、企業規模が大きくなるほどその割合が高くなっている (付属統計表第2表)。 ロ 昇格のための選考基準 資格制度がある企業について昇格のための選考基準をみると、「役職者」につ いて昇格のための選考基準を定めている企業割合は84.2%、「一般職」では86.9 %となっている。 選考基準の内容(複数回答)をみると、「役職者」、「一般職」ともに「能力 評価」とする企業割合が最も高くそれぞれ86.8%、85.3%、次いで「業績評価」 86.0%、80.6%、「在籍年数」57.6%、63.7%となっている。一方、「人柄」はそ れぞれ35.2%、31.7%、「昇格研修」はそれぞれ12.8%、10.4%となっている。こ れを企業規模別にみるといずれの企業規模でも「能力評価」、「業績評価」、 「在籍年数」とする企業割合が高くなっているが、特に「能力評価」は大企業に おいて高い。一方、企業規模が小さくなるほど「人柄」とする企業割合が高く なっている(第2図、付属統計表第3表)。 (3) 専門職制度 イ 専門職制度の職務範囲 専門職制度のある企業割合は18.2%となっている。これを企業規模別にみると、 5,000人以上51.5%、1,000〜4,999人39.2%、300〜999人35.3%、100〜299人21.9%、 30〜99人では14.7%と企業規模が大きくなるほどその企業割合は高くなっている。 専門職制度がある企業について専門職の職務の範囲をみると「どちらかといえ ば特定職種に限定している」が39.8%と最も高く、次いで「特定職種に限定して いる」とする企業割合は33.7%、「特定職種に限定していない」は25.9%となっ ている。これを企業規模別にみると、300人以上の企業規模では「特定職種に限 定していない」企業割合が最も高くなっている。 専門職の任用、格付に当たって「資格制度上の資格一定要件」があるとする企 業割合をみると、「特定職種に限定している」企業では32.9%、「どちらかとい えば特定職種に限定している」企業では45.7%、「特定職種に限定していない」 企業では35.2%となっている。「特定職種に限定していない」企業の場合につい て、「資格制度上の資格一定要件」のある企業割合を企業規模別にみると、5,000 人以上63.2%、1,000〜4,999人66.4%、300〜999人47.1%、100〜299人39.0%、 30〜99人21.0%でおおむね企業規模が大きくなるほど高い企業割合になっている (付属統計表第4表、第5表)。 ロ 専門職制度の設定理由 専門職制度の設定理由の企業割合をみると、「生産、販売等の各分野の個々の 労働者をスペシャリスト化して、その能力の有効発揮を図るため」とする企業割 合が35.7%と最も高く、次いで「管理職と専門職の機能分化による組織の効率化 を図るため」23.8%、「役職、ポスト不足による管理職担当の能力保有者の処遇 を図るため」12.4%、「役職にむかない中高年齢者の処遇を図るため」7.6%と なっている。これを企業規模別にみると、各企業規模とも「生産、販売等の各分 野の個々の労働者をスペシャリスト化して、その能力の有効発揮を図るため」が それぞれ高い企業割合となっている。なお、30〜99人規模では「管理職と専門職 の機能分化による組織の効率化を図るため」とする企業割合が24.9%と比較的高 くなっている(第3図、付属統計表第6表)。 ハ 専門職制度の今後の方針 専門職制度の今後の方針をみると、「当面現在の専門職制度、運用方法を維持し ていきたい」とする企業割合が37.1%と最も高く、次いで「専門職の処遇は現在 程度とするが専門職制度をもっと能力主義的なものに強化していきたい」22.2%、 「現在のところなんともいえない」21.5%、「専門職の処遇は現在より優遇する とともに専門職制度をもっと能力主義的なものに強化していきたい」13.0%と なっている。一方「縮小又は廃止したい」は2.1%と低い企業割合となっている。 これを企業規模別にみると、「当面現在の専門職制度、運用方法を維持していき たい」とする企業割合が5,000人以上では5割を超え、その他の企業規模でも3割〜 4割となっている(付属統計表第7表)。 2 人事考課制度 (1) 人事考課制度の実施状況 人事考課制度がある企業割合は、全企業の50.8%(前回平成8年調査49.9%)となっ ている。これを企業規模別にみると300人以上の企業規模ではいずれも9割を超えて いるが、30〜99人では39.1%にとどまっている。 また、全社員を対象とする人事考課制度がある企業割合は全企業の45.4%となっ ており、人事考課制度のある企業では大部分が全社員を対象としている。 一方、人事考課制度がない企業の割合は49.2%であるが、このうち今後設ける予 定がある企業の割合は8.3%となっている(第4図、付属統計表第8表)。 (2) 人事考課の公開制度等 人事考課制度のある企業のうち、公開制度がある企業割合は25.3%(前回平成8年 調査18.1%)となっている。企業規模別にみると、5,000人以上59.8%、1,000〜4,999 人44.5%、300〜999人38.4%、100〜299人29.5%、30〜99人18.5%となっている (第5図、付属統計表第9表)。 人事考課の公開制度のある企業について公開内容(複数回答)をみると、「考課 基準等」を公開する企業割合が89.9%、「考課結果」を公開する企業割合が85.8%と なっている。「考課基準等」の内容は「考課項目ごとの判断基準」69.0%、「考課 者」60.5%、「考課項目ごとのウエート」58.8%などとなっている (第6図、付属統計表第9表)。 考課基準等を公開する企業と考課結果を公開する企業の別に対象者の範囲(複数 回答)をみると、「対象者全員」がそれぞれ65.6%、59.0%、「申し出があった者」 がそれぞれ12.6%、16.6%、「上司の判断による者」がそれぞれ5.9%、7.6%などと なっている(付属統計表第10表)。 「考課結果」を公開する企業のうち、異議申立て制度がある企業割合は41.0% (前回平成8年調査40.0%)、異議申立て制度がありこれまで「考課結果を変更した ケースがある」企業割合は11.6%となっている。 異議申立て制度がある企業割合を企業規模別にみると、5,000人以上32.6%、 1,000〜4,999人33.5%、300〜999人38.4%、100〜299人41.8%、30〜99人43.3%となっ ている(第7図、付属統計表第11表)。 (3) 人事考課を行う上で用いる諸制度 イ 目標管理制度、多面評価制度、自己評価制度等の導入状況 人事考課制度がある企業について人事考課を行う上で用いる諸制度の状況をみると、 目標管理制度のある企業割合は43.5%(前回平成8年調査28.0%)、多面評価制度のあ る企業割合が41.8%(同32.2%)、自己評価制度のある企業割合が29.2%(同22.2%) となっている。これを企業規模別にみると、目標管理制度、自己評価制度は企業規模 が大きいほど制度のある企業割合が高くなっている。特に目標管理制度については、 5,000人以上で78.9%、1,000〜4,999人で65.1%と高くなっている。一方、多面評価制 度においては、企業規模が小さくなるほど高くなっている(付属統計表第12表)。 ロ 目標管理制度の実施内容 目標管理制度がある企業についてその対象者の範囲をみると、「全労働者」を対象 とする企業割合が63.5%(前回平成8年調査55.5%)、「管理職のみ」を対象とする企 業割合が17.4%(同24.2%)となっている。また、重視する目標として「日常業務に関 する目標」とする企業割合が58.1%と最も高く、次に「業務改善に関する目標」が25.4 %となっている。さらに、達成結果の昇進・昇格等への反映度合いでは、「間接的に 反映する」とする企業割合が36.6%と最も高く、次に「直接反映する」30.9%、「人事 考課の参考程度」17.9%となっている(第8図、付属統計表第13表)。 ハ 人事考課制度の問題点 人事考課制度のある企業のうち89.5%の企業が、制度・運営上の問題点があるとして いる。問題点とした事項(複数回答)をみると、「質の異なる仕事をする者への評価が 難しい」が59.4%と最も高く、次に「考課者訓練が不十分である」54.0%、「考課基準 が不明確又は統一が難しい」45.7%、「考課の寛大化のため格差がつかない」36.0%と なっている(第9図、付属統計表第14表)。 ニ 人事考課制度の見直し・改定状況 人事考課制度がある企業のうち最近3年間以内に人事考課制度の見直し・改定を行っ た企業割合は26.7%、今後見直し・改定が決まっている企業割合は4.9%、見直し・改 定を検討している企業割合は29.6%となっている。見直し・改定を行った企業割合は、 企業規模が大きくなるほど高く、1,000人以上で4割以上となっているが、30〜99人で は約2割となっている(第10図、付属統計表第15表)。 見直し・改定を行った企業について、見直し・改定事項(複数回答)をみると、 「業績考課の重視」が最も高く65.8%、次に「目標管理制度の導入・充実」46.0%、 「考課者への訓練の導入・強化」24.9%、「考課基準等の公開」24.6%となっている。 5,000人以上についてみると、「業績考課の重視」73.1%、「目標管理制度の導入・充 実」68.4%、「考課者への訓練の導入・強化」43.5%となっている。 今後見直し・改定を決定している企業又は検討中の企業についてみると、やはり 「業績 考課の重視」が高く58.6%、次に「目標管理制度の導入・充実」56.6%、「考 課者への訓 練の導入・強化」47.4%となっている(第11図、付属統計表第16表)。 