基調講演:第23回労働政策フォーラム
企業における女性の戦力化
(2007年2月2日)

開催日:平成 19 年 2 月 2 日

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配付資料

脇坂 明    学習院大学経済学部教授

「女性の働き方―過去・現在・未来」と題して基調講演した脇坂明・学習院大学経済学部教授は、女性の年齢階級別労働力率で 30代が落ち込むいわゆるM字型カーブが、大きく是正されていないことに触れ、「出産後に就業を続ける人は増えておらず、出産しても仕事を続けられる職場かどうかが重要だ」と強調した。

脇坂 明(学習院大学経済学部教授)

そのうえで、英国や米国では家庭生活と仕事の両立・調和を可能とするファミリー・フレンドリーから、一歩進めて、「年齢、人種、性別に関わらず、誰もが仕事とそれ以外の責任、欲求とうまく調和させられるような生活リズムを見つけられるように、就業形態を調整する」(英国貿易産業省の定義)というワーク・ライフ・バランスに移行しつつあると紹介。その「ポイントは(企業と従業員が)ウイン・ウインの関係になること」(脇坂教授)とする。

例えば、育児と仕事の両立支援といったファミフレ施策を実施している企業の方が、従業員の定着率や帰属意識が高くなる傾向は、今号(BLT2007年3月号)の P2~P10(PDF:1.6MB)で紹介した当機構の調査からもあきらかであるとしたうえで、企業にとってワーク・ライフ・バランスが企業業績の向上につながるかどうかの実証が、研究上の大きな課題になっていると紹介した。

こうした動向を踏まえて、脇坂教授は、わが国におけるワーク・ライフ・バランスのあり方について、「仕事のための時間、家庭のための時間、自分のため社会と関わるための時間の三つのうち、仕事のための時間が突出している」と、現在の問題点を指摘。今後は、ライフサイクルやライフスタイルに応じて、仕事時間を中心にする時期がある一方、生活時間にシフトする時期があっていいとし、「一律的な働き方ではなく、働く人のニーズを汲み取り、選択の幅を広げていくことが必要だ」と述べた。

そのための具体的な方策として、現在ある正社員と非正社員という二極分化だけではなく、働く時間は短いけれども、雇用保障がありフルタイム正社員と同様の役割・責任を期待され、処遇についても同様の賃金の決め方が適用される「短時間正社員」を導入する必要があると強調した。

こうした多様で柔軟な働き方を取り入れた方が、企業の財務上のパフォーマンスを高め、長い目でみると「ペイする」と脇坂教授はみている。現在、ワーク・ライフ・バランス施策を主に利用しているのは女性だが、「これからは男性を含めた働き方の見直しが必要だ。多様なキャリアの実現が男性(夫)の働き方も変える」と締めくくった。

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