3 人事政策 (1) 人事管理諸制度の実施状況 人事管理諸制度の実施状況をみると、「複線型人事管理制度」が9.7%、「限定勤務 地制度」が6.9%、「転勤一時免除制度」が1.6%、「役職任期制度」が5.7%、「自己 申告制度」が14.0%、「社内人材公募制度」が3.2%となっている、いずれの制度も企 業規模が大きくなるほど実施する企業割合が高くなっている。特に5,000人以上規模で は「自己申告制度」が77.5%と7割を超え、「複線型人事管理制度」が53.4%、「社内 人材公募制度」が43.3%と高い企業割合になっている(付属統計表第17表)。 (2) 人事管理上の問題点 現在の人事管理上の問題点(3つまでの複数回答)をみると、「中高年現業職員の配 置及び処遇」とする企業割合が35.2%と最も高く、次に「若年社員の帰属意識・モラー ルの変化」28.2%、「労働時間短縮のための組織・要員の見直し」27.5%、「技術者の 不足・採用難」 22.5%となっている。このうち、「中高年現業職員の配置及び処遇」 を問題点とする企業割合はいずれの企業規模でも4割前後と高いが、他の3項目はおお むね企業規模が小さいほど問題とする企業割合が高くなっている。 一方、大きい企業規模で企業割合が高いのは、「中高年ホワイトカラーの配置及び 処遇」や「産業構造転換等による余剰人員対策」、「女性社員の採用、配置転換及び 処遇」などで、特に「中高年ホワイトカラーの配置及び処遇」は5,000人以上では68.8 %と高い企業割合となっている(第12図、付属統計第18表)。 4 定年制等 (1) 定年制の実施状況 定年制を定めている企業割合は90.2%(前年91.3%)で、定年制を定めている企業の うち、一律定年制を 定めている企業割合は97.1%(前年94.7%)である (付属統計表第19表)。 (2) 一律定年制における定年年齢の状況 一律定年制を定めている企業について、 その定年年齢をみると、60歳とする企業割合 が91.2%(前年86.7%)で、65歳とする企業割合が6.2%(前年5.1%)、60歳以上とす る企業割合が99.2%(前年93.3%)となっている(第13図、付属統計表第20表)。 (3) 一律定年制を定めている企業における勤務延長制度及び再雇用制度の実施状況 イ 勤務延長制度又は再雇用制度のある企業割合 一律定年制を定めている企業における勤務延長制度及び再雇用制度の有無をみると、 そのどちらか又は両制度併用の制度がある企業割合は67.8%(前年68.0%)となって いる。制度がない企業で制度設定予定がある企業割合は7.4%(前年5.9%)、制度設 定予定のない企業割合は24.8%(前年26.1%)となっている (第14図、付属統計表第21表)。 ロ 勤務延長制度及び再雇用制度の最高雇用年齢 一律定年制を定めている企業のうち勤務延長制度及び再雇用制度のどちらか又は両 制度併用の制度がある企業における最高雇用年齢を定めている企業割合をみると、勤 務延長制度のみの企業で43.8%、再雇用制度のみの企業で48.8%、両制度併用の企業 で26.8%となっている(付属統計表第22表)。 ハ 勤務延長制度及び再雇用制度の適用となる対象者の範囲 勤務延長制度又は再雇用制度のある企業において、適用となる対象者の範囲をみる と、勤務延長制度がある企業、再雇用制度のある企業とも、「会社が特に必要と認め た者に限る」とする企業割合が最も高く、それぞれ55.1%、59.9%、次いで「原則と して希望者全員」(それぞれ29.5%、24.2%)、「会社が定めた基準に適合する者全 員」(それぞれ12.1%、12.6%)となっている。 これを企業規模別にみると、「会社が特に必要と認めた者に限る」とする企業割合 は企業規模が大きくなるほど高くなり、勤務延長制度では、5,000人以上83.3%に対し、 30〜99人規模で51.5%、再雇用制度では、5,000人以上79.5%に対し、30〜99人規模で 56.4%となっている。これに対し、「原則として希望者全員」とする企業割合は、企 業規模が小さくなるほど高くなっている(付属統計表第23表)。 ニ 勤務延長制度及び再雇用制度がない理由 一律定年制における勤務延長制度及び再雇用制度のない企業に対し、制度のない理 由(複数回答)をみると、「作業能率低下の問題」を挙げる企業割合が最も高く17.9 %、次いで「賃金体系・退職金制度の問題」13.8%、「処遇、ポスト不足等人事管理 面での問題」12.1%、「健康面の問題」が10.3%となっている。 これを企業規模別にみると、「処遇、ポスト不足等人事管理面での問題」とする企 業割合は企業規模が大きくなるほど高くなっている(付属統計表第24表)。